カツン、カツンと地面をあるく靴の音がする。男が二人、小さなライトがついた道を歩いている。  
 あたりは機械だらけでカタカタという音が常に聞こえていた。  
 靴の男は、まるで軍人のような制服を着ている。その後ろから体中を血まみれにした男がついてきていた。  
 先頭の男は後ろの男を心配するようにちらちらと見ている。血まみれといっても、体には傷一つついていないように思うし、布を頭からかぶっているのでよくわからない。  
 かなり心配しているのだが、後ろの男はそんな気持ちがわかっているのか、いないのか頭を下げたままだ。  
 どうやら先頭の男は、血まみれの男を迎えに来たらしい。時々大丈夫ですかと声をかけるが黙ったまま反応しない。  
 あきらめたのか、そのまま道を進んでいく。何百メートルもの長い道のりだ。よほどの科学力や力がなければまるで作ることもできないだろう。  
「こちらに地獄大使様がいらっしゃいます」  
 道はある一つの部屋に続いていた。部屋のドアの両側に男が二人立っている。まるで西洋の騎士を思わせるかのような甲冑を身につけていた。  
 警護役だろう。頭を守る兜の境から赤く光る目が、歩いてきた二人をにらんでいた。だが、先頭の男が出したBDNの文字がついたプレートをみるとドアを開けてくれた。  
 簡単な礼を言うと部屋の中に入っていく。  
「地獄大使様!村雨良をつれてまいりました!」  
 部屋に入るといきなリ大きな声を出した。声は部屋の中に響いていく。  
 
「おお、よく来た。ご苦労だったな」  
「ハッ!ありがとうございます」  
 部屋の中には、二人の男が立っている。一人はサングラスをかけた渋い顔の男だ。そしてもう一人はなんとも口では表現しづらい異様な姿をしていた。  
 巨大な頭に長く伸びた鞭を手につけている。目は白く淀んでいるが、にらまれるとまるで動けぬほどの気配を出していた。口からは蛇の呼吸音に似た音が常に聞こえている。  
 体の色は白と金の色である。まるで人間に見えない。だがこの男が、ボスであること、地獄大使である事を回りの者たちの行動や言動が示していた。  
「村雨良。お前もよくやった。外国人部隊を一人で壊滅させるとは…。さすがはバダン有数の実力者なだけはあるな」  
 地獄大使は近寄ると、村雨良と呼んだ男の方に手を伸ばし労をねぎらっている。まるで大切なおもちゃを扱うかのように優しくなでていた。  
 良は体を覆っていた布を引きとった。すると布のしたから、たくましい体をした男の姿が現れた。  
 まるで歴戦の戦士、軍人のように張りのある腕、たくましい足。けして美形とはいえないが、光る眼光を持つ顔。そこらの男などではまるで比べ物になりそうにもない。  
「…ありがとうございます」  
 黙っていたが、小さな声でそれだけ言う。  
 地獄大使は一人うんうんと頷き、あるスイッチを手にとると部屋に備え付けれている巨大なテレビに向け操作する。  
 ジジジと音がしたかと思うと、テレビは光を放ちだした。テレビの中では、恐ろしい叫び声や雄たけびが聞こえてくる。  
「お前の作戦を、撮っていたのだ。よい働きだったぞ」  
 テレビの中では、数十人の男たちと村雨の姿があった。敵に白人やら黒人やらが混ざっているということは、これが外国人部隊なんだろう。  
 軍人たちは、皆それぞれが手に持っている銃の弾を込め良に向け撃ちだしていった。何十、何百とも見える弾はすぐに良の体に突き刺さる。  
 銃の振動する音といっしょに大きな白煙があたりをまった。軍人たちは何秒かのあとホッと笑顔になる。煙が取れると良の死体が顔を出すはずだ。恐ろしいほどの穴があいた良の死体が。  
 だが、その考え、希望は砕かれる事になる。煙の中から一つの赤い物体が飛び出してきたからだ。赤い物体は叫ぶ。  
「ゼクロォォォース!」と。  
 
