地丹が、おかしくなった理由。  
 
 
「見たわね」  
「ひっ!?」  
背後から身の毛もよだつ恐ろしい声。  
いつも聞きなれている部長の綺麗な声には違いないし、語気も決して荒げていないのだが、  
ボクは忍び寄る危険のにおいを本能的に察知していた。  
 
放課後、部室の壁に入った見慣れないヒビに何気なく手を触れると、  
たちまちそれはガラガラと音を立てて崩れたのだった。  
まさか、科学部(改蔵くんは『科特部』などと呼んでいるが)の隣にこんな空間が存在していたなんて…  
 
そう思った矢先のことだった。  
 
「ぶ…部長」  
振り向きざま、ボクはまず彼女が手にしているものを目にしてハッとなった。  
「な、ななな何です?部長…ッ。その注射器!」  
しかしその問いには答えはなく、  
「見てしまったからには、かわいそうだけど…」  
そう言って、部長は一歩こちらに踏み出した。  
 
もともと表情に乏しい人なので、何を考えているのかはよく分からない。  
けれど、あの注射器の内容物がボクにとって好意的なものでないことだけは明らかだった。  
「さあ地丹くん。大人しくこっちに来て」  
部長は「おいでおいで」と手招きするが、冗談じゃない!  
「し、失礼します!」  
ぼくはダッシュで彼女の脇を通り抜けようとした。  
 
「!?」  
その瞬間ボクは急激なめまいを覚えて、抜けようとした部長の脇で派手に倒れこむ。  
「あ…あれ?…………あれ!?…………ッ」  
一体どうしたことか、まるで体中の筋肉が弛緩してしまったように動けない。  
必死に目をキョロキョロさせて、ようやく気づいた。  
それまで動転していて分からなかったが、  
部長の足元の何やら怪しげな機械から、モワモワと何か良い匂いのする桃色の気体が発生している。  
それがボクの力を奪っているのだ!  
 
部長は、横たわったボクの体の横にしゃがみ込んで、注射器の液を2度3度ピュッと出してから、  
針をぼくの首すじに近づけた。  
「あ…何それ?何なのっ!?」  
ボクは抵抗もできず、涙を浮かべて「嫌だ」「助けて」を連呼した。  
 
部長は平然と、  
「大丈夫死にはしないわ。  
 ほんのちょっとワケが分からなくなるだけ」  
「い、いやぁ……嫌だっ…ゆるして」  
ボクの哀願も虚しく、部長の注射針はプツッとぼくの首の血管に刺しこまれる。  
「ひゃう…」  
冷たい針の感触。  
 
チュゥウウウ…  
 
そこから液体がボクの体内に注入されていった。  
じんわりと、冷たいような熱いような何ともいえぬ感触が首から全身に伝わっていく。  
「あー…」  
確かに、ワケが分からなくなる薬だ。  
注射の終わらないうちから既に恐怖は過ぎ去り、  
ボクはぼんやりと目の前にある部長の脚の美しさに見とれていた。  
注射のためしゃがみこんでるので、今にもスカートの中身が見えそうだった。  
 
徐々に意識が薄れていく。  
(…そういえば)  
そんな中、ボクはふと疑問に思ったことがあった。  
(なんで部長はこのガスの中で平気なんだろう?)  
 
…やがてボクの意識は完全に途絶えた。  
 
目が覚めるとそこは見知らぬ一室だった。  
薄暗くて部屋の様子はよく分からないが、ボクはその部屋のベッドの支柱に手足を縛り付けられている。  
「お目覚め?」  
よく知った声。  
「部長?ここは…」  
 
たしか、部室の隣で何かを見て…部長に注射されて…  
「憶えているのね。さすがに3回目となると、薬の効き目もまちまちね」  
部長はちょっと困ったように言って、ベッド脇に身を寄せてきた。  
どんな表情かは分からない。  
「憶えてる…って?部室の隣のことですか?」  
 
「やっぱり」  
声の抑揚は変わらないが、ボクは明らかに危険が迫ってくるのを感じ、  
慌てて「し、知らない!何があったか肝心なところは記憶にないんです!」  
と言った。  
 
「そうかしら?」  
「そうですよ」  
憶えているなどと言ったら、はたして何をされるか分かったものではない。  
彼女が顔に似合わず平気で悪逆非道の限りを尽くす女なのは、ボクが一番よく知っているのだ。  
 
