学校で、地丹は、夕べの亜留美の乱れっぷりを思い出してはボッキさせていた。  
もっともこれはある程度仕方のないことで…なにしろ、背中がまだまだ痛むのだ。痛む度に、その傷の  
原因となった亜留美の背中への爪立てを思い出し、必然的にそのときの情景を連想してしまう。  
今も、半分ボッキさせかけて前屈みになりつつ、廊下を歩いている所なのだけれど。  
廊下を曲がった所で、当の亜留美が下級生(神崎美智子と、もう一人はたまに見る一年生女子)とだべ  
っている。亜留美は地丹に背中を向けている。他の二人も会話に夢中で地丹には気づいてない。  
ふと、一年生の娘が薬包紙(なぜ学校で?)を取り落とした。  
拾い上げてやろうと上体を屈ませる亜留美。実に柔らかい身体、膝を曲げず脚を伸ばしたままで容易に  
手が床に届く。それはいいが、屈みこんだせいでミニスカートがめくれてパンツが丸見えだ。  
今日はいままで穿いた事のなかったレース地のパンツ。  
亜留美のアソコの両脇の盛り上がりが、薄い布を通してよく判る。そして布地の中央が、それが隠して  
いる秘部の縦筋どおりの形に食い込んでいる。隠されているソコの形状を熟知している地丹にして見れ  
ばなおさらその本体を連想させる食い込み方…地丹は思わずまた夕べの事を思い出してしまった。  
一年生の娘が、パンツを眺めてボッキさせている地丹に気づいた。  
「あ!泊センパイ、男子にお尻見られてますよ、パンツ丸見えですよっ!」  
亜留美は慌てて上体を起こし、スカートの裾を両手で押さえつつ振り向いた。キッとした表情、なんか  
夕べとは別人みたいだ。戸惑う地丹。  
「…ち、地丹くん…見たわね?」  
「うん…あ、いえ、はい…あ、いやいや、あのその…」  
「やらしい子ね。ちょっといらっしゃい。」  
(なんだよ、パンツぐらい見えたっていいじゃないか、だいたいそのパンツ、今朝全裸で僕に『ね、今  
日はこのパンツはいてみようと思うの、どうかな?』って言って穿いて、『似合うかな、ね、ね?』っ  
てお尻を向けたり股間を見せたりしてたじゃないか…。)  
でも言われたままに近づいてゆく。と突然。  
パコンっ。  
軽い音がする。亜留美に頭をゲンコツで叩かれたのだ。  
 
彼女は地丹の手を引っ張り、すぐ脇の科学用具室に連れ込んで戸を閉めた。地丹は叩かれたことに抗議  
しようとしたのだが。  
「い、痛いじゃな…んむ。」  
いきなり唇をふさがれた。だけどすぐに亜留美の唇は離れる。  
で、パコンっと2発目を叩かれた。  
「こら坪内地丹!上級生のパンツを見てやらしいこと考えて、タダで済むと思ってんの!?」  
「いてて、だって、亜留美ちゃ…じゃなかった、先輩、さっきのは事故…」  
またキスされた。そしてゲンコツ3発目。  
「オチンチン硬くさせてたでしょ、いけない子っ!」  
そして、さらにまたキス。今度は舌を絡めてくる濃厚なキスだ。  
もちろん、キスされている所は美智子たちには見られていない。戸の向こうにいる二人娘からは、地丹  
が亜留美に殴られつつお説教をくらってる風にしか聞こえていないだろう。  
キスをしてる最中の亜留美の顔は、夕べの亜留美の表情だ。地丹は少し安心した。  
と思ったら、またゲンコツとお説教。  
「ほらっ、目上の女性相手に恥ずかしい思いさせたんだから、ちゃんと謝って欲しいもんだけど?」  
「あ、その…ごめんなさい、亜留美先輩…」  
またキスされた。今度は地丹からも積極的に舌を絡める。二人の唾液が入り混じる。  
亜留美は小声で『ごめんね』と囁いて戸を開けて出て行った。地丹も後についてゆっくり出てゆく。  
「さ、お仕置きは終わったわ。行きましょ。」  
「あ、はい亜留美先輩…でもきびしいですねぇあいかわらず…」  
「上下関係はキチンとしておかないといけないわ神崎さん。先輩ってのは舐められちゃダメなの。」  
彼女らは角を曲がり、後は地丹からは声だけ聞こえている。亜留美の毅然とした物言いは続く。  
「いくら同じ科特部のメンバと言っても、先輩と後輩だからね。ほっとくとつけあがる子だし。」  
「さっすが泊センパイ、カッコいーい。じゃ、私ここで…」  
これは一年生の声だ。  
渡り廊下、つまり亜留美や美智子とは別方向にパタパタ駆けてゆく足音を、地丹はぼんやり聞いていた。  
 
