1  
 
 開け放たれた教室の窓から、せみの声とともに、さわやかな風が運ばれてくる。少し黄ばんだカーテンが、まるで波のようにゆらゆらと揺れていた。  
 昼休み。喧騒にも似た賑わいのなか、四条 光恵は、黙々と弁当箱に箸を運んでいた。  
「・・・・・・」  
 タコさんウィンナーの胴体に箸で止めを刺しながら、光恵は、斜め向かいに座る三枝 祀をちらりと見た。祀は、人参スティックを口の端に咥えながら、頬杖をついて気持ちよさそうに眠っている。  
「・・・・・・はぁ」  
 しばしその様子を眺めていた光恵だが、ややあって、祀に向けていた視線を、そのままつーっと横にずらす。するとそこには、祀と同じく、眠りの世界にすでに両足を突っ込んでいそうな少女がちょこんと座っていた。光恵の友人、一橋 ゆりえである。職業・中学生兼神様。  
「ねぇ、ゆりえ。ゆりえってば・・・行儀悪いよ。ちゃんと、起きて食べなさいよ」  
 光恵は、いまにも弁当箱に顔面ダイブしそうなゆりえの肩を揺さぶる。するとゆりえはガクガクと頭をふるわせながら、まもなくまぶたを重そうに開いた。  
「あぁ・・・光恵ちゃん、ごめんね。ちょっと、眠かったから」  
 と言って、箸を握りなおすゆりえ。おにぎりを一口、二口・・・・・・  
「ふぅ・・・・・・」  
 まったく、と光恵は思った。そして、さて、祀はどうしようか、起こそうか、と思案する。「うーん。ま、いいや」  
 即答。とりあえず、ほっとこう。それにしても、なんなんだ、今日は。この二人、朝からずっとこんな感じ。いや、待てよ、思い返してみれば、ここ一週間ほど様子が――  
「ねぇ、ゆりえ?」  
 光恵はいつまでもおにぎりをもごもごさせているゆりえに尋ねてみた。  
「さいきんさぁ、なんか、体調とか、悪いの?」  
 おにぎりを飲みこみながら、ゆりえはふるふると首を横に振る。  
「べつに・・・だいじょうぶ。ちょっと、眠いだけだから。心配してくれて、ありがとう、光恵ちゃん」  
 元気元気、とばかりにガッツポーズをして見せるゆりえ。しかし、振り上げたコブシも、どこか力無い。  
「・・・ゆりえがそう言うのなら、私はかまわないけど・・・無理しないでよね――と、起きた?」 ゆりえの隣で、祀が、まだ眠そうな目をぱちくりとさせていた。  
「あれ・・・学校?」  
 祀は真顔でそんな事を言う。  
「ちょ、あんた、寝ぼけてんの? はぁ・・・・・・ほんと、信じられない。ねぇ、ゆりえもそう思わない」  
「・・・・・・うん」  
 眠そうな顔でコクリと頷くゆりえ。その隣で、大きなあくびをみせる祀。光恵は二人の友人を交互に眺めながら、小さくため息をついた。  
「うるおい、欲しいなぁ・・・・・・」  
 中学二年生の夏である。  
 
                2   
 
「ったく、日直当番なんて、ついてないなぁ」  
 放課後。オレンジ色の光線に包まれる教室。窓際の席で日直日誌と睨めっこをしながら、光恵はついつい独り言を漏らした。  
 自分のほかには誰もいない教室である。グラウンドから聞こえてくる部活動連中の掛け声が、やけに遠くに感じられた。  
「待っててくれたって、いいのにさ」  
 すると光恵は、右隣の席に向かってうらめしそうに呟いた。ゆりえの席である。  
(ごめんね、光恵ちゃん。今日は、用事があるから。さき、帰るね)  
(日直ぅ? んふふ。いいザマね。それではまたあしたぁ)  
 薄情な友人達の声が耳元でこだまする。  
「うぬぬぅ。まったく。明日、覚えてなさいよ・・・」  
 光恵はシャープペンシルを折れそうなほど握り締めると、眼鏡の奥の瞳に復讐? の炎を燃え上がらせた。  
   
