かってに最終話(288話)
1
八島神社へと続く石段は瓦礫によって塞がれていた。健児は仕方なく別の道を選んだ。
「はぁ、はぁっ――ぐっ・・・」
舗装されていない路。一歩踏み出すごとに、健児の口から苦しみが漏れる。ズボンの膝はもう真っ赤に染まっていた。
遠くから爆撃音が聞こえてくる。戦闘機の、空を切る音が耳について離れない。
みんな死んでしまった。そして自分とゆりえだけが生き残った。しかしそのゆりえも――
(健二君・・・もし、離れ離れになることがあったら、かならず、ここで、待ち合わせだよ)
「クソっ・・・いってぇ・・・でも、ゆりえに、早く――」
痛みを堪えながらも、健児は一歩一歩、確実に歩を進めていく。やがて悪路を登り切ると、神社の境内に行き着いた。
「なんだ・・・これは――」
健児は我が目を疑った。目の前には瓦礫の山。八島神社の面影はもうなかった。
「そうだ――ゆりえっ、ゆりえはっ」
健児は周囲に視線をめぐらせた。しかし人影はない。
「くそっ――」
地面に膝をつき、拳を叩きつけた。不思議と痛みはない。どこかに置き忘れてしまったのだろうか。
とそのときだった――微かに聞こえるなにかの音――戦闘機? ――いやちがう、もっと、有機的な――。
健児は咄嗟に空を見あげた。
「ゆ、ゆりえ――?」
制服姿のゆりえが空から舞い降りてきた。背中には輝く後光。音もなく地面に着地する。
「おい――! ゆりえっ!」
駆け寄る健児。ゆりえは健児を見据えると、冷たい声で言い放った。
「お前、だれだ」
2
ゆりえのその言葉に、健児は胸を一突きにされた思いだった。
「なんで、どうしてだよっ!」
健児はゆりえの肩を激しく揺さぶった。しかしゆりえはなんらの反応もみせず、ただその無機質の双眸を中空に遊ばせている。
「・・・・・・ゆりえ?」
健児はゆりえの顔を見た。幼い輪郭。白い肌。赤い唇。そのすべてが、あのときと何も変わらないように思える。
「ゆりえっ!」
健児はゆりえを抱きしめた。小さな肢体、細い腰――ただ彼女の身体は氷のように冷たかった。まるで死んでいるかのように。
「来た」
そのときゆりえが呟いた。
その冷たい視線の先は――連なる曇雲の中心。微かな音。空を切る音――戦闘機。近づいてくる。
健児のなかで何かが弾けた。爆撃の音、機関銃の音が耳元で痛いくらいに鳴り響く――幻聴――健児は咄嗟に駆け出していた。
「ゆりえ――早く逃げろっ」
兎く駆ける。しかしゆりえは――健児は振り返った――着いてきていない。一向に動こうとせず、直立したまま、一点を注視している。
するとゆりえの右手が、空へと向けられた――そしてその開かれた手の平に、青白い光が収束し始める。
健児の背中に悪寒が走った。脳裏でよみがえる、おぞましい記憶。
(この写真の風景、どこだと思う? 戦地? 違うよ。俺の故郷さ――ゆりえがヤった)
あれは――撃たせては、いけない! 健児はゆりえに向かって駆け出す。ゆりえの唇が動く。「か、み、ちゅぅぅ――」
「うわぁぁぁぁぁぁっ!」
健児はゆりえの胴体に体当たりをした。瞬間、ゆりえの手の平から放たれた無数の青白い光弾、空へと吸い込まれてゆき――はずれた。
「お前っ!」
ゆりえと折り重なるように、地面に倒れこんだ健児。その耳に、ゆりえの罵声が飛んできた。「ちっ!」
ゆりえは舌打ちをした。戦闘機の気配は増し、その狂気のような、しかし洗練されたフォルムを成す両翼が、曇天の隙間から姿をあらわしたのだ。
ゆりえは再び手の平を掲げる。しかし、その手を健児が抑えこんだ。
「なにを、するんだっ!」
ゆりえが暴れる。近づく死の気配。健児はゆりえにキスをした。
「んぶっ!? な、なにを――」
呆然とするゆりえ。健児は唇を離すと、いまにも近づく死の気配を睨みつけた。
