啓子がシュプールのドアを開けると、いつもの笑顔で小林が迎えた。  
「やあ、いらっしゃい」  
「こんにちは」  
お辞儀をする啓子の後ろから、たった一人の客を送迎して来た今日子が小林に声をかける。  
「それじゃあ、わたしはもう行くから。ちょっと遅くなるかも知れないけど…」  
たまにはいいでしょ?とでもいうように相手の顔色をうかがう今日子に、小林は苦笑いでわかっているよと頷いた。  
子供のように「やった!」と小さく叫んだ今日子は啓子に向かって済まなそうに両手を合わせる。  
「せっかく来てくれたのにごめんなさいね?でも楽しみにしてたお芝居なのよ」  
「いえわたしこそ、ほんとはお休みなのに押し掛けちゃって…」  
「あら!啓子ちゃんは特別よ。あ、レシピは冷蔵庫に貼ってあるから、忘れずに持って行ってね」  
今日子は小林の方を向いて軽く手をあげた。  
「じゃ、行ってきます」  
「いってらっしゃい」  
小林と啓子は揃って今日子を見送り、その車が見えなくなると小林は中に入り鍵をかけた。  
 
ペンションの中には開け放たれた窓から初夏の爽やかな風が流れ込み、レースのカーテンを揺らしている。  
小林は談話室で待つ啓子にさっき今日子の言っていたレシピを差し出しながら話しかけた。  
「この前の電話の後はすぐに眠れたのかね?」  
「いえ、それが……」  
レシピのメモを鞄に仕舞いながら言葉を濁す啓子は、一気に染まった頬を隠すように下を向いた。  
「うん?どうしたんだい?言ってごらん?」  
「あ、あの…」  
「啓子ちゃんは良い子だね。いつまでもそうやって恥じらいを忘れない」  
小林はそう言って優しく微笑み、啓子が打ち明けるのを待った。  
「電話を切る時に、こ、小林さんが変な事を言うから……なんだか身体が熱くなって……」  
小林は静かに聞いている。  
「その…。教えてもらった通りに、お………」  
ごくっと小さく唾を飲んでから啓子は続けた。  
「……オナニーしてから寝ました…」  
小林は啓子の頭をよしよしと撫でて、優しく聞いた。  
「そうか。上手く出来たかい?」  
「ま、まだ……い……いけなくて…………」  
聞き取るのが難しい程ちいさな声だった。  
「最初は誰でもそんなものだろう。それじゃあ、今日も見せてくれるね?」  
「は、はいそれは……。でもその前に…」  
 
顔を真っ赤にしながらも小林を真っ直ぐ見つめる啓子に、小林はにこりと頷いた。  
「今日はもう何の予定も無い。今日子が戻るのは暗くなってからだし、帰りは駅までわたしが車で送るし、時間はたっぷりあるよ」  
先に立って階段を上りながら、小林は説明した。  
黙って後ろを付いて来る啓子は、ホッとすると同時にじわじわと身体を熱くしていた。  
いや。ここまで乗って来た車の中ですでに身体の中心には切ない疼きが湧き上がっていて、これからされる事や新たに教えられるであろう事へのいやらしい期待に、指の先からトロトロと融けてしまいそうになっていた。  
そして啓子がそんな風に感じているであろう事を、小林は充分に分っていた。  
静かに後ろをついてくる啓子の疼きを思うと、小林の心は少年のように躍り、品格を失った興奮もまた狂おしく湧き上がった。  
いつもの部屋に二人で入り、ベッドに座った啓子がもぞもぞと服を脱ぐのを見ていた小林は、最初の夜の事をふと思い出した。  
 
〜〜〜  
 
冬に三人でここに来た時は、スナック菓子の食べカスをベッドに散らかして帰った啓子に、困った娘さんという印象しか無かった。  
春に眼鏡の娘と二人で来た時には、俊夫に会うのが目的だというのがすぐに分った。  
 
「シーズンが終わったのでもう居ない」と伝えると、眼鏡の子に「ほらやっぱり」とからかわれていた。  
しょんぼりと帰路に就く後ろ姿に、小林は微笑ましさを感じていた。  
_俊夫くん目当ての娘は事前にそれとなく探りを入れてから来るんだが。  
_今時の女の子は奔放で要領だけは良いように思っていたが、ああいうのを見ると癒されるな。  
ところがそれからひと月も経たないうちに、今度は一人でやって来た。  
気の毒になった小林は思い切って事実を伝えた。  
「実は俊夫くんは篠崎くんと結婚する事になったんだ。ほらあの、もうひとりのバイトの子と」  
啓子は驚いた様子も無く静かに言った。  
「そうなんですか」  
「仕事も見つけて就職したから、もうここで働く事は無いよ」  
泣き出すかと思ったが、啓子は黙って下を向いたままだった。  
慰めの言葉が見つからない小林は、アイスティーで気分を変えてもらう事にした。  
食堂で向かい合わせに座り、薦められるまま啓子はグラスを手に取った。  
上目遣いで小林を見ながらストローをそっと含み、一口こくっと飲んでからグラスを置いた。  
_案外平気そうだな。じゃあわたしは他の用事を…  
小林が腰を上げようとした時、啓子がぼそっと言った。  
「おじさん…わたしとエッチしてください…」  
小林は耳を疑った。  
動揺を鎮めようとグラスを掴んだ小林に向かって、啓子は自棄を起こしたように喋り出した。  
「わたし、処女なんです!」  
 
小林は飲みかけの冷えた紅茶をぶぶっと吹き出した。  
「可奈子は分ってたけど、亜希もとっくに済ませてて!それがショックで!」  
「初めての相手は俊夫さんみたいな素敵な人とって思ってたけど、それも無理で!」  
「君は一体、何を言っているのかね!」  
小林の声を無視して啓子はまくしたてた。  
「だったら二度と顔を合わせない行きずりの人でもいいと思って来たのに誰もいないし!」  
小林は露骨に渋い顔をした。  
_君以外に客がいなくて悪かったね。  
「すっかりそのつもりで家を出たんです!もう引き返せないんです!」  
_知らんよ、そんな事。  
「お願いします!お願いします!」  
何度も頭を下げる啓子に呆れながら小林は言った。  
「もう少し冷静になりなさい。そういう事はもっと慎重に」  
「あたしは冷静です!すごくすごく考えてここに来たんです!」  
「し、しかし、なにも相手はわたしじゃなくても。他にもっと若い、いやその」  
急に啓子は項垂れた。  
「どうせ誰もあたしなんか相手にしてくれないもん…」  
_わたしのような中年なら、喜んで飛びつくとでもいうのか。  
いっときでも癒されるなどと思った気持ちを裏切られたような気がした。  
とにかくまともに相手にする訳にはいかない。しかし今は何を言っても無駄だろう。  
「分ったよ。今夜部屋に行くから」  
「ホントですか?!ドタキャンは無しですよ!」  
慎みとは程遠い啓子の声に、小林の怒りは疲労に変わってしまった。  
 
無論小林は説得するつもりで部屋を訪れた。  
_そういう事を軽々しく、相手構わず言ってはいけない。  
_まだ若いのだから焦らずに。  
_いつか必ず素晴らしい男性が現れる。  
様々な台詞を頭の中で何度も繰り返し、深呼吸してからドアをノックした。  
ベッドの上に、裸にバスタオルを巻いた啓子が座っていた。  
緊張しているとばかり思っていたのに、その顔は期待と好奇心できらきらと輝いていた。  
なぜかとても可愛らしく見えた。  
ぽかんと薄く口を開けて立ったままの小林に、啓子は自分の隣りをぽんぽんと叩いてにこりと笑った。  
_君には負けたよ。  
小林は覚悟を決めた。  
 
啓子の隣りに座り所在なく自分の襟元をぽりぽり掻いていると、横から興奮した声がした。  
「さぁ、始めましょう!あ、シャワーとか浴びますか?」  
「ど、どうしようかな」  
「わたしは全然気にしませんけど」  
ペラペラと喋る顔を覗き込んで、その頬にそっと手を当てた。  
啓子の目が「いよいよだ!」とでもいうように丸くなり、すぐにぎゅっと閉じられた。  
軽く唇をあわせる。  
顔を離して相手の顔を見てみた。  
啓子は目を閉じたまま、薄く唇を開いていた。  
 
