夜中にふと目が覚めた。誰かに呼ばれたような・・・
気のせいよねと目を閉じると再び聞こえた気がする。
思い切って起き上がり、上着を羽織って外に出た。
車が止まっていて、そばに誰かが立っているのが見えた。
「聞こえたんだね、良かった。」
「結城!無事だったの!?一体どうやって戻ってきたのよ!四国はどうなって・・・」
「詳しいことは車の中で話すよ、乗って。」
言われるまま、後部座席に乗り込んだ。
運転席はと見ると黒ずくめの男が座っていて、すぐ車を発進させた。
「父が君も連れてきたら善いと言ってくれたから迎えに来たんだ。」
「何を言っているの結城。父って誰の事・・・」
「もちろん、大首領の事だよ。」
背筋が凍りついた。私に微笑みかけ彼の口付けを受けながら眼を閉じた。
る彼の顔はとても穏やかで幸せそうだった。
タヒチで記憶を無くした時に見せていたような。
「ふざけないで!それとも偽者なの!?」
ピストルをこめかみに突きつける。かってそうしたように。
「僕は本物の結城丈二だよ。本来の自分に戻っただけなんだ。」
「しっかりして!目を覚ましてよ!でないと・・・」
「でないと?」
あくまで表情は変えないまま、結城は私を抱きしめた。
撃たなきゃ。でないときっと取り返しの付かない事に。そう思いながらも動けない。
「もう君がこんな武器を持つ必要はないんだよ。一緒に夢を見よう。」
それもいいかもしれない。彼と一緒なら。
彼の口付けを受けながら眼を閉じた。