 
               ・・・・・・  
 
   
「おぅ。気をつけて帰れよ、四条」  
「失礼しましたぁ・・・・・・ふぅ、やっと終わった・・・」  
 職員室の扉を閉めると、言い知れぬ開放感が体中を駆け巡った。その場で、伸びなんぞをひとつ。  
「ん〜〜・・・・・・さて、と。帰るかぁ」  
 午後四時半。寂幕とした校内。帰宅部連中の大半は、今頃、家でぬくぬくとテレビでも見ながら過ごしているに違いない時間である。  
「ん〜ふふ、んふふ〜」  
 鼻歌を歌いながら、静かな廊下の真ん中を歩く。なんか、気持ちが良い。校長先生って、いつもこんな感じなのだろうか。いや、まさかね。  
 下駄箱に到着。上履きを脱ぐ。そしてちょっとどきどきしながら、そーっと、自分の下駄箱のなかを覗いてみる。  
なかには、見慣れた靴がひとつだけ。  
「うるおい、欲しいなぁ・・・」  
 中学二年生の夏である。  
 
               ・・・・・・  
 
 駐輪場。波板屋根の簡易駐輪スペースには、数台の自転車。早々と自分の自転車を見つけると、光恵はいそいそと鞄のなかをかき回す。  
「鍵、かぎっと・・・あれ、おかしいな。鍵、鍵がないっ!」  
 鍵がない! 某蜂蜜クマさんのストラップがぶらさがった自転車の鍵。どこかで落っことしたのか、周囲の地面をきょろきょろと見渡す、が――ない、ナイ、無い!  
「おっかしいなぁ・・・教室かなぁ・・・ん?」  
 と、そのとき光恵の耳に、誰かの囁くような声が滑りこんできた。部活動連中の声と、せみの声に雑じってかすかに聞こえてくるその声。光恵は本能的に耳を澄ませる。  
「(・・・ちゃ・・・だ、め・・・よ)」  
 聞き覚えのある声だった。いったい、どこから聞こえてくるのかと視線をめぐらせていると、ふと、光恵の視界の隅に、体育倉庫の青い屋根がうつった。音源発見。  
「あそこから・・・? たしか、もう使ってない、古いほうの倉庫よね・・・」  
 鍵のことはもう頭から消えつつあった。  
 自然と、足が体育倉庫へと進む。近づくにつれて、聞こえてくる声も、だんだんとはっきりとしてきた。  
「(やっ・・・ほんとに・・・こん・・・ところで?)」  
 女の子のか細い声――  
「ゆり、え?」  
 どこかで聞いた声だとは思ってたけれど、まさか、ゆりえの声だったなんて。しかも、その声にかさなって聞こえてくるのは――  
「(だー・・・め・・・ほんと・・・ほら・・・)」  
「・・・・・・祀の声だ」  
 あんなところで、二人していったい何を? そもそも、ゆりえは用事があるんじゃなかったのか。・・・そっか、もしかして、神様の特訓?   
「邪魔しちゃ、いけないよね」  
 と言いつつも、好奇心に負けて体育倉庫の扉の前に到着。入り口の重そうな二枚の鉄扉は、しかし、ぴったりと閉ざされている。  
覗こうにも覗けない。どこか他に、隙間でもあれば――  
「――そうだ。確か・・・裏のほうに・・・」  
 通気用の小さな窓があったはず。あの二人には悪いけど、盗み見しちゃおう。わたしに嘘をついた罰だ。足音を立てないように、光恵は体育倉庫の裏手に向かう。  
「お、あったあった」  
 白い壁の真ん中――地面から二メートルほどのところに、長方形の小さな窓が設けてある。そしてそのすぐ真下、ご丁寧にも、ブロックが二塊分積まれていた。  
「どうぞ、ってわけね」  
 さっそく、光恵はブロックに足をかける。見つからないように、そーっと、慎重に窓の中を覗きこんだ。  
「・・・お、いたいた」  
 暗がりの中。なにやら雑然とした用具に混じって、二つの影がうごめいている。闇にまだ目が慣れていないせいか、何をしているかまでは判別できない。  
「(はずかしぃよぉ)」  
「(大丈夫よ。こんなところ、誰も近づきやしないわ)」  
 二人の話し声だけが、やけに鮮明に聞こえてくる。  
「なんの話かな・・・? と、そろそろ目が慣れてきたわね」  
 光恵は眼鏡の奥の目を細めた。  
 壊れたハードルやら跳び箱の並んでいる手前、器械体操なんかで使われている白いマットの上に、ゆりえと祀は靴を脱いで立っている。  
手の動きから推測するに、祀が、ゆりえになにかをせっついているようだ。  
 ややあって、根負けしたのか、ゆりえがしぶしぶ頷いた。  
 嬉しそうに手をあわせる祀。  
 しょうがないなぁ、とばかりに首を振るゆりえ――すると祀は、何を思ったのか、スカートの裾を両手でつかむと、ゆりえの目の前で、ゆっくりと、上にたくし上げた――  
「――うぇ!?」  
 まったく予想だにしなかった光景を見た光恵は、窓から飛び離れ、壁にぺたりと背中をつけると、緊張に身を固くさせた。落ち着け、落ち着け、深呼吸。深呼吸。  
「ちょっとまってよ、ちょっと、まってよ・・・なによあれ――――」  
 ぐるぐると回る光恵の頭の中で、いま見た場面が再生される。スカートをたくし上げる祀。細い足首。白いソックス、白い太股。  
形の良い臀部へと、すらりと伸びるそれらの終着点――ごくり、光恵は思わず、唾を飲み込んだ。  
「――祀、下着、つけてなかったじゃない・・・」  
 
