虎馬高校、いつもの風景。日差しの暖かい昼休み。  
4階の廊下を歩いていた彩園すずは、いつものように男子生徒から声を掛けられた。  
「あの、すずさん…」  
振り向いたすずに、男子生徒が綺麗に包装されたプレゼントを差し出す。  
「ありがとう。中身は何?」  
ここで開けていい、とは聞かない。男子からのプレゼントを受け取るだけならともかく、  
人前で中身を確認するような真似をすれば、有らぬ噂が立つからだ。  
男子生徒はしばし躊躇していたが、やがて意を決したように口を開いた。  
「…つ…付き合って下さい!」  
すずはただ微笑む。彼女は笑顔だけでも男性を魅了する事ができる天賦の才を持っていたが  
この場合微笑みは優しく拒絶の意思を示すだけのものだった。  
頭を垂れたままの男子生徒を後に残し、彼女は立ち去って行く。  
その場に、花のような芳香が漂っていた。  
 
「ねぇ、部長って香水変えたよね。」  
すずが先程までいた2年生の教室。  
科特部のクラスメート一同は地丹の机に集まっていた。  
「いいなぁ、香水。」羽美は溜め息をついた。  
「ボクは気付いてましたよ。こう見えても女人の身嗜みにはうるさいからね。」  
机の主が言う。彼は自分の身なりはともかく、確かに女性に関しては一家言持っていた。  
「あんたの場合、自分の身の回りの事もっとキチンとしないと。」  
毒舌に怒った地丹が羽美に飛び掛り、不可解な言語で罵り合う。  
その様子を諌めるかの如く改蔵が口を開いた。  
「香水ねぇ、羽美もやっぱり着けてみたいとか?」  
羽美は顔を赤らめた。自分だって年頃の娘だ。香水をつけて、目の前にいる  
幼馴染に自分の魅力を見せ付けたい気持ちは当然ある。  
 
「何でそんな事聞くのよっ。」  
内心の動揺を悟られないように―痛々しい程あからさまだったが―羽美は改蔵に切り返す。  
改蔵は答える代わりにお茶を濁した。  
「まぁ、羽美に香水なんて全然似合わないと思うけどな。子供だし。」  
羽美の金切り声と改蔵の断末魔が教室に響き渡った。  
 
 
放課後の科特部室には、二人しか居なかった。部長であるすずと、そして改蔵。  
鉄道マニアである地丹は、学校を休んででも通う隣町の鉄道研究会へ向かい、  
羽美は部長や改蔵となんとなく顔を合わせたくない、と言って先に帰ってしまった。  
そう広い部室でもないのに、今日はやけに寂しく見える。  
すずは部室の片隅でモバイルを打っている。ディスプレイに棒と波形のグラフが表れた。  
「うーん、この動向だと来週は買いの一点ね。」どうやら株式の売買らしい。  
すずは指示のメールを仲介人に出し、モバイルを畳む。  
そして部屋のもう片隅で暇を持て余している改蔵に向かって言った。  
「改蔵くん、少し手伝ってくれない?」  
微笑む彼女の頼みを断る理由など、改蔵にはある筈もなかった。  
 
「結構重いわね、これ。皆居る時にやった方がよかったかな?」  
「そんな事言ってたらいつまで経っても運べませんよ、博士。」  
二人は部員全員が端末を使えるように、部室へとデスクトップを運んでいた。  
最上階の備品保管庫から一階の部室まで、重いコンピューターを運ぶ作業は  
肉体労働に向かない二人にとってさぞ苦行だったであろう。  
最後の一台、そのディスプレイを運んでいた最中、すずが何かに蹴躓いた。  
バランスを崩し、階段の下に倒れ込むすず。デスクトップが仰向けに倒れこんだ  
彼女の胸の上に落ちる。  
改蔵はすずの上に倒れ込まないよう、身を避す事が精一杯だった。  
「すずっ…!」  
 
