また不審火で家が焼けた。  
何度坪内家は全焼すればいいんだろう。まあもう慣れっこだ。なぜかすぐまた建つんだし。  
さしあたり今夜のねぐらを探さないといけない。竹田の家は今週いっぱい留守だったな。亜留美(未だ  
に先輩になった気がしない。だから、少なくとも脳内では呼び捨てだ。)の家に行こうにも、ストーカ  
ー衣装が灰になっちゃったし、新調するまでに3日はかかるし…。  
改蔵くんちに行くしかないか。あの二人のSEXも見飽きたけど。  
 
彼らの部屋はいつぞやのリフォームでハチャメチャな造りになってるので、訳のわからないところに鍵  
のかからない窓とかあったりする。首尾よく入り込めた。  
けど改蔵くんたちはいない。家の中にはいるみたいだけど探すのも億劫だ。  
それに彼らがいるかどうかはどうでもいい。ねぐらなんだから。リフォームのとき作ったペット小屋み  
たいな所に目立たないように入り込み、食べかけのうまい棒(テーブルの上にあった)をかじる。  
しばらくして改蔵くんたちの声が聞こえてきた。  
「…も、やっちゃってないんでしょ?それってさぁ」  
「関係ないって。それは別だってば。いつもそんなもんだろうが。」  
「ほんとなの?信じらんない。いつもがいつもだもん。」  
何の話をしてるんだろう?とりあえず、なんか言い合いながら部屋に入ってきた。  
二人ともパジャマ姿だ。僕がいるのには気づいてないらしい。僕も特に声はかけない。  
タオルを使ってるところを見ると羽美ちゃんは風呂上りか。  
改蔵くんの女の子関係で揉めてるみたいなんだけど、それはそれとしてヤルつもりらしい。  
 
口論しながらパジャマを脱いで例のWベッドに入り、電波っぽい単語の応酬をしつつベッドの中で下着  
も剥ぎ、非難しあいながらお互いを愛撫する。さすがにキスをし始めると二人とも無言になったけど。  
まあこれもいつもの事だ。そしてこの二人の場合、最近はもうさほど時間をかけずに前戯を終える。  
今日もごくあっさりとした流れで身体を重ね、挿入した。  
 
挿れてからも別に派手に嬌声を上げたりしない。ハアハアの音だけが淡泊に部屋にこもる。  
なんていうか、SEXも毎日の当たり前の日課になると、こんな風にお茶漬けを食べるみたいに淡々と  
こなすようになるんだろうか。17歳同士のカップルがこんな事でいいのかね。  
 
しかし毎晩毎晩飽きないのかなあと思ったら…してる最中に羽美ちゃんがあくびをした。  
なんだ、やっぱり飽きるんだな(笑)。  
腰の動きを少し止め、上になっている改蔵くんが言う。  
「こら。まじめにやれよ。」  
「ごめーん。なんか眠くて…」  
「やる気ないのかよ。感じてないのか?」  
「感じてるよー。こんな濡れてんじゃん、わかるでしょ?」  
改蔵くんは再び腰を動かし始めた。  
たしかにじゅぐ、じゅぐ…と濡れてる粘膜のこすれる音がする。身体にかけた毛布で見えないけど。  
羽美ちゃんが少しだけ声を漏らす。  
かえってわざとらしいと感じたのか、改蔵くんは腰を動かすのをまた止めた。  
「どしたの…。しらけちゃった?」  
「んー。」  
「やめちゃうの?」  
「んー。」  
改蔵くんは腕で身体を支えるのもやめ、羽美ちゃんに全体重をかけた。  
「おもいー。改蔵重いー。」  
羽美ちゃんが下でじたばたする。  
「重いってばー。聞いてるの改蔵?」  
「聞いてるよ。なーんか、新しい刺激ないかな…おい下っ端、なんかないか?」  
なんだ、僕がいるのに気づいてたのか。もっとも別に隠れようとしてた訳じゃないけど。  
 
「やだ…地丹くんいたの?なんであんたいんの?」  
「うちがまた不審火で焼けまして…」  
「なんだ、気づいてなかったのか羽美。俺は部屋に入った時からいるのに気づいてたぞ。」  
「恥ずかしいよぉ。地丹くん見ないでよ…」  
「へへへー。やだねー、最後まで見るもんねー。いいだろ?改蔵くん。」  
「ああ。いいじゃんか羽美、今夜初めてな事じゃないんだし…見させてあげようぜ…」  
「まあそうだけど…そうね…害ないしね…」  
「じゃあさ、じゃあ、ねえ羽美ちゃん、アソコが繋がってる所、見せてくんない?」  
「いくらなんでもそれはやだよー。」  
「そうか?俺は繋がった所見られた方が興奮…いてて殴るな。ま、今のままでも少しは刺激になるか…」  
改蔵くんはそう言うと羽美ちゃんの乳首を舌で転がしだした。二人はまた複雑に絡み合ってゆく。  
 
