フィアンセは我孫子武丸篇
「やったことはないんですが、はじめたいとは思っているんです」
本当にその気があったわけではない。透はただ当たり障りのない言葉を選んだだけである。
真理の顔が真っ青になっていると気づいたときには、もう何かも手遅れだった。
「そうかそうか。はじめたいのか。それじゃあ、さっそく私はコーチしてあげよう。
竿も仕掛けも二人分あるから」
「え、でも、館へ行くのは…」
「そんなことどうでもいい。見たまえ、あそこにちょうどいい小屋がある。
今夜はあそこに泊まって、徹夜で釣り三昧といこう」
「そ、そんな…」
人の良い透がこの短い言葉の言外に、何を言ってるんですか正気ですか、と精一杯嫌そうな口調と
表情で言ったのが第二の失敗だ。もっとハッキリと言いたいことを言葉にして言うべきだったのだ。
案の定、小林はさらに勢いに乗って、
「いやあ、私が釣りを教えてやろうと言うと、真理も家内もすごく嫌がるんでね、
君のような相手を待っていたんだよ」
と喜色満面で言った。
「ということで、真理、私は透くんとこの小屋で過ごすから、館のほうには君たちだけで行ってくれ。
明日の夕方、迎えの船が来るまで、ここで釣りをしているからね」
「でも、小林さん…食事とかは…」
「そんなもの、釣った魚を焼いて食べればいいんだ。自分で釣った魚を自分でさばいて自分で食べる。
これは最高の贅沢だぞ」
透の内心とは裏腹に小林さんは愉快そうに笑った。
「真理…」
透は助けを求めて、真理のほうを見たが、彼女はかぶりを振って、
「もう、こうなったら誰も叔父さんを止められないわ。じゃあ、私は館に行くから。
二日間、楽しんでね」
「…と、いうわけなのよ」
「なんや透くんも間が抜けとるのお」
香山は、真理が話す三度目の説明を初めて聞いて、がはははは、と豪快に笑った。
真理が一人で三日月館に着いたときに最初に出迎えたキヨに透たちのことを説明し、
二度目は久保田夫妻とOL二人組みと美樹本がいるときに、そして今最後に到着した香山夫妻に三度目を話し終えたところだ。
「こんな辺ぴなとこで魚なんて釣れんのかいな」
さり気なく真理の隣にドカッと腰を下ろした香山が言った。
「無理だと思いますよ。どの道、叔父さん釣り下手だから」
横から俊夫さんが「透くんのその押しの弱さを見ると、君たちの仲もちっとも進展してないんじゃないか?」と言った。
「え…さあ、どうですかね」
否定も肯定もせずに、真理ははぐらかした。
内心、もしこの期待に透が何かアクションを起こすつもりなら、
よほどタイミングが悪くない限り受け入れても良いかもと思っていた。
このまま明日の夕方まで釣れもしない釣りをやっていたら、あまりに気の毒だ。
あとで助け舟を出してやるかな、と考えているとき、ドアが開いて見知らぬ男が入ってきた。
村上や正岡に続いて仕事の関係者かと思っていたら、男は全員の視線が集まる中、あっさりと自己紹介した。
「皆さん、ようこそいらっしゃいました。私が、この館の主、我孫子武丸です」
真理の第一印象はそんなに悪くはなかった。二十代にも四十代にも見えるが、
がっしりした体格が貫禄が出している。顔もなかなかハンサムだと思う。
まず最初に村上が食って掛かった。
我孫子は急な仕事で遅れたことを全員に詫びた後、巧みな言葉の言い回しで村上のプライドを傷つけることなく、
納得させてソファに座らせてしまった。
この対処を見て真理は、大人だなあ、と感心した。慣れてる、とわけではないだろう。
我孫子は村上と初対面のはずだ。いきなりでもあんな気難しい人を軽々手玉に取れる器量が、
我孫子武丸という人にはあるのだろう。
我孫子は改めてみんなの前で挨拶をした後、日程や島の簡単な説明をした。