 軍人たちは、うろたえる。どんな困難も越えてきた戦士達だ。たとえ敵が無傷だとて、恐れるような事はない。だが、このときだけは違った。敵が見た事も無いような化け物だったからだ。  
 真っ赤な体に、黒い線が入っている。緑色の巨大な目が軍人たちの姿を捉えていた。それはまるで悪魔のように見えたに違いない。慌てながら必死に銃で攻撃する。  
 ゼクロスはその攻撃をいとも簡単にかわす。時には体に突き刺さる事もあるが、まるでポップコーンのようなものでまるで攻撃になっていない。  
 うろたえる敵の様子を冷静に確認したゼクロスは、右手にしこんであるマイクロチェーンを伸ばす。マイクロチェーンはまるで生き物のように敵に絡みついた。  
「くそっ!くそおっ!」  
 なんとか解いてしまおうと力を振り絞るが、まったくほどけない。むしろ体に食い込んでくるような感じだ。ゼクロスの小指が少し動いたかといきなりこう電流がチェーンを伝わり敵に流れ込んだ。  
「ぎゃあああああああっ!」  
 悲鳴と涙とよだれと血と液体という液体に電流が流れ込み、まるで原型がわからぬほどの黒焦げの炭と化す。チェーンを引き抜く時、その人で無くなった炭たちはボロボロと崩れおちていった。  
 まだ十数人残っている。間髪いれずひじに付けてある丸い十字の縁がある物体をとる。  
「十字手裏剣」  
 物体をグッと握り締めると内部にある仕掛けにより、鋼鉄の刃が飛び出してきた。十字型になった物体を、敵の群れに向け思い切り投げつける。  
 十字手裏剣は見事に敵に突き刺さる。それだけではなく、突き刺さった後も回転し、簡単に体を引き裂いてしまった。手で握れるほど小さいのに恐ろしいほどの力を持っている。  
 血のシャワーが敵とゼクロスに降りかかる。その間も手裏剣は次々に敵を餌食にしていき、上半身が無い人間の山を作っていった。  
「助けてくれぇッ!助けてェッ!!」  
 次から次へと出てくる兵器や武器に、もう軍人たちは恐れおののく事しか出来ない。  
 自分たちの武器は効かずに、敵の攻撃だけ食らってしまうのだ。恐ろしい怪物が目の前にいるのではないかと思えたに違いなかった。  
 何十秒も立たないうちに残っているのはゼクロスと相手部隊の生き残り一人になってしまった。相手は、もう己の恥も外聞も放り投げ捨て、背を向け走り出した。  
 
 逃げ出した男をゼクロスは簡単には追いはしない。情けをかけているのか、それとも楽しんでいるのか。相手の体が自分の場所よりいくつ離れても動こうとしないのだ。  
 だが二百メートルほど離れた時だろうか。ゼクロスはいきなり大きくジャンプした。高く高くどこまでも高く飛び上がる。そして空中で静止した。  
 相手の体を睨み付け体勢を整える。もう準備は出来た。後は全てを込め、必殺の技を叩き込むだけだ。  
「ゼクロスキイイイイィィィーーーック!」  
 野太い声が青く晴れ渡った空に響いた。ゼクロスの体は一直線に男の体めがけて追突する。男は、その刹那何を考えたのだろう。まるで人形のように簡単に吹き飛ばされていった。  
 ゼクロスは追いはしない。目の前で倒れこむ男をただただ見つめるだけだ。男はなんとか立ち上がり、更に逃げようとする。だが、もう男は逃げれない。  
 体から少しずつ光が漏れてくる。まるで体から何者かが突き破って出てくのではと思うほど熱くなる。頭の中で昔のことが走馬灯のように流れた。  
(…かあさん)   
 それが男の最後の言葉だった。男の体はその瞬間、爆発する。血しぶきや肉片が当たりに降り注いでいく。まるで地獄絵図のような光景がひろがっていた。  
 ゼクロスはポカンとたっていたが、慌てて何かに気づいたようにその場を後にした。ゼクロスの後姿はなぜかとても寂しく、泣いている子供のように映っていた。  
 そこでテレビのテープは終わっている。  
 地獄大使はため息をつく。顔を恍惚させていた。まるで夢の世界にいるかのように。己のおもちゃがこんなにいい働きをしてくれるのがうれしくてたまらないのだ。  
 だが慌てて目を覚ましたかのように起き上がり村雨に声をかける。  
「村雨よ。お前がこれほど強い男でうれしいぞ。…もう休むが良い。数週間の後、また任務がある」  
 地獄大使の言葉に礼を言うと、良は部屋を出て行った。後姿を見送ると、地獄大使は何かを思案している様子だった。  
「そうだ。奴に何か褒美をやらなくてはな」  
「しかし、村雨は何も受け取りはしないでしょう。高価な宝石や宝、食べ物でさえほとんど食べません」  
「なら、女はどうだ?」  
 
