今日はわたくしに、一体何のお話を聞きに来て下さったのですか?
名取様のお話ですか? 名取様とわたくしが、どのようにして知り合ったのかと。
ああ、そのことでしたら、あなたもご存知のはずですよ。
新学期、新しいクラスで自己紹介をする番になった時、突然席を立って教室で暴れ回って、
何人ものクラスメイトを病院送りになさった事ですか?
ええ。最悪の出会いでした。
あの後しばらく、名取様は皆さんにとっても、もちろんわたくしにとっても、
恐怖の代表みたいな扱いでしたからね。ええ。そうです。
でもね、わたくしが名取様と行動をともにするようになったのは、その後の
素晴らしい体験があったからなんですよ。
今は――少し事情が違いますけど。いえ何でもないです。
じゃあわたくしの話を聞いて下さいますか?
少し長くなりますけど、お付きあい下さいませ。
新学期も始まってしばらく経ったある日、あのお方――名取様――は私の席につかつかと
近付いてこられて、怯えるわたくしに向けて、とても優しい笑顔を見せて下さいました。
「消しゴム、落ちてるわよ」
そうおっしゃると、名取様は屈んでわたくしのために消しゴムを拾って下さいました。
――何て親切な方なんだろう。
わたくしはその時、本気でそう思いました。
その時の名取様は、学校でわたくしのために何かして下さった、初めての方なのですから。
思えばわたくしは、幼い頃からの引っ込み思案な性格が災いしたのか、周囲に友達と
呼べる方も少なく、高校生になってもあまり他の方と親しくする機会にも乏しかったものです。
そんなわたくしに優しい笑顔を向けて下さった名取様が、天使のように見えたのも
無理はないと思いませんか。
ましてや名取様は、クラスの誰もが恐れるお方となっていました。
でも恐ろしい方からの施しというものは、その意外性も手伝って、大変にありがたく
感じるものではないでしょうか。
現にわたくしは、これまでの生涯で初めて人から優しくされたという喜びも手伝って、
名取様の親切な行いに、すっかり舞い上がってしまっていたのです。
わたくしは「ありがとうございます」と叫びながら、名取様の胸の中へ飛び込んでいました。
胸の感触がちょっと固かったような――いえ、何でもありません。
それでわたくしは、わんわん泣いたのです。
名取様はそんなわたくしの頭を、小さい子供をあやすようになで続けて下さいました。
泣きながらわたくしは、自分の中で、名取様に対する印象が大きく変わって行くのが、
手に取るように分かりました。
その時のクラスメイトの視線に、もしかしたら気づくべきだったのかも知れませんけど。
わたくしと名取様との仲は、その後急な勢いで進展して行きました。
昼休みの時間になると、わたくしは名取様の机まで足を運び、名取様と一緒にお昼を
頂く新しい習慣を、心をはずませて迎えたものでした。
名取様はとっても食欲がお盛んでいらして、毎日おいしそうにお弁当を召し上がって
いらっしゃいました。
特にちくわが鉱物でいらっしゃったようで、お弁当のおかずにはいつも揚げちくわを
入れてらした事が印象に残っております。
「おいしいですか」とわたくしがたずねると、名取様は満面の笑みを浮かべて
「おいしいよ」
って答えて下さるんです。
そのうち理系文系で別々の授業を受けるようになった時に、名取様とわたくしとで
使わない教科書を、お互いに貸し借りするようになりました。
名取様の教科書には色々な文字や言葉が書かれていて、本当に勉強になります。
古代バルバル語や第三火星語については、わたくしはいつも赤点でしたので、
この件につきましては名取様に感謝の言葉もございません。
日に日に他のクラスメイトとわたくしとの間に、机の距離以上の間隔が開いていったことを
除けば、名取様との日々は全てがバラ色に満ちた世界でした。