小林は頬に当てていた手をそっと耳元にずらして、今度は深く唇を重ねた。  
そのまま二人で倒れ込んだ。  
胸に手を回すとタオルを押さえていた手がそっと除けられ、小林は苦もなく豊満な乳房に触れる事が出来た。  
_す、すごい大きさだな。  
どう扱っていいのか戸惑う程の弾力に、小林は思わずひるんだ。  
「巨乳でしょ?えへへ」  
見ると、自慢気な台詞と裏腹にどこか悲しそうな笑顔を浮かべている。  
「これでもダイエットしてるんですけど」  
小林はつい言葉を選ばす本音を言ってしまった。  
「いや、今の子はみんな針金みたいにガリガリでいけない。女の子は太ってるくらいが丁度いいんだよ」  
啓子がぽつりと呟く。  
「太ってる………」  
しまった、と思ったがどう訂正して良いか分らず、無言のまま掴んだ乳房の先端に舌を這わせ、啓子はホッとしたように目を閉じた。  
啓子はなすがままだった。まるで人形だった。  
胸を揉みしだいても太ももを優しく撫でても、くすぐったそうにはするが他に手応えというものが無かった。  
首筋に唇を這わせると小さくひゃっと声をあげ身を縮めたが、すぐに身体を棒のように伸ばしてやり過ごそうとした。  
_こんな様子で可能なのだろうか?  
それでもどうにか自分自身を奮い立たせ挑んだ小林だったが、その危惧通り、啓子がおずおずと開いた股間の奥は受け入れる気配が全く無かった。  
 
「これでは無理だよ…」  
「大丈夫です。これを使えば」  
そういって枕の下から取り出したのは、通信販売で手に入れたらしきローションだった。  
小林は身も心も一気に萎えた。  
「君は…そんなにしてまで…」  
啓子はこくりと頷いた。  
_そうか。「捧げる」のではなく「捨てる」つもりなのだったな。  
小林は空しくなってきた。  
「申し訳ないがやはり無理だ」  
「ど、どうしてですか?!」  
「わたしの方が使えなくなった…」  
「じゃあ口でします」  
小林はこの日何度目かの呆気にとられた。  
_一体この子は、どこまで知っていて、何を知らないんだ?  
「わ、分った、努力してみるから、口でなんて…」  
「じゃあ待ちます」  
そして小林の涙ぐましい奮闘努力の結果、啓子は見事に処女を喪失した。  
 
「まだ痛むかね?」  
小林はベッドの背にもたれて、すぐ隣りで背中を丸めて震えている啓子に聞いた。  
「痛いです…凄く…こんなに痛いなんて…」  
鼻をすすりながら啓子は言った。  
小林とて無理な挿入はそれなりの痛みを伴っていたが、彼にとってはそれどころで無かった。  
いまさらながら重い罪悪感に苛まれていた。  
_取り返しのつかない事をしてしまった…  
 
じっと下を向いたままの小林に、啓子は悪びれた様子も無く声をかけてきた。  
「また来ても良いですよね?この次はきっと今日よりは」  
「なんだって…?!」  
さすがの小林も、憤りを押さえられなかった。  
「男を利用するくらいなら、一人で発散する方法でも覚えろッ!」  
唸るように怒鳴った小林を見上げて、啓子は両手で口を塞ぎ目を丸くした。  
「ほらっ!こうやってっ!」  
身体を覆っている寝具を剥ぎ取り、啓子の腕を掴んでその手を股間に押し付けようとしたが、もう片方の手が血の臭いを隠すように当てがわれ、更に両膝をぴたりと閉じてしまった。  
「どうした!知りたいんじゃなかったのかっ!」  
「う……」  
啓子は目に新しい涙を浮かべて、小林をじっと見つめた。  
小林はもう目を逸らさなかった。  
「膝を広げなさい」  
厳しい声に、掴んでいる腕の抵抗が弱まり、同時にそっと両足が開き始めた。  
「こんな事までしたんだ。もう恥ずかしい事も恐い事もないだろう」  
静かにそう言った小林の怒りは、なぜか急速に収まっていた。  
もっと抵抗されると思っていた。こんなに素直に言う事を聞くとは思っていなかった。  
掴んでいた手をそっと離し、曲げている膝を優しく押して倒すと、寝ている啓子の不思議そうな顔を見て言った。  
「なんというか君は…幼な過ぎる…」  
「おさない…?」  
「一旦シャワーを浴びよう。話はそれからだ。わたしは後から入る」  
啓子は慌てたように起き上がって言った。  
「黙って出て行かないでくださいよ?!発散の方法を教えてくれるんですよね?!」  
小林はもう笑って首を縦に振るしかなかった。  
 
シャワーから出た小林は、ベッドサイドに立ってシーツの赤い汚れをまじまじと見ている啓子の横に並んだ。  
「ごめんなさい、汚しちゃって…」  
「いいんだそれは。珍しい事じゃないし」  
「そうなんですか?!」  
興味津々で身を乗り出す啓子に、余計な事を言ったと後悔しながら小林は指示した。  
「じゃあ、横になって」  
「あ、はい」  
啓子はさっきのように横たわり、小林の言葉を待った。  
小林は啓子の横に座り、軽く深呼吸した。  
_ゴシップ好きで耳年増な女の子は沢山いる。彼女も例に漏れないらしい。  
_しかしそれならば…  
「君はその…」  
「はい?」  
「今まで一人でした事はないのかね?」  
啓子は恥ずかしいというよりは照れた声で言った。  
「やってみた事はあるんですけど、なんだかよく分らなくて…」  
「まぁ、女性の場合はいろいろ難解なのかも知れないが」  
生真面目にそんな相づちを打ってしまった自分を心の中で自嘲する。  
「それもそうだし、全然気持ち良くならなくてすぐ止めちゃいました」  
あっけらかんと答える啓子の声に小林の緊張が解け、これでは立場が逆だと再び自嘲した。  
「膝を立ててごらん」  
「あ、はい」  
さっきと同じように、小林の前に啓子の両膝が持ち上がる。  
「それで、手をこう…」  
啓子の右手をとって、股間にあてがう。  
 
さっき邪魔をした左手はシーツの上に乗ったまま動かなかった。  
「この辺りかな。指で撫でてごらん」  
啓子は天井を見上げながら指で探っていたが、僅かに眉間に皺を寄せたまま、迷っているように瞳をちらちら動かした。  
小林はそんな啓子の顔を見てから改めて陰部を覗き込み添えていた手を離すと、クリトリスをそっと剥き出し場所を確認した。  
啓子の膝がびくっと震えた。  
先ほどの事を思うと、新鮮な反応だった。  
小林は剥いた皮を戻して上から刺激し始めた。  
まだ痛みを残している筈なのにじわじわと膨らみを増している。  
_どれくらい大きくなるのだろう?  
皮の上から優しく押して転がしたりつまんだりしながら観察してしまった。見る間に膨らむのが面白かった。  
啓子は先ほどのように大人しくしていたが、膝は僅かにかくかくと震えていた。  
もう一度剥きあげてみると、先ほどの倍の大きさになっている。  
驚きを隠しながら、啓子の手を取った。  
「ほらここだよ。自分で触ってごらん」  
「……ん…」  
啓子はずっと息を殺していたようだった。  
小林の見つめる先で、啓子の指先が小林の指と入れ違いにあてがわれ、小林は今度は啓子の指をつまんで動かした。  
「……ふっ…」  
ほんの僅かな吐息だったが、部屋の空気が一瞬で塗り替えられたように湿って来た。  
 
「あ…あのぅ……ぁふっ…」  
こね回すそこから目を離さず、指を動かしながら小林は返事をした。  
「なんだね?」  
「な、なんだか…んぅっ……さっきよりドキドキし、んぁっ……します…」  
それは小林も同様だった。しかし、それを悟られないように冷静な声を出そうと努めた。  
ゆっくりと撫で回している指先を見ながら、小林は説明した。  
「濡れていた方が都合が良いんだが…」  
先ほど強引に捩じ込んだヒダをそっと開いてみる。  
「く…ぁっ」  
啓子はさっきと違う声を出した。  
驚いた事に、そこはしっとりと潤んでいる。  
「濡れているね。そこに一度指をつけて」  
啓子の手を掴んで下に動かすと「痛ッ!」と小さく悲鳴があがった。  
「まだ無理か…。仕方無い」  
小林はそこを濡らそうと小陰唇ごと舌を這わせた。  
「ぁはんっ!」  
両膝がぴょんと飛び跳ねた。  
小林は啓子に隠れて小さく吹き出した。  
怒りの気持ちも、呆れる気持ちも、すでに欠片も無くなっていた。  
陰毛を掻き分け生々しく露になった部分から更に皮を剥き上げ、そこに顔を近づけた。  
ボディソープの匂いがする。  
舌先で優しく触れるつもりが、なぜか大きく舐め上げてしまった。  
「くはあっ!」  
啓子はのけぞって叫んでから慌てて左手で口を押さえた。  
 
