桂木日記。
二階堂先生の自室、その机の中にある分厚いノートのタイトル欄に、それは書かれていた。
開いてみると、そこには桂木桂馬に対する苦言や罵倒文句が所狭しと書き殴られている。
所々に桂馬の写真が貼られ、それらはすべからく落書きがされていた。
これが30ページ程続いた所で、内容が徐々に変化していく。
「桂木が遅刻してきた。珍しいので一日中ネタにしていびってやろう」
「桂木がまた授業中にゲームをしていた。相変わらず最低の生徒だ」
「最近、桂木は放課後に図書館へ通っているようだ。何を調べているのだろう?」
と、日を追う毎に桂馬の行動をチェックするようになっていくのだ。
写真にも落書きが無くなり、その写真を撮影した日時や状況、桂馬の様子などが事細かに記されていた。
「桂馬、南校舎でサボり。黙々とゲームをしている」
「桂馬、女生徒と会話。口喧嘩をしている模様」
「桂馬、屋上で昼寝。可愛かった」
内容は次第に過激な物となっていく。
「桂馬のゲーム機を一つ没収。私もやってみた」
「桂馬が体操着を忘れて行く。仕方ないので私が管理してやる事にした」
「今までの罰として三時間程説教をした。一時間程で言い尽くしてしまったので、残った二時間は桂馬の隣でゲームを見ていた」
そして日記の最後。
そこはたった一行の言葉で締め括られている。
―――桂馬を捕まえた。