「ええ〜!?ママとパパって、まだ、なの!?」  
「ちょ、ちょっとヒナウ、声が大きいわよ!」  
 
南太平洋、タヒチにある小さな島のひとつ。  
まぶしい日差しを避けて、大きな葉で葺かれた家の影になる場所で。一風変わった母子が  
並んでご馳走の支度をしていた。  
「あ、ごめんママ。……でも、ホントに?」  
口を手で押さえ、今度はひそひそ声で母親に話しかけるのは長い黒髪、赤い肌の娘。  
包丁を握り、先程から慣れた手つきで魚の内臓を除いている。  
「……ホントよ。」  
すねた口調で頬を赤らめながら答えるのは、ブロンドヘアーを短くカットした、精悍な  
印象の美女。  
大きな葉に魚を包んでいるが、その出来はあまり上手とは言えない。  
「だって、パパとママって出会って何年?私がまだこーんなちっちゃいころだからー、  
 えっと……?」  
「悪かったわね。」  
「あ、えっとそういうことじゃなくてね、だ、大事にされてるんだなーって……」  
「無理しなくてもいいわよ。あの人、そういうことにはてんで興味無さそうでね。」  
ふう、とため息をつく。  
長い睫毛が伏せられたその横顔は、娘の自分から見ても充分に美しいとヒナウは思う。  
パパったら……、ママを淋しがらせちゃ、ダメじゃない。  
 
さて会話の内容から察せられるように、このふたりは血の繋がった母子ではない。  
ヒナウがママ、と呼ぶ金髪の美女はアンリエッタ・バーキン、通称アンリ、  
インターポールの捜査官である。  
パパ、と呼ばれているのは結城丈二、日本人。今は島の向こう側の住人に呼ばれて、  
ボートの調子を診に行っているはずだ。  
本当の両親を亡くした後、祖父の手で育てられたヒナウが、この島に同時期に訪れた  
ふたりに懐いたのは必然だったのかもしれない。  
結局ふたりが滞在していたのはほんの短い期間で、すぐに旅立っていってしまったの  
だけれど。  
それでも結城もアンリも暇をみつけては何度か、ここタヒチに顔を見せてくれていた。  
ヒナウはそのことが、本当に嬉しかった。  
産んでくれた両親のことを忘れたわけじゃない。  
ただ、淋しかった時期にそばにいてくれたふたりのことを、今でもとても大好きなだけ  
なのだ。  
だから、アンリが結城のことでため息を吐いているのは、悲しかった。  
仕事で一緒に過ごす時間は長いようだが、仲は思ったより進展していないのをはがゆく  
感じる。  
お互いの気持ちを確かめ合った、とアンリから聞いてからだって、一体どれだけ経っている?  
ここは私が一肌脱がなくっちゃ、とヒナウは決心した。  
 
「ヒナウ、やっぱり私、これは……」  
アンリが恥ずかしそうに、仕切り布を掴んでその向こうから顔だけを出した。  
「何言ってるの、ママ!素敵よ!それくらいしなきゃ、今日は勝負をかけるんだからねっ!」  
「でも……、」  
まだ、ためらっている。普段はパンツスタイルで決めていることが多いから、  
戸惑うんだろうけど。  
はじめのときだって、着てくれたじゃない?パレオ、スッゴク似合うんだからママは!  
「ダーメ、それじゃなきゃ!ここにいるときくらい、いいでしょ?」  
紫の花の咲く植物の文様が描かれた、赤いパレオ。少し深めの色合いがアンリに似合うと  
ヒナウは思ったのだ。  
アンリは、おずおずと布の影から体を出す。  
「ホラ、やっぱり素敵!」  
自分の見立てに間違いは無かった、とヒナウはその姿を見て満足する。  
いつもと勝手が違うからか、恥ずかしげな佇まいが美しいスタイルにさらに色を添えていた。  
「……ヒナウ、あなたがいいって言ったから着てるんですからね!」  
「はーいはい。」  
素直じゃない言葉も何だか可愛らしく感じる。母親なのに、少女みたいだとヒナウは目を  
細めた。  
恋、してるからよね。  
 