「(ねぇ・・・祀ちゃん、いま、なにか聞こえなかった)」  
「――っ!?」  
 びくり、と背すじを震わせる光恵。慌てて口を塞ぐ。もしかして、ばれた?   
 ややあって、祀の声。  
「(心配しすぎよ・・・ゆりえは・・・大丈夫だって、ほら、はやく・・・)」  
 光恵の動悸が高まる。はやく? はやくって、ゆりえに、早く”何を”させようって言うの。気になる。すごく気になる。  
でも、見てはいけない禁断に足を踏み入れようとしている自分を、抑制している自分もいる。  
「(うん。祀ちゃん・・・)」  
 ゆりえの声。ごそごそと布の擦れる音。光恵は意を決して、窓の向こう――禁断の地に踏み入る決心をした。    
 
3  
 
 薄暗がりの中。体育倉庫のすえた臭いに混じって、二人の少女の甘い匂いがただよっている。「ねぇ・・・祀ちゃん、いま、なにか聞こえなかった」  
 辺りをきょろきょろと見回しながら、ゆりえが言った。  
「そう?」  
 言われて、祀はスカートをたくし上げたまま、つられて視線をめぐらせる。周囲には、壊れて使われなくなった運動用具がいっぱい。  
いつなんどき、なにが崩れ落ちても不思議ではない、が。  
 祀はゆりえに向かってにこりと笑いかけると、  
「心配しすぎよ・・・ゆりえは・・・大丈夫だって、ほら、はやく・・・」  
 スカートをさらに上へと持ち上げる祀。するとゆりえは祀の前で膝をつき、目の前の、淡い海草をたたえた祀の性器をまじまじと見ながら、やや緊張した面持ちで呟く。  
「うん。祀ちゃん・・・」  
 祀が足を肩幅に広げる。ゆりえは祀の白い太股を手で掴むと、祀のあそこに鼻をすり寄せた。くんくんと、匂いを嗅ぐ。   
「祀ちゃん。柔らかい・・・それに、すごく、女の子の匂いがするよ・・・」  
「・・・そう? だって、今日はずっと穿いてなかったから・・・そんなに、すごい匂い?」  
 祀は頬を桃色に染めながら、スカートの中にもぐり込んでいるゆりえにたずねる。するとゆりえは、その答えとばかりに、唇から舌を覗かせると祀のスリットを舐め始めた。  
「ちゅっ、ちゅっ・・・わたしは大好きだよ、祀ちゃんの匂い、ちょっと、おしっこの匂いがするけど・・・」  
「うっ!?」  
 祀の眉がピクリとふるえる。そして、  
「――あいたっ!」  
 祀は顔を真っ赤にさせながら、スカートのなかのゆりえに膝を食らわせた。  
「もう、ゆりえ。あんたなんてこと言うのよっ!」  
「だって、ほんとのことだもん」  
 ゆりえは祀のスカートからもそもそと顔を覗かせると、上目遣いでにやり。  
「・・・ふん、バカ」  
 とそっぽ向く祀をよそに、ふたたびスカートのなかにもぐり込むゆりえ。ゆりえは貝のように閉じられた祀の性器に指を添えると、ゆっくりと、左右に割り開いた。  
祀の鮮やかな色をした粘膜が、ゆりえの視線に晒される。  
「祀ちゃん。お豆、たってるよ・・・?」  
 ふぅ、とゆりえの鼻息が、祀の敏感な部分をかすめる。  
 祀はぴくり、と背すじを震わせながら、  
「ゆりえ、あんた、なんか性格変わってきてない? 案外、えっちの神様だったりね・・・」  
 えっちの神様。その単語にゆりえは、目の前の性器に伸ばしかけていた舌をぴたりと静止させた。そしてなぜだか、祀のアソコに向かって言い返す。  
「もう、祀ちゃん! えっちの神様だなんて、恥ずかしくて、わたし、外を歩けないよぉ」  
「ふふん。お返しだよーだ」  
 どこを向いてしゃべってんだか、と祀は心の中で思いつつ、スカートのなかのゆりえに向かって勝ち誇った笑みを浮かべてみる。どうせ見えないけど。  
 
