夜、ホテルの一室。  
薄暗い照明の中、ベッドの上で男女が激しくもつれ合い、淫猥な香りを漂わせている。  
ひとりは二十歳ほどの美しい娘。もうひとりは、四十歳前後の中年男。  
「真理、素敵だよ」  
男の手と舌が、女の肢体の全てを愛撫する。  
真理と呼ばれた娘は嬉しそうに喘ぎ、  
「愛してるわ、一郎さん」と、何度もその名を口にした。  
田中一郎は、中年だが頭髪は豊かだ。顔も整っている。  
煙草は吸うが、それ以外は節制していて体形が良く、紳士という印象を与える。  
職業は会社員で、同い年の妻と中学生の娘がいた。  
学生の真理と不倫関係になって、一年が過ぎようとしている。  
「気持ち良い?」  
真理がエッチな顔で田中のペニスをシゴきながら訊く。  
「ああ、凄い上手だ。最初は全然だったのにな」  
クスッと咎める様に真理は笑う。  
だが田中の顔をうかがうと本当に気持ち良さそうにしていて、世辞ではないと分かった。  
真理は田中が初めての男であり、彼以外を知らない。  
細く、シャープさと柔らかさを兼ねた素晴しい指が、田中のペニスを刺激していた。  
可愛らしい舌が艶めかしく動き、袋、裏筋をなめ上げる。  
そして田中が好きな亀頭部分を重点的に刺激する。  
舌をネットリ這わせたり、先で素早くしたり。カリ部分も綺麗にするかのように、しっかりと。  
咥えれば緩急を付けたストロークは勿論、口の中でも舌を上手に使い、田中を満足させた。  
田中はコンドームをペニスに装着する。  
「さぁ、おいで。上になってくれよ」  
田中は真理を招き、二人は騎乗位で繋がった。  
「あぅんっ!」  
体を重ねる度に、真理はセックスに対して大胆になっていく。  
以前はフェラチオも拒み、自分から腰を振るなど考えられなかった。  
しかし今、真理は騎乗位で快感を求め、くい、くいとキレ良く腰を動かしている。  
「真理、凄くイヤらしいよ」  
「私、一郎さんが望むことなら何だってしてあげる」  
「本当かい?」  
田中は、真理の若い肉体に溺れた。  
男好きする顔でありながら媚びてはおらず、知性がある。  
体も同様に清楚さと肉感さと併せ持っていて、この体を前にして欲情しない男はいないだろう。  
田中も、その一人だった。  
「あっ、あっ、一郎さん、好きよ」  
透明感ある白い体に色艶の良い黒髪が映えていて、田中は惜しくなる。  
(勿体ないな。しかし、頃合だ)  
大きく上下に揺れる乳房の先では、薄い色の乳首がツンと尖っていた。  
(何度あれをなめ、吸ったかな)  
ふと思った。妙に冷静で、おかしくなる。  
 
「今度は俺がするよ。真理、正常位が一番好きだろ?」  
真理は恥ずかしそうに頬を赤らめながら微笑み、仰向けになって前髪を直す。  
だが、田中はペニスの竿を割れ目に沿わせて往復させるだけで、いっこうに挿入しようとしない。  
「い、一郎さん……」  
摩擦で押し寄せる快感と焦らされる苦しさに、真理は涙目になる。  
「おねだりが聞きたいな。俺から目を逸らさずに言ってごらん」  
「でも……」  
「なんだってしてくれるんだろ?」  
堪らなく恥ずかしいが、刺激され続ける秘裂とクリトリスが躊躇を振り払わせた。  
「挿れて、一郎さんのオチンチン。私のオマンコに」  
「良いコだ」  
田中は満足そうにし、ゆっくり前後させながら、少しずつペニスを膣奥へ差し挿れていく。  
「うっ、真理の、ホント窮屈だよ」  
妻と比較しているのだろうか。真理は複雑だが、褒められているとは理解する。  
「あぁんっ」  
男の体に組み敷かれ、覆いかぶさられながらペニスを突き挿入られる。  
そんなある種の拘束感のようなものに、真理は自分で驚くほど興奮した。  
田中は時にゆっくり優しく、時に荒々しく獣のように真理を求め、突く。  
「うっ、んんっ、一郎さぁんっ!」  
「ま、真理ィ!」  
余りの快感に、田中は頬に鳥肌が立つ思いだ。強い射精感が襲ってくる。  
「あぁっ、イクよ!」  
田中はペニスを抜くと、慣れた手付きで素早くコンドームを外し、真理の顔めがけて射精した。  
ビュッ ビュッ   
それは勢い良く飛ぶ。  
「あ、熱い……」  
真理の美しい顔が、大量の白濁液でドロドロに汚れる。  
それでも真理は嫌がる素振り一つ見せず、むしろ幸せそうだった。  
 