「…ということです。何か質問はありますか?」
一同を見回した後、我孫子は頷いた。
「それでは皆さん、たっぷり楽しんでいってください」
偉ぶらずに謙虚でフレンドリーな我孫子の話し方に、真理は好感を持った。
我孫子は今までに会ったことのないタイプの大人だということもあり、強く興味も惹かれた。
その後、キヨの案内で一同は二階の各部屋まで通された。館の外観や造りは監獄の名残を残していたが、
中の二階は完全にリフォームされて別世界だった。
これには皆、完全に意表を突かれたように感嘆の声を漏らした。床に敷き詰められたふかふかの絨毯は、
足音ひとつ立たせなかった。
部屋に荷物を置き、一息ついた。夕飯までの二時間くらいは自由時間ということになっている。
透の様子を見に行こうと部屋を出た後、一階のロビーで我孫子に出会った。
「もしよかったら、一緒に散歩にでも行きませんか?」
いきなりの一言に、なぜかものすごく緊張した。いや、舞い上がっていたのかもしれない。
透のことはさっぱり頭から消えてなくなり、彼の腕を取った。
来た時とは別の山道をのんびりと歩いているときに、真理はいろいろなことを聞いた。
『かまいたちの夜』というゲームは、昔の友人である今日子さんから話を聞いて作ったこと、
ゲームを作ったのは副業で、本業は会社を経営していること。
「どうしてこの島を買ったんですか?」
「最初はリラックスできそうな無人島にしようと思ったんだ。候補に上がったこの島のことを調べていくうちに、
いろいろな伝説や曰くがあることを知って、それで興味を持って買ったんだ」
「どんな話です?」
「徐福伝説や人魚伝説やタヂマノモリ伝説。つまり…」
「不老不死ですか」
我孫子が感心したように真理を振り返った。「そうだ。詳しいねえ」
「大学では民俗学を専攻してたんです。我孫子さんも興味あるんですか」
「ああ。ただ僕はあくまで個人的な趣味の範囲だけどね」
個人の趣味で島一つ買うのも、すごいことだと真理は思った。
「調べてみると、昔のこの島の所有者だった岸猿伊右衛門も不老不死について研究してたみたいだし、
この島には何かあるかもしれないね」
「そう言えば船長さんが言ってたんですが、今夜は『かまいたちの夜』だって。かまいたちの夜って何のことですかね。
ゲームの題名だとばかり思っていたんですけど」
「私も詳しいことは聞いてないが、この島には、五十年に一度、『かまいたちの夜』という特別な夜が訪れるらしい。
その日は厳重な物忌みをして、村人は外に出ないとか」
「たとえば、祭りの夜に荒神が村を徘徊してまわり、人間を生贄として殺すという話は…」
この二時間で真理と我孫子はすっかり意気投合していた。
共通する興味ある学問の議論は、二人の間の一瞬の沈黙も与えなかった。
真理は久しぶりに学術的に充実した話ができて満足だった。大学を辞めて学問への道をすっかり諦めていただけに、
この島に対する探求心や伝説の話は刺激的だった。
廃村になった底蟲村や丘の上の石碑を見て周りながら、二人の会話は途切れることがなかった。
キヨの作った夕飯は大変絶品だった。
我孫子は話題が豊富でユーモアセンスもあり、食卓を盛り上げていた。
その後は、応接室でみんなビール片手にどんチャン騒ぎだった。
各々会話はバラバラで、村上や正岡たちは仕事の事を、美樹本や俊夫たちは三日月島の自然の事を、
女性陣は化粧品やらの事を、そして我孫子と真理はこの島の歴史や民俗の事を、それぞれ話していた。
最初に村上が二階に戻っていった。次に久保田夫妻が、その次に気がついたら正岡と可奈子が消えていた。
雑誌のモデル云々を話していたから二人で相談しているのかもしれない。それが普通の相談ではない事が容易に想像できて、