「・・・うぅ」  
 頬を膨らませながら、悔しげに唸るゆりえ。と、なにかを思いついたのか、あやしい含み笑いを浮かべる。  
人差し指を口に含み、そしてそれに唾液をたっぷりつけると、  
「ぶーー、えいっ」  
 小動物特有のすばやい動作で、指を祀のアソコに挿入した。  
「ちょ、ちょっと、ゆりえ。まだ、準備が――ひゃん」  
 言葉とは裏腹に、ゆりえの指を難なく受け入れる祀。引き抜かれるゆりえの指には、あきらかに、唾液とは違ったぬめりが付着していた。  
「あれ、祀ちゃん。ゆび、ぬるって、すぐに入っちゃったよ。なんでかな?」  
 これ見よがしに、畳み掛けるゆりえ。祀が濡らしていた事を、ちゃんと知っていたのだ。  
「ちょっと、ゆりえ。もっと、ゆっくり・・・」  
 恥ずかしそうにうつむきながら、哀願する祀。聞こえない振りをするゆりえ。職業神様。  
「ねぇ、なんで? 教えてくれたら、ゆっくりしてあげる。ねぇ、祀ちゃん、なんで、こんなに濡れてるの?」  
 たずねながら、ゆりえはゆっくりと指を引き抜く。そして、指に付着しているたっぷりの愛液を、祀に聞こえるように、  
わざと、ぴちゃぴちゃと音を立てて舐めはじめた。  
「ゆりえ、や、やめなさいっ」  
「ん、ぴちゃ、ちゅっ・・・おひえてくふぇたら、やめてあげる・・・ちゅぱっ・・・甘い・・・ねぇ、まひゅりひゃん、はやくぅ」   
「うぅ・・・えろ神め・・・」  
 祀はスカートのなかのゆりえを睨みつけた。というより、いつのまに、立場が逆転したんだろう。悔しい。これは、悔しすぎる。  
「はやくぅ。祀ちゃん。ちゅぷ、ん・・・指、ふやけちゃうよぉ・・・」  
「ぐぬぬ・・・」  
 唇をかみ締める祀。その顔には悔しさがありありと浮かんでいたが、ふと、何かをひらめいたかのように、あやしく笑うと、  
「あっ!? 健ちゃんだっ!」  
 声高々にほらを吹いた。するとぴたり、いやらしい音が停止して――次の瞬間、祀のスカートの中からゆりえが飛び出した。  
「ち、ちちち違うのっ、二宮君・・・こ、こ、こ、これは、何かの間違いで――」  
 祀に背を向け、壊れた跳び箱に向かって必死に弁解するゆりえ。その小さな背中に、祀の腕が音もなく伸びる。  
祀はゆりえの身体に密着すると、耳元で囁いた。  
「う、そ、よ」  
「え、あれ・・・? 二宮君は?」  
 ゆりえは、背中に祀の乳房の柔らかさを感じながら、きょろきょろと周囲を見回す。すると祀は、ゆりえの首筋に軽くキスをしながら、もう一度、  
「嘘」  
 と呟いた。  
 
