河村亜希の写真と車のオモチャ――。それらが食堂に現れた時、みどりは青ざめるのを自覚した。
「帰るわ!」
それを誤魔化す為に大声を出し、椅子から立ち上がる。
「どうしたんだ、みどり」
俊夫は驚いて、みどりの顔を覗き込んだ。
平静さを失ったみどりは、三日月島から帰ることに同意しない俊夫と喧嘩してしまった。
河村亜希を死なせた犯人が女と分かり、村上は計画の変更を今日子に提案した。
殺害するよりも、それ以上の苦痛を与えてやろうと持ちかけた。
ようは女を好きにしたいのだ。他人同然になっていた今日子の復讐心など、どうでも良かった。
みどりは割り当てられた自分の部屋に入ると、ベッドの上に紙切れを見つけた。
手に取ってみると、
『あの日のことを全てばらされたくなければ、一人で村上の部屋に行け』
そう、書いてあった。
「あの日……」
みどりの脳裏を、河村亜希の写真と車のオモチャが過ぎった。
(全部、知られてる……)
みどりは部屋を抜け出し、俊夫らに見つからないように、村上の部屋の前に来た。
「………」
村上は『あの日』のことをどれほど知っているのか。みどりは不安に駆られつつ、ドアをノックした。
鈍い音を立てながら、ドアがゆっくり開く。
「あんたか」
仏頂面の村上が出迎え、室内に通された。
「あの紙は、どういうことでしょうか」
みどりは探るように訊く。
「知らんよ。部屋に来たら紙切れがあって、『これから来る女を好きにして良い。
絶対抵抗しないし、後腐れもない』と書いてあった」
こんな時間に一人で呼び出されるのだ。体を要求される覚悟はしていた。
「しかし、あんたがなぁ」
村上はネットリとした視線で、みどりの体を下から上へと値踏みする。みどりは悪寒が走った。
村上はみどりに歩み寄ると、いきなり体を抱き寄せた。
「ン……」
みどりは体をよじる。村上はそんな嫌がる仕草に興奮して、股間を押し付けた。
そして、酒臭い口でみどりの口を塞ぐ。
「ン、ぐ……」
舌を入れ、相手のそれと絡ませる。みどりの全身をおぞましさが包んだ。
だが抵抗はできない。村上と紙を置いた者の関係がはっきりしない今、逆らうのは危険だと判断した。
みどりは自分が犯した罪の重さと、それが弱みとなり、体を差し出すしかない現実を嘆いた。
流し込まれる唾液。口を塞がれては吐き出すこともできず、みどりはコクッと飲み込んだ。
「はぁ、はぁ……」
ようやく口が離れ、みどりは呼吸を乱す。
「あんた、弱みがあるようだが、何をやらかしたんだ?」
村上は厭らしい笑みを浮かべながら、みどりの胸を揉む。
みどりは何も答えなかった。村上は舌打ちしたが、それほど興味もない素振りをして、みどりの腕を引っ張った。
「痛い」
抗議は無視され、みどりはベッドの上に放られる。村上は自分のシャツに手をかけて全裸になると、
仰向けのみどりに跨り、Tシャツを胸の上まで捲し上げ、ブラジャーを剥ぎ取った。
「ほぉ、結構大きいし、綺麗なオッパイしてるんだな」
感心したような顔をして、片方の手で乳房を揉み、もう片方の手で反対の胸の乳首を摘む。
「おや、少し勃ってきてないか? コリコリしてるぞ」
村上は下品に顔を歪め、チュパチュパと乳首を吸った。
「あっ……」
みどりは痺れるような感覚がして、知らず声がもれていた。
「ははっ、私に抱かれる女はな、最初は嫌がっていても次第に変わってくる。抱いてくれ、抱いてくれとせがむようになる」
村上は、抱いた女の数が自慢のような男だった。金と権力があれば、女を好きにできると思っている。
そんな傲慢さと下品さは、皮肉にも体を通してみどりに伝わる。