「策なら、ナイわけじゃないんだ。だったら、こんなところで、死んでたまるかぁっ!」
健児はバックの中から一枚の紙と、一本の筆を取り出した。
筆。あまりにも妖しげな気配をまとっているそれは、一種異様なほど長く、そして太かった。「紙は――ラスト一枚っ! でも・・・・・・この、弘法の筆ならっ!」
健児は自分の手首に歯を立てた。皮膚が破け、滲み出す血。それを筆毛につけると、紙に筆を走らせる。
機銃の音。ゆりえと健児の周囲の地面が弾けた。舞う砂塵。轟音とともに真上を翔ける黒い戦闘機。急速に旋回し、照準を、再び二人に合わせる。
「できたっ!」
健児が叫んだ。紙をかかげる。白い紙の真ん中には、「わぁぷ」と、墨文字で一言。
するとゆりえと健児の体が光線に包まれ、やがて掻き消える。戦闘機は迷ったふうに何度も旋回を繰り返したあと、曇天のなかに溶け込んでいった。
3
「俺のこと、なにか思い出した?」
空襲によって大穴の空いたグラウンドを見下ろしながら、健児はゆりえに聞いた。
するとゆりえは知らない、と答えた。
「なんで、キスした」
指で唇に触れながら、今度はゆりえが聞いた。少女の短い黒髪は、
学校の屋上を吹きぬける風によって海草のように弛んでいた。
「好きだから。ゆりえが・・・」
ゆりえの瞳を真摯に見つめながら、健児は答えた。いやだった? と付け加える。
ゆりえは困ったふうに俯いた。そして指をくわえる。お決まりの癖。健児は思わず微笑んだ。
「わからない。でも、お前の事を見てると、不思議と、胸がざわつく」
「それはいやな感じ?」
ゆりえが胸に手をあてる。
「わからない」
「じゃあ、ゆりえはなんで、八島神社に来たの?」
「わからない――こなければいけないような、そんなきがした・・・あっ、いま、約束という単語が浮かんだ」
「約束・・・そう、約束だ」
もう一押しだ、と健児は思った。やはり、ゆりえは誰かによって記憶を操作されているのかもしれない。
なにか、刺激を与える事ができれば、あるいは――
「健二君・・・もし、離れ離れになることがあったら、かならず、ここで、待ち合わせだよ」
健児が言った。するとゆりえは怪訝そうな顔をする。
「なんだ、それは?」
「約束の正体さ」
言いながら、健児はゆりえに歩み寄った。刺激といえば、これしかない。
「もう一度、キスしていい?」
健児はゆりえの耳元で囁いた。しかし、
「・・・・・・あの戦闘機。無人機だった。私を、狙ってた」
唇を突き出している健児を無視して、ゆりえが唐突に話しはじめた。
「うん・・・」
残念そうな顔をしながら健児は頷いた。ゆりえが続ける。
「神様と人間の戦争は終局に向かいつつある。人間の勢力の大部分は失われ、神々の戦力もまた、
同等程度に失われている。そして私は神様で、お前は人間だ」
「…・・・ゆりえ、何が言いたい」
「つまりだな。こういった状況の場合――こうしなければいけない」
ゆりえの手刀が、健児の胸に伸びた。
4
健児は自身の胸に伸びるゆりえの指先を呆然と眺めていた。死を覚悟した。血のしぶきを想像した。しかし、
「やっぱり、やーめた」
ゆりえの指先が、寸でのところで静止した。ゆりえは悪戯な微笑を見せると、健児に唇を突き出した。
「やっぱり、キスしていいよ。ほら」
「・・・どういう、風の吹き回しだよ」
小さな唇を見つめながら、健児はたずねた。ゆりえは何も答えない。まもなくその瞳がすっと閉じられた。
「・・・・・・」
健児の動悸が加速する。ゆりえの本心がつかめない。だけれど、ここは、動くしかない。
健児はゆりえにキスをした。唇を触れ合わせるだけのキス。
唇を離すと、ゆりえは自分の胸に手をあてたり、唇を指でなぞったりしていた。何かを調べているふうだった。
「・・・やっぱり・・・・・・。なんだか・・・、お前と一緒にいると、胸が熱い――変になりそうだ。