「今ね、君のクリトリスはさっきの刺激で大きく膨れているんだ。さっき触ったのがそれだ」  
「は、はい…」  
「とても敏感な部分なので普段これは皮に包まれている」  
「そ、そうなんですか…」  
啓子の声はうわずっていた。  
「わたしがその皮を剥いて舐めるから、その感触を良く覚えていなさい」  
「は、はい…」  
「そういう経験のあった方がオナニーというのはし易いからね」  
「は、はい…」  
先ほどまで恥ずかしくて曖昧にしていた「オナニー」という言葉が、不思議な事にその時容易く口から出た。  
そういえば「クリトリス」も抵抗無く言っている。  
なぜなのだろう?  
_いや。余計な事は考えないでおこう。  
_こういう時に素面に戻ってしまうとお互いに気まずくなる。  
再び舌を当てた。  
這わせるのではなく、舌全体を使って広い範囲に唾液を塗り付ける。  
頼りない程柔らかい二枚の小陰唇が合流する辺りに被っている包皮を剥き上げて、膨張を続ける突起を中心に舌を強く乗せぐりぐりと擦る。  
指で触るより確かな感触があった。  
「んっ!んんっ!」  
啓子は塞いだ口から息を漏らす。膝がひょこひょこと跳ねる。  
「ァのっ!…んんっ!…も…もぉやめっ!…ぁはあっ!」  
「………まだだ」  
唸るように脅すように低く短く答え、大きく舌を押し付け顔ごと動かして嬲った。  
 
小林は自分が女性に対してこんな事の出来る人間だったのかと驚き、同時にそれを誇らしく感じていた。  
性的な興奮だけでなく、なにかとてもわくわくとした、それはまるで少年特有の無謀な探求心のようなものが湧き上がっていた。  
小林は今、これまで誰も訪れかった世界に足を踏み入れその地を開拓している。  
濡らすというには充分過ぎる時間そこをねぶり続けた。  
「あ、あたし…なんだか……はぁっ!」  
啓子の両足は曲げながらつま先立つように指をベッドに突き刺し、小林が撫でる内股への愛撫にも鳥肌で応えていた。  
「ゆっ、指より…あくぅ…き!気持ちっ……いっ!……ぁああっ!」  
ようやくそこから唇を離すと小林は穏やかに言った。  
「しかし自分でこれをするのは無理だ。こっちをちゃんと覚えないと」  
再び啓子の手を取って突起に導く。  
指先はすぐに剥き出しのそれを探り当てて刺激を始めた。  
「んっ…くふぅぅ…」  
小林は勃起していた。  
先ほどよりも熱く硬く、それは猛っていた。  
だが、今の啓子に再び挿入するのは余りに酷だ。  
すぐ側から聞こえる喘ぎ声に冷や汗をかきながら、小林はじっと耐えた。  
「…あ…はあぁっ……あふうっ……」  
指の動きが滑らかになってきた。  
声も艶を帯びて来た。  
小林は啓子の左手を取り、大きな胸にあてがわせた。  
「手は二本あるんだから、こっちも使ってみたらいい」  
「はい…」  
小林の手に操られながら、啓子の左手が乳房を揉みしだく。  
啓子は小林に言われるより先に、自分の乳首をころがし始めた。  
 
「ふっ……くふぅうう!」  
「そうそう。それでいいんだ」  
「…はっ…はい…ぁあっ……」  
啓子は声をあげる瞬間は目を閉じるが、すぐに見開いて小林を見つめ続けた。  
それは「これでいいんですか?」と確かめているようにも見え、「乱れているわたしを見て」と誘っているようにも見えた。  
そろそろ部屋を出ようかと服を手に取った小林に、啓子は横になったまま小さく声を掛けた。  
「あの…」  
「どうした?」  
「さっきから……ちょっと中が……握られたみたいに痛いような感じに…」  
「慣れれば苦痛でなくなる」  
「そ、そうなんですか…」  
女性の身体の事など小林は言う程熟知していない。  
けれど、素直に従う啓子を不安にさせたくなかった。  
「もう良いだろう。わたしは部屋に戻るよ」  
啓子は起き上がってベッドの上に正座すると、手をついてぺこっと頭を下げた。  
「ありがとうございました」  
丸い肩にしっとりと汗をかき、うなじに張り付いた髪が可愛らしくも扇情的だった。  
「礼を言うのはいいが、後で後悔しないでくれよ?」  
「えへへ。分ってます。それと…」  
小林はズボンをはきながら、何か言いにくそうな顔をちらっと見た。  
股間の熱は静まりかけているとはいえ相手に悟られないようにズボンを履くのは難しく、四苦八苦している小林に向かって啓子は無邪気に言った。  
 
「わたし、また来ます!」  
小林は苦笑いしながら首を横に振った。  
「もうこんな事はご免だよ」  
啓子は一瞬悲しそうに目を逸らしたが、すぐに哀願するように見上げて言った。  
「もっと……あの…お……教えてください…」  
恥じらいを堪えて縋り付くような目は、小林が懸命に引き止めていた背中を容易く押してしまった。  
 
〜〜〜  
 
あれから季節が変わり、啓子はすっかり食事目当ての暇なOLとして常連扱いになっていた。  
実際に小林の料理だけでなく今日子手製のケーキを美味しそうにたいらげ、その作り方を伝授してもらうまでの間柄になっていた。  
むろん、今日子の知らぬ間に知らぬ場所で会っている事もあった。  
頻繁にとは言えないが、二人が会う時は自然と濃密で淫靡な時間を過ごす事になった。  
 
今日のシュプールの窓は全て開けっ放しになっていた。  
初めて啓子がここに来た夜に猛吹雪が激しく吹き付けていた窓と同じ物には見えない程、それは明るく温かく日光を招き入れ、季節の模様替えをされたカーテンも時折そよ風を含んで緩やかに揺れたるだけ。  
ブラジャーとパンティだけになった啓子が、窓に向けた背を丸めて俯いていた。  
「あの…。窓、閉めて下さい…」  
こちらもパンツ一枚の小林が答えた。  
「誰も見ていないし、誰も来ないよ」  
「だけど、なんだか恥ずかしいし…」  
「いいじゃないか。どうせ恥ずかしい事をいっぱいするんだから」  
穏やかにそう言われただけで、啓子の下半身は疼きを増した。  
 
小林はにこにこと待っている。  
啓子はそっとブラジャーを外し、それからパンティを脱いだ。  
チェックの水色のパンティを脱ぐために屈んでいる啓子の両胸は重そうに揺れる。左右互い違いにぷるんぷるんと揺れる。  
小林はそれを見るといつもほのぼのとした気分になった。  
しかし白い鞠から飛び出ている2つの突起を見ると急激にそれが卑猥な物に思えて来る。  
小林が下着を脱いで横になるのを待って、啓子は小林の上にまたがった。両手を小林の顔の両側につき身体を支えながらずりずりと移動して前に進む。  
大きな乳房で小林の視界が塞がった。  
そっと開けた小林の口中に、啓子は身を屈めて片方の乳房を含ませた。  
小林の唇にぽふんと白い肉が乗る。乳首を甘噛みすると、啓子はくっと眉を歪ませた。  
もう片方の乳房は小林の左手の中にあった。  
どれだけ掴んでも沈み込んで行く指に、小林は思い切り力を込めた。  
そのまま心臓まで突き破る勢いで掴み、こね回し、引っ張っては押し戻した。  
啓子は苦痛に眉を歪めたが、決して抗わなかった。それどころか、小林の手の平には堅さを増す乳首の感触がはっきり伝わってきた。  
顔の上に乗った乳房を大きく口を開けて思い切り吸い込むと、頭の上から声があがった。  
「んっ!」  
口内を埋める柔らかい肉に歯を食い込ませる。  
「ひっ!」  
啓子の胸には何をしても許されそうな豊かさがあった。  
その重みは遠い記憶の母を思わせ、刺激に硬く立ち上がった乳首は淫売を彷彿とさせた。  
小林の右手はずっと太ももや尻を撫でていた。  
吸い付くようなきめの細かい肌。湧き出る汗は流れながら弾かれて玉を作る。  
いつまでも撫でていたいような極上の滑らかさに、いつも小林は感嘆の溜め息を洩らしていた。  
見上げる小林と切なく見下ろす啓子の視線が重なり、それが合図だったように啓子はゆっくり腰を下ろし始めた。  
以心伝心などというロマンチックなものではない。  
そういう物なのだと、啓子はその身体の隅々まで刻み込まされていた。  
 