シャワーを浴び終え、二人はベッドの中にいた。  
「ねぇ、本当よね?」  
「ん?」  
田中は煙草を吸いながら、外の景色を見ている。  
「私が大学を卒業したら、結婚してくれるって話」  
真理は不安げな視線を向けたが、男の機嫌を損ねないように気を遣った。  
「どうしたんだ?」  
「だって最近、なにかと理由を付けては会えないって言うじゃない?  
もしかして私のこと、避けているんじゃないかって……」  
面倒そうに、田中は頭を掻く。  
「……そのことだけどな、そろそろ俺達、終わりにしないか?」  
「――え?」  
真理にとって、それはあまりに唐突だった。  
無理もない。ついさっきまで体を重ね、愛を確かめ合っていると思っていたのだから。  
「女房が感付き始めてる」  
「……だって、その時はすぐ離婚するって……」  
「娘はまだ中学生なんだ。父親が女子大生にうつつを抜かしてたなんて知ったら大変だろ?」  
田中はククッと喉を鳴らした。  
「最初からそのつもりだったの? 私の体だけが目的だったの?」  
「なんでそうなるかな。お互いに子供じゃないんだから」  
田中は説教臭く言った。まるで、まだ社会を知らない学生を小馬鹿にするかのようだ。  
「私、あなたのこと本気で……」  
「俺も本気だったよ」  
真理は、つい先程まで愛していた男の顔を睨んだ。  
きっと、自分以外の若い女にも手を出しているのだろうと思い、別れを決意する。  
淡い期待をしていたのだ。いざとなれば家庭と仕事を捨ててでも、自分を選択してくれると。  
冷静に考えれば、いかに自分の立場があやふやだったのかが分かる。  
いや、理解していながら、直視することを避けていたのだろう。  
なんて無様なのだ。そう思い、真理は背中を向けて泣いた。  
それは田中にとって何度目の光景なのか、動揺ひとつ見せず、煙草を吸い続けている。  
 
田中と別れた後、真理は強い空虚さに襲われた。  
不倫などしない普通の大学生に戻るだけだと思っていたのだが、焦燥感は田中を忘れさせない。  
夢中だったのだ。処女だって捧げた。それを、こうも簡単に関係が終わらせられるとは……。  
時折襲ってくる怒りと寂しさを紛らわせる為に、つい以前よりも酒の量が増えてしまう。  
そして酔いの中、田中に真剣に恋をしていた自分が恨めしくなる。  
後悔と己への失望に満ちていき、精神はすり減って欝気味になっていく。  
憂鬱な気分は、胸を締め付けた。  
そんな時、声をかけてきた男のひとりが透だった。  
最初は、なんの特徴もない男に思えた。  
二枚目でもブサイクでもない。知性が秀でているわけでも劣っているわけでもない。  
真理は興味を覚えず、断り続ける。  
だが透はめげずに、何度も誘ってきた。  
その熱心さと真面目そうな雰囲気に折れ、何度目かで食事を一緒にすることにした。  
そんな触れ合いの中で、透の優しさと一途さに真理の心は癒され、デートをする関係になっていく。  
そして二人はスキー旅行に出かけ、シュプールに宿泊した。  
 