ただいま、とジーンズ姿の結城が砂浜を踏み戻ってきた。修理のお礼にと持たされた果物を、  
腕に抱いている。  
所在なさげに部屋の隅に立っているアンリに目を留める。  
「よく似合うよ、アンリ。」  
「そ、そうかしら……?」  
「うん、綺麗だ。」  
素直に発せられた褒め言葉が照れくさくて、アンリは横を向いて小さく「ありがとう」  
とつぶやいた。  
「パーパ、私は?」  
「ああ、ヒナウもとっても可愛いよ。君たちは、母子そろって赤がよく似合うね。」  
ヒナウとアンリは、顔を見合わせる。  
同時にふにゃ、と崩れた表情を見て、ああやっぱりよく似ていると、結城は思うのだった。  
 
 
ヒナウの祖父は、今夜は寄り合いという名の宴会で朝まで帰って来ない。  
夕食も、3人でとった。  
あとはヒナウが気を利かせて消えるだけだ。行く先のあては、ある。  
・・・なのに。  
どう見ても、アンリは固くなっていた。  
食事中の会話もぎこちなくて、結城の手が触れそうになったりするとびく、と反応しては  
何でもないわというように怒っていたけれど、無理が見え見えだった。  
あれじゃ上手くいくものもいかないわ。仕方がないわね。  
 
片付けを理由に、アンリを外へ引っ張り出した。太陽は沈んだばかりで、あたりはまだ  
ほんのりと明るい。  
「ママ、ちょっとここお願いね!すぐ戻ってくるから!」  
片付けを押し付けられて、アンリは目を白黒とさせる。  
まあでも料理のほうはほとんどヒナウがやってくれているのだし片付けくらいはね、と  
手を動かす。  
それにしてもどこへいったのかしら、と首を傾げた。  
 
ほとんど終わりという頃になって、ようやくヒナウは帰ってきた。  
「ただいまー!ママ、ありがとね!」  
「別に、いいわよ。」  
「あのね、問題はー、ママがパパにせまれるかどうかだと思うのよね。パパ、自分からは  
手を出さなそうだし。」  
「せま・・・」  
唐突に娘の口から出た言葉に、アンリは卒倒しそうになる。  
「そんなママに、これ!」  
そう囁いてヒナウは、小さな瓶をアンリの手に握らせた。  
「……何よ、これ。」  
「ん〜?ちょっと大胆になれるお薬、かな?パパにも飲ませるといいよ〜!」  
「……ッ!ヒナウ!あなた、どこでそんなもの……!」  
暗くて顔はよく見えないけれど、きっとアンリの顔は真っ赤になっていると、  
容易に想像できる。  
「まあまあ、それはともかくー。がんばってね、ママ!ジャマしないから!」  
ぱちん、と黒い大きな目の片方を瞑る。  
「あ、待ちなさいヒナウ……!」  
呼び止める声もむなしく、ヒナウはあっという間に砂を蹴って薄闇の中に紛れてしまった。  
 
アンリの慣れない足では、砂浜を速くは走れない。置いてきぼりにされてしばらくおろおろ  
していたが、そのままここにいるわけにもいかない。手に残された瓶をきゅっと握り締めると、  
結城の待つ家へと戻っていった。  
「おかえり。ヒナウは?」  
「あ、あの子はちょっと……その、友達と話があるって。」  
背中に瓶を隠しながら、壁際を通って部屋の奥へと向かう。  
「そう。」  
 
「ヒナウ、遅いな。」  
窓に掛けられた布を押して、結城は外の様子をうかがう。  
「どうしたんだろうな……」  
振り向きながら口にした言葉は、途中で遮られた。  
唇に柔らかい感触。そして薄く開いていたそこから、何か甘い液体が流れ込んできた。  
「……!??……ッアンリ!?」  
長い睫毛が、目の前で揺れる。  
結城の両肩に、ほっそりとした手が置かれていた。  
薄明かりの下で妖しく光る唇に、結城の目はくぎづけになった。  
その、今、アンリは、何をした……?  
「結城」  
かすれたような甘い声が、見つめていた唇から漏れる。  
「ヒナウなら、戻ってこないわ。」  
真剣な口調。恥ずかしげな、そして緊張の読み取れる面持ちで。  
眼前にせまった濡れた瞳、赤い唇に結城は眩暈を覚える。  
動けないでいると、アンリは焦れたように肩にかけた手に力を込めた。  
「抱いて?」  
 