一から十まで、全て小林が教えた事なのだ。小林がしたいと思う事はそのまま啓子の身体と脳に刷り込まれ、やがて啓子自身が持つ欲望へと変わって行く。  
啓子の手が熱くそそり立つ小林の肉を握り、愛おしそうに何度か上下に擦り上げてから、濡れた自分にあてがう。  
先走りが光る先端で場所を確かめるようにぬるぬると擦りながら、肉のヒダを掻き分ける。  
ゆっくりと、もどかしい程ゆっくりと、啓子は腰を落としていった。  
快感に口端を引きつらせて、肉の棒が割り入る程に理性を失い獣じみた瞳で、啓子はずっと小林を見下ろしていた。  
淫蕩に染っていく顔を見せているのだ。  
最初からそうだった。  
小林はどれも相手に見せる事を前提に教えていた。  
全てを飲み込んだ頃には、啓子は両手をベッドから離し膝を立て両足を大きく開き腰をつき出して、結合部分に体重をかけ深く静かに捻り付けていた。  
「は……入りま……した…」  
それまで啓子の乳首を弄んだり尻を撫でたりしながら見上げていた小林は、頷いて少し身体を起こした。  
啓子は両手で混じり合う陰毛を掻き分け、肉を広げてから小林の目を見た。  
小林がその部分を見ているのが分ると、安心したように、そして嬉しそうに笑顔を浮かべた。  
「ぜんぶ…はいっ…てます…」  
「うん。そうだね」  
小林が優しく応えると、啓子はますますヒダを広げて見せつけるように腰を前に突き出した。  
「こ…これ…ほ、欲しかったですぅ…これずっと…欲しかったですぅうう…」  
「そうか」  
そう穏やかに頷く顔を見ながら啓子はゆっくりと動き始めたが、小林は「ちょっと待ってくれ」と引き止めた。  
寂しそうに睨む啓子から一旦引き抜くと、ベッドの陰から用意していた鏡を取り出した。  
いつもは部屋の壁にかけてある物で、大学ノートを広げたくらいの大きさだった。  
小林はさっきと同じように仰向けになり、自分の下腹部の上に鏡を立てて置いた。  
「最初から見てごらん。入れるところから」  
 
啓子の全身に見えない鳥肌がたった。  
先ほどと全く同じ仕草で挿入を開始したが、その興奮は先ほどとは比べ物にならなかった。  
部屋の中はとても静かで、開いた窓からは時折鳥のさえずりさえ聞こえる。  
その静寂を荒い呼吸で乱しながら、啓子は鏡の中の世界に心を奪われて行った。  
膝をついてまたがる下から生えている浅黒い肉棒。それを握る自分の手。  
今は真っ昼間で、部屋を満たす明るい陽射しの中にぬらぬらと光る自分の肉ヒダ。  
そこに押し付ける充血した欲の塊。それを執拗に擦り付けているのは自分。  
いやらしい液体がダラダラと溢れて来た。それが陰毛をしとどに濡らし、啓子が何度か掻き分けると陰部の周囲に張り付いた。そのせいでもっとはっきり色々な物を見る事が出来た。  
大きく開いた白い股の間に、唐突に現れる少し濁った肌色の陰唇。そこからはみ出ているぶりぶりと柔らかい小陰唇は右の方が左より少しだけ大きい。  
それを自分の濡れた指が無造作に広げている。  
肉ヒダの内側は唇をめくったようなピンク色だった。  
そこにぬらぬらと擦り付けている肉棒は、暗い薄茶色で先が不格好に尖りカリの下には血管を浮き上がらせて、白い手が上下に握ると細かい皺が伸びたり縮んだりした。  
仮性包茎である事は青年の頃の小林を嫌という程悩ませたが、今となっては苦くも懐かしい笑い話でしかない。何より啓子自身はその事に何の意識も無かった。  
小林の先端を擦り付けながら、啓子はうっとりと思った。  
_わたしはこれからこんな物を身体の大切な部分に入れしまう。自分の手で。悦びながら。  
_だって気持ち良いんだもの。すごくすごく、入れると気持ち良いんだもの。  
慎重に腰を落とすと、鏡の中で亀頭の先端がピンクの肉にほんの少しだけ埋まった。  
それだけで啓子は歓喜の悲鳴をあげそうになる。  
入り口に当たっているのが分った。ついさっき確かめた穴だ。  
_ここにこれから入れる。この気持ちの良いものを。自分の手で入れる。恥ずかし気もなく汁を垂らしながら。もっとよく見たい。  
 
啓子は腰を動かして、もっと明るく奥までよく見えるように身体をずらした。開いた太ももの両脇から手を入れ直して、更にヒダを広げた。  
_あ。見える。見えちゃう。びちゃびちゃだ。びらびらした肉が引っ張られて。中がすごく広がってる。ピンクの中に裂けたみたいに割れ目がある。もっと広げたい。  
滑る指を苦労して奥にあてがい、ぐいと開ける。  
_奥が見える。小さな穴が空いてる。ヒクヒクしてる。なにかが溢れて出てる。とろとろ。気持ち悪い。すごくいやらしい。  
腰を揺らして肉棒の先に穴を近づけた。  
_当たってる。小林さんのが。穴に当たってる。先っぽが穴の側でぬるぬる滑ってる。  
たまらず腰を突き出し先端を埋めた。  
「くゥんッ」  
_先っぽが入った。ヌルッて入った。入れちゃった。自分の穴に。  
何度も亀頭を埋めては外し自分をじらしながらその感触を味わった。  
_気持ち良い。入れる時すごく気持ち良い。小林さんのおチンポ大好き。出る時はなんだか可愛い。ぷりんって。はみ出るみたいに出る。入れる時は。  
「ふゥッ」  
_入れる時はヌルッて。穴を押し広げて入る。犯してるみたい。すてき。  
陰部を広げていた両手から片手だけ離して熱棒を握る。  
_とても硬い。もう奥まで入れたい。入れたい。これが好き。硬くて大好き。入れたい。  
亀頭を全て押し込め、そのままゆっくり腰を落とす。  
「くぁ…アふぁ…」  
_もっと見たい。穴が広がってく。飲み込んでるみたい。  
鏡の中でピンクの肉にそれが埋まり始めた。  
_こんなに入っちゃう。全部見えてる。あたし今突っ込んでる。ほらこれ。これがいいの。おチンポ突っ込んで欲しかったの。あたしいやらしくて最低。恥ずかしい。死にそうな程恥ずかしい。  
_でも気持ちいい。もっと入れたい。奥まで突っ込みたい。まだ入る。すごい。飲み込んでる。黒いのが。ずぶずぶって。どんどん入る。奥に。もっと。全部。  
 
啓子は首を絞められているようにひゅっひゅっと息を引きつらせながら、大粒の涙を流していた。空いたままの唇からは涎が流れていた。涙と涎が顎から滴り、汗と混じって胸の間を流れていた。  
汗にまみれ涙にまみれ涎にも、そして匂い立つ愛液にもまみれて、頭の中がおかしくなりそうだった。  
そんな啓子に小林も満足そうだった。  
_挿入だけでこんなに悦んでいる。最初から酷い締め付けだ。  
_なんて淫乱で可愛いんだ。  
「明るいからよく見えるだろう?」  
絞り出すように啓子は答えた。  
「は…ぃひ……」  
その声に小林は胸の中が切なく甘く暖かいもので満たされるのを感じた。  
_きっと呼吸するのも辛いだろうに、聞けばこうしてちゃんと返事をする。  
_この子は本当に可愛い。  
啓子は根本まで飲み込むと、その部分を惚けた目で、首を曲げたり腰を揺らしたりして角度を変え眺めていたが、やがてゆっくりと動き出した。  
にちゃっ… にちゃっ… ぬちゃっ… ぬぷっ…  
何度も聞いてきた音だったが、その出所を見ながら聞くと格別のいやらしさがあった。  
目を釘付けにしながらゆっくり腰を動かしている啓子に、小林が嬉しそうに言う。  
「出たり入ったりしてるのが見えるかい?」  
「は…い……か…硬…ぃひっ…」  
「君のはどうかな」  
「あた…あたしのは…ぅぐ、ぐちゅぐ…ちゅ…で……穴が…の、飲み込んで…すご…」  
「はは、そうだね。もっとよく見て。動かしながら」  
「は…いぃぃ……」  
溢れる淫液が二人の股の間で糸をひいている。  
肉ヒダの間に熱い肉棒が中を押し広げながらずぷずぷと割り込み、全て飲み込むと、小陰唇を引きずり陰毛を貼付けながらぬるりと引き出される。  
 