改蔵は身を起こし、すずに駆け寄る。  
肋骨骨折、内臓破裂、そういった不吉な言葉が彼の頭を過ぎる。  
落ちたディスプレイはそのまま、彼女の上着を脱がし、ブラウスの上から胸、肋、腹部を  
手早く優しくなぞった。大丈夫、大した事はない。  
「…改蔵くん…?」  
すずはきょとんとした目で、駆け寄ってくれた改蔵を見る。  
彼女は改蔵の腕に抱かれている格好になっていた。  
「博士、いや、その、これは…」  
慌てふためく改蔵が可愛らしい。すずはそんな想いにとらわれた。  
「有難う、心配してくれたのね。ごめんね」  
普段他人には滅多に言わない礼を改蔵に向かって言う。そして続けた。  
「私の事、すずって呼んでたわね。」  
「済みません、博士。」改まった態度で改蔵が言う。  
すずは改蔵に向かって微笑みかけ、改蔵に軽く口付けた。  
「いいのよ、二人っきりの時は…」  
 
幸いすずが転んだのは、ちょうど一階のフロア部分だった。  
二人は壊れた(かもしれない)ディスプレイを何とか部室に運び込み、  
端末のケーブルをサーバーに接続する。  
電源を入れると、ちゃんと全て作動した。すずが端末のアドレスを設定する。  
「良かった、ちゃんと動いてくれて。」  
一仕事終わって伸びをしながらすずが言う。胸にまだ少し痛みが残っていた。  
改蔵はそんな彼女を心配そうに見る。  
「良かったのは俺の方だよ、すずに大した怪我がなくて。」  
すずは改蔵を振り返る。改蔵は続けた。  
「しっかりしてそうで、結構自分の危険には気付かないから…」  
そう言って改蔵は、椅子に座ったすずまで目線を落とし、彼女の肩を抱いた。  
 
すずの芳香が、改蔵を優しく包む。  
「ちょっと、改蔵くん…?」  
少し当惑した表情ですずは口走った。  
改蔵はすずの頭を掻き抱くように、抗う事を忘れた彼女の唇を寄せる。  
目を見開いたまま、すずは改蔵の唇を受け入れた。  
「ん…」彼女にとっては本当に久し振りの、若く甘酸っぱいキスだった。  
芳香が改蔵の鼻腔をくすぐる。二人は離れ、すずが改蔵の表情を見る。  
彼は明らかに欲望を瞳に宿していたが、その蔭にこれまでには無かった何かが見えた。  
それが何なのか、問い掛ける。  
「何で無茶するんだよ、何で傍に居てくれないんだよっ。」  
乱暴に応える改蔵を、すずは優しい眼差しで微笑みかける。  
「まるで普段会えない恋人同士の会話ね…」  
「違うのかよっ、俺とすずは恋人じゃないって言うのかよ!」  
怒気を含んだ改蔵の叫びだった。彼はすずのブラウスを強引に開き、下着に包まれた  
彼女の豊満な胸を露出させた。そのまま下着の上から、すずの乳房を乱暴に掴む。  
一瞬すずが苦痛に顔を歪める。が、改蔵の手に温気を感じ、何かのスイッチが入った。  
「改蔵くん、そんな乱暴にしないで。いつものようにもっと優しく…」  
宥めようとするすずの口を素早く封印し、舌を絡めて行く。  
ブラジャーを剥ぎ取ると露わになった胸が勢い良く揺れた。  
改蔵は誘うような彼女の胸に貪りつき、思い切り吸い上げる。  
強力な刺激がすずを虐った。  
「ああっ…!」  
いつもの改蔵と勝手が違っていた。普段なら彼はすずの教え通り  
優しく、時に力強く女体を扱い、すずの快楽を引き出すようにしていた。  
それが今日は、自分の欲望を剥き出しにしてすずにぶつけている。  
戸惑いを覚えながらも、すずの身体から抵抗が消えていった。  
 