アルコールとは別の熱が胸の内から発するのを真理は感じた。
それからすぐにビールが無くなったということでお開きになった。
泥酔してゾンビのようなふらふらとした足取りでみんなが階段を上がっていく中、
我孫子にこっそりと「部屋にワインがあるんです。二人で飲み直しませんか?」と誘われたとき、
真理はごく自然に頷いた自分に内心驚いていた。
我孫子の部屋は、一階にあった。二部屋を繋げた構造で、真理たちの部屋より広かった。
部屋に入ってから会話はほとんどなかった。
二人はベッドに腰掛けてワインを一口飲み、ごく自然に見詰め合ってキスをした。
静かな、重ねるだけのキス。
痺れるような熱を帯びた唇の感触に、真理の最後の躊躇が無くなった。
「シャワーを浴びてきます」
後々になって言い訳はしたくなかった。
無人島にバカンスに来て大胆になっていた、アルコールのせいで判断力で鈍くなっていた、
そんな後になってから後悔するようなことは考えたくなかった。
透のことも考えたが、それでも真理の心は揺らがなかった。こうなったのは、ごく単純に素敵な男性に出会ったからだ。
お互いにシャワーを浴びたあと、再びベッドの上で向かい合った。
我孫子の手によって真理のバスタオルが外れて、彼女を覆い隠すものは無くなった。
「恥ずかしい…」か細い声で真理が囁く。
「きれいだよ」
唇を重ねると、そのままゆっくりと真理を仰向けに寝かせた。
我孫子の激しいキスに、真理の理性は溶かされていった。
口内の隅々までしゃぶられ、食べられてしまいそうなほど舌を吸われ、唾液を注がれて成す術もなく飲み干していく。
今までにしたこともない強引なディープキスなのに、ちっとも嫌な気がしない。むしろ痺れるような快感に積極的に舌を絡ませて、
せがむように唾液を啜っていく。
「ンンッ、ン、チュッ…ン、ンァ、ア、アァ…ンフゥ! アァッ!」
キスをしている最中も、乳房や太ももへの愛撫を絶やさず、真理の快感を増長させていく。
真理は無意識に体を摺り寄せて、快楽をねだった。
我孫子の舌が首筋へと這っていき、ピンと立った乳首に吸い付くと、真理が一際甲高い喘ぎ声を上げた。
「ハゥ――――――ッ! ァン!」
太ももを撫でていた我孫子の手は、いつしか真理の秘部に到達し、愛液で潤ったそこを二本の指でぐちゃぐちゃにかき回していく。
巧みにGスポットを刺激する我孫子の指の動きに、おもらししたように愛液が湧き出て下半身を濡らしていく。
真理は、小さいアクメに何度も達しながら狂ったように髪を振り乱して喘いでいる。
極度の興奮で汗が吹き出る肌が、抱き合うお互いの全身をしっとりと馴染ませていく。
乳房が雫状に変形するほど吸い付いていた口を離し、真理の肌の味をしっかり味わうように首筋に舌を這わしていった。
真理はアゴを上げて気持ちよさそうにそれを受け入れている。
「チュ…ハゥ、ンン、ンフゥ…」
貪るようにキスをする。
自分が今どういう体勢になっているのかもよく分からなかった。
ただ手足を絡ませて抱き合いながらキスして、骨まで溶けてしまいそうなほど快感に溺れている。
もうどうなってもいい。
めちゃめちゃにしてほしい。
「我孫子さん…」
キスしながらその名を呼ぶ。
この人が自分を幸せにしてくれる人だ、蕩けた頭で真理はそう思った。
かつて監獄だった殺風景な部屋が、甘い喘ぎ声に満たされていく。
「アァ、アァァン! アン、アン、ア、ア、アァ…ダ、ダメぇ…イ、イ、イクぅぅぅぅ…
イっちゃうぅぅぅ…アンアン、アンッ!」
白く泡立った愛液まみれのが指がクリトリスをつねると、真理の体が仰け反って痙攣した。
