「下、さわるぞ」
そのまま桂馬の頭は上へ。耳たぶにも軽いキスをすると耳元に囁いた。
背筋がゾクゾクと震える。全身の痙攣が先ほどまでの自分の恥知らずな反応をいやがおうにも反芻させた。
「して、い、ぃから、あんまり……はげしく、しないでぇ」
「わかった」
指が臍の下を縦に滑るだけで、子宮が疼く。
女性器に到達した左手が温めるように入り口を包むと、自分がひどくみだらな女になったような気がして眼を伏せてしまう。
「あうっ!」
薄い茂みを軽くかき分けられ、鞘に包まれたクリトリスに指が触れた瞬間、強烈な衝撃が走り抜けて腰が跳ね上がった。
「すまん。痛かったか?」
反射的に手を離した桂馬が申し訳なさそうに顔を覗きこんでくる。
「う、うぅん。違うの。ちょっと、びっくりしただけ……」
「そうか。痛いなら言え。無理する必要はない」
「だめ」
告げる意思は明白だった。まっすぐ桂馬の目を見て告げる。
「私は、お前に捧げるって決めたの。だから、少しくらい痛いって言ってもやめないで。
中途半端にやさしくしないで。ちゃんと、お前のものにして頂戴」
桂馬は多少面食らったようだったが、うなずきを返す。だが、同時に強い決意を秘めた目でハクアの顔を見返し、
「わかった。だが、ボクにだってプライドがある。落とすからにはちゃんとだ。ちゃんと、気持ちよくする」
「初めてのクセに。期待するわよ」
返答は頬にされた無言のキスだ。頬だけでは終わらない。
首筋、鎖骨、胸。自分のものだ、と印をつけるように桂馬の唇と舌が這っていく。
滑る熱さが触れるだけで、自分のカラダと桂馬との境界が分からなくなる。
キスの間に手は女性器の攻略を再開する。
クリトリスには特に細心の注意を払っているようでいて、包皮越しにゆっくり親指で撫でる動作を繰り返す。
もどかしさすら覚える弱い刺激は淫欲をますます高め、
ハクアは桂馬の腕を挟み込むように膝を擦り合わせて長い脚をモジつかせる。
「そろそろいいか……」
問いかけとも、独り言ともつかぬ桂馬の言葉に頷く。そしてついに乙女の花弁が人差し指と中指によってくつろげられた。
「ああ……」
ヌチッ、と粘着質な音がしてハクアの大陰唇が広げられる。
ふっくらした肉土手に隠された柔肉があらわになり、真っ赤に火照った花弁が粘り気の強い蜜を吐き出した。
「ちゃんと濡れてるな……」
「それはお前がっ、……いやらしいこと、するからじゃない」
恥ずかしくてつい可愛げのない返答をしてしまう。
けれど、もう桂馬は気にしない。『入れるぞ』と耳元で囁き、ハクアの膣内へと指を侵入させた。
「ひぅ」
生まれて初めての感触は快感というより衝撃だ。体内に異物を受け入れる感覚に思わず声が出てしまった。
動きはあくまで優しく、微妙な加減で指の当たる場所も微細に変える。
浅く内側をひっかいたかと思えば第二関節まで侵入させたり、挿れたままくるりとかき混ぜてみたり、
尿腔の裏側をやさしくこすったかと思えば、指を浅く小刻みに出し入れしてみせたり、
繊細だが大胆な愛撫と、何より桂木桂馬にされているという状況にハクアの身も心も昂っていく。
ハクアの吐息が熱を帯びた湿ったものとなるのを確認すると、桂馬の責めもまた、激しいものへと変化した。
空いた片手や唇や舌でいっせいにハクアの全身を責め立てる。
「うそっ、ああ……そんな、だめっ、だめだからっ、はげしくしちゃ、ひんっ」
少年から与えられるすべてを『快楽』として受け止めるよう覚えてしまった体はどこまでも正直に受け止める。
拒絶しているのは言葉だけ。それも、蜂蜜のように甘ったるい媚び声ではオスの劣情を煽るだけだ。
熱い衝動のまま、桂馬はハクアの肉体を使って演奏を続ける。
ハクアの性感はもはや嵐の中の小船だった。わからぬまま、押し流されるまま、啼いて、喘いで、快楽を甘受する。
「やぁっ、こわいのっ、こわいのぉっ、かつらぎっ、かつらぎぃ」
目の奥では白や黒の光が明滅する。口からはよだれとともに意味を成さぬ声がこぼれ、目の前の体に必死にしがみつく。
「ぐぅっ、このっ、すこしおとなしくっ」
「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ! でも、でもなにかくるのっ、すごいのがっ、くるのっ!」
自分が何を言っているのかわからない。ただただわけもわからない衝動と情愛のままに桂馬を求める。
そしてひときわ強く、桂馬のより合わさった二本の指が膣内に突き込まれた瞬間、目の奥で音の無い爆発が起こった。
「あ、ああ――」
ガクンと大きく腰が持ち上がり、背も折れよとばかりに上体をのけぞらせる。
膣口から熱い蜜が二度、三度と噴き出し、桂馬の手指を濡らしていく。