さほど燃え上がりもしないが二人の世界に浸りきってる。もう部屋に入るときの口論はどっかに行って  
しまったようだ。なんか邪魔したくなって、僕は口を挟む事にした。  
「なんだかなー。これで『付き合ってない』とか言ってんだから恐れ入るよ…」  
「え?私たち付き合ってなかったわよ?」  
騎乗位でゆっくり腰を使いながら羽美ちゃんが答えた。まだ学校にいる時と同じ口調と表情のままだ。  
「んな事言ったって、ずっと前からエッチしてたじゃないか?こんな動かぬ証拠を…」  
「だって…一緒に暮らしてれば、ねえ改蔵?」  
「そりゃそうだ。一緒に暮らしてれば、付き合ってなくともSEX位するさ。」  
「一緒に暮らしたりエッチするのは、付き合っているうちに入らないのかよ?」  
「入らないでしょ。やっぱ、付き合うってのは、告られたり友達に紹介されたり…で、デートしたり二  
人で映画見たり…そうやって仲が進展していくの。私と改蔵って違うでしょ?」  
どうやら、この二人にとって、「付き合ってる」の単語に対する感覚が一般人と違うらしい。なんつー  
か、幼馴染のままずーっと一緒にすごしてこうして暮らしてると、こんな感じになるんだろうか。  
 
改蔵くんが身体を起こし、対面座位になる。でもまだイマイチのらないらしく、僕に訊ねた。  
「…それより、新しい刺激のほうはどうだよ?なんかないかな?」  
「僕にエッチのやり方を聞かないでくれよ…そうだな、くすぐりっこでもしたら?ハメたまま。」  
改蔵くんは羽美ちゃんの脇腹に手を持っていってくすぐりはじめた。  
「こ、こら、なにすんのよ、ちょっ…うひゃは、ははは。地丹の馬鹿、変な事言う…もははは。」  
「お?アソコが締まる締まる。なんかいいぞ、面白いな。」  
「やめ…怒るわよ、そんな…もは、もはははは。もはははははは。」  
「おっさんみたいな笑い方だなお前。」  
「るさいわね、好きでこんな…もは、やめ、むおははははははははは。」  
笑うたびに小さなおっぱいがぷるぷる揺れる。羽美ちゃんは抵抗したが改蔵くんに組み伏せられてしま  
う。下になってさらに悶絶し続ける。抵抗だけでは駄目と思ったか、負けじと彼をくすぐりだした。  
「もはは、しかえしー。もはははは。」  
「やめ、ばかお前、なにす…わひゃ。この…やろ…わひゃひゃひゃ。」  
「変な笑い声、もはは。人の事いえないじゃん…もははは。」  
Wベッドが普通にエッチしてたときより大きくギシギシ音を立てている。  
 
…ほんとにやるとは思わなかったよ。  
大きなベッドの上で、全裸で下半身ハメたまま、くすぐりっこして笑いあってる二人。  
はた目から見たらバカみたいだ。ていうかバカップルそのものだが。ていうかバカ夫婦な訳だが。  
 
毛布が床に落ちた。二人の繋がってる所がこっちに見えたり隠れたりする。動物的な光景だ。  
だんだん笑い声はあえぎ声にかわってゆき、くすぐっていた手は愛撫の動きになってきている。くすぐ  
りあってるうち気持ちよくなってきたらしい。そしてごく普通のSEXの絡み合いに戻ってきた。  
後はいつものパターンだ。  
互いの高まりを同調させるようにしながら、地味に無造作にイク気らしい。  
 
「ん…そろそろ…」  
「良くなってきた?改蔵がんばれ。」  
「ああ。もうちょっと…かな。」  
「じゃあがんばれ。ゴールはすぐそこだよー。ほれ。がんばれ。改蔵がんばれ。がんばれー。」  
羽美ちゃんは改蔵くんの脇腹の後ろをペシペシ叩きながら笑顔でがんばれがんばれを繰り返した。  
ぐちゅぐちゅ卑猥な音をさせてるアソコの様子と、会話・仕草・表情がすごく不釣合いだ。  
「やめれ。俺は馬車馬かよ。」  
「あはははー。」  
笑い終わると羽美ちゃんは真顔になった。そろそろらしい。改蔵くんも腰の動きがせわしなくなる。  
「あ…イクぞ、いいな?」  
「うん…」  
なんとなく事務的な会話。いつもそうなんだけど。  
そしてあっけない絶頂。  
二人ともびく…びくっ…となり、息を止めて動かない。少し後、クタッとなると共に長い吐息が出る。  
それだけだ。  
でも、羽美ちゃんはこんなのでも結構満足そうだ。潤んだ瞳でこっちを向いた。僕がいたのを思い出し、  
さすがに恥ずかしそうに目を伏せる。  
 
勝家を出た。いくら見慣れてるとはいえあれ以上は居心地が悪い。ティッシュも随分使ったし。  
それより今夜はどうするかな。漫画喫茶ですごそうか。  
携帯にメール。鉄道関係で知り合った鹿児島のメル友からだ。何か変わった事あったかと尋ねてる。  
変わった事かぁ…家が焼けたのも、改蔵君たちのSEXを見たのも、別に目新しい事じゃないし…。  
『特に何もなし。ここんとこずっと平穏な日々だよ。』  
そう返信すると、僕はとりあえず一番近いコンビニに向かう事にした。  
 
‐完‐  

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