「アァ――――――ッ! ハゥ! ン、ンン――――――〜〜〜〜〜!」
首筋へのキスと太ももや胸元を愛撫する我孫子の手が、絶頂の快感を途切れさせずに真理の体を刺激していた。
絶頂で敏感になっている真理はされるがままに抱かれて、ぐったりと息も絶え絶えになっていた。
甘い吐息を放つ真理の唇に隙間無く口付けして、互いの口内で激しく舌を踊らせる。
呼吸をするときも舌先を合わせるようにして、貪るようにしてディープキスに浸っている。
「真理、愛してるよ」
「私も、愛してますぅ…。我孫子さん。…ンン、ハァ」
キスをしながら愛を囁いているうちに、真理の子宮がより強い刺激を求めて熱を帯びはじめた。
「さっきの話し受けてくれないか。島に残って一緒に仕事をしよう」
応接室での話しだ。
我孫子は、正式に大学の調査チームをこの島に送るつもりだと語った。そのときに、真理も調査チームに加わっては、と誘ったのだ。
調査チームの教授と我孫子は個人的に知り合いで、ちょうど助手を探していたのだ。
我孫子自身が会社に行かなくてもネットに繋がる環境さえあれば仕事は事足りるから、
一緒に仕事をしようと我孫子は誘った。
真理は最初は断った。
興味はあったが現場を離れて随分経つから役に立てる自信が無かったし、
今日はじめて会った我孫子にそこまで世話になるのも気が引けたからだ。
しかし真理の中でその気持ちも些細なものになり始め、別のもっと強い感情が判断を占めていった。
つまり、この男ともっといたい、と。
真理のその気持ちの同調するように我孫子は言った。
「君とのことをバカンスでのお遊びにはしたくないんだ。君がほしい」
「我孫子さん…」
快楽と幸福感に潤んだ真理の瞳を見つめながら、我孫子は言った。
「真理、結婚してほしい」
「ああ…嬉しい」
気持ちを表すように熱烈なキスで真理は答えた。
「あなたについて行きます。我孫子さん」
真理と我孫子は溶け合うように抱き合うと、互いの言葉と存在を強く確かめ合った。
腰をつかんでぐいっと真理の体全体を引き寄せると、熱く潤った陰唇に逞しい肉棒があてがった。
見つめ合う真理の瞳には、しきりにせがむような官能の揺らぎを見せている。
「ン…アァ」
いきり立った凶器の先端が、甘酸っぱい喜悦をにじませながら肉襞の感触の楽しむようにゆっくりと挿入されていく。
粘膜同士が絡み合い、大きすぎる肉棒を目いっぱいに陰部が受け入れていく。
「はぅ…あぁ、すごい…奥まで感じる」
「すばらしいよ、真理」
奥まで入れきったにもかかわらず、蜜壷の襞はもっともっと奥へと誘うように貪欲に蠢いていた。
抱き合い、触り合い、キスし合って、二人は一つに繋がった悦びを感じあった。
「ン、ン、ン、ア、アァ、アンアンアン! す、す、すご…ンアァ! ハァッ!」
ベッドの軋みと真理の嬌声、そして肉同士が叩き合う音と粘液が泡立つ音の四重奏が新たな淫行の刺激になる。
激しく乱暴に叩きつける腰の律動に、真理も我孫子の腰に脚を絡ませて甘い鳴き声をあげる。
我孫子は半身を起こすと、真理の腰をつかんで、応援団旗を上げるようにゆっくりと彼女の体を起こしていった。
座位になって、真理の自重でさらに深く入り込んだペニスが、蜜腔の奥の子宮口とキスをする。
「アァッ! アァ、いい…奥が熱いのォ…ひぁ!」
指の間から肉がこぼれそうなほど強く真理の尻肉をつかんで、
強引に我孫子の突き上げる腰の動きに合わせると、真理は堪らず仰け反って可愛く喘いだ。
我孫子の目の前で、官能的に上下に揺れる真理の乳房。
その先の桜色の蕾に誘われるようにしゃぶりついていた。
極上の果実を味わうように口いっぱいに乳肉を頬張り舌先で乳首を転がすと、
これ以上無いと思っていた官能がさらに高まり、真理の膣の締め付けも強くなった。