「ひゅふっ…ひゃくっ…」  
ぬぷぬぷと出し入れする度に、啓子はしゃっくりのように息を引きつらせた。  
意識せずとも腰は自然に動き、恥骨が擦れる程に深く突き入れる度、啓子の汁が溢れて汚らしい音をたてた。  
ぬちゃ… ぬぶぶっ… じゅぷっ… ちゃくっ…  
「すご…ヌルヌル……あたしの…あんなに…ひっ…広がっ…ちゃって…」  
動きはひどく遅いのに、中はどんどん締め付けが強くなってきた。  
「…あっ………!」  
啓子の中が大きくうねった。  
動きが速くなり股から散った飛沫が鏡にビタビタとかかった。  
小林は鏡を下に置くと腰の動きと一緒に飛び跳ねている乳房を掴んだ。  
啓子が小林を見下ろしながら、髪を振り乱していやいやと首を振る。  
本当に嫌がっているのでないのは良く分っていた。その証拠に腰の動きと一緒に声も一段と切な気に跳ねる。  
「あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!」  
小林は啓子の2つの乳首を掴むようにつまんだ。  
腰が激しく上下する度に揺れる両胸の先の乳首も重く引っ張られたがそれを抑えるように小林はつまみ続け、揺れを制御された乳房はまるで周囲の空気に揉まれているように滅茶苦茶な動き方をした。  
小林は更にそれを捻り、啓子は「あぎぃっ!!」と襲われた小動物のような声を出した。  
乳首の痛みは相当なものの筈だが、啓子の眉は苦痛に歪みながら、その瞳と唇はこれ以上ない程嬉しそうに笑っていた。  
啓子の中では吸い上げるような波が襲って来た。  
小林もとうに限界だった。  
啓子の中の波が激しさを増し絡み付く。  
「ぁッ!ああぁアアアアッ!!!」  
 
小林を逃すまいとでもいうように壁肉が急激に激しく締め上げた。かと思うと絞り出すように何度も波うつ。  
小林は己のタイミングをずらして啓子の拘束が収まるのを待った。  
「…ぁくふっ!…ンくふっ!」  
達した後も啓子の内壁は、まるで捕まえた獲物を確かめるかのように小林にまとわりついた。  
頃合いを感じた小林は掴んだ乳首を思い切り高く引き上げた。  
「きゃうッ!」  
小便を洩らしたように愛液を巻き散らしながら熱い棒を引き抜かれた啓子の身体は、ぼふっと小林の上に被さった。  
「はふっ、はふっ」  
荒い息を吐きながら、それでも啓子は急いで身体の向きを変えると小林に尻を向け、精液を滴らせている棒を震える手で握った。まだ熱が収まらず啓子の唇を待っているように脈を打っていた。  
大きく舌を出して全て舐め上げる。絞り出すように上下に握って、先から残りをちゅうちゅうと吸い出した。  
啓子がそれに耽っているあいだ、小林は啓子の中を覗いていた。まだ穴が少し開いたままになっている。  
ひくつく肉壁から芳香が漂い思わず舌を差し込んだ。  
「んんっ!」  
銜えていた啓子が声にならない声をあげ、小林はふふっと笑った。  
 
しばらくお互いを弄んでから、二人は並んで横になり他愛のないお喋りをした。  
さっきの興奮が収まったのを確認すると、二人は揃ってシャワーを浴びた。  
シャワーから出た小林は服を着てキッチンから冷たいオレンジジュースを持って来た。  
啓子は全裸のまま、喉を鳴らしてそれを飲んだ。  
空になったグラスを除けると、小林はベッドの側に椅子を引き寄せ座りながら言った。  
「じゃあ、オナニーして見せて」  
「はい……」  
こくりと頷いた啓子の頬は、再び期待で赤く染まり始めた。  
 
〜〜〜  
 
二人は順調に関係を深めて行った。  
啓子がシュプールを訪れる時は、もう客ではなくアルバイトのような形で迎えられ、実際に啓子の料理の手際はなかなかの物だった。  
啓子のアイデアでメニューに新しいデザートが増えている程だった。  
もともとそういう事が好きだったのか、あるいは少しでも小林の側に居られるようにと密かに努力したのかも知れない。  
今日子が居る時には、啓子は小林よりも今日子と行動を共にする場合が多かった。今日子はそんな啓子を助手として認めているように見えた。  
啓子に「甘えちゃってご免ね」と言いながら、小林と啓子に留守を任せて出掛ける回数も増えた。  
二人はそんな今日子の信頼に付け入る事無く、ペンションの仕事もきっちりこなした。  
しかし、食堂から聞こえる客の談笑を聞きながら、耐えられずキッチンで淫らに慰めあう時間が無かったかといえば嘘になる。  
 
ある蒸した夏の日、洗い物をしていた啓子がずいぶんと大人しいので顔を覗いてみると、その両頬が涙で濡れている。  
「ど、どうしたんだ?!」  
啓子は堪えきれないように嗚咽を洩らし始めた。  
「っく…ひくっ…ふぇえ……」  
「どこか痛いのか?!それとも客に何か言われたか?!」  
啓子はスポンジを握る手を皿の上で動かしながら言った。  
「あたし…ひくっ…さっきから小林さんが後ろを通る度に…ひくっ…」  
小林がそれを聞いて、何かまずい所でもあったのかと自分の身体を見回していると、啓子は苦しそうに告白した。  
「このまま後ろから……ひくっ…し…してくれたら良いのにって…」  
小林は持っていた盆を落としそうになった。  
実は小林も全く同じ事を考えていたのだ。  
「ごめんなさい……し、仕事中なのに……ひくっ…」  
 
止らない涙を拭おうともせずに皿を洗い続ける啓子のスカートが、いきなりめくられた。  
啓子の手が止り、一瞬見開かれた目は期待と緊張に眩みながらゆっくりと閉じられた。  
背後で衣擦れがして、小林がエプロンを除けズボンのファスナーを降ろすのが分った。  
啓子は震える唇に笑みを浮かべながら持っていた皿をそっと洗い桶に浸した。  
パンティに手がかかったかと思うと、それは一気に足首まで降ろされた。  
それを外すのを手伝うために片足をあげた時、足の間から声がした。  
「き、君……これはいくらなんでも……」  
「え?」  
「濡れ過ぎだ……」  
火傷でもしたようにぷくりと膨れた赤い小陰唇に絡んだ陰毛から、水漏れさながらに滴っていた。  
「ごっ!ごめんなさい!ごめんなさい!」  
「こんなになるまで我慢していたのか」  
「ごめんなさ、んあぁっ!」  
ずぷっと背後から勢い良く挿入された。一気に奥まで届いてしまった。  
「あんっ!あぁあんっ!」  
激しく腰を動かす啓子を見下ろしながら小林は言った。  
「君は淫乱だ」  
「ごっ!ごめっ…うぁあっ!…ごめんな…あんっ!」  
「いやらしい身体で、いやらしい事ばかり考えて」  
声を我慢するためか、啓子は側にあった布巾を鷲掴みにすると口にくわえた。  
「んぅうむううーっ!」  
「悪戯されるのを心待ちにしているように見えるよ」  
ばすばすと腰をぶつけて来る啓子の臀部を左右に開いて見ていた小林は、目の前にある皺で囲まれた穴がいつもと違った蠢きを見せているように思えた。  
側にあった残り物の野菜スティックを差し込む。  
「んっ!ぅんんうーっ!」  
その太さは鉛筆1本分強、長さは15センチ程。開発途上のアナルには長過ぎる気もしたがその無茶を通す事が啓子の悦びに繋がると小林は知っていた。  
 
己の愛液にまみれているとはいえ、何の慣らしもしていなかった肛門はいきなりの異物から逃げるように侵入を拒み押し戻して来た。  
それをぐいぐいと差し入れながら小林は聞こえるように呟いた。  
「何本がいいかな」  
「んんんっ!んんむぅーっ!」  
啓子は尻穴がギリギリと広がり異物が直腸に侵入する痛みと、便意を我慢する時の緊縛感にも似た幼蒙性の快感をひたすら甘受した。  
四本目から更に挿入が難しくなってきたが小林は遠慮せずに入れた。  
啓子は尻穴を広げられる度に小林のペニスをきつく締め上げぐいぐいと腰を突き出し、小林は下腹で野菜を押しながら存分に打ち付けた。  
時折食堂から湧き上がる賑やかな声に身の竦む緊張感を快感に変えながら二人は耽溺した。  
小林のものは千切れそうな程に締め上げられ、啓子は欲しかったものに掻き回されながら、アナルの痛みが馴染む程に弛緩と緊張を繰り返す尻穴と直腸への歪な刺激をも味わい歓喜の涙を流し続けた。  
数分後。  
客の呼ぶ声に「いま行きます」と返事をした小林の腰の前では、しゃがみ込んだ啓子が舌を使って一心不乱に後始末をしていた。  
その尻からは六本の野菜が突き出し、小林の指示どおりそれが抜けないように啓子は必死に尻穴とその奥の筋肉を内側に向けて引き締め続け、それが更なる喜悦を引き起こしていた。  
その後、小林は5分おきに啓子に野菜スティックを一本渡し、啓子は小林の鼻先でそれを膣穴と尻に刺して行った。  
膣穴15本尻に8本入れたところで野菜が無くなり、啓子がカラフルな獲物をずくずくと出し入れする様を堪能した小林は、最後にクリトリスを舐って啓子をいかせてやり、その後風呂場で野菜を抜いた2つの穴に指を奥まで入れて充分に洗ってから家に帰した。  
その夜遅く小林は啓子からの電話で、未だ尻穴に残るじくじくとした異物感がいかに気持ち良いものかを涙ながらに訴えられ、陰部から漂う青臭さに耐えられず部屋でも再現していいものかと許可を求められた。  
直後に送付された携帯の画像からは新鮮な野菜の匂いと啓子の匂いが混ざって漂ってきそうで、小林は暫くの間、暇さえ在ればそれをこっそりと眺めた。  
 