決定的な言葉に、結城は酷く動揺する。  
「な、何を言っているんだ、アンリ、」  
「本気よ!」  
言いかけた言葉を強くさえぎられて、驚きに目を見開く。  
彼女の口から堰を切ったように言葉が溢れて、ぶつかってくる。  
「言った意味がわからないわけじゃないわよね!?今度という今度は、はっきり  
 してもらうわ!私を、あ、愛してるなら……」  
急に萎れて小さくなった声、そして、視線を落とした。  
「……どうして、一度も抱いてくれないの……?」  
つぶやかれたその言葉、目を伏せた切なげな仕草は、結城を煽るのに充分なものだった。  
すぐにでも圧し倒したい衝動に駆られて、必死で自制した。  
何故って、今まで我慢していたのは。  
「その……。傷に、障るだろう。」  
「……え?」  
アンリは、顔を上げる。結城は赤くなってあさっての方向を向き、顔の下半分を  
手で覆っていた。  
「だから!そういうことをしたら、君の体に負担がかかるんじゃないかと思って……。」  
 
アンリの腹部の傷。古いものだからすでに完治しているが、傷跡はまだ残っている。  
結城を守ったときの、デストロンへの復讐に燃えていたときの自分との、決別の証の。  
その傷のことを結城は心配してくれていて、それでキスと優しく抱きしめる以上のことは  
してくれなかったっていうの?じゃあ、気にしなくていいと分かれば……。  
 
「だ、大丈夫よ!お医者さまも、問題ないって言ってたわ!」  
アンリは意気込んで伝える。結城に掴みかかろうかという勢いだが、こちらも  
頬は紅潮している。  
「き、君は医者にそんなことを訊いたのかい?」  
発言の内容に驚いて声が上擦り、顔もさらに赤みを増す。  
「わざわざ訊いたワケじゃないわ!教えてくれたのよ向こうから!余程激しくしない限り、  
 大丈夫ですよ、って……!」  
結城の反応も相まって、恥ずかしさで顔が沸騰してしまう。最後には、しどろもどろと  
いった風になっていた。  
「そ、そうか……。」  
西洋の医者はそういった物事にもフランクなのだろう、と結城はなんとか自分を納得させた。  
日本ではおそらくわざわざ口にする医者はいないだろうが。  
 
結城は落ち着こうとして、深呼吸をひとつする。視線を向けられずもじもじしているアンリを  
改めて見つめた。  
「じゃあ、俺はもう我慢しなくていいんだね?」  
「我慢、してたの?」  
その声は驚きを含む。  
「ああ。したくない訳、ないじゃないか。俺だって男なんだから。」  
左手で肩を抱く。  
今度は結城のほうから顔を寄せて、囁いた。  
「いいんだね、アンリ?」  
「勿論よ。」  
微笑んだ口元、挑戦的で扇情的な瞳。  
唇を重ねた。  
 
始めは唇だけ。やわらかく触れ合わせていると、ふたりの息がだんだんと熱くなってゆく。  
幾度も重ね合わせているうちに、どちらともなくもっと、と欲が生まれて。  
舌を絡め口腔内を探り合った。深く、深く。  
くちゅ、くちゅり、と響く音はもうどちらのものかわからないくらい交じり合っている。  
目を閉じて、やわらかく濡れた感触と音だけを堪能する。  
アンリは頭の後ろに広い手のひらが差し入れられて、支えられるのを感じた。  
動きが制限されて、さらに唇が舌が激しく襲いかかってくる。  
荒々しい、それは普段の穏やかな様子の結城からは予想もつかないもので。  
けれどアンリは心のどこかで納得する。  
そうね、あなたは決断したら決して引かない人。冷静さの裏に秘めた激しさを、私は  
知っているもの。  
受け止めて、応える。いいえ、迎え撃つ。  
筋肉質の首に腕を絡め、アンリは体を寄せた。  
 
結城はアンリの背を抱き返し、体と体の距離が縮まる。  
密着して、パレオに包まれた乳房が押しつぶされた。  
その柔らかい感触が結城に火を点ける。  
唇を離し、確認するように一瞬だけ視線が絡まった。  
性急に、けれどしっかりとアンリの体を支えて押し倒す。  
「背中、痛くはない?」  
「大丈夫よ。」  
気遣いの言葉を、アンリはじれったくも嬉しく感じる。  
その間にも頬、耳、首筋と順に結城の唇が降りていく。  
やわらかく食み、熱い息を漏らし、時折強く吸い付いて所有のしるしを付ける。  
「……んっ」  
鎖骨の辺りをひときわ強く吸われ、アンリは声を上げた。  
 