 怪人や幹部たちには女を送る。これは悪の組織としてはある意味当然に行われている事だった。奴らも改造されたとはいえ、一人前の男だ。性的な欲求もある。  
 このバダンも、女を捕まえたり育成させたりして他の兵士たちに配るということをしていた。功績を次から次へ残す村雨にも当然のことといえる。   
「しかし、村雨に女は無理でしょう」  
 話を聞くと、村雨は女に興味が無い様子だという。女を送っても会わずに追い返してしまうのだ。それがどんな美女であっても関係ないのだった。  
(そうか!…ああすれば)  
 地獄大使は三影を手を曲げ呼ぶ。耳元に口を寄せ静かに声を出した。  
「だからな。…こう言う事だ」  
「それは!…わかりました」  
 ゆっくりと三影が、村雨と同じように部屋を出て行く。その顔には何か冷や汗や苦しみが感じ取れた。手を握り締めている。  
 地獄大使は皆が去った後も、一人笑っていた。  
 それから一週間ほどたった後、地獄大使はある女を呼んだ。その女に何かを命じる。女はこくりと頷くと目的の場所へ歩いていった。  
 そのころ良は一人部屋で眠っていた。簡単なつくりの部屋で面白いものや、装飾品などひとつもない。食べ物のカスや容器などはあるが、それさえも場所を取らない。  
 だから傍目にはとても質素で面白みの無い場所に見える。しかし良はこれで満足だった。けして贅沢はしないでも十分だ。自分がバダンに従える事が出来る。ただそれだけで良かった。  
 血の匂いももう取れた。望む事は十分な睡眠だ。うとうとと眠りこけた時、ドアを叩く音がする。  
「誰だ?」  
 安眠を妨害され少々つっけんどんに言葉をかけた。  
「地獄大使様から使わされた女です」  
 良は、またかと思ってしまった。前からかなりの女がよせられてくる。だが、不思議な事に興味がもてないのだ。子供を作る計画と聞いても、どうしようもない。  
 また断って帰すがと思ったが、流石に地獄大使様からじきじきに寄せられてきた女だ。そう簡単には帰すことも出来ない。  
 適当に会って終わらせようと思いドアを開ける。だが、良はその時目を疑うような事に出会った。  
 
「お、お前は」  
 目の前にいたのは黒い髪をもつ美女だった。白い服を着ており、小さなイヤリングとネックレスをつけていた。もちろん器用にもBDNと書かれている。  
 それだけならありきたりだが、問題なのはその美女が己の記憶に残っていたからだ。とても大事な記憶の場所に。  
 良は、自分がバダンにいる以前の記憶が無い。どうも、バダンで育ったらしいが、それなら記録なり何なりがあると思うがそれさえもない。だから自分の過去に自身があまり無かった。  
 そんな自分の過去を思い出す時には、いつも目の前にいる女が出てきた。そこではなぜか機械に繋がれた女がいて、自分は必死に叫んでいる。  
 だがその叫びもまったく無駄であり、いつも女は殺されてしまうのだ。悩んでいたが、やがて忘れてしまった。だが今、その女に出会った事で驚いているのだった。  
「お前の名前は何ていうんだ?俺は村雨良」  
「私の名前はしずかです。良様、よろしくお願いします。」  
「良でいい。様なんてつけられても恥ずかしいだけだ」  
 頭をかきながら話を続けるが、部屋の前を歩く人たちがじろじろとこちらを見てくる。  
 とりあえずドアの境で二人が立っているのもおかしく思い、部屋に招き入れる。おずおずと部屋の中にしずかは入ってきた。少し謙虚だ。ただ単に、遠慮しているのかもしれない。  
 部屋の中に入っていくと、ぽつんと置いてあるベッドの上に座らせてやる。他には座るような場所もないためだ。こんな時、もっと何かを備え付けておけばよかったと思った。  
「聞きたい事があるんだ。俺とお前…しずかは会った事あるのか?」  
 これは聞いておかねばならない事だった。自分の記憶が少しでもわかるなら、いい事でもあるし、しずかの正体もわかる。期待をもって聞いた。  
「いえ。…これが初対面だと思います。良は私と会った事があるんですか?」  
「…ああ、そうか。いや、なんでもないんだ。俺の勘違いだっただけだから」  
 そのまま数分の時が流れた。  
「良?…それじゃ」  
 しずかは自分の白い服に手をかけ引き上げる。服の下からは、美しい肌が見えた。その行為を慌てて止める。  
「しずか!それはやらなくていいんだ。…ただお前といっしょにいたいだけだから」  
「?」  
 顔をかしげて、よくわからないという風だ。無理も無い。その目的で呼ばれたと思っているからだ。  
 
