薄暗い部屋の中でボクはぼんやりとした頭で考える。  
何か選択肢を間違えたのか?  
 
見上げる目線の先には剥き出しになった瑞々しい肢体と、  
ピンクの髪と特徴的なリボン。  
張りのある胸が軋む音にあわせて揺れる。  
 
彼女のかけた眼鏡は汗と体液の入り混じった空気の中で曇り、  
溜息とも鳴声ともつかない声音をあげ続けている。  
 
身をよじって逃げ出そうにも、手足は拘束され、  
全てが彼女の管理下に置かれているのだ。  
 
また意識が混濁してくる……  
閉じかける視線の先に、暗い微笑が浮かぶ。  
 
「……コンサートの開演までに見つけないとアウトだ。」  
西原かのん攻略最終日、忽然と姿を消したかのんを探す桂馬とエルシィ。  
 
選択肢総当り。  
 
美しくないが、唯一の方法を試したが、  
ついに二人はかのんを見つけ出すことができなかった。  
 
ベンチに腰掛けて、他に方法がないか、考える。  
ダメだ……  
かのんはその存在を限りなく希薄にすることができる。  
いまでは、それは駆け魂の影響だとわかるのだが、  
もはやそれも何の役にも立たないのだが。  
 
姿の見えない奴を探すにはどうすればいいんだ?  
ポンコツ悪魔っ娘に期待することはできないが、  
このときばかりはエルシィは、役に立った。  
 
「そーだ、駆け魂センサーで探せばいいんですよ!」  
エルシィは、髑髏の髪留めの形をしたセンサーをオンにする。  
即座に駆け魂の反応を探知して、エルシィが駆け出す。  
「おい!」  
桂馬はエルシィを呼び止めるが、そのまま何処かへと去ってしまった。  
ベンチに残された桂馬が振り返るとそこには、かのんがいた。  
 
「すごいコンサートをするんじゃなかったのか?」  
「だめだよ、私……」  
「また、透明になるのが怖いのかい?」  
 
「……すごいね、桂馬君は私のこと、何でもわかるんだ?」  
「ちがうよ、そういう話を知っているだけだ」  
 
やおら立ち上がったかのんが、桂馬にひし、と、抱きつく。  
女性との接触が苦手な桂馬は、身動きをとることができない。  
 
「……桂馬君  
 
 ずっと私といて!  
 ずっと私を勇気付けて!  
 
 ずっと私を、見て。  
 
 桂馬君が、桂馬君だけが私を見てくれれば……  
 私だけを、桂馬君が見てくれれば……私……私…」  
 
虹彩の澱んだ、だが桂馬を惹きつけて止まない瞳で、かのんは桂馬を見つめる。  
桂馬の唇に自らの唇を重ねようとする、かのん。  
 
あ……  
 
かのんの瞳にすいこまれる様に、桂馬はキスで応える。  
 
んぷ、つぷ、と、ねぶりあうように舌を絡めるキス。  
少しずつ、少しずつ、桂馬の意識がぼやけて来る。  
かのんの甘ったるいにおいに、女のにおいが混ざる。  
桂馬の背中に腕を回すかのん。  
弾力の有る胸の感触が桂馬の胸に伝わる。  
いけない……  
 
その瞬間、桂馬の身体に衝撃が走る。  
暗転、静寂、そして……  
 
 
「にぃさま〜、神にーさま〜」  
エルシィの声が、むなしく響きわたる。  
 
 
次に桂馬が意識を取り戻したとき、桂馬の身体の自由は完全に奪われていた。  
簡素なパイプベッドに、全裸にされ、手錠を使って拘束された桂馬。  
室内には、生活の跡があるが、ごくごく簡素で、  
それが少女の部屋であることを証明するものはあまりない。  
 