「まあ、どっちでもいいわ。  
 いずれにせよ地丹くんは、もうここから出られないんだし」  
「へ?」  
ボクは部長のあ放ったあまりの一言に、耳を疑った。  
 
「ちょ…部長!?それは一体、どういう…」  
こと?と尋ねる言葉を、ボクは思わず呑み込んだ。  
暗闇に慣れてきたボクの目が、部長の姿をとらえたからだ。  
そう。  
ブラとパンツをまとっただけの、あられないその姿を…  
 
「どういう意味ですか!?」  
ぼくはこの異常な事態に混乱しつつも、もっともな問いを部長に投げかけた。  
「どうもこうも…言葉どおりの意味だけど?」  
そう言って、ベッドに縛り付けられたボクの方へと近づいてくる…  
 
き、綺麗だけど…  
何だか………こ、怖い!  
ボクはしばしば調子に乗りすぎて部長を怒らせることがある。  
このプレッシャーというか、部長に感じられる迫力はその時のものに似ていた。  
 
「地丹くん…」  
「うっ…うわぁッ!」  
部長の冷たい手のひらが、ボクの胸に触れた。  
今になって気づいたけど、ボクは…全裸じゃないか!  
「ふふ…地丹くん、カワイイわ」  
 
部長はそう呟いて、その細い指でツツツ…とボクの胸からヘソの方へと撫でていく。  
「ひぃやぁッ!」  
ぼくはゾワァッと脊髄を這い登る快感に身の毛をよだてた。  
 
「あむっ…!!」  
けれど、ボクのそんな悲鳴は突如部長の唇に遮られた。  
「!」  
彼女の形の良い唇が強く押し付けられる。  
 
「むぐ…ぐ」  
「…んふふ……」  
ぴちゃ…ぷちゅっ…むちゅっ………  
(あ…あぁ。し、舌が……)  
ボクと部長の舌が、キスの中で絡み合う!  
何だかくすぐったいような甘いような感覚が、ボクはじんわり包み込んでいった。  
 
ぴちゃっ…ぴちゃっ…ぴちゃっ………  
ボクはしばらく目をトロンと半開きにしたまま、部長にされるがままキスを受け入れていた。  
もっとも、縛られてるので抵抗しようにもできないのだ。  
 
…………ぐにゅっ!  
「!」  
ぼくは股間をいきなり握られる異様な感触に、思わず身をビクリと震わせ、  
その勢いでそれまでお互いに吸いあっていた唇が「チュポン!」と音をたてて離れた。  
部長が、キスをしながら右手でボクのモノを握ったのだ。  
 
「あら?ごめん。…痛かった?」  
「い、いや…」  
痛くはない。というか、女の人の手でじかに触られて…むしろ気持ちイイくらいだけど、  
「いきなりこんなことされたりビックリですよ」  
実際、怖くて縮みこまっていたモノが、今はもうビンビンに膨れ上がってる。  
「そう。地丹くんの…大きいのよね」  
「な、何で知って…」  
「何でも知ってるわ」  
 
ボクは口の周りに付いた唾液を拭おうとするが、鎖がジャラッと音を立ててそれを隔てた。  
そのかわり部長がベッドのシーツでボクの口を優しく拭いてくれる。そして、  
「ふふふ…でもね、地丹くん」  
と、妖しい笑みを浮かべるのだった。  
こんな表情を見るのは初めてだ。  
 
「こんなことで驚いてる場合じゃないのよ?  
 あなたはこれから…もっとすごいことされちゃうんだから」  
「え…え?」  
その言葉を理解する間もなく、部長は襲い掛かるような勢いで猛然とボクのあそこをしごき始めた!  
 
「わあああ・あ・あ…ッ!や、止め…止めて!ぶちょ…おぉ」  
それはまるで一気に坂を駆け上がる感覚だった。  
生まれて初めて体験するものすごい快楽に、ボクはあっけなく飲み込まれていく。  
 
くにゅっ!きにゅっ!くしゅっ…くちゅっ…ちきゅっ!!  
 
