アンリの舌が、戸惑いながら僕の肌に触れる。
男性経験の豊富とはいえない彼女だ。
愛されることすらまだ不慣れな部分があるのに、ましてや自分から相手を愛する経験などほとんどないだろう。
おっかなびっくり僕に口付けを落としていくアンリは、戦場にいる凛々しい彼女とはまるで別人のようで
我知らず、たまらないいとおしさが僕の中にこみあげてくる。
「アンリ」
「ダメよ。今日は私が…」
抱き寄せようと僕が身じろぎすると、彼女は駄々っ子をたしなめるような顔でそう言い
再び胸元に唇を寄せる。
強気な態度と裏腹なたどたどしい愛撫が、物理的な刺激以上に僕をたまらない気分にさせる。
「結城」
スラックスに伸ばされた指が、一瞬ためらってから意を決したようにその付け根に触れた。
僕のものはもう痛いほどに熱を持っていて、触れた指がまた怯む。
それでもアンリはおぼつかない動きでベルトを抜き、スラックスと下着を下ろして直接僕自身に指を絡めた。
ベッドランプの薄い光でも、その顔が真っ赤になっているのがわかる。
「アンリ、無理しなくても」
「無理なんかしてないわ」
持ち前の強情さを発揮して、彼女が僕の下半身に顔を近づける。
「お願い、結城。今夜は、私に愛させて」
掠れた声でそう言うと、アンリはおずおずと手の中のそれに唇を寄せた。