肩の上、はらりとパレオの結び目が解かれる。  
 
結城の視線は真っ先に、腹部に残る傷跡へと注がれた。  
「すまない、なんて言ったら承知しないわよ。」  
青い瞳がきらりと光る。  
「……言わないよ。ありがとう、アンリ」  
そして傷の上に優しくキスを落とした。  
 
濃い紫色の下着は、薄明かりの下ではほとんど真っ黒に見える。  
豊かなふくらみを左手で包んで、掬うように何度も揉みこんだ。手のひらで指で  
そのやわらかさを堪能する。  
アンリは与えられた刺激に反応するように、結城の首筋に顔を埋めた。熱い呼吸が、耳の  
すぐそばで繰り返される。  
まさぐる指がふと下着の内側へ滑り込む。敏感な場所を探り当てると、弄んだ。  
「ふぅ……んんっ……!」  
既に硬くなっていた胸の先端を、結城は指先で転がしたり摘まんだり挟んでみたりする。  
そのたびに上がる可愛い声を聞いて、口元は自然とゆるんだ。  
「あ……、はあっ……ゆうき、」  
乱れた呼吸の下で、アンリはせがむ。  
「何?」  
「ん……ぬ、がせて……?」  
「ああ。」  
 
アンリは少しだけ背を起こして結城を助ける。ホックを外し、肩紐を腕から抜いた。  
白く豊かな乳房が眼前に晒される。結城の動きがほんの少しだけ、止まった。  
それは。  
隙を逃さず、アンリの両手が結城の右手を掴んだ。金属の剥き出しになった、  
機械仕掛けの右手。  
「アンリ?」  
結城は困惑した表情でアンリを見る。  
「あなた、こっちの手では触れないようにしていたでしょう?」  
鋭く切り裂くような視線。  
「……わかってたのか。」  
「当たり前よ!今だって、どうしようか困っていたんじゃないの!?」  
詰め寄るアンリに、結城の態度は煮え切らない。  
「ああ、そうだけど、」  
「私が嫌がるとでも思ったの!?大好きなあなたの手に触れられることを!」  
右手を強く握り締め、真剣な表情で訴えてくる。けれど結城はいたたまれずに目を逸らした。  
「いや、だって君はこの手のことを、その……化け物の、手だと」  
「言ったわ!言ったわよ、確かに……。」  
アンリは過去の自分を思い出して、俯く。  
「でも、知ってる。もう知っているわ、この手は守るための手だって。  
 ずっと一緒に戦ってきて、この右手だけじゃないわ、あなたは命だって懸けて、守って  
くれたじゃない。それを、私はすぐ近くで見ていたもの。よく、知っているわ……」  
 自分のほうへと引き寄せて、やわらかくもあたたかくもないその手を頬に当てる。  
「アンリ、」  
「この手は、仮面ライダー4号であるあなたの誇り。私にとっても愛しいあなたの一部に  
変わりはないわ。」  
キスをひとつ、その冷たい指に。そして何度も。  
「だから、ためらわないで。あなたの全部で、私を愛して。」  
「……敵わないな。」  
なんと強く、美しいのかと。結城は心臓ごと掴まれたような心地だった。  
 
結城は右手を、アンリの頬から首筋へと落としていく。  
肌を這う金属の硬い感触。  
ぞくぞくと這い登る感覚は決して嫌悪ではなく。  
想像していたよりもずっと愛しくて狂おしいもので、もっともっと触れて欲しいと思った。  
降りてきた指が乳房に沈む。手のひらで先端を擦り上げられた。  
「!?」  
生身でされるのとは違う、ずっと強い衝撃が襲う。  
冷たい、だけど、これは・・・。  
「やぁ、はっ・・・ああっ!?」  
腕を背に回し、縋りつく。  
「アンリ・・・?」  
やはり良くはないのかと、結城は動きを止めてアンリの顔を窺う。  
アンリはあわてて首を横に振る。  
「ち、ちがうの・・・。その、気持ち、良すぎて」  
やだ私何言ってるんだろう、でも、ホントに。これは結城だからなんだろうかとアンリは  
戸惑いながらも言葉を続ける。  
「だから、あの、やめないで・・・?」  
上目遣いで頼まれれば、余計に愛しさが募る。我慢しているわけではないようだし・・・。  
結城は反対側の乳房に唇を寄せ、先端を口に含んだ。  
そのまま、右手と両方で責める。  
背を捩り、呼吸を乱し嬌声を上げる、それは間違いなく愛撫に感じている証拠だった。  
この、機械の腕であっても。  
 