部長の絶妙な手技に、ボクはどうすることもできない。  
たちまち先走り液でペニスをしごく音が湿ったものになっていく…  
快楽の頂上に上り詰めるまで、さほど時間はかからなかった。  
 
「や…やめ…止めて……とめて…。  
 あ………ぁあああっ!……あうっ!い、いく…ッ!」  
イク、と思った瞬間、部長はピタリとその手の動きを止めてしまった!!  
「あ……ああっ!な、何で?どうして…ッ!」  
ボクは射精しようとしたその瞬間で突如快感から放り出され、  
どうしようもない切なさに腰をくねらせる。  
 
「だって…」  
部長はクスッと淫靡な笑みを浮かべて、  
「止めて欲しいんでしょ?」  
と冷たく言い放った。  
 
「そんな…部長!や、止めて欲しくないです…っ!  
 もう少し、もう少しだったのにぃ」  
ボクは情けなく涙目になって、部長に「最後までお願いします」と哀願する。  
けれど、部長は冷たい笑みを浮かべたまま、  
「どうしようかな」  
と、ジラすのだった。  
 
「だ、だってこのままじゃ…部長!あんまりです」  
ボクはもうイキたい一心で、恥も外聞も無かった。  
「それじゃ…」  
その時、部長の目が一瞬キラリと光ったが、そんな事を気にしていられるほどボクは冷静ではなかった。  
「地丹くんは、もっとして欲しいのね」  
 
「は、はい!お願い…します」  
「ふふふ…」  
部長は「分かったわ」と頷いて、またその身を寄せてきた。  
「そのかわり、どうなっても知らないわよ。  
 これは地丹くんが自分で言い出したんだから」  
 
そう言って、その大きく形の良い乳房をボクの顔にやや強く押し付けてくる。  
ブラジャーごしだったが、その柔らかさは充分に感じられる。  
女性の良い香りが、ボクの鼻腔をくすぐった。  
そしてボクはその恍惚の中、これからここで繰り広げられる惨劇など予想だにできなかった。  
 
ただ部長の柔らかさと温かさに顔をうずめ、幸福感でいっぱいにされていた。  
その時までは…  
 
「わぅ…」  
むにゅっ、と部長はさらに強くぼくを抱きしめる。  
「さあ、それじゃ続きしてあげる」  
スラリとした細い腕が、ボクの股間へ伸びる。  
 
…きゅっ!  
 
「ううぅ…」  
ボクは興奮のあまり、もうそれだけでビクビクと震えるのだった。  
きゅっ…きゅっ…くちゅっ………  
部長はペニスをただ握るのではなく、右手の親指と人差し指で円を作り、  
絶妙な力加減で亀頭のカリ部分を小刻みにしごき上げる。  
 
「あ!あ・あ…」  
「ふふふ…地丹くんはこうされるのが大好きなのよね。  
 とくに…ココ」  
そう言って、彼女はシゴいていた右手の人差し指で、コチョコチョとスジのあたりをくすぐってくる!  
「わぁ…あああ・あ…。く、くすぐった…」  
「でも、好きなんでしょう?」  
「うう…」  
た、確かに彼女の言うとおり、自分でオナニーする時もしばしばこうしている程、  
部長の指技は的確だ。  
けれど、なんでそれを知っているんだろう?  
ボクの感じるその場所を、なんで部長が知っている?  
 
そう言えば、さっき部長は「ボクのことなら何でも知っている」と言った。  
それは一体どういう意味なのか?  
快楽の渦に翻弄されながら、謎は深まるばかりだった…  
 
再び、絶頂へと上り詰めていく…  
来る。  
ボクは部長の肢体に抱きとめられ目を閉じながら、早くも「その時」を予感していた。  
 
あむっ…  
「ひゃっ!」  
部長が、ボクの耳たぶを2度3度甘噛みしてくる。それから、  
「そろそろなの?」  
と、熱い吐息交じりの声で静かに尋ねてくる。  
ボクはそのこそばゆさに肌を少し粟立てながら、「は、はい…」と返事をした。  
 
「うう…そ、そろそろ…もう、出る。あぁ…で、出ちゃいます…ぶ…ちょ・ぉお…」  
ぼくは垂れた涎を拭くこともできず(縛られてることもあるが)、ただただ部長のなすがままだった。  
「あっ!出る!い、イク……っ!」  
ぼくは悲鳴をあげつつ、体を弓ぞりにしてビクンビクンと痙攣した!!  
だが…  
 
「あ……あああっ?  
 あれぇっ?………お、おかしい………おかしいよ!  
 なんですコレ?部長…………ぶちょうッ!」  
いつもならとっくに射精してしまっている快楽の中にいるはずなのに、  
なぜかイクことができない!  
全身を硬直させ、下腹に力を入れ、腰をくねらせるが、どうにも出すことができないのだ。  
 