夕食時、食堂で田中を見て真理は息を呑む。  
食事中だというのにコート姿、帽子をかぶってサングラスまでしているが、見紛うはずがなかった。  
田中は真理を見て一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに素知らぬ態度を作った。  
食後、真理は田中の部屋を訪ねた。さすがに室内ではコートや帽子、サングラスをしていない。  
「どういうつもり?」  
「睨むなよ。どうもこうも、君と居合わせたのは偶然だ。仕事で来たのさ」  
「こんな場所まで? ビジネスホテルなら、いくらでもあるじゃない」  
田中はフッと微笑した。幾度も見てきたその微笑に、真理は腹立たしくなる。  
以前は好きで好きで堪らない仕草だったが、今は違う。只むかっ腹が立つだけだ。  
「あんな変な格好までして。みんな不審がってたわ」  
「せっかくのイベントだ。注目を集めて愉しまなきゃ」  
「……はぁ?」  
「恋人に会いに来たんだよ」  
「恋人……?」  
また女を作ったのかと、真理は呆れる。  
だが、相手がシュプールにいるとなると不安が脳裏を過ぎった。  
「もしかして……」  
「今日子さんとは学生時代の知り合いでね。最近再会して、そういう関係になったんだ。  
勿論、君と親戚だなんて知らなかった」  
真理はショックだったが、顔に出しては田中の思い通りだと思い、我慢した。  
「それで、なんでシュプールまで来たの?」  
「女房の不倫相手が宿泊客として来てたなんて、おもしろいだろ?」  
「なによ、それ」  
「それでさ、旦那の知らないうちに女房は客の部屋――つまり俺の部屋に行ってさ、セックスするんだ」  
この男は、不倫を刺激的なゲームくらいにしか思っていない。舌先三寸で、小林夫妻の隙間にも入り込む。  
真面目な今日子のこと、田中に無理に押されて、今回の件を承諾したに決まっていた。  
言うことを聞いてくれないのなら別れるとでも言って。  
 
突然、田中が真理に抱き付いた。  
「な、なにするのっ」  
「なんで一人で来たんだ?」  
「話をする為よ」  
「期待してたんじゃないのか?」  
「自惚れないで」  
「一緒に来てる学生風の男。彼とはもうセックスしたのか? あんな若い奴のテクじゃ満足できないだろ。  
君は俺が女にしてやって、その後も色々教え込んだんだからな」  
田中の体から知っている煙草の臭いがし、苦い懐かしさが込み上げる。  
首筋に田中の唇が這い、吸われた。それは顎を通り、真理の唇と重ねられる。  
「んっ……止めてよ!」  
真理は田中を突き飛ばす。田中はベッドに足が当たり、そのまま倒れるように座った。  
「冷たいな。あんなに愛し合った仲なのに」  
「昔のことよ。いつまでも女が引きずってると思ったら大間違い。  
あんたのことなんて、もうどうも思ってないわ」  
「そうかい」  
田中は微笑し、立ち上がる。  
「俺とのこと、彼に言っても良いのか?」  
「――ッ」  
「妻子ある男と不倫して、その家庭を駄目にしてでも結婚しようとした女ってさ」  
「……い、言えば?」  
「ふん、君も男のことが分かってないな。ああいう生真面目そうな男ってのは、  
女の過去を気にするもんなんだよ。若けりゃなおさらだ。  
『昔のことは気にしない』なんて言ってる奴は、その時点で気にしてるもんさ」  
「………」  
「あんな純朴そうな坊やなんか、ショックで君から離れちまうぜ。  
どうせ自分と結婚したって、また不倫するんじゃないかってな」  
透が自分から離れる――。それは真理にとって恐怖だった。  
彼の存在なくて、今の自分はありえない。ようやく田中とのことも過去になりつつあるのに、  
透に去られては逆戻りどころか、以前よりも落ち込むだろうという確信があった。  
想像しただけで血の気が引くのが分かったし、  
同時に、透の存在がこれほど自分の中で大きなものだったのだと気付かされる。  
「なぁ、今回だけだよ。今日はたまたま会ったんだし、なにかの縁だ」  
田中はゆっくり真理の腕に手を伸ばし、掴む。そして抱き寄せた。  
「良い香りだ。変わらないな」  
囁き、そっと耳を甘噛みする。すでに股間は疼き、熱を帯びていた。  
 
