「メリークリスマス! ……ははっ」
自重気味に透は笑いながら、ディスプレイの前に置かれた火の付いた蝋燭が一本立てられた、1/8カットのケーキに目を見やる。
片手に持ったコップの中身は、流行りとやらで衝動的に購入したクリスマスビールで満たされていた。
ケーキをやけくその様に食し、クリスマスビールで流し込みながら、視線をディスプレイへ向けた。
画面上には以前拝み倒して撮影を許可してもらった、真理がにこりと美しい微笑みを浮かべていた。
「思えばあの頃が最盛期だったな……」
せっかく大学生活でいい感じになりかけたのに、真理に誘われて三日月島へ行った際、我孫子と言う胡散臭い親父に真理を奪われてしまったのだ。
その時は、呆然の面貌で考えもまとまらないまま、一人寂しく自宅へ戻った。
その後、真理から結婚式の招待状を貰ったが、怒りと哀しみが入り混じった複雑な感情がこみ上げて衝動的に破り捨てたのだ。
仕舞いには、大学も中退し、引き篭もり生活を続けて、一人侘しくクリスマスケーキを貪る。
あんまりだ、と透は思った。僕が何をしたっていうんだ。
「真理……」
ディスプレイの中でいつもと同じように微笑む彼女を見て、透は深いため息をついた。
彼のため息は今日すでに何度目か数え切れないくらいの回数を重ねている。
「……決めた。」
透は急に思い立ったように身仕度し、愛車を走らせた。
……我孫子と真理の家は都内の住宅街にある。透はおぼろげな記憶を頼りにヨタヨタと車を走らせ、なんとか家の前にたどり着いた。
周りの家とひとまわり大きさが違う我孫子の家は、2Fのバルコニーに電飾が施され、庭には大きなツリーも飾られている。我孫子と真理の幸せな生活が垣間見える風景に、透は訳もなく腹立たしさを感じた。
[カンコーン♪]
重そうなドアに相応しいベル式の呼び鈴を鳴らすと、少したってドアの向こうから『は〜い』という聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「あ、…あの…」
透が満足に名乗れないでいると、ドアは向こうから開いた。
「……透!久しぶり…だね」
真理は驚いてはいたが、決してその驚きはマイナスの感情ではないようで、
「こんな寒いときにどうしたの?とりあえず中に入って」
自分が寒いのもあったんだろうが、とりあえずは透を中に迎え入れて、真理はドアを閉めた。
「真理〜、お客さんかい?」
左手にワイングラス、そして頭には赤い三角帽をかぶった我孫子の姿が唐突に廊下から現れた。
「透くん!メリークリスマス!」
我孫子はもうほろ酔い気分のようで、透がなぜ来たかなど聞きもせずに高々とグラスを挙げて迎えた。
「あ、はい……こんばんは。突然スミマセン…近くまで来たもんで」
「そっかぁ、是非上がっていってくれ。ゆっくりしていけるんだろ?」
予想もしていなかった二人の歓迎ムードに透は拍子抜けしたが、廊下の奥から漂ってくる七面鳥の香ばしい匂いも手伝い、靴を脱いだ。
「真理が友達を誘ってたんだけど、急に来れなくなってね。余りだけど、良かったら思う存分食べていってくれよ」
我孫子の『余り物だから』という申し訳なさそうな言葉とは裏腹に、テーブルにはレストランばりの豪華な料理が並んでいる。
「全部私の手づくり、と言いたいとこなんだけど、半分くらいは買ってきちゃった」
透のコートをハンガーにかけながら悪戯っぽく微笑む真理の姿は、昔となんら変わってない。その笑顔を見れただけで、透は幾分救われた気持ちで満たされる。
「さぁさぁ、座って」
上機嫌な我孫子に椅子を引いてもらい、透は食卓についた。
「ふ〜、食った食った…」
楽しい食事の流れで透は我孫子に半ば無理矢理に泊まっていくように言われ、二階のゲストルームに通された。
赤ら顔でベッドに横たわり、うとうととしていると、ドアのノックの音が意識の向こうから聞こえてくる。透ははっとして返事した。