「駄目よ、改蔵くん、…はぁっ!」  
すずの下着に改蔵が指を侵入させた。彼女が身を捩って脱出する前に、目的地を探し当てる。  
暖かくぬめったその場所に指を二本、すずの胎内に入り込んだ。  
すずが脱がされたブラウスを握る。いつもの彼女なら、改蔵の衣服を流れるように脱がせ、  
男にしては滑らかな肌を、踊るように摩っている筈だった。  
痛みを和らげるべく、すずが蜜を滲ませる。蜜は内に溜まっては指で掻き出され、  
改蔵によって秘所に塗りたくられる。すずの潤滑液を塗る改蔵の手が、偶然敏感な突起に触れた。  
刺激に声を上げるすず。改蔵は陰核を刺激しつつ、自分勝手な愛撫を繰り返した。  
「こんな、こんな乱暴にしても感じるのかよ、すずっ!」  
「改蔵くん、お願いだから…」  
止めて、と言う前に改蔵はすずから指を引き抜き、すずの口内に捻じ込んだ。  
口の中で蠢く改蔵の指とすずの舌が触れ合い、すずは自分の蜜を味わう事となる。  
すずは改蔵が自分の中で動くような錯覚に囚われ、思わず腰がくねってしまう。  
その様子を他人事のように見ていた改蔵だったが、薄布に覆われたすずの大切な部分を  
残った片手で露わにする。蜜に濡れた花弁を開く。  
「んんっ、んーんん、んっ…!」  
すずが抗議をしているようだったが、それが形だけのものである事は明らかだ。  
現にすずの両脚は改蔵の蹂躙にも関わらず閉じられていない。改蔵は指で再びすずとの  
結合を果たし、存在自体が自己主張しているような彼女の胸に貪りつく。  
花の芳香が彼の鼻腔をくすぐり、改蔵は嬰児のように乳房を吸い上げる。  
唾液、愛液の立てる水音と、それらを吸い込む音が狭い部室に響いた。  
改蔵の為すが侭になっていたすずだったが、彼女は手を伸ばすと改蔵の股間に触れ、  
屹立した改蔵の分身が放つ熱を布地越しに感じ取った。  
ファスナーを開け、改蔵の想いを溜め込んだ熱い分身を取り出す。  
先程から改蔵に翻弄され続け、改蔵を手で優しく包み込む事が精一杯だった。  
改蔵はそんなすずの手を自分の腰で床に叩き付け、抽送する。  
手を彼女の膣に見立て、彼女を汚そうとせんばかりに…  
 
すずの奥深くを、何かが融かし出した。嬌声を上げる事も叶わず彼女は増大する  
快楽に打ちのめされ、やがてぐったりとなった。  
ほぼ同時に改蔵も達する。すずの細くたおやかな手が、指が、彼の放った精に染まる。  
改蔵はすぐさま彼女の手から脱出し、桜桃のような胸の突起を上下させて  
荒い息をつくすずの上にまたがった。そして白濁液に塗れたままの分身を  
だらしなく開いたすずの花弁の奥へと進める。  
熱を帯びた物が体を貫く感覚で、すずは正気を取り戻した。  
「あっ…改蔵くん?」  
真剣な眼差しの改蔵と目線を交差させる。  
改蔵は一言だけ愛しい人の名を呟き、抽送を開始した。  
「あ…ああっ」  
先刻気を遣った彼女の身体は、改蔵に心地よい抵抗を与えつつ自らも再燃した。  
すずの衣服はとうに剥ぎ取られ、彼女が拠り所とするものは改蔵の身体しかない。  
自分の身体にしがみ付く前に、改蔵はすずの汚された手を取り、喘いでいる  
彼女の眼前に突き出した。  
その意思を察したすずが、自らの手を舐めて清める。改蔵は彼女の手を誘導し、  
指の一本一本まで丁寧に口に含ませる。  
「そう、いい娘だ。」  
すずが唾液ごと嚥下した事を確認し、改蔵は再び口付け、彼女の口内を犯した。  
少々生臭さが残っていたが、彼女から発散される芳香のお蔭で気にはならない。  
すずの深淵に触れるように、改蔵の心を癒すように…  
すずは改蔵を奥まで導かんと、二箇所で改蔵と繋がったまま無意識に膣を広げた。  
「お前が、オレに色々と教えてくれた。例えば…」  
改蔵はすずから口を離すと、体重を乗せてすずの奥を突き始めた。  
改蔵が直に触れる快楽に、すずが大声で咽き出す。  
激しく動きながら改蔵は話を続けた。  
「この動きだ。…おかげで女には不自由していない、けどっ!」  
 
