ガラス割れた窓からは容赦なく雪混じりの風が吹き込み、
部屋の温度は急激に下がる。僕は背筋に冷たいものが走った。
それは寒さからではない。僕達に近づいてくる美樹本から殺気…とでも言ったらいいのか。僕達を恐怖に陥れる何かを感じたからだ。
「気が変わった」確かにそう聞こえた。
だが、僕にはその意味を確かめるすべはなかった…薄れていく意識の中で真理が
僕を呼ぶ声が聞こえる…真理、逃げろ…美樹本は…
まともじゃ、ない…真理…ま…り…
*
それは突然だった。美樹本は椅子を振り上げると、私を庇う透の頭に打ち付けた。
「あぁ…っ、なんてことを!透、透っ、大丈夫?しっかりして」
床に崩れ落ちた透を、泣きながら抱き起こそうとすると血だらけの椅子がそれを阻止した。
「白馬の王子様はおねんねだよ。さぁ、俺の部屋でたっぷり楽しもうぜ、ここは寒くてかなわん」
美樹本はニヤリと笑い椅子を投げ捨て、嫌がる私を無理矢理この部屋、このベッドに連れてきた。
「貴方尋常じゃないわ。一体何者なのっ」
「俺は只のフリーライター。さて…真理サン、アンタに残された選択肢は2つ。
おとなしく俺に抱かれるか、抵抗してる間にアンタの王子様が凍え死んじまうかだね」
私の心の中で私の声がした…迷っていられない。透が死んでしまう。
「私は…何をすれば…いいの?」やっとの思いで声を絞り出す。
すると答えるより早く美樹本は私の手を引っ張り、布ごしに硬直し
熱を帯た塊に押し付けた。それが男性器であるとすぐに分かったが
体がすくんで動けない。恐怖と嫌悪感で涙が溢れる。
「さぁ、これを自分から取り出して貰おうか。ぐすぐずするな」
大きな声で怒鳴られ震える手でベルトを外し、前を寛げる。
すぐにそれは姿を現した。ムッとするほど強い牡の臭いと
グロテスクなほど狂暴に張り詰めたモノ。
「アンタの王子様にするみたいに口でしろよ」
「無理よ、私…どうしたらいいか分からないわ」
「ブリっ子してんじゃねえよ。その綺麗な指を絡ませて舌で舐めあげるんだよォ」
髪を掴まれ股間に引き寄せられる。もがくのも構わず膨張した砲身が顔面に接触した。
「ぅ、ぐっ…」
躊躇いながらも舌先を触れさせてみる。苦く酸っぱいような味がして吐きそうになった。
「ほら、早く舐めろって」
焦れた美樹本がペニスを押し付けてくる。両手で頭を押さえつけられ
逃げることもできない。恐る恐る舌先を動かす。
「そうだ…最初から素直になりゃ、いいんだ…指も動かして扱いてみろ…」
指図されるままに絡めた指でペニスを扱き、先端部分を舐めていく。
ペニスの熱や脈打つ様子が嫌おうもなしに感じとられ嫌悪感は募る。
…助けて、もういやぁ…
心の中で叫んでも儚い望みだった。
「ぅ…いいねぇ、泣きながらフェラする女ってのもそそるぜ」
見張られる中、一刻も早く解放されたい一心でひたむきに作業に取り組む。
美樹本の視線が身体に絡み付くのが分かる。息が荒くなり、くぐもった呻き声が漏れ聞こえてくる。
自分が汚されていく悲しみで胸が張り裂けそうだった。
この部屋に連れてこられてどれだけの時間がたったのか。
果てしなくこの苦痛が続くのではないかと錯覚し始めた時だった。
「ぁあ…いい気持ちだ。…もぅ堪らねぇ…ッ」
その言葉と共にペニスを喉奥まで突き立ててくる。
乱暴に髪を両手で掴み、ほんのりピンクのルージュで彩られた唇に遠慮もなく侵入する。
「ぁく…ぅ、うう、ぅぐ…」
これでもかと咥内を侵され息をすることもままならず苦しくて感覚が麻痺してくる。
「美味しいだろう?もっと美味いのをご馳走してやるぜ」
美樹本が声をあげた瞬間、ペニスが重量を増し、ビクンと脈打つ。
そして先端から生臭く粘りのある液体が口いっぱいに広がる。
「飲め。一滴残さずなぁ…っ」
押さえつけられ、逃げることも叶わず、口の端から溢れそうな程に大量で苦く生臭い精をただ飲むしかない。
その間もペニスを喉奥にねじ込まれ続けた。
ようやく唇からペニスが引き抜かれると、気を失いかけベッドに倒れ込む。
その様子を見て美樹本はニヤニヤと問掛けてきた。
「なぁ、真理サンよォ。あんた処女だろ。」
勿論答えられる訳もなく、その冷酷な声に身をこわばらせる。そんな様子に美樹本は笑い出した。
「こりゃあいい。俺はてっきりあの坊やとヨロシクしてんのかと。…そうかい、処女だったか」
舌舐めずりで近付いてくるとセーターの上から左胸を鷲掴みにする。
「いっ、痛い。嫌ぁ…止めてぇ…っ。言うとおりにしたじゃない…放してよ」
ありったけのの力を振り絞り、抗う。
「へへへ、そんなに逆らうなよ。抵抗されたら、男は余計に興奮するんだぜ」
手のひらが腰から太股を撫でまわし、両足の間に体を割り込ませてくる。
おぞましい感触に全身に鳥肌が立つ。がっちりした体躯の美樹本にのしかかられては
突き放して逃げることも出来ない。恐怖のあまり体がすくみ、腰が抜けたようになってしまった。
…もう、ダメかもしれない
そう思った時だった。
鈍い音がして美樹本が何か意味不明の呟きと共にぐったりして動かなくなった。
「真理、大丈夫か?」
その聞き覚えのある声の主は、美樹本を退かすと顔を覗き込んでくる。
それは間違いなく透だった。頭を血だらけのままで助けに来てくれたのだ。
安堵と喜びで、また涙が溢れる。私の白馬の王子様はやっぱり透だったんだわ…。
強く抱き締められ、優しく背中を撫でられる。ようやく落ち着きを取り戻し、床に目をやるとあの椅子が転がっている。
…透ったら、自分が殴られた椅子で復讐したのね。
その時だった。
透がそっと耳元で囁いた。
「真理、美樹本さんにしたみたいな事、僕にも……」
終