みどりは涙を流したが、それは村上の倒錯した欲情を刺激するだけだった。
村上はみどりのショートパンツを脱がせ、パンティーをずり下げる。
みどりは羞恥心のあまり、思わず手で顔を隠した。
村上はみどりの脚を開かせ、秘部を拡げる。そして、わざとしく感嘆の息を漏らす。
「ここも綺麗だな。あの激しそうな旦那とやりまくって、もっと充血してるかと思った」
「やめて、夫のことは言わないで」
夫の目を忍んで、他の男の前で股を開いている……。みどりは罪の意識を感じていた。
村上は無骨な指を唾で濡らし、みどりの秘部を弄る。
「う、あ……」
「我慢しないで、どんどん感じろ。その方が楽しいぞ」
村上は言って、顔を埋める。
「ああっ……」
筋を村上の舌が這う。
「気持ち良い……」
みどりは、口走ってしまった自分の言葉に愕然とした。
村上は得意げな顔をして、執拗に責める。膣に指を差し込んで前後させ、クリトリスをなめ、音を立てて吸う。
村上はセックスなれしていて、そのテクニックは凄かった。
みどりは悔しかったが、感じている演技をする必要がなかった。
やがて、『村上の機嫌をとらなければ』を自分への言い訳に、愛撫に対して大胆になっていった。
乱れていくみどりを、村上は喜んで受け入れる。
「すっかりビチョビチョだ」
村上は愛液で濡れた手を、みどりに見せる。
「やめて」
みどりは顔を背けたが、その反応の仕方は最初と全然違う。どこか男に媚びている様な気配がある。
村上はニヤニヤと笑って、勃起したペニスを膣口に押し当てる。
「む、村上さん」
「なんだ?」
「コンドームは……」
「生憎、持ち合わせがない」
嘘――。みどりは直感的に分かった。だがやはり抵抗はできないし、それに、膣がペニスの挿入を待ちわびて疼いていた。
村上は正常位で、ペニスを膣内に挿入する。
「ン、ンン……」
「ああ、やっぱり、すぐにヤらせるような女とはマンコが全然違う」
村上は嬉しそうに言い、腰を動かす。その動作はゆっくりで、みどりの膣の具合を全て知ろうとしていた。
みどりもそのせいで、村上のペニスがどうなっているのか、立体的に想像できてしまう。
亀頭と竿の形、長さ、太さを、膣が窮屈そうに締めながら測っているようだった。
体格に似合わず大きい。それは俊夫と比べても遜色がなかった。むしろ硬さでは俊夫よりも上で、みどりの好みに合った。
「あん……」
みどりからもれる声は、紛れもなく感じている女のものだった。
「旦那以外のペニスを挿入られて、気持ち良いのか?」
「いじわる言わないで」
村上は鼻で笑うと、みどりの足首を掴んで脚をV字に開かせ、腰を動きを速めた。
「あっ、ああっ、良い!」
声が大きくなり、みどりは慌てて口を手で押さえる。他の者に自分が村上の部屋にいることを知られたくはない。
特に、俊夫は妻が部屋にいないことに気付き、探し回って廊下にいるかも知れないのだ。
「ふぅ」
村上は息を吐くと、ペニスを抜いた。
「あっ――」
抜かれてしまったという空虚さと喪失感に、みどりは困惑する。自分がどうしようもない、ふしだらな女に思えた。
そうか――と、みどりは理解する。
自分は、夫以外の男に抱かれて快楽を感じている背徳感に、なおさら興奮しているのだ……。
みどりは四つん這いにさせられた。そして、後ろからアソコを拡げられる。
「凄いな。膣口がヒクヒクしている。私のが欲しくて仕方ないんだな」
村上はバックで挿入した。
「あうん!」
「自分で動いてみろ」
「え?」
「ペニスが折れたら堪らん。慎重にな」
「……は、はい」
