将棋盤の前に腰かけるや神は栄養ドリンクを一気飲みして待ち構えていた七香に言った。
「昨日はよくも僕に、あんなことやこんなことを・・・・・・!今日は絶対に勝つから覚悟しておけよー!!」
「な、なんのことや・・・?うち、ジンジャーエールを飲んどったからよー覚えとらんわ〜」
ののワる七香にずいと顔を近づける桂馬。これではどちらが勝負にこだわっているのか分からない。
すべては前日の深夜に、七香が「対局に負けたら相手の言うことを何でも聞く」お約束ルールを導入したことが原因だった。
“罰ゲーム”の内容はまたたく間にエスカレートし、テンションの上がった七香にテンションの落ちた桂馬は惨敗を喫し続けた。
その雪辱を果たすため、少年は一日中将棋のことばかりを考えて夜を迎えたのである。
いや、厳密にいえばもうひとつ常に考えつづけていたことがある。
すなわち、どんな“罰ゲーム”やりかえすか。
雑念というか煩悩が入り交じっていても今日の神は冴えていた。
攻撃一辺倒のさし筋で七香の陣地を切り崩し、守りが脆弱な王を一手差まで追い詰められながらも早々に勝負を決める。
「ふ、フフフフフ・・・・・・ッ」
「こ、こわ・・・っ」
将棋をさしている最中は「がっつき過ぎはあかんでー」などと軽口を叩いていた七香も
負のオーラに包まれた桂馬には引いてしまう。その様子はどこか楽しげでもあるのだが。
神は席を立ち、メガネをくいっと上げながら少女の横まで移動した。
「いろいろ考えたんだが・・・昨日させられたことをそのままさせるのが一番だな。というわけで・・・・・・」
ぽろりんッ♪
「しゃぶれよ」
「う゛〜〜」
いきなり眼前に男性器をつきつけられて、頬を赤らめ目を逸らす七香。
反応がそれ以上にはならないのは前日に観察済みだからである。おずおずと手を伸ばす。
「わ、わかった・・・」
そういってかがみこみ顔を近づけながらも直視はさけていた。鼻先をひくつかせて動きを止める。
悪臭がしたからではない。むしろその逆だった。
「せっけんの匂いが・・・・・・最初からうちにさせる気まんまんやったんやね・・・変態やー」
その弱々しい声にキッと強い視線が返ってくる。
「変態はどっちだ!?・・・・・・昨日の僕なんて!僕なんて〜〜ッ!!」
トラウマ的な記憶がよみがえったのか、仁王立ちの丸出しで滂沱の涙をながす桂馬だった。
彼の変なテンションに呑まれて(さすがに悪いことをした気にもなってきた)
七香はふるふるっと全身を震わせながら、そっとひと舐め。
「・・・っ」
初体験の触感に悲鳴とも呻きともつかない声を漏らす。
「どうした?まだ勃ってもいないぞ?」
勝利の愉悦に酔った神の声が降ってくる。七香は眉をひそめると陰茎に手をそえて必死に奉仕をはじめた。
できるだけ何も考えず、肉をむしゃぶる。テクニックも何もあったものではないが、体温と圧力に桂馬の分身は敏感に反応した。
じょじょに鎌首をもたげ、ついに天を衝くペニス。
思わず嗚咽をあげて、七香は動きを止めてしまう。目尻には涙が溜まっていた。
下半身に血が集まって、頭の一部はクールダウン。快楽に飢えながらも桂馬は思考の片隅でやりすぎたと反省する。
そっと手を伸ばすと、反射的に身を震わせる少女の頭に手をおいて、つとめて優しく髪をわしゃわしゃとかき回した。
「あっ・・・」
泣き声をとじ込めていた口から、ほろりと声が落ちる。思わず目を細めたところに、
「――やめるか?」
そっと投げかけられた問い。しかし、七香はかぶりを振った。
「ん・・・や、やる!将棋で決まったことやもんっ!!」
てのひらを握りしめる彼女に桂馬は微笑んでしまう。
「わかった。じゃあ、どうすればいいか教えてやるから、その通りにするんだぞ」
