薄く、抵抗なくすべる皮膚。  
舌先に味は感じない。  
 
「神様っ!」  
 
振り向いたその動きに、背が複雑な曲線を描く。  
目を合わせないで、ボクは視界を目の前に戻す。  
メガネをかけているせいか、距離が近すぎて焦点があわない。  
目を閉じる。ぼんやりとした視界が消え、舌先だけに意識がいく。  
さらりと乾いた皮膚がボクの舌からかすかに水分を奪うのがわかる。  
ごくわずかな産毛をアクセントのように感じている。  
 
「あ……」  
 
くるりと回した舌に、反応を寄越した。  
ボクの少ない知識では、そこがいわゆる感じやすいところなのかはわからない。  
そのまま円を描くように舌先を腰からお尻がはじまる溝を舐め上げていく。  
 
「だ、だめです」  
 
左手がボクの頭に伸びる。けれど突き押せるほどの力はとてもこめられない。  
かまわずに前進する。  
同時に、内腿の隙間に伸ばした右手の爪で、軽く、付け根と思われる部分をくすぐった。  
ひくんと腰が動いて、頭に触れた手も引いていった。  
 
「あわっ! あ、お、おわり、おしまい、もうおしまいですっ!」  
 
パタパタとボクへ必死で手を伸ばす。  
一度軽く身体を離す。  
よじった身体は隠している場所もいやらしくねじまげ、軽く湿り気も生じているように思う。  
伸ばした手を握り、宣言してやる。  
 
「バカを言うな。まだはじまったばっかりだろ」  
 
手首を掴むと、人差し指を口に含む。  
顔をまた赤くするエルシィに、音を出すようにしながら、  
軽く指を噛んだりもしつつ、エルシィの反応を見る。  
 
「う〜、う〜」  
 
不満そうな、困ったような目でボクを見返す。  
そんなものでやめるつもりは微塵もない。  
 
エルシィは動かずに、自分の指を舐めるボクを、しばらくの間見つめる。  
手首を離し、指先を解放すると、あきらめたように両手は自重を支える役目に戻った。  
 
右手は腿に、左手は胸に伸びる。  
胸はさっきも思ったが、意外と大きい。  
あまり現実のものは記憶にないが、美生とかのんと比べると、かのん寄りではあるだろう。  
 
「……あっ」  
 
先端をそっと撫でると声が漏れる。こいつらしくない、かすれた声だ。  
ふゆふゆとした感触が気持ちいい。  
 
もう一方、股間に近づけた手は、その場所の遠くから、痛くないくらいに皮膚を引いてみる。  
ほんのすこし吊られるように、閉じられた場所がゆがみながら覗く。  
赤さがボクの視線を引き寄せる。花というたとえがとられるように、  
ボクも誘われる虫のように無意識に近づいた。  
かすかな芳香が、ボクの色々な部分をたぎらせ、急がせる。  
忙しなく、蜜を舌先ですくう。  
 
「ふぁあ……ん」  
 
エルシィがぴくぴくと震える。ボクはそんなことも聞こえないくらいに  
唇や舌で、エルシィとの距離をなくす。  
ちっとも頭はまわっていない。  
舌が、指が、唇が、参加した左手が、勝手に動いて、エルシィの反応のある場所をさぐり、  
そこに加えるべき強さを探し、舐めるべきか、噛むべきか、指でさするべきかを検討している。  
 
「か、かみさまぁ、そんなに、いじらないで……」  
 
子ども子どもしたエルシィから、そんな声を聞かされる。  
口を離し、手刀でくちくちと全体を愛撫する。ゆるやかに。  
 
「気持ちよく、ないか?」  
 
自分で気持ち悪くなるような口調で、どんな台詞を言ってるんだろう、ボクは。  
若干、我に返った。  
でも、それを発した理由はなんとなくわかる。その台詞がイエスであれノーの方向であれ、  
それが自分を興奮させるから、わざわざ言うんだな。なるほど。  
 
まぁ、さすがに、  
(どこが気持ちいいんだ。言わなきゃわからない)  
とか、  
(じゃあ、もうやめたほうがいいか)  
などという台詞はボクには吐けないが。  
 
「うー、うぁん、か、神様、そこ駄目で、す」  
「……ん、は。 どこがだ? いわないと、ボクには、わからないぞ」  
 
言葉のすぐあとに、ちゅ、ちゅと吸い出すように続ける。ぴくぴくと震えている。  
 
「く、クリ、トリス、吸っちゃ駄目……」  
「駄目。やめない」  
「きっ、きゃうう!」  
 
倍する強さで息を吸う。ごくかすかに歯先でそれをとらえる。  
だいぶ時間をかけたせいで、何も知らないエルシィに言葉を覚えさせることもできた。  
すでに、上半身は手の支えを失ってベッドに倒れこみ、下半身をボクが押さえながら、  
よりつきだされたその場所をいいようにいじくっている。  
 
そろそろボクのズボンのなかのものも限界だ。  
一度エルシィには、イクってやつをしてもらっておこう。  
 
「……神様、なんで私に、意地悪ばっかり」  
 
ラストスパートをかけるボクには返す余裕がない。  
舌先を尖らせてくちゅくちゅと出し入れをする。  
 
「……や、ダメ……へ、へんなのがきます……」  
 
今度はボクの下半身が、なんとかしろと反応する。  
ああ、くそ、エロい声だ。いつもそばにいたこいつは、こんな声も出すのか。  
 
「うあ……神様、神様、ダメ、神様、好きっ」  
 
そうか。よかったな。お前のエロい汁に塗れながらで口に出せないけど、ボクも好きだよ。  
 
「いっ、あうううううううっ!」  
 
ひときわ高い声をあげて、腱が心配になるほど爪先を立てる。両手と体ごとで、その動きを抑える。  
メガネのレンズにはエルシィが飛ばした液体。  
くたりと力が抜けて、重みが増す。  
その全てを、身体の芯ごと震わせながら、ボクは耐え切った。  
 
溜息をつきながら、見たくはなかったけれど、自分の股間を見る。  
エルシィの下半身を支えるために抱えた結果、最後に跳ねた爪先が不思議なほどにやわらかくボクを撫でた。  
 
たったそれだけで、自分の下着の中を気持ち悪いことにしてしまったことに、エルシィの体のぬくもりと共に、  
どうすればいいか困る腹立ちが逃がしきれずに腹にひどくたまる。  
エルシィのくせに。  
 
ぺろりともう一度、目の前のエルシィのおま○んこを舐めてやる。  
エルシィの頭は反応せず、身体だけがわずかに反応を返した。  
 
両脚を伸ばさせ、ベッドへエルシィをうつ伏せで寝かす。  
 
服を脱ぐ。下着の中のものに気づかれないように部屋の隅において、全裸になる。  
顔とメガネもふいて、ボクはエルシィの顔に近づく。  
 
放心した顔からは、涎が垂れている。指先で拭いてやり、綺麗になったその唇に唇を重ねた。  
早く気がついて欲しい。そうしないと、ボクはその唇に自分の物を差し込んでしまいそうだった。  
 
 

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