真理はベッドの上に押し倒される。胸をわし掴みに揉まれながらキスをされ、強引に舌をねじ入れられる。  
「ン……ンン……」  
以前、田中に組み敷かれた時のような幸福感はまるでない。唾液の交換にも嫌悪しかなかった。  
これはレイプだ――。  
真理は思う。だが田中は合意が成立したとでも思っているのか、罪悪感はないようだ。  
夢中になって、久しい真理の肉体を楽しんでいる。  
(最低な男……)  
なぜ、自分はこんな男に恋をしたのか。  
自分の前での振舞い、全てが演技だったとしても、どうして見抜けなかったのか。  
そのせいで初体験を無駄にし、透にあげることもできないのだ。  
田中は感嘆の声を漏らした。真理のしなやかな体から漂う甘い香りは、田中を酔わせて情欲を高めていく。  
「素晴しいよ。君と別れた後も何人かの若い女とやったが、全然君には及ばなかった。  
いつも君のことを思い出して寂しかったんだ」  
褒め言葉のつもりらしい。  
思い出しているのは体だろうと、真理は唾を吐きかけたい気持ちだった。  
服を脱がされ、二人は全裸になり、田中は真理の脚を開かせて間に顔を埋める。  
「あんなに使い込んでやったのに、綺麗なもんだ」  
田中の舌が秘裂を這い、ビクンッと真理は反応した。  
「気持ち良いだろ? 好きだったものな」  
悔しいが快感があるのは事実だった。田中の舌使いは巧みで、抵抗を忘れるほどのものがある。  
田中は指を一本、そしてもう一本と膣に挿し込み、前後させる。  
「んっ……」  
「我慢したって無駄さ。真理の好きな場所は全部知ってるんだ」  
「いやっ……!」  
クチュクチュと液が満ちていく。堪らず真理は体をよじろうとするが、  
田中は素早い手の動きを止めず、そのまま潮を吹かせた。  
「あっ、ああっ……!」  
「挿入るよ」  
田中は休みを入れず、ぐったりしている真理の膣口にペニスを押し当てる。  
「……ゴム、付けてよ」  
真理は息を乱しながら、虚ろな瞳で求めた。  
「君だって生の方が好きだろ?」  
返事を待たず、田中は正常位で挿入する。  
 