<以下、病院内>  
一年生役の薬剤師の女性(実は31歳なのだが、童顔なのと背が140cm台なので、箱庭世界では後  
輩ということにされてるのだ)が渡り廊下をパタパタ駆けてゆく。亜留美と美智子はまた歩き出した。  
「先輩役が上手になったわね、亜留美ちゃん。」  
「そうですか?神崎先輩たちを後輩として扱うの、ちょっと心苦しいんですけどね…」  
「いいのよ。それよりさ、亜留美ちゃんそういうパンツもはくんだ、知らなかったわ。」  
「え?」  
「いや、前は、イチゴ模様とかミッキーマウスのプリントとか、そういうの着けてたじゃない。」  
「あ、それは…なんか子供っぽ過ぎるかな、って思い始めて…似合いませんかね?地丹くんは『似合っ  
てるよ』って言ってくれたんですけど…」  
「…ふーん…いいんじゃない?素敵だと思うわ。」  
 
二人は休憩室へ。  
ドアを閉め二人きりになると(廊下はなんだかんだで人がいた)、美智子の目つきが変わった。  
「ね、亜留美ちゃん、聞きたいんだけど…『イク』って、亜留美ちゃんにとってどんな感じだった?」  
「はあ?」  
「夕べ初めて、エッチで本気でイッちゃったんでしょ?ね、どうだった?」  
これが彼女が本当に質問したかったことなのだ。  
亜留美は真っ赤になった。  
「あ、あのですね…一人エッチでイク時とずいぶん違う、って言うか質が違うって言うかなんて言うか  
…ほんと、もう、どうにかなっちゃう、死んじゃう、もう死んじゃってもいい…っていう感じで…やだ  
恥ずかしい…何でそんなこと聞くんですか?」  
「え?い、いや、た…他人の『イク』って感じをちょっと、知りたくって…」  
「同人まんがの新作のためですか?」  
「え?え!?い、いやその、なんていうかっ。とと、とにかくどんな感じだった?」  
「はあ…なんか、今思い出しても、天に昇るような気分です…」  
 
美智子はドキッとした。  
思い出して恍惚の表情の亜留美が、女の美智子から見てもぞくっとくるほど色っぽかったのだ。  
(い、いけないいけない…私はやおいを描く趣味はあっても、そっちの趣味は…)  
慌てて美智子はトイレと称して席を立った。  
美智子はそして――これはみんなには秘密だが――この病棟の看護師仲間の中で『SEXではイッたこ  
とのない唯一の女』に自分がなってしまったことに一抹の寂しさとかなりの焦りを感じていた。  
(なによ、私だって好きでイッたふりしてる訳じゃ…あーあ、何で私の歴代彼氏はSEXが下手なんだ  
ろ…コミケで知り合った男たちじゃあれが限界なのかな…私も天にも昇る気持ち、味わってみたい…)  
 
その頃すずは、若先生と共に、青松理事に呼び出されていた。  
理事はつまらなそうにレポートを読んでいた。若先生が書いた地丹の箱庭作業の観察レポートである。  
「これを読むと、坪内地丹の病状は快復していないようだね。3ページ目13行に『…ただし今のとこ  
ろ鉄道の敷設にいそしむことが彼の最重要関心事項であることに変化はない模様で…』とある。」  
おいおいおい、と若先生は思った。  
彼の書いたそのレポートは今回の『治療』に関してきわめてポジティブな内容になっている。このレポ  
ートを書いた目的は批判的な上層部に『上手く行っている』と報告する事なのだ。だからどちらかとい  
うと、少し露骨なくらい肯定的な方向にバイアスのかかった文章である。  
そんなレポートからもごく一部を取り出して拡大解釈し『快復していない、この治療は失敗だ』という  
結論を導き出そうとするのだから…まあそういう手合いはいつでもどこにでもいるもんだが。  
すずはといえば、少なくとも外見上は平静だ。  
「それ程見た目は変わるものではありせんよ。それは改蔵君たちもそうだったはずです。」  
「内面は変わりつつあると?断定できるのかね?」  
「いえ。兆候はありますが、まだ…」  
「いったいいつまで続ける気かね?この『治療』が尋常でないことは判っているだろう?外部に漏れな  
いうちに終了させないと…それに、治療のパートナーの看護師が本気で…その…オルガズムスに達する  
ようになってしまったそうじゃないか。」  
 