うん、そうか・・・・・・ありがとう、今ので答えは出た。お前の存在は、どうやら私をおかしくさせるようだ」
ゆりえは健児に手の平を向ける。殺意のこもった無機質な眼差しが、健児を射抜く。「もう、殺していいでしょや?」
健児は反応しない。不自然な前傾姿勢のまま、黙っている。ややあってゆりえが口を開いた。
「覚悟はできているようだな・・・・・かぁ、みぃ、ちゅうっ――うっ!? んんんっ!?」
そのとき、突然、ゆりえの唇を健児の唇が強引に塞いだ。暴れるゆりえ。しかし、健児はゆりえの身体を抱きしめて離さない。
「やっべ、ゆりえ・・・俺、さっきのキスだけで・・・その、勃っちまって、もう、我慢できそうにない・・・」
申し訳なさそうに呟く健児。しかしその情けない言葉とは裏腹に、健児は膨らんだ股をゆりえに押し付ける。ゆりえは悲鳴を上げた。
「なにをするっ! 擦るなっ! 殺すぞっ! んっ、やめろっ!」
ゆりえの拳が健児の頬を叩く。しかし健児は動じない。情欲に燃えた目で、ゆりえの身体を舐めるように見ている。ゆりえは本能的に怯えた。
「ゆりえ・・・俺、ずっと、会える日を楽しみに・・・」
すると健児が光速で服を脱ぎだした。次々と放られる衣服。と、そのとき、ゆりえは健児の胸の傷に気づいた。
「どうしたの? 急におとなしくなっちゃって」
下着まで一気に脱ぎ払った、素っ裸の健児がたずねた。
「傷・・・」
ゆりえが健児の胸を指差す。そこには七つの小さな傷跡があった。
「・・・・・・気になる? なんなら教えようか。これはね、ゆりえの親友を庇ったときの傷だよ」 指で傷跡をなぞりながら、健児は簡単に言った。
「親友、私に、そんなものが・・・?」
ゆりえは真剣に驚いたようだった。その瞳からは、殺意は消えている。
「あたりまえさ。ゆりえだって、ちょっと前まで普通の女の子だったんだから、ほら、ゆりえも脱いで」
健児はゆりえの上着の裾に手を伸ばすと、強引に上に引っ張りあげた。すっぽりと脱げる制服。ゆりえはブラをしていなかった。
「うあっ!? ご、ごめんっ」
ゆりえの胸を直視してしまった健児。まさかノーブラだとは思わなかった。
健児は打撃に備え、身構える。しかし、ゆりえはそれを隠そうともしないで、無表情のまま何かを考え込んでいる。
「友達・・・・・・わたしの友達って、どんなだった・・・?」
ゆりえが控えめに訊ねた。すると健児はバックの中から一枚の写真を取り出し、ゆりえに手渡した。
「その真ん中の、ゆりえの右にいるのが、三枝 祀。左の眼鏡が、四条 光恵。そんで端っこのちっさいのが、祀の妹の、みこちゃん」
「・・・わたし、笑ってる・・・」
写真を熱心に見つめながら、ゆりえが唇を横に引き伸ばす。どうやら、笑おうとしているみたいだ。
「もう、みんな・・・?」
「うん。死んだ」
「そう・・・」
ゆりえは写真を返した。そしてその頬に、涙が一筋。ゆりえは頬を濡らす液体を、不思議そうに指でぬぐうと、
「あれ・・・なんでかなぁ・・・・なみだ」
ゆりえが顔を両手で覆う。指の隙間から、あふれる涙がこぼれ落ちていた。そしてその悲痛な姿を見つめながら、健児が淡々と語り始める。
「三枝さんは、一番初めに死んだ・・・。神社の下敷きになって。賽銭箱を守るんだって・・・。
みこちゃんは泣いたなぁ。みんなで慰めて・・・でも、そのみこちゃんも、次の日の空襲で、神社の火災に巻き込まれて死んだ。八島様って、叫びながら」
ゆりえが顔をあげる。瞳は赤く腫れていた。
「みつえ、ちゃんは・・・?」
「四条さんは・・・・・・ゆりえを連れ戻そうとして、神様に殺された。俺のこの傷も・・・そのときに、
・・・そうだ・・・・・・これ、四条さんから、ゆりえに」
健児はバックの中から、汚れた紙片を取り出し、ゆりえに渡した。ゆりえは涙に濡れた瞳で、紙片に目を通す。