しっかり頷いた七香の額が亀頭にぶつかった。汗にはりついた前髪がこすれて存外気持ちよかった。
言われるがまま一心不乱に将棋好きの少女は唾液をまぶし撫でさすり、裏側を入念に舐め上げた。
口にふくむのは抵抗感が強すぎるとみて、慣れさせることを優先したのだが、それでも充分に気持ちよかった。
なんといっても望んだ快楽をすぐさま得られることが、少年に強烈な満足感と征服感をもたらしていた。
七香は七香で、指示を聞き逃すまいと没頭しすぎたあまり、桂馬ことしか考えられなくなってしまっている。
将棋のことさえ一瞬頭から消えていた。ふと、視線を上にむけてみると、快感にあえぐ彼の顔があった。
(あ・けーま、かわええなあ・・・)
彼女の心にも久しぶりに余裕が生まれる。もっと彼の喜ぶ顔が見たい。
そこで一旦、口を離すと、頬を桜色に染めながら提案した。
「あ、あんな・・・桂馬。け、桂馬の゛、ふくんだろか・・・っ?」
わしゃわしゃわしゃ――
惚けた表情だった彼は、目をぱちくりさせると、彼女の顔に焦点をあわせてきた。
「・・・大丈夫か?」
心底から気遣いに満ちた言葉に、七香の胸が一杯になる。
「・・・うん。桂馬のやから・・・」
言ってしまってから激しく赤面して、また髪を撹拌した。
「あ・・・んっ」
「くっ・・」
全周を熱く濡れたものに包まれて、ペニスはさらに熱くなる。ふたりは駆り立て合うように行為を続けた。
先程までの愛撫で、桂馬の好みを学習した七香は一手先を読むかたちで、刺激をくわえていく。
唇や舌だけではなく、歯をうまく使ってカリ首の裏側を掻くように愛撫した。
「ぐぅ!」
甘い痺れにも似た快感にすっかり余裕を失った声があがる。超然とした神の面影もない。
頭に置かれた手にかかった体重が慌てたように引いていくのを感じて、七香のフェラチオにはいっそうの熱がこもった。
淫猥な水音が立つ。限度を超えた悦楽に桂馬の身体がのけぞった。
「うぁああっっ!七香っ!!」
(桂馬!桂馬ぁ!!)
「っ!出るぞっ、七香」
「んぐくっく」
警報をうけて、彼女はいままで以上に深く生殖器を口内に受け入れた。
「なっ!?」
驚くいとまもあらばこそ、咽頭に突き当たった衝撃を受けて、粘つく熱液がペニスを脈動させてほとばしる。
七香は意地になったように唇をしぼり、ゆっくり肉棒を押し返しつつも、射精がおさまるまで口を離さなかった。
すべての欲望を受け止めてのけた。
「・・・っはぁ!」
「大丈夫か!?」
今日の神は語彙が少ない。首肯で答えると、少女は中が見えるように口を開いた。白濁液が糸を引く。
固まる桂馬の前で、彼女は口を閉じ、何度もつっかえながら口内のモノを嚥下した。涙が頬を伝う。
再び口を開いてみせたときには、ピンクの舌に絡まっていたホワイトソースはわずかな残滓を残すのみ。
「そこまでしなくても・・・」
なぜか湧き出た唾を飲み込み飲み込み、桂馬は呻いた。
愚息の状態は発射前と変わらないまま。さらにいきり立ってさえいた。
それを眼前に、薄い胸を虚勢を張るようにそらし、七香は答える。
「言ったやろ?将棋のことやから、中途半端はイヤなんや――それに」(桂馬のやから・・・)
こちらもいちど言った言葉は口を離れずに消えた。それでも通じるものがあったようだ。
桂馬の腕が痙攣するように上がると――
こつんっ、わっしゃわっしゃ
「―――ア、アホ!」
視線を大きくそらして桂馬が対面に戻った。机の下でなんかもぞもぞさせている。
「ITEッ!」
挟んだ。喉の奥に水を流しこんでから、七香はだらしなく笑った。
「えへへ、次、うちが勝ったら“お代わり”するのもええな」
とりつくろったジト目が返ってくる。
「・・・・・・本っ当にアホだな、お前」