「あうっ」  
「ああ、真理の温かさが直に伝わってくる……!」  
田中はまた、感嘆が混じった声を漏らす。腰を動かせば、グチュグチュと粘着質の音が室内に響いた。  
「良い具合だ。マンコが俺のペニスに馴染んでる。やっぱり俺のことが忘れられないんだな」  
馴染むも馴染まないも、真理の膣は今も田中のそれしか知らないのだ。  
「くっ……」自分を辱めた男に膣内をかき回される屈辱感と、  
覆いかぶさるようにされ、腕を掴まれて抗うことのできない拘束感が同時に押し寄せる。  
かつてはこの拘束感も好きだったが、今では逆だ。  
側位になり、田中は背後から腰を使う。片腕は真理の弾力ある乳房を揉み続けた。  
背中から聞こえる田中の息遣い。それは荒々しく、せっせと腰を振ることに没頭している。  
会社でそれなりの地位にいて、家庭では良い夫、良い父親をして見せている男が、  
若い女の肉体に溺れて快楽を貪っている。妻よりも娘の方が年齢が近いというのに。  
(馬鹿じゃないの?)  
そう、心の中で悪態をつくのが、今の真理にできることだった。  
田中は体位を向き合う座位に変える。  
「なぁ、君も動いてくれよ。良いだろ?」  
頼む口調ではあるが、それが命令なのは歴然としていた。  
「ンッ、ンッ――」真理は腰を振る。嫌な男の、快楽の為に。  
「い、良いぞ。もっと激しくしてくれよ!」  
田中は真理の腰に手を回し、支えるようにする。  
真理はハァハァと息をしながら、後ろに着いていた腕を田中の体に回し、より大きく腰を動かしてやった。  
せがまれれば、キスをしてベッタリ舌を絡ませてもやる。半ば自棄だ。  
瞳に涙を潤ませるが、傲慢で独善的な田中には気持ち良いからだろうとしか映らない。  
「うあっ、最高だよ真理!」  
田中はそのまま、膣内に射精する。  
「はぁ……はぁ……」  
自分の体と動作が、こんな男を射精に導いたのだ。中に精子を出させたのだ。  
真理は自分に対しても嫌悪感を覚える。  
「もう一回、頼むよ」  
田中の旺盛な情欲は、一度では発散しきれない。いつもそうだった。  
真理の表情が当惑を見せ、曇る。  
「……いやよ。言う通りにしてあげたんだし、もういいでしょ?」  
「なに言ってるんだ。あんなに良さそうにしておいて」  
「やめて!」  
田中は構わず、強引に真理を愛撫し続けた。  
四つん這いし、バックで挿入して激しくピストンする。  
ペニスは一度も射精していないかのように硬かった。  
「いやぁっ!」  
「こんな吸い付くみたいにキツく締めといて、なんだよ!」  
田中はせせら笑う。  
愛液と精液が混ざって白く泡立ったものが、膣から溢れ、落ちたり白い太股を伝ったりする。  
耐えられず真理の膝が伸びても、田中は寝バックで突き続けた。  
そういえば田中はこの体位が好きだった――。真理は呻きながら思い出していた。  
パンッ パンッ  
「あっ、ンン、やぁっ……!」  
抵抗しようにも上から圧し掛かるようにされていて、今の自分は、この男の身勝手な欲求のはけ口でしかないと痛感させられる。  
しかし、それなのに、真理の中では絶頂感が駆け上がっていた。もう、このままイッてしまうのは分かる。  
(嫌なのに――!)  
これはあくまでも体の反応だ。勿論、それは理解している。しかし悔しさに、真理は涙する。  
真理がイクのと、田中が二度目の中出しをするのは同時だった。  
火照った体が痙攣し、虚脱する。  
だが鋭敏な膣は収縮してペニスを締め続け、意思とは裏腹に出来るだけ精液を失わないようにしていた。  
 
「良かったよ、真理」  
ペニスを抜き、言う。それは快楽と肉体を提供した女への侮蔑的な感謝だった。  
「そうだ。今日子と君の彼氏を呼ぼう。四人で――」  
パシッ  
真理は体を起こし、田中の頬を平手で張っていた。  
「なっ、なにをするんだ……」  
女の力とはいえ、顔を殴られるのは屈辱的である。  
「すぐに叔母さんと別れなさい。そうじゃきゃ全部バラして、あなたの家庭を滅茶苦茶にするわ」  
田中の顔色が変わった。それは不倫というゲームを邪魔する者への、子供じみた怒りだ。  
「ヤラしといて、いきなりなんだよ。そんなつもりがあるなら、もうやっているはずだろ。  
君の将来にも良い影響はないものな」  
「あなたに家庭があるのは知っていたから、私にも責任があると思ったのよ」  
「フン、女房からの慰謝料請求が怖かったんだろ? 学生には大金だからな」  
決め付けるように言う。  
「俺が不倫のことを彼にバラすって話、忘れたのかい?」  
こんな時でも田中はできるだけ平静を装い、優位に立とうとする。小娘を相手しているという感覚なのだろう。  
「透が全部を知って、それで私のことを嫌になるのなら仕方がないわ。  
あなたが叔母さんを大事にするとは思えない。  
透と離れるのを怖がって、叔母さんを見捨てるなんてできないわ」  
過去の過ちを正当化するつもりも、愚かさをごまかすつもりもなかった。  
真理はただ、今すべき行いをしようと思うだけだ。  
田中は真理の勢いに気圧され、呆然としてしまっている。  
 
 
たぶんつづく  
 

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