――そして、時は確実に、わたくしと名取様の運命を動かしていったのです。
わたくしが名取様とすっかり打ち解けたある放課後、名取様は帰り支度をしていた
わたくしにこんな事をおっしゃいました。
「ねぇ、今度あなたのお家に行ってもいい?」
是も非もありませんでした。小学校中学校、高校に上がっても、わたくしの屋敷に
遊びに行きたいと、自分から進んでおっしゃって下さる方は、おりませんでしたもの。
わたくしは喜んでその提案に応じ、はしゃぎながらお話する内に、ただ遊ぶだけじゃなく
お泊り会にしてしまおう、という所まで、話はふくらみました。
その週の土曜日は、父も母もよそでお泊りする、と打ち明けると、名取様はその日にしよう、
と早々と決めてしまわれました。
わたくしも嬉しかったのですが、その時の名取様のお喜びようったらありませんでした。
もう次の週末が待てません。わたくしはずっとそわそわして、学校の授業は手に付かず、
興奮のあまり食事にもまともに手を出さずにおりました。
だってクラスメイトとお泊り会だなんて、わたくしには初めての事だったんですもの。
名取様がいらっしゃったら、何をして遊びましょうか。
普段はいけない事ですけど、二人で夜更かしをするのも楽しいでしょうね。
わたくしのベッドに、わたくし以外の方を迎えるだなんて、胸が躍ることだと思いませんか?
そう考えた途端、わたくしは何だか胸が締めつけられるような気分を覚えました。
何でだろう。名取様はあんなにもお優しくて、あんなにもわたくしを思って下さるというのに。
胸が締めつけられる感覚は、名取様が屋敷においでになるその日が近付くにつれ、大きさを
増して、私の心をどんどん占めるようになって行ったのです。
でもそんな胸の苦しい、切ない気分でさえ、名取様がおいでになる喜びと比べたら、
ほんのささいな心の動きでしかありませんでした。
約束の土曜日がやって来ました。
わたくしの記憶が確かなら、あれはさる土曜日の午後だったと思います。
わたくしはうすくお化粧と、それからおめかしをして、小雨のふり続く屋敷の門を
ずっと二階の窓から見下ろしておりました。
あいにくの雨で、空はうす暗かったのですが、それでもわたくしは名取様のご来訪を、
今か今かと待ちつづけていたのです。
そうこうする内に、わたくしはいくつもの水たまりをふみ越えて、門の前までお出でに
なった、名取様のお姿を見とめました。
わたくしはすぐさま、玄関までかけ降りて、名取様を出迎えます。
名取様の私服姿は、それは愛らしく麗しいものでした。
名取様はお顔もお身体も細くていらっしゃるから、その日召しておられた、厚手でヒダの
多いお召し物が、とってもよく似合っていらっしゃいました。
わたくしは少し太っているから、名取様がお召し物を上手に着こなされる様子を、
うらやましげに眺めるばかりでした。
傘をしまわれた名取様を自分の部屋まで案内しまして、部屋のテーブルにこしかけて、
母が大切にしていたドイツ産の白磁の茶器で、二人だけのお茶会をいたしました。
名取様は、机にのせた菓子皿のチョコレートやクッキーなどを次々とほおばられ、
カップに注いだお茶をほとんど一口で飲み干されて、おかわりをご所望になりました。
味や香りを楽しんでいただきたかったのですが、名取様は、あまりお茶やお菓子の素性には、
興味をお持ちでないご様子でした。
名取様がおいしそうに召し上がって下さるだけで、うれしかったものですから。
ちなみに、お菓子は都心の百貨店まで出向いて手に入れたゴ○ィヴァ、お茶は○ォションの
オレンジペコーです。
わたくしは、このお茶会を最高のものにしたくて、大枚をはたいたのでした。
茶器を片付けて、部屋に戻った後も、名取様とわたくしはとりとめのないお話をしました。
呪いとか、自分の中にいる色んな人たちの話とか、遠い星、前世の話とか。