紙片には細かい字でびっしりと文字が書かれていた。
「光恵、ちゃん・・・」
(久しぶり。ゆりえ、元気にしてる? 私は元気だよ。もちろんみんなも元気。ゆりえ、早く帰ってこないかなぁって、心配してるよ。特に祀なんか、
金蔓がいなくなったって、いらいらしてさ・・・・・・もう、こっちが迷惑なくらい。みこちゃんも、寂しがってる。
とつぜんこんなことになっちゃったけどさ。あたし達は、ずっと親友だよ。だから、もしも、わたしが・・・・・・ごめん、なんでもないね。
また、お昼ご飯一緒に食べようね。みんな、ゆりえのこと、ずっと、待ってるからさ。早く、帰ってきなよ)
紙片のところどころに、滲んで読みづらい箇所があった。ゆりえはその意味を知っていた。だから、よけいに、涙が溢れ出てくる。
「ひっく・・・おま・・・けんじ、くん」
ゆりえが健児の名前を呼んだ。健児は微笑みながら、返事をした。
「・・・・・・おかえり。約束の場所、ちょっとズレちゃったけど」
「ひっく、う、うわぁぁぁぁぁんっっ!」
ゆりえが健児の胸元に飛びついた。肩を震わせ、激しく涙を流す。健児はゆりえの肩に手を置くと、
小さい子にするように、優しくさすった。
「みん、なっ! みんなっ、わたしのせいだよっ、わたしがっ、神様、だ、から――」
「そんなことない」
「みんなのこと、全部っ、全部忘れちゃって、健児君のことだって――っ」
「そんなことない。だって、ゆりえ、ちゃんと八島神社に来たじゃないか。約束、おぼえてたじゃないか」
「――でも・・・・・・」
「ほら、涙拭いて・・・こうやって、会えたじゃゃないか。俺は、それいじょうを望まないよ」
「――でも、健児君・・・・・・ソレ」
ゆりえの視線が健児の股に向かった。視線の先には激しく勃起した健児の陰茎があった。
「あー・・・・・・・・・・・・これは、その・・・・・・やっぱ、ダメかな。ダメ、だよな?」
健児は頭をポリポリと掻いた。我ながら、不謹慎すぎる。泣いているゆりえの前で、こんなになってしまうなんて。
「あっ・・・・・・」
ゆりえはそこでようやく気づいたのか、胸を慌てて隠した。腕の隙間から、控えめな乳房とピンク色が覗いていた。
すると結果的に、健児のそれは益々いきり立ってしまった。
「ごごご、ごめん。俺、服着るわ・・・」
「待ってっ! ・・・・・・その、はじめてのことで、よく、わからないんだけど、健児君・・・・・・いいよ」
「ホント?」
嬉々と聞き返す健児。
頷きながら、ゆりえはスカートを脱いで、下着だけになった。
「ごめんね。わたし、痩せっぽちだから・・・こんなことぐらいしか・・・」
するとゆりえは健児の陰茎をつかんで、やわやわと指を動かし始めた。健児はゆりえに身をまかせる。
「ゆりえ・・・・・・痩せっぽちだなんて、俺はこれくらいのほうが、その、好きかも」
健児がゆりえの乳首を摘んだ。そして指の腹で、優しくこねくり回す。
「んっ・・・」
ゆりえは健児の陰茎をゆっくりとしごいた。健児の先端からは、はやくも透明色の粘液が漏れ始めていた。
「ゆりえ・・・柔らかい」
健児は手の平を使って、ゆりえの薄い胸をマッサージするように揉む。控えめな脂肪が、手の平に心地よい。
”これくらいのほうが好き”決して嘘ではなかった。
ゆりえが健児の股にかがみこんだ。
健児は驚いた。陰茎が、ぬるぬるとした、温かい舌の感触に震えた。ゆりえは健児の陰茎を舐めていた。
「ん・・・ちゅ、ちゅっ・・・健児君・・・」
しごきながら、竿にキスの雨。陰茎はあっという間にゆりえの唾液でいっぱいになった。
「ん、ゆりえ・・・・・・こんなの、どこで覚えたんだよ」
積極的なゆりえ。以前の内気な少女からは想像できないほどのそれに、健児はそんな事を口走った。
ゆりえは健児の鈴口を、赤い舌で丁寧に舐めながら、