高圧電流が桂馬の身体を駆け巡ったことを証明するかのように、  
身体のあちこちがきしみ、頭が痛む。  
「あつっ……」  
 
どこか出口がないか探すが、唯一の出口の玄関扉には、  
本来のこの部屋の鍵だけではなく、後からつけたものだろう、  
いくつものいくつもの鍵がつけられていた。  
外からも中からもでることができるのは、この部屋の主だけだろう。  
 
薄暗い部屋のなかで、桂馬の目の前に少女の姿が浮かび上がる。  
白いコットンのブラとパンツ以外は何も身につけていない姿で、少女は語りかける。  
 
「目が覚めたんだね、桂馬君……  
 
 寝顔がね、すごく綺麗だったの。  
 だから、私、何回もしちゃったの。  
 
 ね、ほら、」  
 
桂馬に覆いかぶさるように、かのんが身体を近づける。  
自らの右手でブラを引きずりおろして、ピンク色の乳首を晒す。  
硬くなったそれを、桂馬の口元に押し付ける。  
 
「ねぇ…、ほらぁ……乳首もこんなになっちゃったんだよぉ?  
 
 おぃしい?おいしぃよねぇ?」  
 
桂馬の答えを聞くこともなく、自分のセカイに没頭しているかのんは、  
自分の左手で懸命にパンツの中をまさぐっている。  
そこから発せられる、くちゅ、ぬちゅ、っという体液の匂いと音が、  
桂馬の意識を朦朧とさせる。  
「ん、んはぁあ。」  
たまらず息を漏らすかのん。  
 
「やめ、ろよ……」  
抗議の声を上げる桂馬に、かのんは、  
なぜそのような言葉を発するのか、理解し得ないまま、  
光の消えた瞳で桂馬を見下ろしながら、言う。  
 
「どうして、私を見てくれないのぉ?  
 ほらぁ、もっとみてょぉ……ねぇ……  
 けいまくん、もっとぉ。」  
 
「あっ」「っくは」、と、身体を震わせながら声を漏らし、  
愛液で自らと、組み敷いた桂馬をべとべとに濡らす。  
たまらず桂馬の敏感な部分がかのんに反応してしまう。  
 
「かわいいおちんちん……」  
とろけた目で、桂馬のそれを愛おしそうに眺める。  
ぱく。と、それを口に含む。  
「おぃひぃのお……ほしぃの……」  
「ん……、んあ、」  
我慢できずにか細いあえぎ声をあげる桂馬。  
しかし、かのんは桂馬の声にも耳を貸すことなく、  
彼のペニスを舌で、口の中でもてあそぶ。  
包皮の中に舌を入れ、くる、と、嘗め回す。  
「ぅぅう……」  
桂馬は、今まで感じたことのない刺激に敏感に反応してしまう。  
男性の身体の構造上仕方のないことだが、勃起した。  
 
「あ、おっきくなった♪  
 もっとたべるのぉ。かのん、けいまをたべるのぉ。  
 ん、ちゅぷ。くちゅぷ。」  
 
執拗に桂馬のペニスを刺激し続けるかのん。  
それも長くは続かなかった。  
 
「ん、……ああぁ!」  
桂馬の悲鳴と共に、精液がかのんの口腔内に吐き出される。  
ひくひくと、震える桂馬の身体。目に涙をにじませる桂馬。  
 
桂馬の精を飲みながら、さらに桂馬のペニスを責め立てるかのん。  
「あはぁ。うれしぃよぅ。  
 ねえ、精液の味ってしってる?知らないよね?  
 ほらぁ、けいまもあじわうのぉ」  
 
かのんは口の中に残して弄んでいる桂馬の精液を口移しに桂馬の口に含ませる。  
抵抗むなしく、桂馬の口の中に、自ら放出した精液がかえってくる。  
すこししょっぱくて、すこしにがい、ねとっとしたそれを口に迎えて、  
桂馬はたまらずはき捨ててしまう。  
 
「だめ、だめよぉ!それは、私のなの。  
 けいまくんの精子はわたしのなの!わたしのなのぉ!  
 そんなことしちゃだめぇえぇえ!」  
「じゃあ、どうすればいいんだよ!」  
切れた桂馬に、かのんはすかさず平手打ちをお見舞いする。  
 