「透、もう寝てた?」
「い、いや…大丈夫」
返事しながらドアを開けると、バスローブに着替えた真理が立っていた。
「少し…お話しない?」
彼女の手にはキンキンに冷えたグラス入りのジュースが二つ持たれていた。透は当然断る理由もなく、真理を招き入れた。
「久しぶりだね、透とこうやって話すのも」
「う、うん…」
バスローブの中の彼女の胸の膨らみは、前より確実に大きくなっているように感じた。彼女のスレンダーな体ではいっそうそれが強調されて、透は目のやり場に困る。しかし、目を離すにはあまりに惜しく感じられた。
「ん、胸?」
真理は嫌がりもせず、にこにこと笑って透の視線に気付いた。
「武丸さんが胸の大きな女の子がタイプだって言うから…」
「まさか…」
豊胸したのか?という二の句が告げずにいると、
「胸が大きくなるクリームとか、食事とか…けっこう努力したんだから」
と真理が言い、なぜか透がホッとした。
「じゃ、部屋に戻らなきゃ…」
「えっ、真理もう行っちゃうの?」
「うん、ゴメンね。ゆっくりしてて」
困惑の表情を浮かべたままの透を残して、真理は部屋を後にした。
「う〜ん…」
透はベッドに横になって30分ほどが経っても、なかなか寝付けずにいた。と、いうのも下半身が妙に熱くて落ち着かないのだ。
「ないなぁ…」
透はこれを一人で治めようと考えたが、辺りを見回しても肝心のティッシュがない。彼は少々気が引けるものの、トイレで自慰行為におよぶことにした。
「…ん、んっ…」
トイレに行こうと廊下を進んでいると、ある部屋の向こうから声が聞こえる。
「たけま……おね…欲し…」
「何言っ……んな……」
ドアで遮られているのでハッキリとは聞こえないが、透はそれが真理と我孫子のセックスであることは疑う余地も感じなかった。二人に気付かれないようにそっとドアにそっと耳を付けてみる。
「お願いします…ご主人様ぁ…」
「真理…そんなに欲しいんなら、ちゃんと奉仕するんだ」
「はい…」
透には声しか聞こえないが、中で何が行われているかは明白だった。
「透君、そんなとこでコソコソしてないで入っておいで」
不意にドアの向こうから我孫子が自分を読んだので、透は心臓が口から飛び出そうなほど驚いた。
「その様子じゃ、部屋に帰っても眠れやしないよ?」
様子?なんで我孫子が自分が眠れないことに気付いているのか?透は訝しく思いつつ、部屋のドアを開けた。
「えっ…!?」
透は自分の目を疑った。ベッドの上に裸の二人がいることは予想していたが、真理は両足を別々にベッドに繋がれ、四つん這いになって我孫子のペニスに口で奉仕していた。
「透……透も私のこと気持ち良くしてくれるんでしょ?」
真理は透の姿に気付いても恥ずかしがることなく、獲物を見るような目で舌なめずりする。
「我孫子さん…これは一体…?」
「真理の言ってたクリームには強い催淫効果があってね。しかも出会ってから1年かけて調教してきたから、この通りさ。真理、透くんを気持ち良くさせてあげなさい」
真理はこくりと頷くと、素早く透の穿いていたチノパンを下ろし、カチカチになったペニスを取り出した。
「透のオチンチン、すっごく硬くなってる…食べていーぃ?」
真理がうっとりとした視線で透のペニスを見つめ、裏筋を優しく舐めてくる。
「真理っ…くっ…」
部屋のPCのディスプレイでいつも微笑みかけてる、あの優しい笑顔の持ち主が自分のペニスを激しく欲している。
出会ってから今まで数え切れないくらい、妄想で彼女を汚してしたが、今目の前にいる真理はどの妄想よりも刺激的だった。
『ジュル…ジュルジュル…』
唾液をペニスに絡めてのフェラで部屋中が卑猥な音でいっぱいになる。
「良かったなぁ、真理。たまには違う人のも味合わないとな?」
どうやら二人にとってはこういうことは初めてではないらしい。透の想像を越えた夜が、始まった。