「ふふふ…どうしたの?地丹くん」  
部長は変わらぬ調子で、ただボクのモノを弄り続けている。  
こ、この人のせいなのか!?  
しかし、一体どうやって…  
 
「い、イけないんです…何だか知らないけど、射精できないんですぅ!」  
ボクは半泣きになって部長にそううったえたが、部長はなぜかウットリした目でそんなボクを眺めている。  
し、しまった!これじゃ、部長の思うツボ…  
 
「イけないの?…あらあら困ったわね」  
そう言って、部長はしごく手を止めて身を起こした。  
「あ、あぁ…」  
またジラす気か…!?  
そう思った矢先、彼女は「じゃ、もっと気持ち良くしてあげる」と言って、  
その小さな口をいっぱいに開けて、顔をボクの股間に近づけて来た。  
 
…ちゅぷっ…………  
「はぁああああっ!」  
部長の口にモノを含められ、ボクはいっぱいになって思わずため息を漏らしてしまった。  
「ああああああっ!」  
温かい!気持ちイイ!  
そんな言葉が言葉に成り切らないまま、ボクの喉を通り抜けていく!  
 
初めて感じる女性の粘膜の温度とぬめり…  
その余りの快楽に、ボクはもう我を忘れてよがり狂う他無かった。  
「ぁああああっ!うわぁあああああっ!」  
ただでさえ射精直前の快楽にさらされていた体が、それを軽く凌駕する甘い渦に呑み込まれいっそう強い痙攣を繰り返す!  
 
ぴちゃっ…ぴちゃっ…ぴちゃっ…………  
部長はそんなボクの悶絶に目もくれず、頬をすぼめたままピストン運動を繰り返した!  
「ひゃぁあああっ!ぐぅううっ!た、助けて………ッ!  
 い、………イっちゃう!イっちゃうよおっ!ぶちょおおおおおっ!」  
 
「んふふ…」  
部長はそんなボクの様子を目にしながら、ペニスをくわえ込んだままくぐもった声で笑い声をあげた。  
その振動がさらにボク自身を刺激する…!  
 
ぐぢゅっ!びじゅっ!ぶじゅっ………  
「あああああっ!うわぁあああっ!」  
淫猥な音とボクの悲鳴だけが、暗い一室にこだまする。  
「出る…出るぅううううっ!!」  
ボクはひと際大きな声をあげて、「その瞬間」のために体をいっそう強ばらせた。  
 
…が。  
「あ…あれぇ?…………あれぇえええっ!  
 や、やっぱりイけない…イけないよぉおっ!」  
明らかにそれは異常だった。  
これだけの快楽に身を任せながら、なおかつ射精に至らぬわけなどあり得ない!  
 
「ぶ、部長!これは一体…  
 ボクの体に何をしたんですか!部長……ぁあああううっ!」  
突如、彼女は口に含んだボクのペニスをいっそう強く吸い込んだ!  
ぼくは余りにきついその刺激に、思わず悲鳴を上げる。  
 
「ぁああああっ!ふわああああっ!」  
ボクはもう白目を向いてビクンビクンと体を弓なりに反らせてその快感を受け止めていた。  
射精さえできればその刺激にも耐えられるのだろうが、  
「気持ちよくてもイけない」というたった一つのことだけが、こんなにも「男」といものを苦しめるとは…  
 
ちゅううううううう………………、ちゅぽんっ!  
「はぁうっ」  
ようやく、部長の吸い付きが終わり僕のペニスは解放される…  
が、ボクのそれはすっかりうっ血していて、紫色になっていた。  
 
「ハァッ……ハァッ……ハァッ………………」  
ボクは息を荒げながらも、何とか正気を保ちつつ静かに口を拭う悪魔の仕草を見据えていた。  
 
「…クスリ」  
「えっ?」  
ボクは耳を疑った。  
「クスリを打ったの。地丹くんに…気持ち良くても射精を我慢できるクスリ…」  
 
「そ、そんな…なんでそんなことを………ッ……………あううっ!」  
部長はペニスをしごく手を止めず、言葉を続ける。  
「…実験よ」  
「じっ…!?」  
部長は唇の両端を持ち上げて薄く笑っている。  
 
「そう。『人間は、通常射精する快楽の何倍までなら正気を保っていられるか』という実験…」  
「な、な、な…なんだって!?」  
驚いてボクが悲鳴をあげようとしたその瞬間!  
 
