@いままでのあらすじ@  
 ひょんなことから淫魔にとりつかれてしまったゆりえ様。友人の三枝 祀と協力して除霊を試みるも、  
なんと淫魔は祀の身体に乗り移ってしまう。  
 幕を開けるえっちな日常。  
 ある日、ゆりえ様と祀は、友人の 四条 光恵にワナを仕掛け、あっさり捕獲? に成功する。  
そしてその作戦には、実はもうひとつ、別の目的が隠されていたのだが――  
   
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「ゆりえ・・・・・・ホントにいいの?」  
 来福神社本堂に、四人の少女が並んで座っている。  
 一番端に座る四条 光恵が、隣の――やや緊張した面持ちのゆりえに向かって話しかけた。  
「うん・・・でも、わたし、お父さんと章ちゃんのしか、見たことないし・・・自信ないなぁ」  
 ゆりえはうつむきながら、ぼそぼそと呟く。  
「大丈夫、あたしにまっかせなさい。ほら、資料よ」  
 祀はこのときを待ってましたとばかりに、抱えていた雑誌をゆりえに手渡す。  
ゆりえは興味深そうに雑誌を受け取ると、目を丸くさせて驚いた。  
「資料? ・・・わっ!? これ・・・その、えっちな本?」  
「みたいね。って、祀、あんた、こんなものどっから持ってきたのよ・・・」  
 おずおずと雑誌を開くゆりえの隣で、光恵があきれたように呟いた。  
「企業秘密よ」  
 ふふん、と得意げの祀。  
「うわー・・・すごぉい。ねぇ、光恵ちゃん。わたし、おっきくなったの、はじめて見た・・・」  
 ゆりえはなにやら感嘆の声を挙げながら、ほらほら、と光恵に雑誌を見せる。  
 光恵は困ったふうに雑誌から目を逸らすと、  
「ハイハイ。わかったから・・・やるなら、さっさとやってよ」  
 祀に助けをもとめた。祀は立ち上がると、  
「ゆりえ、準備はいいかしら?」  
「うわぁ・・・すごーい・・・おっきい・・・はっ!? う、うん・・・たぶん」  
 頬を紅潮させながら、慌てて雑誌を閉じるゆりえ。  
「みこ、もうちょっと待っててね」  
 祀は微笑みながら、隣でじっと正座している、妹のみこに優しく話しかけた。  
「・・・うん」  
 おかっぱ頭を揺らしながら頷くみこ。  
その、巫女服を身にまとい、ちょこんと座っている姿は、我が妹ながら可愛いすぎる、と祀はいつも思う。  
だから、正直のところ、八島様にとられてしまうのは、実のところ口惜しかったりもする。  
 
「八島様は?」  
 そんな内心を隠しながら、祀はゆりえにたずねた。ゆりえとみこを除いては、  
誰も神様である八島様を見ることはできないのだ。触れるにいたっては、同じ神様であるゆりえが唯一なのある。  
「お願いします、って頭下げてる」   
 本堂の隅を見つめながら、ゆりえが言った。すると祀は、とたんに表情を引き締めると、  
「頼んだわよ、ゆりえ」  
 心の友の肩に、ぽんと手を置いた。  
「うん・・・・・・」  
 本堂の真ん中に進み出るゆりえ。その様子を、少し離れた場所から、三人の少女が見守っている。  
 ゆりえは目を瞑る。全身をぎゅっと強ばらせる。そして、大きな声で――   
「かぁ〜〜〜〜〜〜〜、み〜〜〜〜〜〜〜、ちゅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」  
 一瞬間、ペカッと光る室内。沈黙。沈黙。  
 ゆりえは恐る恐るうしろを振り向くと、  
「どう、光恵ちゃん?」  
 少女達の視線が、一挙に光恵の下半身に集中する。  
「いや、どうって聞かれても・・・ん? なんか、股間が、むずむずするんだけど・・・ひゃぁっ」   
そのとき、光恵の股の部分が、もっこりと膨らんだ。  
「やったわ、ゆりえ! 大成功よ!」  
 ゆりえに抱きつく祀。ゆりえは疲労を顔に浮かべつつも、みこに微笑みかける。  
「よかったね。みこちゃん」  
「ハイ・・・ゆりえ様・・・」  
 みこは頬を桃色に染めながら、丁寧に頭をさげた。  
「それじゃあ、八島様、あとはよろしく。さ、ゆりえ。わたしの部屋に行きましょう」  
 祀がゆりえの肩を抱き、そそくさと本堂から立ち去ろうとする。  
「え〜、今日はもう、疲れたよぉ。眠らせてよぉ」  
 ささやかな抵抗を見せるゆりえ。しかし祀はゆりえを強引に引っ張っていく。  
「ノンノン。ダメよ・・・」  
 二人の足音が遠ざかっていく。本堂には、二人の少女が残された。  
「じゃあ、一晩、だけだからね」  
 光恵が、みこに向かって言った。  
「ハイ・・・じゃあ、わたしの、お部屋に・・・お願い、します・・・」  
 