その一部には、お昼休みの時にうかがった話もありましたけど、改めて名取様は素敵な方だと
感じずにはいられませんでしたよ。
わたくしと向かい合ってお座りになられていた名取様は、ふとこんな事をおっしゃいました。
「ね、私たちって何だか姉妹みたいだと思わない?」
「姉妹…あねいもうとの事ですよね? でも羽美様とわたくしとでは、親がちがいますわ」
「別に親が一緒である必要はないのよ。『私たちは姉妹だ』って言ったら、その時には
二人は姉妹になってるのよ」
名取様はそうおっしゃると、ペルシャ猫のように微笑みかけて下さいました。
世間のものとは大きくちがう、名取様がおっしゃる事にも、わたくしは慣れていたはずでした。
けどまだその時は、名取様のお言葉には、どういう意味があるのか、全く見当がつきませんでした。
名取様のお話は、その後もずっと続いきました。
けれどわたくしはいつのまにか強まっていた雨音と、投げ掛けられた『姉妹』という言葉のせいで、
名取様がお話される内容を、聞き取ることができませんでした。
わたくしが用意した夕食を二人で取り、その後名取様、わたくしの順番でお風呂に入り、
わたくしはもう一度部屋にもどりました。
名取様は、わたくしのベッドの上にお座りになられ、何かつぶやいておられました。
「羽美様、ただいま帰りました」
わたくしの声が小さかったためか、それとも外の雨音がどしゃ降りになっていたためか、
名取様はお気づきになられませんでした。
「お風呂から上がりました、羽美様」
ようやく声に気付かれた名取様は、わたくしがお風呂場からもどった時に、ショーツの上に
スリップといった姿であった事に、少しおどろかれたご様子でした。
お風呂から上がったわたくしが、ご自身と同じ格好であったからでしょう。
「なんだ。ちゃんと姉妹の意味わかってるんじゃない」
名取様のお言葉は、やっぱりわたくしには意味のわからないものでした。
わたくしは、そんな事に気もとめずに、名取様のおられる自分のベッドに座りました。
「こうやってお泊りするのも、何年ぶりだろうなあ。今更だけど、ホントにあなたのお部屋って
広くて素敵よねー。ね、もうちょっとこっちにおいでよ。」
わたくしは言われるままに、名取様のお近くに寄ってみます。
そのとたんに、わたくしは自分の格好が、大変恥ずかしく思えて来ました。
その時まで意識してなかったのですが、よくよく考えれば、二人とも下着姿ではありませんか。
名取様のお顔を、わたくしはまともに見る事ができず、顔をそむけてしまいました。
「どうしたの?」
心配された声で、わたくしをなぐさめて下さいます名取様。
恥ずかしいやら、うれしいやらで、わたくしは何も言えず、ただうずくまっておりました。
名取様は、わたくしの肩に手をふれられて、しばらくは二人とも無言まま、身動きひとつせず、
雨がはげしく土をたたく音だけ、じっと聞いておりました。
その時です。
明りのともった部屋の中までも、まぶしく染め上げるような、雷が一つ光ったと思うと、
部屋じゅうの電気が一瞬のうちに消えてしまい、まっくらな闇に包まれた部屋の近くから、
ぐわぁんという、大きな音が聞こえてきました。
「きゃあーーっ!」
わずか一秒たらずの間に起きた、一連のできごとに、わたくしは大声でさけびながら飛びはね、
手近にあったものに、われを忘れてすがり付こうと、夢中で手をのばしました。
暗やみの中で、やわらかくてなめらかなものに、わたくしの指先がふれます。
まるで子供のころに遊んだ、ぬいぐるみにするように、わたくしはそれに両うでを回して、
必死でしがみ付きました。
しっとりとして、それでいてなめらかで、やわらかく、あたたかい触れ心地です。
「きゃっ」
わたくしの頭の上から、短くて、かん高い声が、聞こえてきます。
声のした方向へ、わたくしが顔を上げると、名取様のご尊顔が、これまでになかったほど、
