ヘリのローター音が喧しい。アンリはその音に負けぬよう  
声を張り上げた。  
「このまま行けば日本に着くのは現地時間19時、横須賀の米軍基地に着陸の  
許可が取れたわ。  
それからの行動はインターポールの本部から適時・・・」  
「ちょっと待て。拾ってもらったのはありがたいが俺たちに指示を出すのは  
止めてもらおうか」  
横合いから口を挟まれ、アンリは男に目を向けた。  
薄暗いカーゴの一角に座った風見志郎は両手を  
顎のところで組んでアンリを鋭く見据える。  
「たとえ結城の知り合いだろうがしゃしゃり出てきたインターポールの指図に  
従う気は無い」  
アンリが横に立つ結城に目線を転じると、彼は軽く肩を竦めて見せた。  
その口元には小さな苦笑じみたものが浮かんでいる。どうやら別に風見が  
特別インターポールに敵意を持っているというわけではなく、常にこういう  
スタンスの男らしい、と察したアンリは  
「そう、こちらも別に頭ごなしに命令する気は無いわ」  
といなした。  
「でも考えて欲しいわね。今後日本でバダンがどんな手段を使ってくるか  
見当もつかない。マスクドライダーが個々でどれだけの  
戦闘力を持っていようとその全てに対処することは限界があるでしょう。  
私たちインターポールはあなたたちに物資、情報、移動、様々な面での  
サポートを行う。その手助けを蹴ることは少しばかり短慮といえないかしらね」  
「・・・ふん」  
風見はヘリの機体に背中を預けた。アンリの提言に了承とはいかないまでも  
それなりの納得をした、というポーズらしい。  
アンリと結城は顔を見合わせた。面倒な男ね、とアンリの目が言っている。  
スペインの海上で勢ぞろいしたライダーたちを乗せたHH-47チヌークは  
一路日本へと向かっている。愛用のバイクと共に無骨な機内に  
揃い踏みをした男たちは  
アンリにとって初対面のものが殆どで多少の好奇心が刺激されぬことも無い。  
自らを省みず人類のためにあらゆる秘密組織と敵対し、  
今また立ち上がろうとする男たち。  
みな、改造人間であるということを感じさせぬほど、飄々としている。  
あるものは物静かであるものはあっけらかんとし、あるものは・・・・・・?  
 
「・・・なに?」  
「・・・がう」  
さっきから妙に視線を感じるとは思っていたのだ。自分をじっと見つめている  
長髪で短パンの、確か名前は。  
「アマゾン。私になにか質問でもあるのかしら」  
じーっと見つめる眼差しは子犬のように純粋なそれだ。  
なのでアンリも油断した。無造作に伸ばされた彼の両手がふくよかな胸の膨らみに  
ぺたりと触れるまでは。  
一瞬、密閉された空間の中でクソ喧しいヘリの騒音も何もかもが静止した。  
一文字の手から危うくカメラがずり落ち、  
筑波洋はぽかんと口を開け、何故か城茂はグッとこぶしを握り締めた。  
やるじゃねえかあの野郎。  
ワナワナとアンリの体が震えた。  
「こっ・・・!!」  
右手が大きく振りかぶった。が、平手をかます対象がおらずに行き場を  
失った。  
まるで獣のように素早い動きでアマゾンが後ずさりし、カーゴの  
隅っこまで飛んでいってしまったからだ。  
そして危険を察知し警戒する野生動物のように後部ハッチの物陰から  
顔だけ覗かせている。  
「この、変態!!風穴の三つは覚悟しなさい!」  
「待て、落ち着いてくれアンリ。彼は意味も無くそういうことをする人間じゃない」  
「私の胸に触るのに意味があるっていうの!」  
怒りのあまり愛用のグロックを構えるアンリを咄嗟に手で制し、  
結城がゆっくりとアマゾンに近寄って膝をついた。同じ目線で  
穏やかに話しかける。  
「どうしたんだアマゾン」  
アマゾンは戸惑い顔で怒り心頭のアンリとつい今さっき不埒なことを  
しでかした自分の手とを見比べている。  
「あれ・・・なんだ?」  
「あれって?」  
「やわらかいのが、ついてた。二つ」  
「乳房のことかい?」  
平気な顔で口にする結城に、かえってアンリや若干名の若造のほうが赤面した。  
「・・・アマゾン、君は今まで女性の体に触れたことは?」  
「がう」  
首を横に振る。  
「女性と話したことは?」  
また、首を横に振る。  
「女性を遠くから見かけたことは?」  
少し考えてからアマゾンは始めてこくりと頷いた。  
「成る程。アマゾンは密林で育った際、異性と直接接触する機会がなかったのか」  
「いやこいつ一回日本に来てただろ」  
一文字が突っ込んだ。  
 

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