 だが、良はなんとか説得すると少しずつ自分の身の内を話し始めた。今回の作戦の事もだ。  
 それから長い間、ただただ話しつづけた。取り留めの無いくだらない話だった。それでも良かった。  
 この安心した気持ち、満たされた気持ちを話したくないばかりに不器用な男が一生懸命に話しつづけた。しずかはその間、飽きもせずうなづいてくれる。  
 だが、その平穏な時間も長くは続かない。やはり時は無常にも流れていく。どんなに来ないでくれと思う時間も、いつかは過ぎていく。  
 しずかは、壁にかけてある時計を見た。簡単なつくりのデジタル時計だ。見ると、もう数時間ほど過ぎていた。  
「…良、ごめんなさい。そろそろ時間です」  
 名残惜しいというようにしずかが言った。  
「…え?時間って何だ」  
「ほんとうにごめんなさい。良、楽しかった。でも、あなたが欲しい人は違う人だと思うから。私はこれで帰らなければ」  
 良は信じられなかった。もう別れてしまうのだろうか。こんなにも楽しい時をいっしょに過ごしているのに、これで終わりなのだろうか。  
(嫌だ!)  
 思わず相手の右手を掴んだ。かなり力が入っていた為、顔がゆがんでいる。それでも力を緩める事は出来ない。  
 相手をじっと見詰めたまま動かない。相手の目と自分の目が交互に交わる。どちらもが、相手のそれぞれの姿をうつしだしている。  
「あ…ああ。すまない。…つい」  
 頭を左にずらし、顔をそむける。つい力をこめてしまった。どうしても離れたくないという思いがそうさせたのだ。もしここで離れてしまったら二度と会えないかもしれない。  
 そんな感情と思いが頭を駆け巡っていた。しずかは、優しそうな目で見つめていたが、恐る恐る近づき良の唇を優しく奪う。  
 やわらかく暖かく、優しく母親のような素晴らしい口づけだった。良の目が開かれる。驚きと戸惑いを表していた。  
「しずかっ!」  
 もう止めれない。止めようともしない。自分の上着を脱ぎ去り上半身裸になる。  
 その後、しずかの唇をわり強引に舌を押しいれた。良の力強い舌がしずかの口内を蹂躙する。  
 息苦しそうに目を泳がしているが、良は必死に自分の行いを続けるのみだった。少しでも味わいながら、自分の欲望を満たそうとする。つい、よだれが口の隙間を通りベッドの上に落ちていった。  
「…り、良。息が、出来ない。…苦しい」  
 