「けいまくんはそんなこといわない。  
 
 けいまくんは、わたしとずっといっしょなの……  
 ずっといっしょにいて、ゆうきづけてくれるの……  
 けいまくんは、ずっと私だけを……私だけをみていればいいのぉ!」  
もはや桂馬には、返す言葉も、その力もなくなりつつあった。  
 
もう一度、口でされても、桂馬のそれは勃起しなかった。  
いくら神とはいえ、現実世界でまで神ではない。  
 
そこでかのんは、指にコンドームをはめると、  
桂馬のアナルに指を突っ込んだ。  
「ひぎ!」  
予想外のことに、桂馬は痛みと羞恥と得も言われる快感を同時に味わい、  
果てたはずのペニスが、また勃起した。  
 
「んふっ。ほぉら。まだ大丈夫だよねぇ?  
 こんどはこっちなのぉ。  
 なかにいれてなかにだすのぉ」  
 
かのんのそれは濡れそぼり、膣勃起していて、いつでも男根を迎え入れられる状態になっていた。  
桂馬の上に馬乗りになり、自らの指で、桂馬の男の子の部分を、自らの胎内に迎え入れる。  
 
「あ」  
 
一瞬、止まるかのん、それに気づいた桂馬。  
 
「もしかしてお前……」  
泣きながら、かのんが応える。  
「そう、でも、桂馬君なら、いいのぉ。  
 それにもう、痛くないよ?  
 とってもね、とってもあったかいのぉ。  
 
 だからもっと、もっと、して?」  
 
 
一瞬かのんが可愛いな、と思ってしまった。つい、快楽に沈んでしまった。  
その表情を見逃さなかった、かのんが桂馬に言う。  
「もう、私のものだから、けいまわたしのもの。わたしのもの。わたしのもの。」  
 
手遅れだった。  
 
かのんは、もはや昼夜を問わず、桂馬の意識があるときは桂馬を犯し、  
桂馬の意識がないときも桂馬を犯し続けた。  
桂馬の排泄の世話すらも、すべてかのんが甲斐甲斐しく行っていた。  
 
かのんは幸せだった。  
自分だけを見てくれる人が居る。  
自分だけを愛してくれる人が居る。  
誰も居ない、二人の世界で。  
 
だが、終わりは突然訪れた。  
桂馬を貪るかのんの前に、一人の少女が現れた。  
「にぃさま、やっと見つけました。契約がもう……  
 契約は対等だから……残念です。」  
 
突然の訪問者に、かのんが行為を中断する。  
「ちょっとあなた、なに?なんなの?けいまのいったいなんなのよおおお!」  
「私は、エリュシア・デ・ルート・イーマ。エルシィよ。神様のパートナーなの。  
 駆け魂といって、貴女に憑いた悪人の魂を狩るのが仕事。  
 
 神にー様、ごめんなさい、もう、間に合わないわ。」  
「すまない、エルシィ。最後にかのんを頼む。」  
「ええ。ハクアに来てもらったから。」  
 
戸惑うかのんに、桂馬は悲しくも優しい目で語りかける。  
「かのん……ボクは間違ってしまった。  
 ごめん……  
 僕だけが見ていたんじゃいけなかったんだ。  
 本当は、みんながキミを観てるから、どうか、応えて欲しい。  
 
 ごめん……」  
 
「桂馬君、なにを言っているの?」  
   
「にいさま、もう一緒に……」  
「ああ。エルシィ、ボクは……キミが」  
 
契約の首輪が、小ギロチンのように動ごき、桂馬とエルシィの首を飛ばす。  
ビシュ!という音と共に、噴出す赤い血。薄れゆく意識。  
 
あたり一面、鮮血で真っ赤になり、首のない死体が転がっている。  
返り血を浴びたかのん。  
 
悲鳴が木霊する。  
 

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