「んちゅっ・・・弁財天様に、いろいろと、教えてもらって、んちゅちゅっ・・・・・・女の必須科目だからって・・・んっ、かぷ」
ゆりえは唇で竿を挟み込んだ。舌を激しく動かし、健児に快感を与えるために、健気に奉仕している。
「弁財天様・・・・・・? だ、誰だよ、それ」
「んちゅっ、綺麗なお姉さん、だよ・・・・・・ちゅぷっ」
ゆりえが小さな唇で、亀頭を咥えこんだ。鈴口を突く柔らかい舌の感触に、健児の背すじを快感が貫いた。
「安心して、んっ、んっ・・・健児君・・・・・・わはひ、まだ、処女だから・・・ん、ちゅゅうっ」
ゆりえが頬をすぼめ、健児の亀頭を吸い上げる。健児は思わずゆりえの頭を掴んだ。
「けんじきゅん、かわひぃ・・・んっ・・・んぶっ、んっ、んっ――」
健児の、快感に打ち震える表情を確認したゆりえは、唇を、激しくスライドさせる。
すると健児の背はその快感によって反り返り、腹の奥からは、込みあがる射精感が存在を増しつつあった。
「んあっ! ゆりえ・・・もう、やばいっ!」
迫り来る射精感。止まらない、ゆりえの口撃。健児はたまらなくなって、ゆりえの唇を引き剥がそうとした。しかし、
「んぶっ、んじゅっ・・・んっ、けんひくん・・・このまま、だひてっ!」
「でも――」
「だ、だいひょうぶだからっ・・・んぼっ、んちゅぅぅぅっ」
とどめとばかりに、ゆりは健児の亀頭を吸い上げる。健児の背すじを強烈な快感が襲った。
ゆりえは吸い上げながらも、亀頭の隅々まで、舌で刺激を与えている。
「ごめんっ――ゆりえっ!」
健児はゆりえの口内に射精した。
「んっ――! んっ、ちゅぅぅぅぅっ」
放たれた精子を、ゆりえが吸い上げる。苦しそうな表情。しかし、ゆりえはまもなく、健児のそのすべてを嚥下した。
「マズイ」
ゆりえの感想だった。そして口元をぬぐうと、改まって、恥ずかしそうに微笑んだ。
「はじめて、飲んじゃった」
素直に可愛いと、健児は思った。思ったから、さっそく行動することにした。健児はしきりにハズカシィ、と呟いているゆりえの股を、下着越しに触った。
「ひゃんっ」
声をあげるゆりえ。健児はゆりえの白いショーツの真ん中――薄っすらと確認できるスリットに沿って、人差し指を滑らせた。
「ゆりえ、すごい、濡れてる・・・・・・」
健児の指に湿った感触。
「もうっ! 健児君、言わないでよっ」
頬を膨らませて抗議するゆりえ。どうも、言葉責めによわいらしい。健児は心の中で悪戯っぽく笑うと、指を素早くショーツの中にもぐりこませた。
指に柔らかな肌の感触。肉ひだを、指で掻き分ける。
「ゆりえ、もう、びちょびちょだよ・・・中も、すごい。ほら、見て」
健児は手を引き抜き、ゆりえの目の前で、指を開いたり閉じたりした。にちゃり。粘液の音。ゆりえの顔が、ぼんっと赤くなった。
「脱がすよ・・・腰、浮かして」
健児がショーツに指をかける。ゆりえは素直に腰を浮かした。
「・・・すごい、かわいい」
ゆりえの剥き出しになった性器を見て、健児が一言。
「まだ、生えてないんだね」
健児は指で、ゆりえの丘をやわやわと撫でる。そしてその指がだんだんと核心へとくだってゆき、
「んっ・・・・・・健児君、そこ・・・」
淫豆に達したとき、ゆりえが甘い声を漏らした。健児はゆりえの淫豆を、包皮のうえから、つまんだり、指の腹で優しく押したりした。
「気持ちいんだ、ゆりえ。えっちな女の子だね・・・」
「んっ・・・・・・恥ずかしいよぅ」
健児はゆりえの淫豆が、しだいに固くなってきている事に気がついた。小さめの包皮の中から、可愛いピンクの頭が飛び出している。
健児はゆりえの愛液を指ですくい上げると、包皮とそのピンクに塗りたくった。
「――ひゃんっ!」
可愛い声をあげて、健児の肩にしがみつくゆりえ。柔らかな淫ひだの感触と、
肩に当たっているささやかな乳房との感触とが、健児の陰茎を、さらに膨張させた。