〜〜〜  
 
木々の紅葉が彩りを深める頃、二人は久しぶりにシュプールの一室にいた。  
もうすぐここには多くのスキー客が押し寄せ、小林には今までのような時間的余裕が無くなる。今日子の外出も減る筈だ。二人がここで過ごせる夜も限られてくるだろう。  
啓子を寂しがらせる事になると、小林は苦々しく思っていた。  
しかし啓子はそんな小林の悩みに気付かない様子で切ない抱擁を受けていた。  
 
パンツ姿で浅くあぐらをかいた小林の前にまたがった啓子は、胸に顔を埋める小林の髪を優しくまさぐっていた。  
小林は両手で大きな乳房を鷲掴みに揉みほぐしながら、自分の両頬にそれを押しつけ暖かい弾力を味わった。  
それはまだ妄想の女性でしか慰められなかった若い頃に、夢に描いていた行為だった。  
しかしその頃には想像さえ出来なかった肌のなめらかさを、小林はこの歳になって知った。  
若さからだけではない、豊満な肉体だからこその、弾けるような張りとしっとりした手触り。  
食い込む指先にも、なぞる唇にも、這わせる舌にも、極上の心地好さを感じる。  
そしてその丘から突き出る乳首のいやらしさ。  
つまみ、引っぱり、捩じ上げころがして、口に含みしゃぶり、吸い込み、舌で押しこね、あま噛みする。  
啓子の乳房は、愛おしいものをいやらしいと感じる事への罪悪感を、小林の中から吹き飛ばしてしまった。  
啓子は小林の髪から手を離し、小林と交代するように乳房を持ち上げた。  
そしてしゃぶられている方の乳房の内側をぎゅうと凹ませて乳首が内側を向くようにひねり、もう片方の乳房で小林の横顔を包み込むように押し当てる。  
小林の耳に硬い乳首がこりこりと当たった。  
暖かい肉で顔を覆われながら、小林は存分に口中の突起を堪能した。  
胸から離れた小林の両手は、啓子の脇を探り二の腕を撫で背中にまわり腰に流れ尻を掴み撫で回した。  
飽きる事無く啓子の全身に手の平を滑らせて、その肌の心地好さに酔う。  
 
陰部への刺激が無くとも、啓子の内股には溢れる愛液がとろとろと流れ落ち、擦れる小林の太腿まで光る道を作っていた。  
そこだけ冷える太腿の滑りに小林は気付いていたが、さらに刺激するのは控えていた。  
今、啓子の淫蕩な顔を見てしまったら、堪らず突き入れてしまいそうだった。それを先延ばしにして、欲を放出したあと訪れる倦怠を避けていた。  
小林は、せっかく与えられた熱い時間を出来るだけ長く味わいたかった。啓子を長く楽しませたかった。  
小林はその年齢による体力の限界を良く分っていた。自分が若い啓子を、そうそう満足させられるとは思えなかった。  
そのため啓子の為にバイブレータを何種類か用意していたが、小林が目の前にいるのにそれを使うのは寂しいと啓子は嫌がった。  
それを使っている様を見たいと言われれば喜んで従い、小林がそれをどのように啓子の身体に施そうが恥じらう事はあっても決して拒絶しなかったが、自ら欲しがる事は無かった。  
どこまでも従順で身も心も明け渡し自分を慕う啓子に、小林は己への枷として窮屈な下着を着けていた。  
用を足す際にも手間取るようなサイズの小さいパンツは、勃起時の痛みだけでなくその年甲斐も無い様を見ただけで充分に小林の昂りを制した。  
 
太腿を撫でていた手に、ふと震えを感じる。  
見ると二の腕に鳥肌が立っていた。  
不思議に思った小林が見上げると、啓子は思い切ったように声をあげた。  
「あの……」  
「どうした?」  
言いにくそうに小さな声で啓子は答えた。  
「ちょ、ちょっと、おトイレに…」  
「おしっこかい?」  
気まずいのか黙って頷く。  
「じゃあ、してる所を見せてもらおう」  
「えっ!そんな」  
「いいから、ほら」  
全裸の啓子の背中を押しながら、小林はトイレに向かった。  
 
「座って」  
言われるままに腰を下ろすと、小林はその前にしゃがみ込んだ。  
「初めてちゃんと見るね。君がおしっこするところ」  
優しい笑顔で言われても、恥ずかしさと緊張で我慢する事しかできない。  
啓子は両手で顔を隠し膝をぴたりと揃えて座りながら、それでもドキドキと高鳴る鼓動を抑えられなかった。  
両腕に挟まれた乳房がこんもりと持ち上がり、深い谷間を作っている。  
「どうした?出ないのか?」  
小林はそう言いながら、目の前で震えている乳首をグニッとつまんだ。  
「あふっ!」  
くりくりと乳首を揉まれ、そこが堅くなるのに比例して全身の力が抜けて来た。  
ちょろ……  
最初の水音が聞こえると、啓子の意識は一気に緩んだ。  
顔を押さえていた両手がそっと下がっていく。  
小林が白い太ももに両手を差し入れると、なんの抵抗も無くそれは左右に開き、茂みを撫で上げるとその向こうにある陰部がはっきり見えた。  
小林の視姦を待っていたように、やがてそこから少し濁った液体が小さな弧を描いて吹き出し始めた。  
じょろじょろじょろ……  
「ふぁぁぁ……出ちゃったぁぁぁ……」  
泣き声の啓子に小林は優しく相づちを打つ。  
「やっと出たね」  
 
小林は両手で乳首をこねながら、じっと啓子の股間を観察した。  
放尿しながら啓子は泣き笑いのような声を出した。  
「…おしっこがぁ……出ちゃいましたぁ……」  
「うん。よく見えるよ。もうお終いかな?」  
そう聞きながら見上げた啓子の唇の端には、涎が光っていた。  
その瞳は溢れそうに涙を溜めて、淫蕩な光を放ちながら小林を見下ろしている。  
小林は愛おし気な笑顔を浮かべた。  
「恥ずかしくて興奮するかね?」  
言いながらトイレットペーパーで陰部を拭く。  
「あふんっ!」  
びくっと膝が飛び上がった。  
「駄目だよ、ちゃんと拭かないと」  
丁寧にそこを拭いたペーパーを水に落とすと、紙から糸が引いていた。  
「濡れてるな」  
小林は中指をずぶりと差し込んだ。  
「ぁひっ!」  
「これはおしっこじゃないね?ほら、ヌルヌルしている」  
指を出し入れすると啓子は両足をあげて便座に乗せ、指を求めるように腰を突き出した。  
両手で自分の乳房を揉みしだき、乳首を忙しなくひねる。  
小林がヒダを広げてみると、奥の方がひくひくとうねっていた。  
小陰唇を何度も広げ直しつつ暫くそれを眺めてから、今度は指を三本一気に根本まで突っ込みこねるように出し入れした。  
「はひゅっ!んふううう!んクッ!んクッ!」  
指を味わっているような喘ぎ声が聞こえ、中ではさっき見た肉壁も同様に指を味わうように絡み付いて来た。  
 