「えー、ひどいよぅ。祀ちゃん。わたし、ほんとに二宮君がいると思ったんだから。もう、びっくりさせないでよっ」  
 ぷぅ、と頬を膨らませるゆりえ。祀はごめんごめん、と口だけで謝りながら、片手を、するするとゆりえの胸元に伸ばしていく。反省の二文字は存在しないのだ。  
「どれどれ、少しは成長したかな?」  
「ひゃん。祀ちゃん、ぜんぜん、反省してない、でしょ・・・ひゃん」  
 祀はゆりえの言葉をほどよく無視しながら、ふむふむ、となにやら頷きつつ、制服越しに、ゆりえの小さな胸の感触を楽しんでいる。  
「だーめね。ぜんぜんおっきくなってないわ。みこよりは、まだマシだけど。もっと牛乳をのみなさい。牛乳を」  
「う・・・もう、祀ちゃん、わたしだって――」  
 なにか言い返さなきゃと、ゆりえが肩越しに祀を振り返る。すると振り返えったゆりえの目の前に、祀の端正な顔。目と目が合う。微笑んでいる祀。硬直するゆりえ。  
「わたしだって・・・・・・なに?」  
 続きを促すように、祀が優しく問いかけた。  
「・・・・・・」  
 ゆりえは祀の唇を見ていた。薔薇色の、形の良い唇。ふるふると、小刻みに震えている。ゆりえは祀に身体をすり寄せると、恥ずかしそうに俯きながら、  
「祀ちゃん、キス・・・してもいい?」  
 と、上目遣い。祀は何も答えないで、ただコクリと頷いた。  
「祀ちゃん・・・」  
 ゆりえは祀に向き直ると、その肩に腕をまわしながら、小さな唇を突き出した。  
 祀は自分の唇をぺろりと舌で舐め濡らすと、ゆりえの唇に、そっと、近づいていく。  
「ゆりえ・・・ん、ちゅ、ちゅっ」  
 祀の唇が、啄ばむように、ゆりえの上唇をはむ。ゆりえは目を瞑りながら、祀の優しいキスに身を委ねている。  
「ちゅぅ、ちゅ・・・はぁ、ゆりえ・・・」  
「ン・・・祀ちゃん。柔らかい」  
 二人の身体が、とすん、とマットの上に落ちる。ゆりえは祀に押し倒される形になりながらも、その柔らかい唇の感触を楽しんでいた。  
「ゆりえ・・・もう・・・」  
 祀の唇が、ゆりえの唇から離れる。ゆりえは何かを覚悟したように頷くと、制服の、タイの結び目に指をかけた。  
 しゅるしゅると、布の擦れる音。二人の少女の醸し出す甘い匂いに混じって、淫靡に響き渡る。  
「ねぇ、何してるの、祀ちゃんも、早く脱いでよぉ。わたしだけ、恥ずかしいよ・・・」  
「え? あ、そ、そうね。忘れてたわ」  
 ゆりえの脱衣を眺めていた祀だが、言われて、はっと我に返ると、そそくさと上着を脱ぎはじめる。ゆりえはぷぅと頬を膨らませながら、  
祀の、形の良い乳房をうらめしそうに眺めていた。  
 二人分の制服が、マットの隅に重ねられた。ゆりえはしばしその衣服の塊を眺めていたが、ふと、何かを思いついたように、祀にたずねてみた。  
「なんで、靴下だけ?」  
「企業秘密よ」  
 