透は未だに目の前の状況を信じられず、幻を見てるのかと目をつぶり、ゆっくり開けてみるとやはりそこに真理がいる。
「どおしたの透…刺激強すぎる?」
「いや、…大丈夫。すっごくキモチ良いよ」
「良かった…」
透が笑顔を見せると真理は再び透のペニスを口で攻め立てる。
『んっ…んっ』
リズミカルにくわえ込む深さを変え、しかもその口内では前後左右に舌を動かしている……下半身の快感と目に映る真理の卑猥な乳房の揺れに、今にも透のペニスは爆発しそうだった。
「きもひいぃ…?」
透の顔を真っすぐに見つめながら真理が上目遣いで尋ねる。
「はぅ…真理ぃ…」
透は押し寄せる快感の波に流されてまともに会話が出来ない…そのくらい感じていた。
「出ちゃう?出していぃよ…いっぱい出して」
真理が口を話して手で激しくこする。
「真理ぃ……出すよ…あっ、あっ…うぅぅっ!!」
真理の顔に大量の精液が跳び、彼女の前髪から口元までのセンターラインを白く塗った。
「すごいいっぱぃ……キモチ良かった?」
「うん、最高だよ、真理……」
透は虚ろな目付きで真理を見つめる。
「透君、どうだい?真理のテクニックは?」
我孫子はいつの間にかビデオカメラを構えて今の様子を撮影していた。
「おっと、心配しなくてもこれをネタに脅したりはしないから安心してくれ。ただの趣味だよ。さぁて…」
我孫子はビデオカメラを三脚にセットすると、いきり立ったペニスを真理の後ろから挿入しようと、真理の秘部にあてがった。。
「っ…くっ…ん…ご主人様ぁ……ご褒美…欲しいですぅ」
「今日は透くんもいることだしな…いっぱいイカせてあげよう」
我孫子は不敵な笑みを浮かべると、一気に真理の中へ挿入した。
「ひっ!!んっ…あぁん!」
真理はあまりの快感にベッドにへたり込むように突っ伏す。
「ご主人様のチンポぉ…すごぃ…です…んっ」
彼がストロークを繰り返すたびに真理の体内から押し出されるような喘ぎ声が漏れる。
「真理…何してるんだ?今日のお客さんのペニスをちゃんとキレイにしてさし上げるんだ」
我孫子がそう命令すると、真理は貪りつくように透のペニスにしゃぶりつき、射精したときに残った精液を中から搾り出していく。
「あっ…真理……すっごい…」
透のペニスは当然ながら再びその脈を早め、鋼のように固くなった。
「真理、透くんのが欲しいんじゃないのか?」
「そんな…ご主人様も見てるのに…」
「何を恥ずかしがってるんだ?その割りにはカラダは嘘を付いてないみたいだな」
「んっ…あぁぁぁっ!!」
我孫子がピストンの動きを強め、真理はシーツを手繰り寄せるように掴む。
「透くんのが欲しいなら、ちゃんとおねだりするんだ!」
我孫子の言葉に促されるようにして、真理は突っ伏したまま、顔だけ透に向けた。
「お願い…透のギンギンになったオチンチン、私のなかにちょうだぃ?」
「う…うん、もちろん」
透は真理からおねだりされなくても、襲い掛かりそうなほどに欲情していた。
「じゃあ透くん、どうぞ」
我孫子が真理のカラダから身を離し、彼女をベッドに繋いでいた足枷せも外す。真理はベッドに仰向けになると、自分で透を抱き寄せた。
「いくよ?」
真理がコクリと頷くと、透は慎重に慎重になかへとペニスを挿し込んでいく。
「はんっ!…キモチぃ…透ぅ…」
真理は背中を少しのけ反らせて声を漏らす。透は挿入するまでは、うまくできるか一抹の不安を感じていたが挿入してみると、その不安もどこかに消し飛んでいた。
「真理っ!すげぇよ…」
彼女の愛液が潤滑油となり、ピストンをするたびに透のペニスを優しく包む。
「ひっ…んっ…透!!」
真理は透に抱き着き、唇を貪るように重ねる。透の目にこんな情熱的な真理が映るのは初めてだった。
「今度は私が上になるから…」
透は真理の言葉のままにキングサイズのベッドに横たわり、その上に真理が跨がる。