 声が聞こえると、慌てて離れようとした。つい力をいれすぎた事を反省し手と頭を離す。のどを抑え、ごほごほと咳き込むしずかを見て少し悪いと思う。  
 しずかは頭を上げる。別に息苦しかっただけで、怒っているわけではない。  
 また手を服にまわし持ち上げる。今度は良も止めたりはしない。ゆっくりと服が持ち上がっていき、淡雪のように美しい肌が姿を表す。  
 思わず見とれてしまうほどの美しさだ。下着も何もつけていない。大きくは無い。だがふっくらとした胸が姿をあらわす。ピンク色に染まっているようにも見える。  
 その後、良の目を気にしながらも、腰をまとっている布も簡単に解いてしまった。しずかの腰がちょうど良の目の高さにまで来た。むっちりとした太ももの境目に小さな黒い草原が見える。  
 ちゃんと切られて手入れをされているのか、三角形だ。思わず指を伸ばして触れてしまった。  
「あ…あん」  
 そのまま何度となくなでる。不思議な手触りだった。堅くもなく柔らかくも無い毛の強さで、指にくっついてくる。そうして幾度もなでていると、ヌルヌルとした手触りに変わった。  
「濡れてるのか?」  
「…はい」  
 しずかは顔をそむけ、頬を真っ赤に染めた。良の視線も手ざわりも恥ずかしくてたまらない。必死に顔をそらす。  
 そんなしずかのしぐさに、良は情欲をそそられていく。初々しく、可愛さもある。たまらなくなり、体ごとぶつかっていった。  
「きゃあっ!」  
 二人の体はベッドの上に投げ出される。柔らかなシーツが体を優しく受け止めた。  
 お互いの顔を見つめ、なぜだかとてもおかしくて笑い出してしまう。部屋に、二人の気持ちのいい笑い声が聞こえた。  
 その後、また長いキスをはじめる。お互いを甘く味わいながら続けるキスはとてもいいものだった。  
 キスの合間に良の手は、しずかの胸に触れ握り締める。指の境から、余った肉が顔を出す。小刻みに撫でられ揉んで行く。まるで、気持ちいいところがわかるようだ。  
 とても慣れていない男の出来る事ではない。まるでお互いの体を昔から知っていたかのように、うまく優しいタッチだった。  
 それもだんだんと強くなっていく。しずかも負けてはいない。良のズボンを寝た格好のまま、ゆっくりとずらしていき鍛えられた下半身と白いブリーフがあらわれる。  
「…大きい」  
 
 ブリーフの上から、パンパンに張った男を優しくなでる。ブリーフの上からでも、十分確認できるほどに大きい。先端は、上に少しはみ出ていた。ぷぅんと臭いが漂う。  
 もう待っていられない。そんな気分にさせられ、両手を腰につけると一気に引き降ろす。脱がしたブリーフを放り投げると、良の男が光を浴びて出てくる。  
「あっ」  
 思わず、自分の股間を見つめてしまう。そこをしずかの柔らかな手が、触れ優しくなでている。優しく強く握り擦り、いろいろな刺激を与える。  
 てのひらで、股間の棒を包み指先で睾丸やへその上を撫でる。手そのものが道具のように精密に体を気持ちよくさせる。  
 こすられるたびに良の額から汗がだらだらと流れる。もう、額だけではなく体中、足のつま先からも出ているのではないかと思えるほどの量が染み出していた。  
「くぅっ!はぁ、はぁ。…うぅう」  
 そこはもうパンパンに膨れ上がり、今にも膨張して放出してしまいそうだ。  
(…良)  
 苦しそうな顔を見ると、腰を浮かし足を両側に開いた。良が少しでも入れやすくなるようにしているのだ。  
 その心遣いや優しさがうれしく思えた。良も何かを決めたのか、体を動かし入れやすくする。痛くさせたくはない。  
「いくぞ」  
 生まれたままの格好の二人が繋がろうとしている。足を手で押さえ腰を押し入れた。しずかの口から微量な喘ぎ声が聞こえた。  
 良の男は、濡れたしずかの内部に沈み込んでいく。まるで生き物のように、脈動し良のそれを受け入れる。下についている睾丸が快感のせいか、ぴくぴくと震えていた。  
 ゆっくりと動きをはじめた。気持ちよい場所を探すかのように内部をかき混ぜる。しずかの吐く息、喘ぎ声もそれと共に大きくなっていく。  
(こ、こんなに凄いなんて…。良、あなたは)  
 まるで夢のようにも感じた。体に突き刺さる男が、自分のいい場所、うれしくなる場所を的確に捜し求めて刺激を与える。  
 数時間少々しか出会っていないのに、こんな気分になれる自分に驚いていた。良の動きはその間も続く。もっと大きく、強い突きが続いていく。ますます、体が赤くなっていきそうだ。  
「ああぁッ。…いぃ。いいですっ」  
 
