深夜、月明かりの差し込む暗い部屋の中で、桂馬は美生にその行為を行っていた。
「どう、美生。そろそろ欲しくなってきたんじゃない?」
そう言い、桂馬はオムそばパンを美生の面前に突き出す。
(!…お、おおきい…)
美生はあまりの大きさに顔を赤くしつつも、
香ばしい香りを放つ黄色い物体ののそれから目を逸らすことができなかった。
「ほら、美生の口、もうこんなになってる。」
言われて美生は、―さんざん焦らされていたのか―自分が今にも涎を垂らしそうなことに気がついた。
慌ててオムそばパンから顔を背ける。
「黙ってちゃわからない。欲しいの、欲しくないの?」
再度聞く桂馬。
美生はもう疼く体を抑えることができない。乱れる吐息。
「……しい……」
つぶやくような小さな声。
「ん?よく聞こえないな。もっと大きな声で言ってくれないと、美生。」
笑う桂馬。
「…欲しいって言ったの!」
羞恥に耐えかね美生は怒鳴る。が、
「そんな言い方じゃ駄目。まさかさっき教えた言い方、忘れたわけじゃないだろ?」
「なっ……!」
とっさに抗議の声をあげる美生。
しかし桂馬はじっと美生を見つめたまま、手を動かそうとしない。
美生はとうとう観念し、今にも泣きそうになりながら、紅潮させた頬をさらに真っ赤にして
その言葉を喉から搾り出す。
「ど、どうか…その、大きくて…丸くって…フワフワモフモフのオムそばパンを…
私、美生の………はしたない口に…食べさせてくださいッ……!」
桂馬は満足気に頷き、
「はい、よく言えました。じゃあご褒美、食べていいよ。」
許可を出す。
美生は途端にオムそばパンにかぶりつく。
夢中に味わうその姿は、お金持ちとしての凛々しさや力強さなど微塵も無く、
貪欲にオムそばパンを求めるだけの、オムそばパン欲に溺れた一人の少女であった……。