近くに見えました。
わたくしの肩を包むように、抱きしめて来られたあの方は、優しい目をしていらっしゃいます。
わたくしは、名取様の優しげな瞳を、のぞき込むことも、また瞳から逃れることも、
まったくできずにおりました。
「雷、ってやっぱり怖いよね。私だって」
意外な事をおっしゃいます。
「羽美様が、ですか? だってこんなに堂々となさって――」
「――いる訳ないじゃない。ね、ほら」
名取様は、わたくしの手をお取りになると、そっとご自身の胸元に運ばれました。
何をなさるのですか羽美様、とわたくしが問いますと、名取様はスリップの上から、
ご自身のお胸に、わたくしの手をふれさせて下さったのです。
ぷにゅっとした、小さいけどもやわらかな肉感を、わたくしは手のひらに感じました。
「ほら――私の心臓も、ドキドキ言ってるよ。お姉さんが妹の前で、怖がる訳には行かないけど」
確かに、名取様のささやかな乳房をとおして、とくとくとしたリズムの早い拍子が伝わって来ます。
息も少し荒げられて。ああ、羽美様も不安なんだと、わたくしと同じだと、嬉しく思いました。
本当に心地よくて、わたくしは、名取様の心音を、もっと聞きたいと思いました。
自分の手のひらを、愛らしいお胸に押し付けます。
ふぅ、と鼻にかかったため息が、名取様のくちびるからこぼれます。
暗やみに浮かんだ、そのあまりに甘美なお顔とお声に、わたくしは息を飲みました。
自分のほっぺたと、耳たぶに、熱がともっています。はたから見れば、わたくしの顔は
さぞかし真っ赤になっていた事でしょう。
可愛い――
それだけおっしゃると、名取様のうっとりとしたお顔が、わたくしの目の前にせまって来ました。
肩をやわらかく包みこまれ、背中をシーツに沈められたかと思った時には、
わたくしは名取様と、熱い口付けを交わしておりました。
何度も、何度も。
最初はくちびるを、何度かふれ合うだけで、次にはくちびるを、お互いに吸いあげて。
何が何だか混乱したまま、わたくしはとうとう自分の口に入ってきた、ぬめりのある肉を
必死でなめ取っていたのです。
名取様の長い髪が、わたくしのほっぺたを、くすぐります。
シャンプーのよい香りと、わたくしの全身を優しく包みこむ、名取様の体温に酔わされたのか、
わたくしは名取様のうなじに手を回し、いつの間にか無礼にも、名取様の首を自分の方へと
引きつけて、首を左右にふりながら、名取様のお口をむさぼり続けたのでした。
一しきり口付けを終えると、名取様はわたくしの上にに乗ったまま、ほほ笑んでたずねられました。
「このままホントに、姉妹になっちゃおうか?」
わたくしは、無言でうなずきました。わたくしを包んでいる、名取様の温かさの中にあっては、
拒むとか、ためらうとか、そう言った考えは、わたくしの頭の中から消えてしまっていたのですから。
でも、どうすれば姉妹になると言うのだろう。
わたくしが首をかしげていると、名取様は、わたくしのわきに手を伸ばされました。
わきの下で、ファスナーを下ろす音がします。名取様は続いて、スリップの肩ひもに、
手をかけてこられました。ないしょ話でもなさるかのように、小声で呼びかけて来られます。
「ちょっと背中を上げてくれない?」
熱に浮かされたまま、わたくしが肩を上げると、名取様はわたくしのスリップを、
おへその近くまで脱がせてしまわれました。
わたくしは、胸をはだけられた格好になりました。ブラジャーは付けておりません。
「やっ……」
はだかの胸をお見せする事が、とても恥ずかしく、わたくしは両うでで自分の胸を押さえました。
名取様は、そんなわたくしの様子をご覧になると、ご自身もスリップを、脱ぎ去って
しまわれました。つつましいお胸が、あらわになりました。
名取様は、顔をとっても真っ赤にされながら、けれども優しく話し掛けて来られました。
「私、胸小さいよ。私よりもきれいで大きなおっぱいを隠すだなんて、もったいないよ」
「羽美様――」
そうだ。この部屋にいるのは女の子二人だけなのに、わたくしは何を恥ずかしがっているのだろう。
女の子同士で恥ずかしがるとしたら、胸の大きさを競う時くらいなものでしょう。
ましてや名取様は、小さいお胸にもかかわらず、わたくしに見せて下さってらっしゃる
じゃないか。わたくしが恥ずかしがったりしたら、名取様に失礼ではないか。
わたくしは意を決して、胸の前で組んだうでを、ゆっくりと解いて横たえました。
「いい子ね」
そうおっしゃる名取様のお顔が、どんなご様子だったのか、わたくしは知りません。
恥ずかしさのあまり、名取様をまっすぐに見られなかったのですから。
やわらかい名取様のお身体が、あお向けになったわたくしの上に、降って来ます。
しっとりとした、冷たい手のひらが、わたくしの肌を、ていねいになでて下さいます。
のど下に、ぬめった感じを覚えて、わたくしの息は荒いでおりました。
「――はぁ……あっ!」
名取様の体温に包まれているという、夢見ごこちを破るかのように、左胸の先に
痛いようなくすぐったいような、するどい感じがおとずれました。
名取様の、いたずらっぽい笑い声を耳にいたしました。恥ずかしがりのわたくしでも、
自分の体に起きた、変化ぐらいは気になるものです。
目を開けて、胸の方を見てみると、名取様はわたくしの脇の下に肘をつかれた状態で、
わたくしの胸を、手のひらでブラジャーのように、包まれておいででした。
「意外と感じてるじゃない。ね、自分でもさわった事あるの?」
「何を、ですか?」
「自分のおっぱいよ。ほらこうやって――」
かぶせるように、つかむように、名取様はわたくしの胸を、もんで下さいます。
わたくしも、ついうっとりとその光景に見とれ、まるでそこから、ぽよぽよとした音が
聞こえてくるようにも思われました。
その手が胸のふくらみの下、おへそのわきを、ていねいになぞり、また左手は、わたくしの
右肩から二のうで、また肩と往復して行きます。
「だめ……羽美様、こんな――」
夢ごこちであえぎながら、わたくしが言いますと、名取様は手を休まれずにおっしゃいました。
「何がだめなの」
「だって、こんな恥ずかしいこと……」
わたくしは、そう言ったのですが、何が恥ずかしいのか、自分でも、分からなくなっていました。
名取様の、お手の動きが止められます。わたくしが不安のために、恐る恐る目を開いてみると、
名取様は目を丸く開かれて、そんなわたくしを、じっと見下ろしていらっしゃいました。
名取様は、ゆっくりとくちびるを動かされて、こうおっしゃいました。
「じゃあ今度は、あなたが私に恥ずかしい事してくれる? それなら大丈夫でしょ」
「え、恥ずかしい事って……」
「触られるのが恥ずかしいんでしょ。それなら今度は、あなたが私を触るの」
「え、ええ?」
一体何ごとかと、とまどいを見せるわたくしに、名取様はふふっと笑って見せて下さいました。
そして、先ほどからだらしなくシーツに横たえられた、わたくしの腕をお取りになると、
ご自身の白く透明なお肌に、ふれさせて下さいました。
見た目には、目を見張るプロポーション、といった具合ではありませんでしたが、実際に
お肌に指をふれさせていただきますと、そのなめらかな具合に、わたくしはおどろきました。
水気をふくんだ名取様のお肌が、手のひらに、しっとりと、吸い付いて来られます。
その感覚がうれしくなって、わたくしは段々、手の動きを大きく、あちこちに伸ばし始めました。
わたくしの手は、特にやわらかな部分を、名取様のお身体に見つけ出しました。
「ん…、そこ気持ちいい」
手のひらにすっぽりと収まってしまわれた、名取様のお胸の先には、固みを増した乳首が
ぴんと立って、わたくしの手のひらを押し返して来られます。
名取様をうかがうと、軽く目をつぶって、お身体をぴく、と軽くふるわせておいででした。
「…あん、私の乳首も立っちゃった」
そうおっしゃって、名取様は視線を落とされました。わたくしが、名取様の見ておられる
方向に目をやると、わたくしの赤い乳首もはっきりと、固くなっているではありませんか。
何度も赤くなった、わたくしのほっぺたが、恥ずかしさでもう一度熱くなります。
名取様は、わたくしの手を、そっとお胸からどけられると、固くなったきれいなピンク色の
乳首を、わたくしの乳首へと重ねるようにして、おおい被さって来られました。
名取様とわたくしは、そのまま胸を押しつぶすような姿で、お互いに身体をなすり付け
始めました。やわらかい肉に包まれた、二人の乳首が、こすれあって、胸がじわっとする
ような熱に、わたくしも、そして名取様も、とけてしまいそうになって
「……はぁ、あぁ……んふ」
その間にも、名取様はわたくしの、首筋にキスを落として来られました。
わたくしの肌を、名取様の長く黒い髪にくすぐられ、名取様の熱くぬめった口に吸われる事が、
こんなにもうれしくて心地よい事だとは、わたくしはその時まで、知る事はありませんでした。
名取様は、もう一度わたくしの口を、ご自身のくちびるで、おふさぎになり、わたくしの肩を
抱いて、身を起こして下さいました。わたくしがそのまま、名取様の長い髪にほっぺたを
なでられながら、お舌を吸い上げておりますと、突然ふとももの内側をなでられ、
「んっ!」
わたくしは、ぎゅっと、足を閉じたのです。
名取様のお手を、ふとももの奥へとはさみ込んでしまい、そのとたんわたくしの
一番感じる所が、名取様にふれられたのです。
「…んんっ、んんん〜っ!」
下着ごしとはいえ、ふれられたとたんに、熱いものが、わたくしの頭まで上って来ました。
ぎゅっと目をつぶり、しばらくじっと耐えて、落ち着くと、熱の引いた後のような、
うすぼんやりした甘い感覚がおとずれます。
目を開けると、名取様は、お口をわたくしから離されて、とってもうれしそうなお顔を
なさってらっしゃいました。
そのままわたくしの、あごから首へ、そして胸へと舌特有のぬめりが、すぅと下りて行き、
いやいやと左右に首をふっていた、わたくしの、つつましい胸のてっぺんが、いきなり吸い
上げられ、するどい刺激が、わたくしをいじめて来ます。
「ひぁっ……羽美さまっ……! 」
同時に、わたくしは下腹からお尻にかけて、名取様のお手に包まれるのを感じました。
ふとももと、お尻とをまんべんなくなでられる度に、ぞくぞくとした気持ちが、
わたくしの全身に、広がって行きます。ショーツに包まれた部分を、往復するように
なぞられると、そこに切なさが加わります。自分一人で、さわる時には覚えません。
「……ふぅん……羽美さまぁ……」
そこにショーツの上から、わたくしを押す動きが加わります。
「……やぁん!」
あえぎ続けたせいか、息が苦しくなり、わたくしの視界がぼやけはじめました。
わたくしを責められる、手の動きが急に止まります。そして、わたくしのショーツが、
名取様の手によって、すばやく取りはらわれました。
にちゃっと、はがされるとともに、外気がわたくしの粘膜を、ひやりとなでます。
重たい首だけを持ち上げて見ると、名取様はシーツの上にひざで立たれ、ご自身の
白いショーツに、手をかけて引きずり下ろしてらっしゃいました。
シーツにお尻を付かれて、細いおみ足を上げられて、脱ぎ去ってしまわれる時に、
わたくしは、名取様の大切な場所に、目をうばわれてしまいました。
陰毛が張り付いた、その下には、本当にきれいな、ピンク色のひだが息づいていたのです。
失礼じゃないか。わたくしだったら、そんな場所を、だれかに見られただけで、
死ぬほど恥ずかしいというのに。
目をそらそうとしたのですが、見入られたようにそれもかないません。
名取様は、そんなわたくしの様子に気付かれたのか、わたくしから、目をはなして
おっしゃいました。
「そんなにジロジロ見られたら、恥ずかしいじゃない……。」
「羽美さま……だって、だって……」
「だって何?」
名取様に問い返されても、わたくしは、とっさには返事を思いつきませんでした。
ほんの数秒、間をおいて、わたくしは正直に答えました。
「羽美さまのが……おきれいでらっしゃって……見るの、初めてですし……」
わたくしから、目を背けたままぼそっと、名取様がおっしゃいます。
「……私もよ。女の子がどうなってるのか、私だって実物を見たことないし」
わたくしは、その一言に、とてもうれしくなりました。
名取様の秘密の場所を見たのは、わたくしだけ。わたくしの秘密の場所をごらんに
なったのは、名取様だけ。こんなにお互いの秘密を分かち合っている二人が、他に
いるというのでしょうか。
「これから私たち、姉妹になるんだよね」
ゆっくりと、わたくしに近付きながら、名取様はおっしゃいます。
雨音にも関わらず、つぶやくように静かに発された、その声は、わたくしの耳に
はっきりと届きました。
甘くて、それでいて気高い名取様のお声に、わたくしは素直にこの身をお任せ
しようと、あお向けになって目を閉じました。
立てたふとももをつかまれ、それは大きく開かれました。
わたくしのひざの裏に、名取様のすべすべしたお肌がふれて来られます。
熱くほてった肉が、わたくしの肉と重なります。
手や指よりもやわらかいそれが重なる、くちゅっとした水音が、雨音を切りさき、
わたくしは背すじを伝ってのぼる、快感にぶるりと震えました。
「ああぁ……いいよぉ……」
名取様のお声には、鼻息とあえぎが混じっておられました。
「あ……羽美…さま……」
わたくしも感高まって、お名前をよんで差し上げた時、つかまれたふくらはぎに、
ぐっと力がこもります。
お互いにふれあった、ふとももとお尻の肌がすべり、密着していた肉ひだがこすれる音が、
室内にひびき出しました。
肉から伝わる快感は、わたくしの頭から、今どんな体勢で名取様とつながっているのか、
名取様がどこをさわられているのかといった感覚を、完全にうばってしまいました。
雨音さえも、まったく耳に入りません。
「はぁっ……はんっ………あうんっ…」
そのくせ肉の奏でる、くちゅくちゅとした水音や、わたくしと名取様のつながっている
部分から立ちこめる、温かい空気のにおいだけは、やけにはっきりと感じ取れます。
わたくしは、自分が今ほんとうに名取様としているのか、不安になりました。
「羽美さまっ……羽美さまぁ!」
まるで百メートル走を何本か走った後のような、苦しい息のすきまから、
わたくしは、そんな不安をかき消すように、お名前を叫びました。
手をのばせば届く彼方から、名取様も、わたくしの名を呼ばれます。
それでも心細かったので、わたくしは、名取様にお任せしていた腰の動きを、
ついに自分から行いました。
どう動けばいいのかなんて、考えているヒマはまったくありませんでしたけど、
わたくしは、自分が動きたいように動いたのです。
「んん…あはぁっ…ああぁっ!」
名取様のかん高いお声が、わたくしと動きをおなじくして、聞こえて来ました。
「気持ちいいよぉ…すごいよぉ…!」
わたくしは、自分と同じように、快感をむさぼって叫んでいらっしゃる、名取様が
いらっしゃる方向へと、手をのばしました。
その手を、やさしく包まれます。にぎり合います。
にぎり合った手に、強い力を感じたわたくしは、その時お尻から背中にかけて、
何かが動くようすを感じました。
お腹の上に、何か重みが乗って来ます。その肉は、背中に通ったものと協力するように、
わたくしの股間をはさみ込みました。
それらにぐっと力がこもり、二人をつなぐ部分が、これまでになく密着しました。
肉のこすれる水音が、シーツのこすれる乾いた音が、重くはげしく、耳を打ちます。
「羽美さまっ…羽美さまっ…羽美さまぁっ!」
頭をまっしろに、染めあげる、しびれるような感覚をこらえるには、名取様のお名前を
たえず叫び、名取様の細く小さな手を力いっぱいにぎる他には、ありませんでした。
「ああっ…好きだよ、好きだよぉっ!」
「…わたくし、も…っ…」
「うれ…しい…でも…ダメっ…!」
それが、わたくしがはっきりと覚えている、最後でした。
イッちゃう、と名取様が叫ばれた時。
わたくしは、全身を外の雷に打たれたかのように感じ、頭の中をまっしろにして、
完全に意識をうしなってしまいました。
ひとごこち着いたころ、息もたえだえの名取様が、わたくしに重ねられた足を
おどけになって、わたくしの方に、もそもそとお身体の位置をなおされます。
わたくしは、お尻にべったりと張り付いたシーツを、気持ち悪く思いましたので、
元の体勢からお尻をずらすよう、身体を少しななめにして、横たわりなおしました。
名取様のお胸にすがり付くと、わたくしは名取様のうでに、両肩を包まれました。
軽くキスをすると、名取様は、照れたようにほほ笑んで、おっしゃいました。
「これで私たち、姉妹になったのよね」
「…ええ。羽美さま、いえ羽美お姉さま」
わたくしが申し上げますと、名取様は、お顔をくしゃっとされて、わたくしに
ほおずりして来られました。
「可愛い、大事な…私の妹だもの。ずっと大切にするからね」
わたくしは、そのお言葉を耳にしたとたん、胸が熱くなりました。
こんなに優しく胸を打つお言葉を、耳にすることがあるなんて。
だれとも分かち合えないと思っていた、身体の中でもやもやとうず巻いていた物に、
はっきりとした形が与えられ、それを誰かといっしょに味わうことができるなんて。
わたくしは感激のあまり、大声を上げて、ぼろぼろと泣き出してしまいました。
名取様は、それをわたくしが、ご自身によっていじめられたのだと思われたのか、
慌てたご様子で、わたくしの背中をなでられながら、おっしゃいました。
「ごめん、私ヒドい事言っちゃった?」
わたくしは、なみだで顔を汚しながらも、首をふって答えました。
「違います、うれしくて、うれしくて……」
名取様はそれをお聞きになられると、何もおっしゃらずに、わたくしが泣き止むまで、
しんぼう強く背中をなで続けて下さいました。
わたくしたちが誓いをかわす前から、ふり続いていた外の雨は、いっこうに静まる気配が
ありません。雷も鳴り、わたくしは、名取様のうでの中で、すこしだけ身をちぢめました。
「雷、怖くない?」
「もう平気です。羽美お姉さまがこうしてくだされば」
それだけ言って、わたくしは、名取様に強くしがみ付きました。
名取様の、すべすべしたお肌から伝わる体温と、すぐ近くから聞こえる、愛らしい寝息に
包まれながら、わたくしは心地よい疲れとともに、深い眠りへと落ちて行きました。
これがわたくしと、名取様の間にある、一番美しい思い出です。
思い出すたびに、わたくしは胸が熱くなって――え、それだけじゃないだろう?
どうしてそう思われたのですか?そんな素敵な想い出なのに、どうしてそんなに悲しそうなのかって?
わたくし、そんなに辛そうでしたの? そうですか
――
わかりました。でもそれなら、もう少し長い話になってしまいますけど。
え、聞きたいけど今日はもう時間がない? その話はまた聞きにおいでになるって?
しまった、言わなくてもいいこと、言っちゃったかな。あ、いえ。お気づかいなさらずに。
またおいでになった時に話しますから。どうも長い間お付きあい下さいまして、ありがとうございました。
それではまた今度、お会い致しましょう――
<終>