「真理の胸…すげぇ」
もともとDカップくらいあったはずの彼女の胸は大きく膨らみ、今ではGカップくらいにはなっていた。下から見るとその存在感が透を圧倒する。
「くっ…きつぃ…」
真理が両手を透の下腹部に付けながら、ゆっくりと腰を沈める。透が思わず真理の豊かな胸に手を伸ばし、その柔らかさに触れる。
「真理……すごい、すごいよ」
透には他の言葉が見つからず、繋がったまま、甘え盛りの赤ん坊のように彼女の胸に顔を埋める。
「真理…良かったなぁ、透くんに褒めてもらって?」
我孫子が今度は別のハンディカメラを持ったまま、彼女の口元にペニスを差し出す。
「はぃ…ご主人様」
真理は浅黒いペニスの裏筋から舌を這わせ、我孫子の顔を見ながら口に含む。
「真理…僕もキモチ良くして?」
今度は透だ。真理はニッコリと微笑むと、透と繋がったまま前後に腰をグラインドさせ始めた。
「あっ、真理っ!」
透は味わったことのない卑猥な刺激に思わず背中をビクンと震わせ、快感の電流をその体の隅々まで行き渡らせる。
「んっ…ふぅ…んっ」
真理は透のペニスがもたらす快感に感じながら、しっかりと我孫子のペニスにも奉仕する。
「そうだ、そうだよ、真理……すごく上手くなったじゃないか」
快感と、目から飛び込む妻の卑猥な姿に思わず我孫子のカメラも震えてしまう。透はといえばときおり真理の豊かな胸に手を伸ばし、その感触を味わっている。
「イキそぅ……二人とも…ザーメンいっぱい…出して」
真理は我孫子のペニスを右手で擦りながら、大きく上下に動いて透の精液を体で受け止めようとする。
「う…真理…もうすぐ出るよ…中で…いぃの?」
「いいよ、透…んっ…いっぱぃ…出して!武丸さんも…」
「はぁっ……うっ…出るぞ…真理っ!!」
透の精液が真理の中に噴射されるのと、我孫子の精液が真理に浴びせられるのはほぼ同時だった。
「すごぃ…二人とも……いっぱぃ出してくれて……」
真理がビクンビクンと体をしならせて、そのまま後ろに倒れ込んだ。
「ま、真理!?」
キングサイズのベッドなので落ちることはなかったが、驚いて透が飛び起きる。
「大丈夫だ…たまにこういうことがあるんだ。……少しそのまま寝かせておけば…心配ない」
おびただしい量の精液を噴出したせいか、我孫子の息も絶え絶えだった。
彼は真理に毛布をかけ、クローゼットからガウンを二着取ると、一着は自分で、もう一着は透に渡す。
「実は…きみに打ち明けなきゃいけないことがある」
我孫子はベッドに横たわる真理の姿を見つめたまま突然、独り言のように語り出した。
「真理がときおり、寝言できみの名を呼ぶんだ。最初は夢を見てるだけかと思ったが、今まで何回もそんなことがあってね」
透は驚いて真理の姿を見る。
「彼女はホントに良い妻だし、私のことも愛してくれているはずだ。ただ、三日月島であんな形できみとの関係を絶ったことは後悔してるみたいでね」
透は驚きのあまり何も言えずに我孫子と真理の姿を繰り返し見つめている。
「もし、きみが構わないなら…」
我孫子は透のほうに向き直り、目を見て言った。
「もし、きみが構わないなら、こういう形でもいいなら、彼女の心の隙間を埋めてやってくれないか?」
我孫子が透に頭を下げる。
「そんな、我孫子さん…頭を上げてください!」
透は慌てて我孫子の頭を上げさせる。
「……わかりました。僕でいいなら…」
翌々週の金曜日、透と真理の姿は都内のシティホテルにあった。勿論我孫子も了解済みで、このホテルも我孫子が予約したものだ。
「真理……」
都内の夜景を見下ろす部屋で、透は真理を後ろから抱きしめる。
「透ってば…胸ばっかり」
真理が向き直り、透の腕の中で微笑む。
『この笑顔を守れるなら…真理がそばにいてくれるなら…』
「どうしたの?透」
「いや、なんでも…」
透は真理を優しく、しかし、しっかりと抱きしめた。
No.777
我孫子邸にて 完