真理は両腕をまわして我孫子の首に抱きつき、唇を重ねた。
ついばむようキスから、お互いの舌をしゃぶりあい、ぴったり唇を合わせた二人の口内で
唾液を飲ませあって身も心も一つに溶け合っていく。
口元をべたべたにしながらキスし合っていると、ふと二人の目が合った。
「ふふ…」
汗ばんだ頬や額に髪を張りつかせ、淫欲に瞳を輝かせた真理の笑みは堪らなく妖艶だった。
「いいよ、真理。とてもセクシーで綺麗だ」
「ン、ン、ン、アン…我孫子、さんも、す、すごい…ン、こ、こんな、に逞しいの、は、はじめて…」
「忘れられない夜にしてあげるからね」
真理の体を寝かせると、挿入したままうつ伏せに引っくり返した。
「キャゥ!」
うつ伏せにした真理のお尻を上げて膝を立たせると、我孫子は眼下に跪く真理を見下ろした。
どこから見てもすばらしい女性だ。
この女をモノにしたい、支配したいという気持ちが、真理の腰をつかむ手に力を込めさせた。
「アン! アンアンアンアン…ア、アァ、ン、ンァ、ハァ、ンン…き、気持ちいいィィィ…」
真理は今の自分の体勢が後背位という体位だと蕩けた頭で理解していた。
なんでもいい。
我孫子がすることなら何でも受け入れる。
何でもやって欲しい。
我孫子に後ろから圧し掛かられて、真理は被支配感に酔っていた。
「ハァン…アゥ、ア、ア、ア…も、もっと…もっとくださいィィ…!」
我孫子の腰が容赦なく、真理の尻肉を叩く。
結合部から淫汁の雫を滴らせてて、長いストロークで角度を変えながら蜜壷に耽溺している。
「ン! ン、ン、ンン、ンア、ハァハァ…そこ、そこが…ハァン!」
胎内の隅々まで弄られる快感が脊髄を駆け上り、涙もよだれも垂れ流しでよがっていた。
そんな真理の様子に満足しながら、上半身を覆いかぶせて両手で乳房を揉みしだく。
「アァ、アァ、ンン、ハァ…もう、ダメぇ…し、死んじゃうぅ…」
我孫子は体を倒して真理と一緒に横たわり、彼女の片足を持ち上げた。
寝転んだままカエルのようにだらしなく広げた真理の股から、白く泡立った淫汁が
ぐじゅぐじゅといやらしい音を立てながら溢れていた。
濡れそぼる秘部はぴったりと吸い付くようにペニスをくわえ込みながら、
なおも貪欲に陰唇をヒクつかせている。
「アァァァ…ヒィ、ハァハァ、アァ!」
喘ぎ声もか細くなり、真理は我孫子のされるがままになっていた。
後ろから抱きつく我孫子は、手の跡が残るほど乳房を握り、真理の首筋に吸い付くようなキスをして
自分の証しを印している。
真理の体はどこに触れても、どこを味わってもまったく飽きることがなく、
ペニスをしっとりと包み込む肉襞が締め付けて子宮まで導こうと蠢くその感触は、
疲労を忘れて腰を突き動かせた。
「真理の膣内、すごくいいよ。最高だ」
「ア、アァ、ンン…あ、我孫子さんの、大きくて…アン、奥が…子宮が溶けそう…アァン!」
我孫子は体を起こして、真理の股の間に移動した。
「なら子宮をドロドロにしてあげるよ」
そう言うと真理の両脚を肩にかけ、押しつぶすように圧し掛かった。
「ア、アァァァ…フゥ…」
子宮がどうしようもなくペニスを求めて熱く痺れるのを感じる。
しゃぶりあうような濃厚なディープキスを堪能した後、
泡立った白濁液でぐちゃぐちゃになった下半身同士を叩きつけあった。
我孫子の激しいピストンの律動に合わせて、無意識に真理も腰を動かして
子宮をえぐられる刺激に酔いしれていた。
卵ほどもある睾丸が真理の尻肉を叩き、溢れかえった愛液が肛門を通り越してお尻の下にシミを作っていた。
「アァ! ア…ア! アッ! アン! ンッ! アァン!」