 
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 光恵は井戸の底に落ちていく感覚を味わっていた。はるか頭上には、小さな光が見える。  
光をぼんやりと眺めていると、  
「本当に、ご迷惑をおかけして、すみません・・・」  
 男の人の声だった。光恵は即座に、それが八島様の声だと認識した。  
「気にしないでください。あぁ、わたしは、しばらく眠っているので、ご心配なく」  
 光恵は降ってくる声に向かって返答した。  
「いえ、そんなつもりは・・・ありがとうございます」  
 光恵は目を瞑った。そして井戸の底、暗く、温かい泥の奥へと沈み込んでいった。  
 
   
          ・・・・・・  
 
 
 みこの自室である。四畳半程度の小さな部屋の真ん中には、清潔な布団。  
その布団の上で、みこと光恵は――いや、みこと八島様は向かい合っていた。  
「眠ってくれる、そうです」  
 ややあって、八島様が言った。  
「そうですか・・・。あの、気になりませんか?」  
 みこは指をもじもじさせながら、恥ずかしそうに呟いた。  
 みこと祀の部屋は、壁一枚をはさんだ隣り合わせである。  
いまにも薄壁の向こうから、祀とゆりえの甘い声が漏れ聞こえてくるのだった。  
「気になりません」  
 八島様はそう言うと、みこに笑いかけた。  
「それにしても、不思議ですね。わたしはずっと、貴方のことを、産まれた時から見守ってきました。  
これも、運命の巡り合わせでしょうか」  
「・・・・・・」  
 みこは俯いたまま、何も言わない。八島様が続ける。  
「わたしが家出したときのこと、おぼえてますか? そうですよね、ほんの少しまえの話ですものね・・・あのとき、わたしは本当に嬉しかった。  
本当ですよ? こんな田舎の神様に、自分勝手に家出してしまったわたしのために、泣いてくれたみこさんのことを・・・  
だから、好きですって、言われたとき、わたしは少しも驚きませんでしたよ。  
・・・・・・わたしは神様です。みこさんがいつか、年をとって、おばあちゃんになってしまっても、私は変わることなく、このままです。  
でもわたしは、そのときが来るまで、ずっと貴方の傍にいると誓います。もちろん、神様に・・・」  
 八島様は、恥ずかしそうに頭をぽりぽりと掻いている。  
「八島様だって、神様じゃないですか・・・」  
 みこが呟いた。耳まで真っ赤に染まっている。  
「そうでした。一方的に、話し込んでしまって、すみません。あの、それと――」  
 なにか話さなければと、八島様が続ける。しかし、  
「電気、消してください」  
 みこが、八島様をさえぎった。   
「・・・ハイ・・・」  
 八島様は気圧されたように立ち上がると、電灯の紐に指を引っ掛けた。  
 
 続く。  
 
 
 
 
 
 
  omake 
 
「ゆりえっ! 大型台風十四号が接近中よ! 被害が大きくなるまえに、対処してちょうだい。  
来福神社は協力を惜しまないわっ!!」  
   
「・・・ごめん。祀ちゃん、わたし、明日の小テストの勉強しないとダメなんだぁ」  
 
 直撃決定。  
 

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