                  4  
 
「やだ・・・二人とも・・・すごい・・・」  
 二人の少女の狂態を瞳に映しながら、光恵は、ひとり頬を染めていた。白いマットの上――靴下だけを除いて裸になったゆりえと祀は、折り重なるようにして、互いの身体にキスをしはじめている。  
 ゆりえの乳首を口に含む祀。祀の首筋に、舌を這わせるゆりえ。  
 禁断。まさにその通りだった。覗き窓から中の様子をうかがいながら、光恵は、何度、ここから立ち去ろうと考えたか。でも、どうしてもできなかった。瞳は固定されたように、  
嬌声をあげる二人の友人に向けられ、足は、地に溶接でもされているかのように、その場に踏みとどまった。  
「(ゆりえ・・・こっちきて・・・ほら、見える? ここ、舐めて・・・)」  
 祀が跳び箱の上に腰を下ろし、片足を持ち上げる。  
「(うん。祀ちゃん・・・)」  
 ゆりえがすり寄り、祀のアソコにキスの雨を降らせる。  
「ゆりえ、が・・・あんなに、えっちなことを・・・」  
 まるで夢でも見ているような感覚だった。普段の――無邪気に笑うゆりえ、教えてあげなければ、エッチな事なんか何ひとつわからないような顔をしてるゆりえ――が、頭の中を次々と通り過ぎてゆき、  
それが、自分の勝手な幻想だった事を思い知る。  
「そうか・・・ゆりえも・・・女の子、なんだ・・・」  
 光恵の中の、見えない防壁が音を立てて崩れ落ちてゆく。すると光恵は、無意識なのか、意識してなのか、自身の胸元にすっと指を伸ばした。そして、恐る恐る、その豊満な乳房を、制服の上から撫でるように――  
「やだ・・・わたし――いったい、なにを・・・」  
 はっと、我に返る光恵。しかし、自身の胸に絡みついた五指は、まるで独立した生物のように、光恵の意志とは関係なく蠢いている。  
「やん――どうしよう・・・指、止まらない――」  
 光恵の声が桃色を帯び始める。指に圧されてかたちを変える乳房は、しかし、衣服の中で、熱く火照っていた。  
 
「(ゆりえ・・・お尻、こっちに・・・)」  
 いつのまにか、ふたたびマットに移動した二人の少女。祀が、ゆりえに優しく囁いた。  
「(うん・・・祀ちゃん、これで、いい?)」  
 ゆりえはその場で四つん這いになると、祀に向かって、小さなお尻を差し出した。  
「(かわいいわ。丸見えよ・・・ゆりえ・・・)」  
 祀はゆりえの尻たぶを指で広げると、その肉の谷間の中に顔をうずめた。  
 
                    …・・・  
 
「祀・・・ゆりえのアソコに、顔・・・くっつけ、あん・・・ながら、自分でも・・・」  
 祀はゆりえのアソコを舐めながらも、自分の股を熱心に弄っている。光恵はそのとろけるような光景を眺めながら、自身の下着に、片手を伸ばす。  
「やだ・・・あたし・・・ゆりえのえっちなの見て、濡れてる」  
 光恵は下着越しに、自身の性器をやわやわと弄る。指には、湿り気を帯びた布地の確かな感触があった。  
                       
                    ・・・・・・  
 
「(ゆりえ・・・いい?)」  
 祀は、自分の愛液で濡らした人差し指をゆりえの膣穴にあてがった。ゆりえは返事をする代わりに、どうぞとばかりに、白くて可愛いお尻を突き出す。  
「(ひゃん。祀ちゃん、の、指が・・・入ってくる・・・)」  
 ゆりえのピンク色の中心。祀の人差し指が、難なく埋まっていく。ゆりえは大きく息を吸い込みながら、快感に身を打ち震わせていた。  
                      