腿からその付け根、内側へと、手が伸ばされる。  
アンリは体を硬くした。  
下着の横から、侵入する。  
撫でる手つきは焦らすように穏やかで。  
「ゆうき、お願い・・・」  
より深い快楽を求めて懇願する。  
「ここ、かい?」  
「はあっ・・・んんっ!!」  
深くもぐらせた指の動きにアンリの体が跳ねる。  
「ここなんだね?」  
確認する言葉に、アンリは羞恥を煽られながら小さく頷く。  
一度指を抜き下着を取り去ると、再び同じ場所を責めた。  
呼吸が千々に乱れる。浅く吸っては、絞り出されるような声とともに吐く。  
執拗に繰り返される愛撫、アンリの体も感覚も翻弄される。  
じゅくじゅくと響く水音は受け入れる準備が整っている合図で、結城の我慢も限界が来そう  
だった。  
 
「いいかい、アンリ・・・。」  
充分に熱を孕む股間を押し付けて欲情を知らせる。  
アンリは荒い息の下で、こっくりと頷いた。  
ジーンズと下着を脱ぎ避妊具を装着すると、白い足を開かせ、その間に入った。  
首に腕が絡められ、視線がつながる。  
ゆっくりと、やわらかく熱い体の中に沈み込んだ。  
「・・・っく、」  
歪められた眉は、苦痛のせいだけではない。その証拠にアンリの瞳は熱っぽく結城を  
見詰め、赤い唇が誘うように開いた。  
自身の唇で覆うようにして塞ぐ。  
最後まで深く収め切ると、律動を始めた。  
 
快楽を貪る。  
繰り返し突き入れれば、内壁がびくびくと締め付けて纏わりついた。  
痺れるような快感が何度も襲い、それでもまだまだ足りずに責め続ける。  
「・・・ふぅ、・・・ん、・・・んう、んーっ!」  
口を塞がれているので、声がくぐもって苦しそうだ。  
だがアンリ、すまない、手加減できそうにない。  
止められないんだ、ずっとこうしたかったんだから。  
それに、君の腕は俺を強く抱きしめているし、舌だって君からも絡めてくれているだろう?  
だからその声は、懇願だと受け取ることにする。  
もっと、と俺にねだってくれているのだと。  
 
腿を掴んで体のほうへと抱え上げる。さらに深く繋がることができるように。  
ギリギリまで抜いてから一気に奥まで突き込むと、じゅぽ、とひときわ大きな音が耳を犯した。  
アンリの背が反り返り腕の力が抜けて、それまでずっと合わせていた唇が離れる。  
「あああんっ!」  
自分が発した声に驚いて、アンリはあわてて口を手で覆った。  
その仕草が可愛らしくて結城はくすりと微笑む。  
愛しさがあふれてきて、手を伸ばすと優しく髪を撫でた。さらさらと薄い色の髪が指に絡む。  
繋がったまま、アンリが息をつけるように動きは止めて、結城は尋ねる。  
「どんな気分だい、アンリ?」  
「・・・最高よ」  
艶やかな微笑みの中に、ほんの少しだけの照れが読み取れた。やはり可愛い。  
「そう、俺もだよ。」  
穏やかに、目を細める。  
 
「もう少し、最後まで。・・・付き合ってくれるかい?」  
「ええ。途中でやめるなんて無理でしょう?」  
「そうだね」  
笑い合って、そしてまたふたり互いに抱き合い貪り合い求め合った。  
触れ合えなかった時間を、埋めるように。  
 
「……ヒナウ」  
ヒナウは、自分と同じ赤い肌の青年に駆け寄った。  
「お待たせー!アレ、ありがとね!」  
今しがたアンリに押し付けてきた、小さな瓶のことである。  
「いや。あれで、良かったのか?」  
青年がヒナウに頼まれ渡したのは、彼の家で造っている果実酒。  
とろりとして甘い、上等ではあるがごく普通にアルコールとして飲まれているものだった。  
「うん!ママにちょっとおまじないかけといたから。パパとママ、今夜はきっとうまくいくわ!」  
「そう。」  
そう言ってはにかんだ青年の面差しは、ヒナウが父と慕う東洋人に少しだけ、似ていた。  
 

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