真理は両腕を我孫子の首にかけて必死にしがみつき、快感に顔を歪め髪を振り乱して嬌声を上げている。
我孫子の腰の動きが加速度を増し、唸りを上げた。
「行くぞ真理! 出すぞ!」
「ン! ンン! アァ! きてぇ! きて、きてぇ! 奥にちょうだい! アァ、アァアァ!」
肉棒を根元まで差し込んだ奥で、無防備な子宮に熱くたぎったザーメンをぶちまけた。
「ア、アァァァァ―――――――――〜〜〜〜っ!」
大量のザーメンが勢いよく子宮を叩くのに合わせて、真理の体がビクッ!ビクッ!と痙攣する。
下腹部の奥にジワリと広がる熱に、ため息とも喘ぎ声ともつかぬ甘い吐息が漏れる。
「アァァ〜〜〜…ハァハァ、ア、ア、アァアァ、ハゥゥン…」
ペニスを包む込む肉襞全体が、射精を促し一滴でも多くザーメンを絞り込もうと蠢いている。
大量に注がれる精液が子宮から溢れ、襞の一枚一枚に絡み、肉棒の根元を閉じる陰唇からも零れていく。
我孫子は真理の肩をがっちり掴み、隙間なく強く抱きしめ合った。
もう何度目になるか分からない情熱的なベーゼを交わす。
膣内に感じるペニスの脈動と子宮に広がる精液の熱さが、他人の命を感じる感動と新たな命を育む歓喜を与え、
真理は込み上げるままに涙した。
抱きしめ合いキスし合いながら、ずいぶん長い間、真理は胎内に我孫子の鼓動を感じていた。
(ああ…まだ出てる)
もっともっと射精してほしいと思う。
(こんなにいっぱい射精されちゃって…妊娠しちゃうかも)
そう考えた後、真理の中で込み上げてきた感情は、そうなったらいいかも、という期待感だった。
悩んだりするまでもない。
(ああ…私、我孫子さんの赤ちゃんが欲しいんだ)
どうしようもなく我孫子という男を愛してしまった。
出会ってまだわずかな時間からでも分かる、喋りかたや身のこなし、広い知識と高い教養が
すべてを任せてもいいという安心感を与えた。
それに加え、熱烈なプロポーズと満足感溢れるセックス。
自分をこんなにも愛してくれる我孫子を、真理も愛したのだ。
肉棒の脈動が治まった頃に、我孫子がわずかに体を起こして肩にかけていた真理の両脚を下ろした。
真理はその両脚を我孫子の腰に絡めて、膣内でまだ固さを保つペニスと陰部の密着を深めた。
まだ結合を解かないで、と瞳で訴える。まだ胎内で我孫子を感じていたかった。
注ぎ込まれたザーメンがこぼれないように、子宮の中で温めておきたかった。
我孫子はそれにキスで答えた。
二人とも射精と絶頂で、心地よい虚脱感があったが、まだまだ抱き足りなかった、キスし足りなかった。
ベッドの上で、脚を絡ませ、手を握り締めあって抱き合い、愛を囁き合って、時々キスをした。
夫婦の営みよりも濃密な交じり合い。
真理は、我孫子の逞しい胸板に頬擦りして匂いを胸いっぱいに吸った。
我孫子は、胸元でじゃれる真理の髪を梳いて、まったりと後戯の時を満喫していた。
「疲れたかい?」
「少し。でもとってもよかったわ。こんな愛情たっぷりのセックスは初めてよ」
「ぼくたちは婚約したんだから、当たり前じゃないか」
「うふ、そうね」真理は上目遣いに淫猥な瞳を向けた。「それじゃあ、先に赤ちゃんを身篭っても問題ないわよね」
我孫子は少しだけ驚いたような顔をした。
「もちろん。欲しくなったのかい?」
「うふふふ、我孫子さんのせいだからね」
真理の腰がいやらしくクネり、挑発的に乳房を擦り付けてくる。
「それじゃあ、今夜は一晩中がんばろうか」
「きゃあ」
二人の夜は、まだまだ終わらない。
*
結局、二日目の夕方まで、透たちは一睡もしなかった。
湖のほとりで小林から釣りのレクチャーを受けたが、とうとう役に立つことはなかった。
魚は一匹も釣れるどころか、気配さえなかった。