もう情報が伝わっているのか。まあ仕方ないが…。  
「彼女が仕事としてでなく、本気で肉体関係にのめりこんだらどうするんだ?恋愛感情に発展したら、  
いや、もし妊娠でもしたら君は責任が取れるのかね?」  
すずがすぐには言葉を返さなかったことで、理事は自分が精神的に優位に立ったと思ったらしい。さら  
に彼女を追い込もうというのか、急に全く関係のないはずの話題を持ち出した。  
「ときに彩園君、君の離婚調停の件はどうなっているのかね?娘さんの親権問題は解決したのかね?」  
若先生は穏やかでない…それはエグすぎだろう、と思う。  
しかしすずは「しれっ」とした表情のままだ。  
「まだまだですね。で、それが今回の件とどういう関係が?」  
「いや別に。ただちょっとね。君もまだ若いし、なんだその、そろそろ再び男というものの温もりを…」  
急に若先生が携帯を取り出した。メールを見つつ慌てて声を上げる。  
「先生大変です。退院した筈の患者が病棟にやってきて、ガードマンと悶着を引き起こしてるそうです。」  
「元患者って誰よ?」  
「例の男ですよ、元229号室に入院してた彼。ほらこの前も来て『早く約束のエリア55への無料招  
待券を渡せ』と言ってひと悶着あったじゃないですか。」  
話の腰を折られて不機嫌そうだった理事がゲッとなる。彼を退院させたのは青松理事だったのだ。院内  
では、あれは誤診だったというのが今の評価だ。すずは言う。  
「青松理事、この話は終わりにしていいですか?ちょっとあっちに行って騒ぎを収めないといけなくな  
ってきたみたいなので。大丈夫です、地丹くんはちゃんと快復させますよ。」  
理事があいまいに頷いたので、すずと若先生は理事室を後にした。  
 
「ありがとう。」  
廊下を歩きながらすずは言った。冷静ではあったが、あれ以上理事が彼女の離婚調停の話を続けていた  
らどうなっていたか彼女にも判らなかったのだ。若先生がメールを受けるふりをしてくれなかったら…。  
「いいんですよ。でも…この治療、絶対に成功させないといけなくなりましたね。」  
「…そうね…」  
それきりですずは足早に歩きつづけた。  
 
<以下、箱庭世界>  
「昼間はよくもパコパコ殴ったね。少し痛かったんだぞ。」  
学校が終わり、うちに帰って自室に引きこもった二人。地丹は亜留美に不機嫌そうに言った。  
亜留美は(やっぱりそれを言い出したか)という表情だ。そしてすまなそうに両手を合わせる。  
「ごめーん。だって、学校では、先輩と後輩のけじめをつけるって約束でしょ?」  
「そりゃそうだけど…」  
「地丹くぅん…許してお願い。少しくらいなら、エッチでサービスしたげるから、ね?」  
地丹は何か企みを思いついたらしく意地悪そうな流し目で亜留美を眺める。ほんとは叩かれる間にされ  
たキスに萌えたのだがもちろん黙っている。  
「じゃ、そうだな…お口でしてもらおうかな?」  
「ええ!?口で…う…うーん…」  
「嫌なの?あのね、昼間はよくもパコパコ殴…」  
「わ、わかったわよー…ただし、咥えるのと、口の中に出すのは無しだよ、それでいいでしょ?」  
 
キャミソールを脱いで全裸になり、亜留美は地丹の勃起したものにくちづける。おずおずと、そしてこ  
わごわと…。軽く手を添え、竿のところから、次第に先端の方へ、チュッ、チュッとキスをしてゆく。  
地丹のペニスは、剥けた状態が普通になってまだ一年たっていない。  
竿の部分は濃い肌色で…剥けた膨れ上がった亀頭は鮮紅色になっている。地丹のそれを、亜留美はちろ  
ちろとなめ始めた。なるべく味を感じないようにしたいという表情だが。  
「は…はは…亜留美ちゃん、なんかくすぐったいや…もうちょっと、ねえ」  
亜留美は答えない。一心に地丹の陽物を舐め、キスをし、また舐め…を繰り返している。  
臍につきそうなほど反り返ったモノを引き下ろすように、亜留美のほっそりした指が軽く添えられた状  
態で、亜留美は地丹の先端の尿道口の辺りを舌の先端だけで舐め始めた。結構上手だ。  
「気持ち良い?…地丹くん…」  
亜留美が上目遣いで尋ね、そして上目遣いのまままた地丹の亀頭の裏筋にキスをしだした。  
 
つづく  
 

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