                    ・・・・・・  
 
「私も・・・ちょっと、だけ・・・指を・・・」  
 光恵の目の前で、ゆりえの小さな膣穴から、祀の人差し指が出入りしている。それに触発されるように、光恵は、自身の膣穴に、人差し指を添えた。  
「ここ、かな・・・」  
 光恵には、少なからず自慰の経験があった。けれども、まだ指を入れたことがなかった。それでも、周囲より――ゆりえや祀よりも、ずっと大人の行為をしているのだと信じていた。  
  いま、二人の行為を目の当たりにして、光恵のささやかな優越は打ち砕かれた。じゅぷ、じゅぷ、といやらしい音を立てているゆりえのあそこ。尻にキスをしながら、人差し指の運動を繰り返す祀。  
「私、だって・・・」  
 光恵は覚悟したように、人差し指を、自身の膣穴に、そっと埋め込んでいく。  
「あっ・・・はぁ・・・」  
 ゆっくり、膣に埋まっていく光恵の細い指。その小さく開かれた穴からは、手首を伝って、ぽた、ぽたと、地面に愛液の滴が落ちはじめていた。  
「あ、ふぅ・・・指・・・はいっちゃった」  
 ぞくぞく、と背すじを振るわせる光恵。ふと、これからどうしよう、と思案する。  
「そうだ――まず・・・」  
 人差し指を折り曲げて、こちょこちょと壁を擦ってみる。壁を擦りながら、一番気持ちの良いポイントを探っていく。  
「ん・・・あん・・・はぁん・・・はぁっ、んっ。ちょっと、気持ち、いいかも・・・」  
 光恵は自分の中の温かさを指で感じながら、身悶える。膝小僧ががくがくと震え、壁にもたれかからなければ、立っていられない。  
「気持ち、いい・・・ん・・・あっ、あっ」  
 光恵は恐る恐る、人差し指を出し入れする。たっぷりの愛液が、指の挙動にあわせて、いやらしい音を奏ではじめる。  
「ん・・・す、すごい音・・・あんっ、でも、もっと・・・」  
 光恵は乳房を揉んでいたもう一方の手を、性器へと運んだ。指の腹でたっぷりの愛液をすくい上げると、皮をかぶったクリトリスをおもむろにこね回し始める。断続的な、鋭い感覚が、光恵の背すじを震わせた。  
 
「(かぷ。ん、ひゅ、ひゅりえ・・・ん、はぁ・・・あっ、あっ、き、気持ち、いい? んっ、はぁ・・・)」  
 ゆりえの小さなお尻をかぷりと咥ながら祀。出し入れする指の動きを速くする。ゆりえの尻はもう、祀の唾液によってそこかしこがぬらぬらと濡れ光っていた。  
「(ま、祀ちゃん。か、かま、ないで・・・んっ、あっ。でも、きも、ちいい。なんだか、お、おなかの奥が、ぽわって・・・)」  
 ゆりえはお尻を突き出した姿勢のまま、自身の乳首を弄っている。ぴんと隆起した少女の桃色は、いまにも飛び出しそうなほどの高まりをみせていた。  
「(んっ・・・はっ、あん・・・ゆりえ、かわいいわ・・・また、おしっこ漏らさない、ようにね・・・あっ、ん・・・ほら、イキなさい。すごい音、ちっちゃな穴・・・指が、ぎゅ、ぎゅって・・・)」  
 祀は、ゆりえの背中に舌を這わせながら、出し入れの速度をさらに速めていく。  
「(あっ、あっ、あっ・・・ま、祀ちゃん・・・おしっこ、な、んて、もう、漏らさ・・・あっ、祀、ちゃん、だめ・・・もう・・・我慢・・・で、き・・・あんっ)」  
 ゆりえの尻が、がくがくと震え始める。その小さな膣穴は、少女の匂いある愛液を大量に飛び散らせていた。  
 
「やばい・・・くせに、なりそう・・・」  
 光恵は充血したクリトリスをリズムよくこねながら、深い快感を味わっていた。大きな声をださないように、唇をかみ締めながら、指を引き抜き、そして差し入れる。  
「ん・・・なんか・・・ただの、オナニー、じゃ、ないみたい・・・すごく・・・あっ、あっ、ん」   
 クリトリスを、指で何度も何度もはじく。膣穴から指を引き抜くとき、指の腹で、自身の壁を擦る。何度も、何度も――  
「ん・・・だめ・・やだ、もう、立って、ダメ・・・限界・・・んっ―――はぁ・・・はぁ・・・」  
 光恵は深く息を吸い込み、そして絶頂を迎えた。  
 