みどりは、自分の旺盛な性欲を認めざるを得なかった。夫以外の男の為に、村上の為に腰を動かす。
「うぅ、気持ち良いぞ。締め付けが半端じゃない」
村上はみどりの体を撫で回し、ポニーテールを軽く引っ張ったりする。
「さて、奉仕してくれた淫乱奥様に、褒美をやらんとな」
村上は口端を歪め、みどりの尻を掴む。そして激しく突いた。
パン パン パン
「あっ、ああっ、ああっ!」
高速で奥まで貫かれ、みどりは声を殺すのも忘れて、大きく嬌声を上げた。
「こ、こんなに良いの初めて!」
「旦那よりも良いかっ?」
「うん! 腰使いが凄いの! もっとしてぇ!」
みどりは耐えられず、ベッドに突っ伏した。それでも村上の動きは止まらない。
「ああっ、イクッ! おかしくなっちゃう!」
「うっ、もうダメだ!」
村上は呻き、人妻の膣内に射精した。
「はぁ、はぁ……」
二人は息を乱し、しばらく動けなかった。
「こ、こんなに良いのは、私も初めてだ」
村上はペニスを抜きながら言う。ドロドロと膣から精子が流れ、ベッドを汚す。
「ははっ」
村上は、生意気そうで鼻持ちならない男の妻に中出ししてやったことに、満足だった。
コンコン
突然ノックがし、みどりはギクッとした。
「来たか」
村上はドアに歩み寄り、何の躊躇いもなく開けた。
「おお、本当にやってるんですね」
閉所恐怖症と酒で足元がおぼつかない正岡が、ふらふらと部屋に入って来る。
「ま、正岡さん……」
みどりは動揺を隠せず、正岡と村上を交互に見た。
正岡は卑しい笑みを浮かべると、紙切れを見せた。みどりの部屋にあったものに、よく似ている。
「こんな館に缶詰なんだ。女くらい抱かせてもらわないとね。我孫子武丸も、随分と味なマネをするよ」
正岡は言いながらベルトに手をかけ、ズボンを下ろした。そして半勃ちのペニスを、みどりの鼻先に突き付ける。
「頼みますよ、奥さん」
正岡はニヤニヤ笑う。
躊躇していると、「我孫子に逆らって良いのか?」と村上が睨んできた。
みどりは怯えた目で、仕方なく正岡のペニスに手を伸ばした。
シゴき、硬くなったところをしゃぶる。
「うっ……上手だね。旦那に教えてもらったのかい?」
正岡のペニスは完全に硬直した。
「ようし、挿入るぞぉ」
正岡はみどりを横向きに寝かせて、後ろから体を密着させる。そして片脚を上げさせ、ペニスを挿入した。
「はぁん!」
みどりは快感のあまり、また声を上げた。もう、誰かには聞かれているだろうと思う。
「凄い締め付けだなぁ、奥さん。普段、あんまりしてないんじゃないの? もしかしてセックスレス?」
正岡は無遠慮に言葉を浴びせつつ、腰を動かして、みどりの肉体を愉しんだ。
みどりの片足は抱えられているので、村上からは挿入部が丸見えだった。
「旦那以外のペニスをそんなに美味しそうに咥え込んで、とんだ淫乱だ」
「あっ、あぁんっ」
みどりはその通りだと思い、否定するのは無理だと感じた。
挿入されている膣だけでなく、正岡と触れている全てが性感帯になった感覚なのだ。
それに今もこうして自分でクリトリスを弄り、さらなる快感を求めている。
「あぁっ、イッちゃう!」
「うっ、僕もイクよ!」
絶頂の中で、正岡の精子が膣内に満ちていく。
「さて、そろそろ次の男が来るぞ」
村上が笑った。
みどりは虚ろな目で、欲情しきった今の自分なら、誰のペニスであろうと受け入れると思った。
俊夫は勿論、透、小林、美樹本、香山……。
彼らとのセックスは、一体どんなものなのか。組み敷かれ、犯されてみたかった。
想像するだけで秘部に愛液が溢れる。理性が侵されているのは、自分でも分かっていた。
おわり