小林はもう片方の手の指でクリトリスを撫で回した。  
「あンぐっ!」  
最初の夜からこれまで幾度も剥かれ刺激されてきた啓子のクリトリスは、小林の指示により自慰の際にも攻めの要として蹂躙の限りを受けていた。  
そのため周囲も含め最早その形状を様変わりさせていた。  
刺激から保護するために覆われていた包皮は小さなスカートのように広がり容易にめくる事が出来、中に収まっている物は既に豆という形容に似つかわしくないまるで噛み捨てられたガムのようだった。  
けれどひとたび刺激を受ければ過敏な程に反応し見る間に膨れ上がり、乳首に勝るとも劣らない程の立ち上がりを見せた。  
二人にその知識があればそこにピアスなどの装飾を施す事も可能だろう。  
小林はこういった啓子の身体の変化を喜んで見守った。  
特にクリトリスの肥大は見た目にも分かり易く、成長ともあるいは生身の肉体の改造とも言える結果にえも言われぬ興奮を覚え、ホテル等の閉塞した施設では膨らんだクリトリスを乳首さながらに強く吸い上げ、泣き叫んで悲鳴をあげる啓子を失神させた事もあった。  
今もまたそれは見る間に膨張しねぶり回す指の下でぐねぐねと踊り、そのすぐ下では肉ヒダから指が出たり入ったりする度に大きな音を出していた。  
じょぷっ じょぷっ じょぷっ じょぷっ  
べたべたに濡れた指の動きが速まって行く。  
「あふっ!あふっ!はぅん!はぶぅぅううっ!」  
啓子は自分の指をしゃぶり始めた。  
「どんどん溢れてくるね。お尻の下まで垂れている。びしょびしょだ」  
啓子が自分の指を吸っているのに気付いた小林は穴から指を抜いて立ち上がった。  
啓子はもどかしく目の前のパンツから勃起したものを取り出すと、重い両胸を支え上げてそれを挟んだ。  
うっすらと汗を浮かべた肌に肉棒を包まれると、少しひんやりして気持ち良かった。  
小林はパイズリに関してはいつも啓子に任せていた。どんな風に動かすのかが楽しみなのだ。  
両胸は棒を挟んで激しく上下に動いたが、すぐに左右互い違いに擦り始め、やがて啓子は身を乗り出し胸は玉の方に降りて来た。  
小林の足の付け根、いや尻の下に乳首を感じるほど下がると胸は玉を包み込んで棒の根本ごと柔らかくこね回し始めた。  
啓子は両手で胸を動かしながら、舌をダランと伸ばし口を近づけ亀頭から飲み込むように頬張った。  
小林のモノを深く銜えたい。胸で愛撫もしたい。その為には胸で玉と根本をまさぐりながらフェラチオをする…  
何も教えずとも、啓子は小林の期待に充分過ぎる応えを見せてくれた。  
「可愛いなあ。君は本当に可愛い」  
撫でるように髪をまさぐりながら、小林は腰を突き出した。  
啓子は喉の奥まで頬張り、吸い上げながら顔を前後させてそれを舐め回した。  
裏筋に沿いながらも僅かに蛇行させる舌の動きは気を持たせるようにもどかしい心地好さで、小林にとって屹立を長引かせるのに適した効果をもたらした。  
鬼頭の溝を探るように舌先を走らせてから、先端の小さな穴に割り込んでちろちろと刺激した。  
そしてまた深くくわえ込み、それらを何度も繰り返した。  
 
小林は斜め上から覗き込むように啓子の顔を眺めた。  
一心不乱にしゃぶり付いている啓子の顔は不格好に歪んでいたが、小林はそれがとてもいやらしく、可愛らしく思えた。  
「もう出そうだ…出すよ……くっ…」  
ぶるんと抜き出した先端から出た精液が啓子の顔にたっぷりとかかった。  
_まるで若い頃に戻ったようだ。  
_今日子が相手ではこうはならない。  
_全て彼女のおかげだ。  
啓子は薄目を開けて白い粘液をうっとりと浴び、小林は開いたままの口の中にも絞り出した。  
啓子はごくりとそれを飲み込んでから、萎み始めた男根を愛おしそうに持って再び口に含み、優しく吸い上げ隅々まで舐めあげた。  
「君は本当におしゃぶりが好きだね。教えた甲斐があるよ」  
すっかり柔らかくなったモノを舌でころがし続ける啓子の顔をペーパーで拭きながら、小林はとても満ち足りた気持ちになっていた。  
「疲れたかね?休むかい?」  
パンツを引き上げながらそっと声をかけると、啓子は不満そうにゆっくりと立ち上がった。  
「クチにはもらったけど、お……おマンコがまだです…」  
拗ねたように身体をすり寄せる啓子の股間に指を這わせた。  
「はんっ!そこぉ…そこにもらってないですぅ〜」  
小林は困ったように手を離すと笑顔で言った。  
「うーん。君は若いからね。わたしはちょっと休まないと…」  
「はい…。待ってますから…」  
そう言いながらも、啓子の腰はくねくねと小林の腰に擦り付けられる。  
小林の二の腕に押し付けられた大きな乳房の先では、乳首が尖ったままだった。  
思わず啓子の後ろから膣穴に指を入れた。  
「んふっ!」  
啓子の唇が嬉しそうに歪み、小林の乳首を切な気に舐めた。  
 
片手に溢れる乳房を強く揉みしだきながら、小林は申し訳なく思っていた。  
啓子は立ったまま、太ももの内側に愛液を垂れ流し小林の腕や胸に音をたててキスを浴びせた。  
「じゃあ、こうやってベッドまで行こうか」  
指を出し入れしながら小林はゆっくりと歩き出した。  
「ぬ、抜かないで、お、奥に、もっと奥に、入れていて」  
絶え絶えに喋り小林にしがみつきながら、啓子も足を引きずるようにして付いて来た。  
小林はそんな啓子が健気に思えた。  
とても健気で、淫乱で、何を教えても素直に受け入れ、覚えた事をいやらしく求めて来る。  
小林は空いた手で啓子の身体を支えながら、二人三脚のようにしてベッドに向かった。  
ぐちゅぐちゅと指で犯されながら数歩進んだところで、急に啓子は足を止めた。  
「だめ…っ」  
「ど、どうした?」  
「い、イク……イッちゃいそぉです…」  
「そうか。それなら構わないよ。ほら、好きなだけ感じなさい」  
そう言いながら小林は手の動きを乱暴に速め、中を掻き回した。  
「あんっ!あァァんっ!ゆっ!ゆびきもちイイッ!あふっ!すごィよォ!」  
小林に強くしがみつきながら、泣き声をあげて啓子の腰はうねうねと揺れている。  
「なっ!中で!あぐっ!中で指がッ!ぐちゃぐちゃあッ!」  
ぶちゅっ!ばちゅっ!と水音が響き渡り、激しく出入りしている指の周囲に飛沫がはねた。  
「あぁ、グチャグチャだ。もっと酷くしてあげるからね」  
小林は挿入している手に臀部の弾力を感じながら、もう片手をクリトリスに押し付け擦り始めた。  
啓子は指が奥まで届くように尻を突き出し、クリトリスをいじる小林の指に自分の指を乗せて一緒にこね回した。  
「イッちゃう!もぉイッちゃうッ!あはッ!あぁァァアアアッ!」  
啓子の踵が持ち上がり、足の指がガリリと床を掻いた。  
中の指が熱い波を受けたかと思うと強く吸い上げるように締め上げられ、やがてビクッビクッと震えた。  
「はふっ……あふっ……」  
 
肩で息をする啓子の中が穏やかになっても、小林は指を抜かなかった。  
啓子は片腕をしっかりと小林の肩から首に回してしがみつき、もう片手でクリトリスをいじっていたが、やがてその指で穴に入ったままの小林の指の根本と穴の周囲を、確かめるように探り回した。  
それと同時に小林の唇に吸い付く。  
薄く開かれた輪郭を愛おしむように舌で撫で柔らかく吸い上げ、顔を斜めに押し付けるように唇を唇で覆いながら舌を差し入れる。  
啓子はことキスに関しては小林が戸惑う程の情熱を見せた。  
唇を強く重ねる事くらいしか出来なかった不器用な小林に、啓子はまるで想いの丈をぶつけるが如く激しく絡み付けてきた。  
小林の二枚の唇や彷徨う舌を貪るように吸い舌でなぞっては絡ませて、口内中を探り回してもどかしく唾液を受け取っては自らの喉に送り込む。  
もっともっとという声が聞こえてきそうな程、啓子は懸命に唇と舌を駆使して一滴も洩らすまいとむしゃぶりついた。  
暫く二人はそうやって支え合っていたが、無理な姿勢に耐えられず小林が先に唇を離し荒い息でどうにか「ベッドに…」とだけ言った。  
二人は再びそのまま歩き始めた。  
啓子が歩を進める度に、小林の指が動く度に、啓子の股からは空気と一緒にびちゅっぶぶびっと音が漏れる。  
しがみつこうとする啓子の手は時折ふっと力が抜けたように小林の肩から離れ、その度に啓子の体重が膣内の指にかかって、啓子は小さく悲鳴を上げながら再びしがみついた。  
やり過ぎか?と不安にかられた小林に、啓子は涙目で囁いた。  
「ぬ、抜かないで……ください…ね…?」  
なんて愛おしい娘なのだと、小林は心から思った。  
温かく包み込んでやりたいという切ない思いと、滅茶苦茶にしてみたいという猥雑な興奮が、いつものように同じだけ湧き上がった。  
指を再び掻き回す。  
「ぅあぁぁっ!」  
空気を含み湿った音がさっきの何倍も汚らしく盛大に響きわたる。  
ばちゅぶびっ! ぐじゅじゅ! じゅぶぶっ!  
「ひ!ひどっ!こばやしさっ!酷いッ!ゆびヒドぃッ!」  
ちゃくっぶちゃっ! ずちゅずちゅずちゅ! ばびっにちゃ!  
「酷いのイイッ!ヒドイの好きッ!おま!おマンコがッ!おかしくなるよおおおおおッ!!」  
酷い酷いと喜びながら啓子はあっけないほど一気に昇りつめ、小林の肩にはしがみつく啓子の爪のせいでとうとう血が滲んでしまった。  
僅か数メートルの距離ですら、二人にとっては卑しい淫蕩地獄の道行きだった。  
トイレから啓子の足下の床はナメクジの這った後さながらに濡れ光り、小林は後始末が大変だなと嬉しそうに微笑んだ。  
 