―けど?  
「…すずじゃなきゃ駄目なんだ!」  
改蔵は自分の想いを届けんとばかりに、さらに動きを加速させる。  
「すずっ、愛してる!」  
そう言うと改蔵はすずを抱きかかえ、彼女の体重で胎奥を突いた。  
やがて訪れる絶頂の予感は、すずを否応なく高めた。  
―改蔵くん、私も…貴方が…  
言葉にはならなかった。自分にはこれほど一途な恋愛は訪れないと思っていたから。  
自分には、人を好きになる事など有り得ない筈だったから。  
自分の性欲を人知れず慰めるだけの男だった改蔵くんに、私は惹かれている。  
乱暴なのに、技も稚拙なのに、抱かれていてこれほど嬉しい思いをした事はない。  
でもね、改蔵くん、貴方が本当に好きなのは…。  
もうそれ以上考える事は出来なかった。快楽がすずの正常な意識を完全に眠らせ  
彼女を目の前の絶頂を貪る雌へと変えていた。  
改蔵は二人で達する為に、彼女を力強く味わっている。  
意識が飛び、身体は痙攣する。  
胎内で弾ける熱い濁流に、すずは意識を流された。  
改蔵は彼女の胸に倒れこみ、絶頂の余韻とともに彼女の芳香を味わった。  
 
「ねえ改蔵くん。」  
事が終わり、着衣を直したすずが呼びかける。頬がまだ赤い。  
振り返った改蔵に彼女は話を続けた。  
「羽美ちゃんには…こんな事しないでね。」  
何だそんな事かと鼻で笑う改蔵を、すずは真剣な眼差しで見据えた。  
改蔵から笑いの表情が消える。  
「そうじゃなくて、あの娘にはもっと優しく接してあげて。今日みたいじゃなく。」  
改蔵に怒りが点った。  
 
「どうしてオレが羽美なんかと…!」  
すずは努めて冷静に話を進める。  
「あの娘を愛してあげられるのは貴方だけよ。それに、あんな一途な娘、  
 これから先貴方が出会えるかどうか分からないわ。  
 分かって、あの娘が本気で貴方のこと好きだって気持ち。」  
「それとこれとは、大体オレはすずの返事をまだ聞いてないぞ!」  
すずは俯く。そして出来るだけ悲しむ人間の少ない、しかしすず自身は本意に沿わない  
返事を愛する男性へと返した。  
「羽美ちゃんの事、大事にしてあげてね…」  
改蔵は憮然とした表情で部室を飛び出す。既に日は暮れており、月が顔を覗かせていた。  
校門まで辿り着いて、改蔵はふと自分の腕を嗅いでみる。  
先程まで愛し合っていたすずがそこに残っていた。  
 
部室に残されたすずが帰り支度をしている。  
上着を羽織り、鞄を持って部屋の電気を消す。鍵は自分で職員室に返した。  
すずは床を眺めながら人気のない通路を歩いていった。  
下駄箱から靴を取り出しながら呟く。  
「素直じゃない、よね。ホントは羽美ちゃんの事一番好きなくせに…」  
履き替えた靴に雫が数滴落ちる。  
「やだ、改蔵くんなんてただの奴隷よ。私、改蔵くんなんて…」  
すずはその場に崩れ、嗚咽した。  
 
改蔵が主の表札を差し置いて「名取」と書かれた家に辿り着いた頃、  
夜空には星が瞬いていた。  
玄関を開けると、我が家の居候が新妻よろしく駆け寄ってくる。  
もう風呂は済ませたようだ。  
「お帰り、改蔵。」彼が帰って来て実に嬉しそうな表情だ。  
 
「先にご飯食べなよ、改蔵のお風呂待ってたらご飯遅くなっちゃう。」  
居候こと羽美がそう言った。普段とは違い、何所か色気を感じる。  
すぐに理由が分かった。香水だ。  
「お前、香水着けてるのか?」改蔵がそう言うと、羽美は恥ずかしそうに下を向いた。  
自分の指先を弄りながら羽美が言う。  
「そう、あなたのお母さんに貰ったの。」彼女は顔を上げ、注意深く改蔵の表情を窺う。  
彼は困惑している様だった。  
「…やっぱり似合わないよね、香水。ごめんね、変な事聞いて…」  
一瞬羽美に対して劣情を抱いた、などと改蔵が言える訳がなかった。あわててフォローする。  
「いや、良いんじゃないか。羽美に香水って。」  
―まさか博士、いやすずが言っていた事が本当なんて、そんな事ある筈が―  
改蔵は邪念を振り払うように玄関に上り、羽美を摺り抜けてリビングへと足早に向かう。  
「おかしい。改蔵の様子がいつもと違う。」  
その時改蔵に残っていた花のような芳香が、昼間の記憶とともに  
羽美の嗅覚へと鋭く突き刺さった。  
 
(終)  

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル