ぴく、ぴくっ…と、改蔵の腕の中で、すずはまだ痙攣するように動いていた。
(博士は貪欲だな)
改蔵は思う。彼女はこみ上げる快感を一片も残らず味わいつくすつもりのようだ。
仰向けになっても形の崩れない豊かな乳房が、大きく喘ぐにつれ上下している。大きくくびれた腰から
下に目を移すと、滑らかな下腹部から少しだけ盛り上がっている部分が深い茂みになり、そのさらに下、
改蔵からは見えない部分が、改蔵のまだ「どく…どく…」と脈打っている物をくわえ込んでいる。
改蔵は最後の吐出を終えた。
だが、すずのソコはまだ蠕動しつづけ、熱い液を子宮の奥に送り込もうとしている。
やがて、お互いの快感の波が引き、激しかった息づかいも鼓動も元に戻って行く。
改蔵にどっと疲れがこみ上げる。そろそろ抜いて横たわりたくなってきた。
「あん…まだ抜かないで…」
気配を察してすずが甘えるように言う。脚を絡め、腕を背中に回してギューッ…としがみついた。
改蔵がシャワーを浴びてる間、すずはベッドの上で誰かと携帯で会話をしていた。
「…そのあたりはカーネルの仕様なの…その先のバージョンでどうなるかまでは私にも…どうしても知
りたいの?じゃ、リーナス氏に直接聞いてみるしかないわね。メールアドレス教えてあげる。一行目に、
私から紹介された、って書いておけば、ちゃんと答えてくれるはずよ。」
改蔵がシャワーを浴び終えたのに気付いて、すずが振り向いた。
もう完全に、いつもの素の「彩園すず」に戻っている。してる最中とそれ以外では、ほんと別人みたい
だな、と改蔵はいつも思う。
彼女も改蔵も一糸まとわぬ全裸だ。
改蔵はベッドのすずの脇に座り、缶のコーラを開けて飲みはじめた。
まだ電話の会話は終わらない。
「…うん…うん…え?何言ってるの、あなたもうD2でしょ?英文メールも書けないようじゃ博士論文
なんて無理よ?できるでしょ?アドレスはメールで送っとくわ…いつまでも私任せにしてちゃ独り立ち
できないじゃないの。別に恐い事ないわよ、やってみなさい。じゃね。」
すずは改蔵の手からコーラを取り上げ、二口ほど飲んだ。
「相手、男の人ですか?」
「気になるの?」
改蔵は少し躊躇した。すずは例によって改蔵の瞳の中を覗き込む。
「最近彼とはしてないわ。ていうか私…最近、改蔵君以外の子とエッチしてないわね、そういえば。」
くすっと笑い、続ける。
「でも、改蔵君だって女の子いっぱい抱いてるでしょ?しかも現在進行形で。羽美ちゃん、しえちゃん、
けいちゃん、3年2組のあの娘、1年4組のあの娘…先生二人…あと何人いたっけ?」
まずい雲行きだ、と改蔵は思う。顔は笑顔だが瞳は…。ここは、押し倒して愛撫して、気を反らそう。
「今日は2月14日だしね…。この後、他の娘と予約あるんでしょ?こんなふうに私を押し倒して2回
目をしちゃって、体力持つの?」
改蔵はすずの乳首を舌で転がし、ついでディープキスをしてから言った。
「今日はもう博士とだけですよ。ほかの娘とはしません。」
「…ふうん…じゃ、これは何かしら?」
すずはどこに隠し持っていたのか、改蔵の携帯を取り出した。
そこには、今夜の他の女の子との約束のやり取りをしたメールが表示されている。
「シャワーの間、ちょっと盗み見ちゃった。モテるわね。今夜この後3人の女の子とエッチでしょ?」
「うーと、それは、えーと。」
「明日も2人の娘と予約してるわね。」
「そのー、あのー、それはー。」
「チョコもだいぶ貰ったみたいね、13日のうちに。部室のダンボールに押し込んでたでしょ。」
「…何でそれ、知ってるんですか?」
あの時、部室には誰もいなかったはずなのだ。覆い被さり性器を指でいじり始めた体勢のまま固まって
いる改蔵に、すずは軽く微笑む。
「内緒。それより…そんな風にされてたら、濡れてきちゃった。エッチしよ…いい物持ってるのよ。」
シックスナインの体勢で上になったすずが改蔵を攻める。彼女のアソコは、改蔵の舌によってだいぶ濡
れてきている。深く咥えられた改蔵のものも硬く脈打っている。
改蔵はすずのアソコを愛撫するのを止め、快感に耐えながらソコを見ていた。目の前数センチの所に、
経験の割には綺麗だし控えめな形をしたサーモンピンクの肉襞が濡れて光っている。
すずがカリの部分に指を這わせながら言う。
「ねえ、もういじってくれないの?」
せかされて改蔵は指先につばを付け、大きくなっている彼女の突起部分をいじりだした。刺激の度に、
性器とお尻が同時にヒクつく。
指を膣内に入れる。彼女の感じやすい所を探り当てる…。
すずが改蔵を攻める調子も激しさを増す。
しばらくすると、二人とも、お互いがもうそろそろという所まで来た。
改蔵が上になり、挿入の体勢になる。
この辺りから、彼女の態度はいつものように切り替わる…普段のシレッとして冷静な彼女から、エッチ
に貪欲でしおらしい彼女に、だ。
「あ、ああ、ああ…っ…、改蔵…くん…」
改蔵が入って行くにつれ、すずが段階的に悶える。すっかりくわえこんで、次に彼を見つめる瞳は、も
うしおらしい方のすずのそれだ。
彼女が抱きつく力が強くなる。顔と顔がすぐ近くになり、二人はそのままキスをして舌を絡め合った。
上下の二箇所で繋がったまま、二人は自分たちだけの世界に浸りきっている。
「もっと、もっと…もっとして…もっとよ…」
一回目より燃え上がるのが早いな、と改蔵は感じた。アソコから溢れ出すものもさっきより熱い…。
すずは自分の右手人差し指を噛んで、目をつぶって改蔵に攻められるままになっている。
改蔵は上体を起こした。
すずの両脚を高く持ち上げ、突き上げる位置に変化をもたせる。
ぱんぱんぱん…と音がし、大きな乳房が揺れる。すずは身をよじらせて、AVか何かのようにシーツを
噛んで快感に耐えようとしていた。
また体位を変える。四つん這いになったすずを、後ろから攻める。
改蔵は彼女の尻の肉を両側に押し広げ、繋がっている場所を観察した。こすれあう粘膜のほんのわずか
な隙間から、とめどなく愛液が滴り、シーツにしみを作る。挿入部の少し上、お尻の肉色の粘膜がひく
ついている。白いきれいな背中が艶かしい。
すずは今度は枕に噛り付いている。
(今日はなんか、よくどこかに噛り付くな、博士。でも、それにしても…)
ちょっと感じ方が激しい。やっぱりいつもと今回は違う、改蔵はそう思った。
また、正常位に戻る。改蔵も何か妙に身体が熱い。
2回目を始める直前、すずにすすめられ、二人でエッチな気分になる成分入りのチョコを食べたのだ。
すずの言った「いい物」とは、そのことだ。
「すごいですね博士…いつもより…激しいですよ…あのチョコ、効くんですね…」
すずはそれに答えず、改蔵にしがみつくと、急に泣き声でもう駄目と言い始めた。
膣壁の締め付け方も変わってきた。涙がぽろぽろこぼれる。そろそろらしい。
「だ、だめ、い…いっちゃ…う…いく…」
なんだもうかよ、とおもいつつも、改蔵も射精に向け止められない一線を越えてしまった。
腰の動きが速くなり、挿入された部分が限界まで硬く膨れ上がる。と、次の瞬間…。
すずが、いきなり改蔵の右肩に齧じりついた。
「い、痛い…痛いです、博士!ちょっと、いたた…ああっ…!!」
でも改蔵ももう止まらない。腰を思い切り突き立てるとその状態で硬直した。
改蔵自身の根元だけがひく、ひくと動き、熱いものを注ぎ込みつづける。すずも改蔵の肩に齧じりつい
たまま、注ぎ込まれたものを搾り取る為にひくついている。
しばらくそのまま二人とも動けずにいた。
密着した肌を通じ、まるで早鐘を打つようなお互いの鼓動が伝わってくる。
改蔵は、一度、そしてもう一度、すずの子宮を突き上げるように腰を使った。すずは先程の状態のまま、
嗚咽をあげ、まだ涙を流している。
すずが改蔵の肩から口を離した。ようやく、堪えていた息が復活する。
「く…くふぅ…はあ、はあ…」
そして、二人の繋がった所から、白い泡立った液が滴り落ちた。
すずはまだしゃくりあげている。
「あーあ…。完全に、歯形がついちゃったよ…。」
改蔵はベッドから上体を起こし、鏡で右肩を確かめながらぼやいた。肩と首筋のちょうど境目辺りに、
くっきりと噛み付かれた跡がついている。まだ結構痛い、血も滲んでるようだ…。
歯形をつけた張本人は、そ知らぬ顔で、ベッドの改蔵のすぐ横でシーツもかけずに横たわっている。
頬はまだ真っ赤に上気しているが、目つきはもういつもの彼女に戻っている。股間はぐっしょりと…と
言うよりは、べっとりと…濡れて光っている。でも起き上がってそれを拭う気力はまだ無いらしい。
改蔵は訊いた。
「なんでこんな事したんです?」
「べつに。ただちょっと、ね。」
「これ治るまで、ずっと女の子に言われ続けますよ…やっぱ、俺が他の娘とするのが嫌なんですか?」
「そうじゃないけど。」
「じゃあ…今夜他の娘ともSEXするの、ごまかしたから怒ってるんですか?」
「さあ。どうかしらね。」
すずはけだるそうに言う。のらりくらりとはぐらかせ続ける気らしい。流れた涙の跡を、指で拭く。
「やきもち、ですか…?」
今度はすずは答えない。
「今夜はもう他の女の子とはしませんよ。だいたい、こんな歯型がついてちゃできないっすよ…」
「でも約束したんでしょ?会って愛してあげなきゃ、怒られちゃうわ。まあ、見つかったら『誰につけ
られたの!』ってやきもち妬かれるだろうけど…せいぜい、もう一つずつ歯形が増えるだけじゃない?」
「一個ならそれで済むでかも知れないけど…2つ、3つと増えてったら、あとの方の女の子がどう感じ
ると思います?だいたい、最後は、羽美なんですよ…。」
「あら、だから面白いんじゃないの。」
そう言ってすずはしれっと微笑んだ。
ふと、改蔵は、さっきの「いい物=エッチな気分になるチョコ」の事を思い出した。
すずが普通にチョコを2月14日に渡すタイプな筈もない。あれが彼女なりの渡し方だったと気づく。
(でもなあ、素直にチョコ渡せないからって、こんなやきもちの妬き方されてもなあ…)
だいたい、これがほんとにやきもちなのかも判らないのだ。もしやきもちなら、彼女にも少し可愛い所
あるな、とは思う。変わった表現のしかたではあるが。でも本当の所は…。
と困惑する改蔵を見つめながら、すずは全裸でベッドに横たわったまま、謎めいた微笑を浮かべていた。
−完−