「ゆりえ・・・俺、もう・・・」
ゆりえは頬を染めながら頷いた。
「健児君・・・・・・下になって」
言われたとおり、仰向けになる健児。その腹の上に、ゆりえがお尻を落とした。
「丸見え」
健児が呟いた。ゆりえのスリットが丸見えなのである。ほころんだ淫裂。勃起した淫豆。
しかしゆりえは隠そうともせず、大陰唇に指を添えると、控えめに割り開いた。
「健児君・・・・・・ホラ」
ゆりえの大胆な行動によって露出したピンク色の粘膜。健児の思考を即座にとろけさせる。「ゆりえ、俺、もう・・・我慢できない」
「うん・・・よい、しょっと」
ゆりえが腰を浮かせる。そして直立している健児の陰茎に、自身の性器を重ねた。
「あれ・・・・・・うまく、入んないよ」
指で陰唇を割り広げながら、当惑するゆりえ。健児の亀頭に柔らかなゆりえの性器があたり、
油断すれば、それだけで果ててしまいそうになる。
ぽたぽたと、ゆりえの愛液が、健児の陰茎やら、腹やらに落ちている。するとようやく、やっと、ゆりえは健児の陰茎を捉えた。
「健児君・・・・・・どきどきしてる」
健児の胸に手を当て自身を支えながら、ゆりえはゆっくりと腰をおろしていく。健児の陰茎が、ゆりえの性器におさまっていった。
「ゆりえ・・・・・・入ってるとこ、丸見えだよ」
「んんんっ、はぁ――言わないでぇ・・・・・・もう、す、こし――んあっ」
健児のすべてがゆりえの中に入った。ゆりえは身を震わせながら、大きなため息を吐く。
そしてその表情は、すでに快感に染まっていた。
「痛く、ないの?」
健児はたずねた。ゆりえは痛くないと答えた。
「どうして、かなぁ・・・・・・神様だから、かな――んっ」
ゆりえが腰を動かし始める。健児はすでに射精感を感じ始めていた。さすがに我慢する。
「神様だからって――んあっ、いいかげんな・・・」
「んっ――わかんない。でも、気持ち、いいかも・・・・・・」
腰を使って健児の陰茎を弄ぶゆりえ。淫核が擦れ、愛液を健児の腹に落としていく。
ゆりえはしばらくのあいだ、その穏やかな快感を楽しんでいた。
「んっ、はぁ〜〜〜〜・・・・・・健児君・・・・・・だいすきぃ」
とろけた声を漏らしながら、ゆりえは一定のリズムで、腰を回している。健児はゆりえの乳房を弄っていた。
「けんじくん・・・・・・ちゅっ、ちゅ――」
ゆりえは健児に身体を密着させて、キスをした。大胆に舌を絡めて、唾液を交換する。
健児は二つのぽっちを胸で感じながら、ゆりえの求めに答えていた。
「んちゅっ、んっ・・・・・・んはっ・・・健児君も、うご、いて・・・」
ゆりえが健児にお願いをする。すると健児はゆりえの腰に手を添えると、ゆっくりと、ゆりえを突きはじめた。
「んっ、んあっ・・・・・・健児君、そこ、気持ちいぃ」
跳ねるゆりえ。ささやか乳房が、ぷるんぷるんと、控えめに上下している。結合部からは、ぬめった水音が聞こえていた。
健児は何度も突く。狭くて温かいゆりえの穴。引き抜くときの締め付けが、たまらなく気持ちいい。
「あんっ・・・んっ、っんっ、健、じくんっ、もっと、もっと――」
快感をむさぼるように、ゆりえが懇願する。その羞恥に染まった可愛い顔が、健児の情欲を掻きたてた。
「ゆりえ・・・・・・ちょっと――」
繋がったまま、健児は身を起こす。そしてゆりえの背中を支えながら、仰向けにさせて、そのまま正常位に移行させた。
「ゆりえ・・・・・・我慢できそうに、ないよ」
健児はゆりえのゆりえの太股をつかみ、大きく開かせた。
「うん・・・・・・健児君・・・・・・きて」
健児は陰茎をぎりぎりの所まで引き抜くと、勢いよくゆりえの奥に打ちつけた。
「んぁっ――健児君の、がっ、おく、まで――」
「ゆりえっ・・・・・・ゆりえっ!」
