夕食前から結城とヒナウの二人でごそごそと何かしていると思ったら、
簡単な箱にストローで作ったアンテナをつけた工作物を二人して得意げに持って見せに来た。
奇妙な箱は名前を「オトーサンスイッチ」といい、日本で今流行っている番組に出てくるものらしい。
見ててね、アンリ!とヒナウはまるい瞳を生き生きと輝かせながら、オトーサンスイッチ、さ!と掛け声をかけて
箱に貼られた「さ」と描かれた紙片を押した。ああ、それでスイッチね。
納得しかけたとき、結城がいきなり逆立ちをする。なに、一体どうしたの。
「さ、逆立ちをする! じゃ、次ね! おとーさんスイッチ、し!」
すると、今度はそばにあった新聞紙を読み始める。
「まあすごいわ、ヒナウ。それは結城が言うことをきく道具なのね」
いけない、つい日ごろの恨みが口に出てしまった。傍らで結城が苦笑しているのが見える。
自覚をしているのならもう少し無茶な行動は控えてもらいたいのに。
違うよ、おとうさんが、だよ。口を尖らせてヒナウは訂正する。結城の笑みがさらに深くなる。
この親ばかめ、と思いながらも私の頬もいつしか緩んでいた。