……なかなか寝付けず、僕はきしむベッドから体を起こした。
かなり時間が経ったと思っていたが、時計の針はほとんど進んでいなかった。
やれやれと力なくため息をつき、僕は自室を出て館内を少し歩くことにした。
しんと静まり返った三日月館内は、過去の何かを思い出させるようでどことなく不気味に感じられた。
不意に真理のことを思い出し、真理の部屋へと歩を進める。
下心が全く無い、といえば嘘になるが、そんなことにはならない……という不甲斐ない気持ちの方が強かった。
ふと、静かなはずの廊下に小さな声が響き始めた。
僕の胸が急激に高鳴る。
部屋にいれば聞こえないであろうその声は、僕の下心を裏付けるに値する甘いものだったからだ。
そして、信じたくなかったが、それは自分が進んでいる方向……つまり、真理の部屋から聞こえてくるものだった。
近付いていく程、よりリアルになっていく"喘ぎ声"は、僕のいやらしい想像を掻き立てる。
真理が、僕以外の誰かと……?
真理の部屋の前に立ち、そっと聞き耳を立ててみる。
やはりその声は真理の部屋から漏れているものだった。
周りを見て、誰もいないことを確認してからノックもせずにドアノブを回す。
覗きの趣味があるわけじゃないが、ここでノックするなんていう野暮な真似はさすがの僕にも出来ない。
運が良いのか悪いのか、鍵はかけられていなかった。音を立てないよう
ゆっくりと扉を開けると、"喘ぎ声"が現実のものとなった。
半裸姿の真理が、暴れ馬に乗っているかのように上下に動いている姿が見えた。
はしたなく捲られたTシャツの下の豊満な乳房が、ぷるんぷるんと
リズミカルに上下している。パンティは片足首に絡みついており、今にも落ちそうだ。
僕は生唾を飲み込み、真理の下にいる男の顔を確認しようとそちらに視線を向ける。
しかし、もともと部屋全体を薄暗くしているせいもあって、肝心のそれだけがよく見えない。
もどかしい気持ちを抑え、僕は再び真理を見る。僕の知らない、今まで見たことがない真理がそこにいた。
恍惚とした表情で卑猥に腰を振り、半開きの口から涎が垂れている。時折それを
舐め取っては、自分の下にいる男にキスをねだっている……ように見えた。