激しく腰を打ちつける健児。ゆりえは髪をふりしだき、快感に身悶える。
「んっ、んあっ――んっ、んっんっ、けんじ、くん――気持ちい、いよ、もっと――」
獣のように、貧欲に快楽をむさぼる健児。陰茎でゆりえの奥まで貫く。断続的なきつい締め付けが、射精を強烈に促す。
健児は腹の底に力を入れ、必死に我慢した。
「んっ――きもちいいよっ、健児君、すごい、もっと――」
ゆりえが可愛い嬌声をあげる。まるで蛙のように股を開いて、突かれるたびに、身を振るわせる。健児はさらに運動を速めた。
「んっ――んぁっ、はぁっっ――」
ゆりえは唾液を散らしながら、自身の淫核と乳房を弄る。いやらしい粘液が、結合部で音を鳴らしている。
「ゆりえっ・・・・・・俺、もうっ――」
突きながら、健児は近い限界を感じていた。熱いものが、陰茎の先端へとのぼってくる。
するとゆりえは健児の腰を両足で挟んだ。カニばさみ。
「けんじくん・・・出してっ! 中にっ」
ゆりえの甘い声。健児は最後の力を振り絞って、激しくゆりえの中を掻き混ぜる。
「ゆりえっ――!」
ゆりえの最奥を突きながら、健児が果てた。
「んっ、はぁ――はぁ・・・・・・あったかい・・・・・・」
胸を上下させながら、ゆりえは自身の腹を愛しむように撫でている。健児は陰茎を引き抜いた。
ゆりえの膣口から、おさまりきらなかった精液が溢れ出る。
「健児君・・・・・・好き」
ゆりえが微笑んだ。すると健児の陰茎が、ふたたび固さを取り戻していく。
「・・・・・・」
ゆりえは呆れているようだった。健児は手をあわせると、
「もう一回・・・・・・ダメかな?」
ゆりえは健児を受け入れた。
5
「健児君・・・・・・」
眠る健児のほっぺたを突付きながら、ゆりえが呟く。その表情は、どこか寂しげだった。
あれから二人は二回交わった。快楽をむさぼった。そして健児は疲れて眠った。
「笑ってる・・・・・・か」
ゆりえの手には先ほどの写真が握られていた。仲間たちとの、楽しげな写真。でも、もう――戻る事はできない。
「みつえちゃん・・・・・・祀ちゃん、みこちゃん・・・・・・ひっく」
写真に、ゆりえの涙が降り落ちた。どうしてこんな事になったんだろう。わからない。過ぎ去った日々を思い出すだけで、
胸が痛くなる。もう一度、もう一度あの頃に戻れたとしたら――どんなに幸せだろう。
「あの頃に・・・・・・」
ゆりえは涙を拭いた。そして立ち上がった。健児はまだ寝ている。胸に写真を抱いた。そして、
「かぁーーーーー」
目を閉じる。楽しかった事、辛かったことを思い出す――
「みぃーーーーーーー」
極彩色の奔流となって、ゆりえの小さな胸にあふれる思い出。ゆりえはそれらを解き放った。
「ちゅーーーーーーーーーーーーーー」
光が溢れる。世界が溶ける。ゆりえは願った。
「お願い――あの頃に―――」
6
外で鳥達がせわしなく鳴いている。窓枠から射す優しげな射光が、少女の頬をくすぶっていた。
「ゆりちゃ〜〜ん、そろそろ起きなさ〜い」
階下から、母の声。少女はむくりと起き上がると、まだ眠たげな目をしきりに擦らせていた。
「・・・・・・変な夢」
少女は呟く。頭の中に残滓を残す妙な映像。どちらかといえば悪夢に近しいそれを、少女はさっさと忘れようと努力した。
「はやく着替えなきゃ・・・・・・」
少女の鼻先を朝餉のにおいがかすんでいる。少女は壁にかけてあった制服を取ると、のろのろと袖に手を通し始めた。
「あれ・・・・・・なに? ・・・・・・なみだ?」
ふと、少女は自分が泣いている事に気がついた。
「なんでだろ・・・・・・とまらないっ」
涙はどんどん溢れ出してくる。少女は肩を振るわせながら、しかし、涙の原因を懸命に思い出そうとするが、
それらはまるで実体のない朝霧のように薄ぼんやりとしていて、少女の指先を悪戯にかすめていくばかりだった。
owari