 自分の体を行き来する男は、その声を聞きますます速度を強める。肉壁から染み出してきた愛液が、すきまからドロドロとあふれてくる。良としずかの黒い草原はもうぐちゃぐちゃに濡れていた。  
 黒い髪が空を泳いだ。毛の一本、一本がきらきらと輝く。良の首を思い切り力をいれ抱えた。  
 そのせいで肉壁が収縮し、きゅっきゅっと男を強く締める。  
「うっ」  
 頭をガンッと殴られたような気分になった。もう膨張したものを止める事は出来ない。最後の時へ向かって腰を一気に引き降ろす。そして十分に溜めを作ると、思い切りかき回す。  
 奥の場所にあたり、しずかの頭と目の前が真っ白になった。体中をつなぎとめていた糸が切れたように体を良に預ける。  
「イクッ!いっちゃうっ!」  
「俺も…いく!」   
 良は小さく揺れると、腰の中、自分の男に溜まっていたものを吐き出した。恐ろしいほどの快感が二人の間に伝わる。  
「あ?ああああああぁぁぁぁぁっ」  
 熱いものが、肉壁の中へ溢れ奥底へと広がっていく。しずかは絶頂を迎えながら、体の奥底から全力で声を出した。もはやそれは叫びにも似ていた。  
 良も涙を流しながら、叫ぶ。それは雄の叫びだった。雄雄しい雄の精一杯の雄たけびだった。  
「ふぅっ」  
 全てが終わると、体をベッドに投げ出す。  
 天井のライトが美しく光っていた。ただのライトがこんなに綺麗に思うとは不思議なことだった。光の線は丸く集まり、良たちの体を照らした。  
 夢のような時間が過ぎ、二人は恍惚の表情だ。  
「しずか。まさかこんな事になるなんてな」  
「ええ、まるで夢のよう。あなたに抱かれて本当に幸せです」  
 良はもうしずかが誰だろうと、どうでもよくなっていた。たまたまあったこの女が、自分の中でかけがえの無い大事な宝になっていた。  
 数分間、そのままぼうっとしていたが、やがて無骨な顔を赤く染めながら、しずかの耳元でつぶやく。  
「しずか。また…いいか?」  
「…ええ、良。来て」  
 その言葉に返すように良はしずかをだきしめた。  
 
 そんな二人の様子を、部屋の一角に仕込まれたレンズが映し出している。  
 しずかを求める良の姿は、カメラをとおり組織の中央部のテレビに映し出された。映像を見ているのは地獄大使と仲間の三影英介だ。  
「ふふふ。村雨め。なかなか激しいではないか。己の姉とも思わずに」  
「本当によろしいのですか?いくらデミクローンとはいえ、あのような使い方をしては」  
 おそるおそる三影英介が言葉をかける。もし怒らせてしまっては一大事だ。本当なら声をかけないのが一番なのだが、これを見せられてはかけないわけにもいかなかった。  
 目の前に移るこの出来事を、いや昔の記憶を取り戻したら親友の村雨はどう思うのか。恐ろしくてたまらなかった。  
「なに、かまわん。あの死体はそれだけしか使いようがないからな。それにしても面白い」  
 心配せずともあまり怒りはしなかった。むしろ楽しんでいる。  
 姉の死を目撃した良がなぜ女を拒んだか。全ては、姉という異性が問題だったに違いないとおもった。  
 地獄大使は、残っていた死体の細胞をひとつ残らず使い、簡単にクローンを作ると村雨に届けた。  
 もしそれが当たっているなら、良は姉のクローンを追い出しはしないと思ったのだ。その予想も見事に的中し、そればかりか、こうして二人はお互いを貪っている。  
 良としずかの子供でも出来ればバダンの重要な戦力にもなるのだ。それを考えていたからこそ地獄大使も利用したのだろう。  
 全てはうまくいった。この笑いを止める事が出来そうに無かった。面白い遊びにもなっていた・  
 そんな中、三影は一人村雨良に同情する。自分と似たような境遇にいて、このような目に合わされる村雨の事を。  
(村雨。お前がもし記憶を取り戻したら、どうなるんだろうな。…できることならお前の記憶が戻らぬように……願う)  
 そんな三影英介の隣で地獄大使は大きく笑い声を上げるのだった。  
 
 
 
 

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