緩やかな湖面を見つめながら、透は空腹を抱えて落ち武者のように負け戦を続けるのだった。
当の小林は、透の精一杯の怨嗟の視線も、ぴくりとも反応しない釣竿もまるで気にしてない様子で、
釣れない釣りをそれなりに満喫しているようだった。
透の神経もいよいよピークに達しようとした頃、真理がうきうきした様子で山道を走ってきた。
「透! どう、釣れた?」
透は肩をすくめた。
「ああ、やっぱり」
「やっぱりってどういうこと」
「叔父さんの釣りはね、下手の横好きなの。これまでほとんど釣れたことがないよ」
そんなことだろうと思った。
「真理のほうはどうだった」
「すっごく楽しかった。ほんとに来てよかったわ。キヨさんって人のお料理も最高だし、
宿舎は広かったし、ベッドはふかふかでもう言うことなし!」
透は、頭の中で血管が数十本切れることを聴いた。
「それに、我孫子武丸さんはとても親切で、話題が豊富で、そのうえハンサムなの。
私、我孫子さんとものすごく気があっちゃった」
「ふーん、そりゃよかったね」透は押し殺した声で言った。
「透にも紹介してあげるね」
「結構だよ。遠慮するよ」
「だって、もうここに来てるのよ。ねえ、我孫子さん、我孫子さーん…」
透は、後ろの木陰から現れた男を見ても、たいした感想は無かった。いつかい体格の、
お世辞にもハンサムとはいえない若い男。いや、中年か。
肉体的、精神的疲労でぐつぐつに煮えきった透の脳みそでは、正常な判断は難しかった。
とにかく、そんな男のことはどうだっていい。
そう思っていた透の目に、とんでもない光景が飛び込んできた。
真理は、その男の腕を、まるで恋人のように両手で抱くと、その男の顔をうっとりとした表情で見上げている。
「我孫子さん、この人、私の元同級生の透くん」
「やあ、ぼくが我孫子だ。真理から君のことは聞いたよ。ぼくと真理はきのうあったばかりで、
まだ彼女のことを何も知らないから、いろいろ教えてくれたまえ」
透の頭の中で、さらに血管が数十本、ぶちぶちと切れた。
「あら、我孫子さん…何も知らないだなんて…私の一番大事なところは…ねえ、知ってるじゃない」
「え? あ、そうか。ははは。そうだったね。君とぼくだけの秘密だね」
そう言うと、二人はごく自然にキスをした。
まるで透に見せつけるように、二人の唇の間で互いの舌を絡ませ合い、ぴったり唇を重ねれば
真理の頬がもごもごを動き、激しいディープキスであることを物語らせた。
我孫子が唇を離すと、突き出た真理の舌から銀色の糸が伸びた。真理が口を閉じると、
口内で我孫子のものと混ざり合った唾液をおいしそうに飲み込んだ。
その光景を見た瞬間、残っていた透の血管は、すべてぶち切れてしまった。
朦朧とする意識の中で見た真理の顔は、透の初めて見るものだった。初めて見た真理の顔だが、
その顔が何を意味しているのかは如何な透でもよくわかった。
あれは、完全に惚れ込んでる顔だ。
「ねえ、叔父さん!」
真理と我孫子は透を無視すると、恋人か夫婦のように腕を組んで、小林のところに行った。
「叔父さん、紹介するわ。この人、私のフィアンセなの。我孫子武丸さん」
「フィアンセ? そりゃまた急な話だな」
「きのうの晩、意気投合して将来を誓い合ったの。ねえ、叔父さん、いいでしょう」
「真理が選んだ相手なら、私は大賛成だ。我孫子さん、今後ともよろしく」
小林と我孫子が握手をかわしている横で、頭の中のすべての血管を失った透は、ついに倒れてしまった。
「あれ? 透くんがあんなところで横になっているよ」
「きっと魚が釣れなかったからショックでふて寝してるんだわ。そういう人なのよ、あの人は」
我孫子と真理の声を聞きながら、透の意識はすうっと遠くなっていった。
〜終〜