ようやくベッドに辿り着き、小林はそっと啓子の腰を下ろし俯せに寝かせた。  
指を抜こうとすると、ふっくらした両手がそれを遮ってきた。  
「抜かないで…」  
小林は困ったように笑った。  
「しかし抜かないと何も出来ないよ」  
「そうなんだけど…」  
啓子が手を離したので小林はやっと指を抜く事が出来た。  
三本の指はすっかりふやけて皺だらけになっていた。  
「こんなになってしまったよ」  
はははと軽く笑いながら見せると、啓子は起き上がってそれをそっと両手で持ち、恥ずかしそうに小林を見つめた。  
「この指は宝物です……いつも……ありがとう……」  
そう小さく言ってから、ぺろぺろと舐めてキスをしてまた舐めて、両手で包んで祈るように胸元に収めた。  
「そんな、お、大袈裟な…子供っぽい例えを……は…ははは…」  
言いながら小林は、なぜか涙がこみ上げてきた。  
「どうしたんですか?」  
不思議そうな啓子から顔を逸らし、小林は軽く咳払いをして嗚咽を誤摩化した。  
二人にとってお互いはかけがいの無い存在だった。  
もう、ひとときも離れたくなかった。  
窓の外では木枯らしが吹き荒れていたが、二人は暖房など不要な程に熱く求め合った。  
余りにも夢中になり、外で車の止る音がしたのに気が付いていなかった。  
なので、その音がした時、この世の終わりが来たような戦慄を覚えた。  
開いた足をぴたりと閉じて、啓子が震えた声を出す。  
「い、今……ノックの音が……」  
小林の声も震えていた。  
「だ、大丈夫だ…ドアにはちゃんと鍵を…」  
ガチャガチャ。  
「ここにいるんでしょう?入るわよ?」  
かちゃり。  
合鍵を片手に入って来た今日子は、一瞬事態を飲み込めなかったのか惚けたような顔をしていた。  
「きょ、今日子!」  
「きゃあ!」  
 
二人の悲鳴に、はっとしたように今日子は叫んだ。  
「どっ、どういう事?!」  
「お、おまえ、もっと遅く帰る筈じゃ…」  
「雲行きが怪しくて早く切り上げたのよ!電話したのに誰も出ないから心配していたのにっ!これって一体?!」  
「いや、これは、その…」  
しどろもどろになる小林を無視するように今日子はつかつかとベッドに近づき、啓子が慌てて身体に巻き付けたシーツを勢い良く剥ぎ取った。  
「いやあっ!」  
胸元を押さえ足を斜めに倒れた啓子の陰部から、濡れた陰毛を貼付けたバイブがにょっきりと生えていた。  
「こ、こんな物を銜え込んで…」  
今日子はバイブを掴むと一気に引き抜いた。  
「あひっ!」  
バイブは滴る程に濡れそぼり、悲鳴を上げた啓子の尻はぴくぴくと痙攣している。  
今日子は恐ろしい形相で震える白い太腿を見下ろした。  
「この肌の張り…キメの細かさ……若さってこうも眩しいものだったかしら…」  
濡れたバイブを思い切り振り上げ、太腿にばちん!と叩き付ける。  
「あぐっ!」  
フリーズしたような空気の中、啓子の腿にはバイブの形そのままにピンク色の痣が浮かび上がって来た。  
啓子は身体を縮めながら、顔を上げる事も出来ずに叫んだ。  
「ごめんなさい!ごめんなさい!」  
「今日子!やめてくれ!悪いのはわたしだ!全てわたしの責任なんだ!」  
「うるさいわね!そんな事はどうでもいいのよ!」  
「…え?」  
一瞬言葉に詰まった小林を突き飛ばし、今日子は再びバイブを振り上げた。  
ばちん!  
「ひゃうっ!」  
震える啓子の陰部から、新しい淫汁がたらりと溢れて来た。  
 
桃色の痣に向けて、今日子のバイブは何度も振り下ろされた。  
ばちん!  
「はぐぅ!」  
ばちん!  
「くぁああっ!」  
ばちん!  
「あふぅっ!」  
啓子の腰の下では、溢れ出る液がシーツに新たな染みを広げていた。  
裸体を隠すように腕を押さえていた手はいつの間にか狂おしくベッドの上をのたうち、やがて枕の端を鷲掴みにした。  
今日子はふふんと鼻で笑うと小林を振り返った。  
「あなた?」  
床に尻餅をついたまま恐ろしい光景を眺めていた小林は、怯えたようにびくっと肩を竦めた。  
「はっ!はいぃ!?」  
「この子に何をどこまで教えたの?」  
「そ、それは…」  
「優しいあなたの事だから、通り一遍のセックスしかしてないんじゃない?」  
小林は抗議するようにまくしたてた。  
「そ、そんな事は無いぞ!オナニーは会う度に見せてもらってるし!この胸だからパイズリも凄いし!アナルだって開発したし!二本差しだってしてるし!そういうのをビデオに撮ってそれを見ながらしたり!」  
「青姦スポット巡りは楽しかったぞ!入れながら放尿させたし!しばらく会えない時にはバイブを突っ込んだまま出社してもらったし!それを会社から実況してもらったし!」  
「満員電車では痴漢プレイのつもりがつい挿入までっ!あやうく駅長室に連れていかれそうにいやその!そ、それからそれからっ!」  
「ほぉーら、その程度じゃないの」  
勝ち誇ったような今日子の声に、小林は「ぐうぅ…」と唸った。  
二人の様子を荒い息を吐きながら見ていた啓子の横にそっと座った今日子は、怯えた目と汗ばむ顔を覆っていた髪を紫色のバイブで除けながら囁いた。  
「啓子ちゃん、あなたはまだ知らないのよ。本当の快感というものを」  
「きょ、今日子さん…?」  
 
見上げた啓子の唇に、濡れたバイブが押し付けられた。  
「あたしがあなたに」  
今日子の目がぎらりと光る。  
「新しい世界を見せてあげる」  
ねめつけるような視線を浴びて、啓子の瞳がうっとりと淫蕩に揺れたのを小林は見た。  
唇から歯の間に割り込んだバイブレータが、やや上向きに乱暴に捩じ込まれる。小林とは全く違う荒々しさだった。  
一瞬今日子の腕を掴んだ啓子の手はすぐに諦めたように離れ、あるいは何かを期待するように宙を彷徨い、声をあげる事も出来ず舌を突き出し頭を反り返らせてバイブが埋まるのに任せていった。  
今日子が興奮に上擦った声で言った。  
「この白い喉……さぞかし皮の首輪が映えるでしょうねぇ……縛り甲斐のありそうな胸……堪らないわ…くっ…くくくっ……」  
啓子は濡れた瞳をぎゅっと閉じたが、すぐに見開き黒目をそっと動かして小林を見つめた。  
それは「これでいいんですよね?」と確かめているようにも見え、「壊れて行くわたしを見て」と縋っているようにも見えた。  
そして小林は、こんな啓子を見たかった自分に、改めて気が付いた。  
自分の淫液にまみれたバイブを喉の奥深く押し込まれながら、背中がベッドから浮き上がる程に身をのけぞらせた啓子の両膝が見る見るうちに大きく開き、震える両手がいつものように肉ヒダを押し広げる。  
「あら!この子の下のお口ったら、何か言いたそうにヒクヒクしてるわ。本物の淫乱ね、ふふ…」  
今日子の言葉通り、小林には啓子の声が聞こえていた。エスカレートしそうな今日子を止めない小林の胸の内もまた、啓子に届いている筈だった。  
_そうだね、わたしたちにとって、それが最良の選択だ…  
何かを求めるように小林に向けて穴の奥を開いて見せる啓子に、小林は言った。  
「これからずっと、ここに住み込みで働いてくれるね?」  
その言葉に啓子が頷く間も与えず小林と今日子は競うように穴に指を突き入れ始めたが、歓喜する啓子の悲鳴は喉のバイブをただ震わせる事しかできないだろう。  
 
こうしてペンションシュプールに、新たな宴の日々が訪れたのだった・・・  
 
完  
 
 
 

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