               6  
 
 ゆりえと祀の饗宴はまだ続いていた。  
 覗き窓から二人の友人の痴態を見ながら、まるで、現実じゃないみたい、と光恵は思う。  
しかし、穿いたままのぐっしょり下着と、ゆりえと祀の生々しい嬌声とが、光恵を現実世界に引き止める。  
 やがて、二人の少女の淫靡な時間は終わりを迎えようとしていた。  
「(ん・・・ゆりえ・・・もう、すぐなのね・・・わたしも・・・もう、だめ、かも・・・一緒に、いつもみたいに・・・んっ、一緒に・・・あっ、あっ・・・んはぁっ、イク・・・イキ、そう。イクぅっっ)」  
「(っ祀、ちゃん! ・・・ん、あっん・・・ハァ・・・ハァ・・・)」  
 絶頂を迎える二人の少女。祀はゆりえの膣穴から人差し指を引き抜くと、そのまま、力尽きたように、ゆりえのお尻にもたれかかった。  
ゆりえもゆりえで、同じように、うつ伏せになりながら、荒い息を吐いている。  
「(はぁ、はぁ・・・ん、ま、祀ちゃん・・・、お尻、重いよぉ)」  
 やめてよー、と抗議するゆりえ。しかし、祀はお構いなしに、ゆりえのお尻にほっぺたをすりすりさせる。   
「(はぁ・・・ぷにぷにだわ・・・やっぱり、えっちのあとは、ゆりえの尻枕ね。グッドよぅ・・・)」 ぞくぞくっと震えながら、グットよぅ、グットよぅ、と呟く祀。  
するとゆりえはあきらめたように、小さくため息を吐きながら、  
「(それにしても、今日は、びっくりしちゃった。わたし、こんなところで、えっちな事するなんて思わなかった)」  
 ほっぺたを桃色に染めながら、ゆりえが恥ずかしそうに呟く。しかし、まんざらでもなさそうだ。  
「(そお? たまにはいいじゃない。気分転換よ、さ、着替えて帰りましょうか。そして我が家で第二ラウンドへ突入よ、心の友!)」  
 いざ行かん、とばかりに跳ね起きる祀。  
「(えええええええっ!? まだするのぉ〜。私、もう、疲れたよぉ。かえって、お母さんのご飯食べて、ぐっすり眠りたい)」  
 ぺたんと、おやすみポーズをとるゆりえ。その隣でさっさと着替えを始めている祀。  
「(だめよ、ゆりえ。そんなことでは、ぜんぜんダメよ・・・だから、ね? 今日も、泊まっていきなさいよ。そうだ、なんなら、みこも加えて、四人でどう?)」   
「(四人? 私と、みこちゃんと、祀ちゃん・・・あとひとりは・・・)」  
 ゆりえは下着を手にとりながら、うーんと悩む。ややあって、小首をかしげながら、祀にたずねてみる。  
「(祀ちゃん、あと一人は、誰?)」  
 にやり、と祀。  
「(さぁ・・・もしかしたら、どこぞの眼鏡娘が、遊びに来るかもね〜)」  
「・・・・・・うそっ!?」  
 ばれてたの! 光恵は慌てて顔を引っ込めた。  
「(ねぇ、祀ちゃん・・・いま、なにか、声みたいなのがしなかった?)」  
 ゆりえの声。ややあって、答える祀。  
「(・・・・・・声? 虫かなんかの声じゃない? ”覗き虫の”)」  
「(のぞ? なに、それ?)」  
「(んーん。なんでもないわ。さっ、着替えたわね。ほら、先に出て。扉は私が閉めとくから)」   
 ゆりえの足音が遠ざかっていく。祀は――まだ、体育倉庫にいるみたいだ。光恵はそーっと、窓から中を覗きこんだ。  
「――――うっ!?」  
 そして我が目を疑った。  
 背中を向けて立っている祀。  
 こちらを振り向く。目が合う。にやりと笑う祀。  
 片手をすっと持ち上げる。  
 その手には、何かの金属片。すると祀はまるで見せびらかすように、金属片を振る。  
 金属片には、某蜂蜜クマのストラップ。  
 わたしの、自転車の、鍵!   
「あぁ・・・くそぉ、ハメられたぁ・・・」  
 光恵は力なくうなだれた。その光恵に向かって、祀の陽気な声が降ってくる。  
「(アディオス。覗き虫! また、あとで・・・楽しみに待ってるわ!)」   
 
owari?      ***otoko omoitukanai gomen  
 

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