ぐぢゅっ!ぐぢゅっ!ぐぢゅっ……  
 
「あああああっ!そ、そんなに早く…シゴかないでッ…ぶ、ぶちょぉおおおっ!」  
突如部長は唾液ですべりのよくなったぼくのイチモツをはげしくこすり上げた。  
たまらずボクはイヤイヤをするように首を左右に振るが、  
その暴力的なまでの快楽はボクをとらえて放さなかった。  
 
「7倍」  
「えっ…?」  
「地丹くんは、いつも射精するときの7倍まで出すことが出来ないの」  
ボクは快感に翻弄されながらも、それえを上回る恐怖に真っ青になった。  
 
「だいじょうぶ。3倍感じやすくなるクスリも打っておいたから…  
 出すのにそう時間はかからないわ」  
そんな問題ではない!  
「イヤだ!もうこれ以上はおかしくなっちゃう……  
 もう許し……やめ…くだ………ぶちょ……ぁああああ・あ・あっ!」  
 
くちゅっ!くちゅっ!くちゅっ……  
 
「…ふふ。大丈夫よ地丹くん。狂っちゃっても、ちゃんと治してあげるから…  
 安心しておかしくなってイイのよ」  
「いやだぁああああっ!」  
部長の言葉は穏やかな語調とは裏腹に、このうえなく残酷だった。  
 
「楽しみね地丹くん。イクのと壊れるのどっちが早いのかしら?  
 今までは壊れるのが先だったけどね」  
「ああああっ!?ふわぁああああっ……ど、どういうこと……です……か?  
 いう、『今までは』……ってぇえええっ!」  
 
部長はまたクスクスと楽しげに笑って、  
「憶えてないだろうけど、地丹くんで実験するのはこれが初めてじゃないのよ」  
と、恐ろしい事実を口にするのだった。  
 
「最初は10倍の快感で射精できるクスリを使ったわ。  
 快感も5倍感じるクスリも使ってね。…もちろん、地丹くんスグ壊れちゃった」  
「ひぃっ!」  
そんな…そんなことがっ!?  
 
「それから9倍…8倍…とクスリを薄めているの。  
 今日は4回目の実験。だから7倍なのよ?  
 もしかしたら狂わずに済むかもしれないわね」  
「そんな…そんなのってぇえええええっ!  
 ひ、ひどい!ひどいですよ部長!た、た、た……助けてぇえええええっ!?」  
7倍の快楽を得るのを待たずとも、ボクはもう半狂乱になって泣き叫んだ。  
 
…………ぴちゃっ。  
「!」  
突如、ボクの叫び声は形の良い部長の唇でふさがれた。  
(ぶ、部長…ッ!)  
 
…ぴちゃっ、ちゃぷっ…………  
部長は、半ばわざとなのか音を立ててボクの口腔内を舐っている。  
(あ…)  
ボクは目を半開きにして、その温かさに包まれていた。  
(…気持ちいい………)  
それは今までのぶつけてくるような暴力的な快楽とは異なり、  
まるで母親の腕に抱かれているような優しさだった。  
 
「んむ…」  
あんなにひどい目にあったばかりなのに、ボクはもう夢中になってその温かさにすがりついた。  
「ん…んんんっ!」  
唇はさらに強く押し込まれ、彼女の小さな舌もいよいよ激しくボクの中に侵入してくる。  
 
…  
………  
…………ッ!  
ちゅぽんっ!!  
 
長い長い接吻の後、唇が解き放たれた。  
「あ…あぁ」  
ぼくは未だ夢見心地のまま、部長の綺麗な姿をボンヤリ見上げている。  
「落ち着いた?」  
「…ええ」  
 
ボクはそう答えて頷いたが、その次の瞬間発せられた、  
「それじゃ、イッてみようか」  
という、部長の悪魔のような言葉に、また涙目にさせられた。  
「やっぱり…ボクはどうあったも逃げられないんですね…?」  
 
部長はクスクス笑いながら、  
「そういう物分りのイイ地丹くん、わたし大好きよ」  
と言って、ボクの萎えきらないイチモツにそっと手を添えた。  
「あううっ!」  
ボクはピクン!と反応する。  
 
しゅっ…しゅっ……きゅっ、しゅっ……きちゅっ………  
部長は再び冷酷な眼差しでボクをしごきはじめた。  
その表情にさきほど垣間見た優しさなど微塵も残されてはいない。  
ただただボクの全てを搾り取るための作業に没頭しているようだった。  
 
「あ……おおおっ……」  
ボクはまた全身を飲みこもうとする快楽におぼれていく。  
「ひぃっ!」  
両手両脚をしばられたまま、「ビクン、ビクン」と全身を弓なりに痙攣させるが、  
そんな風になっても、もう部長はゆるしてはくれない。  
 
「ふふふ…」  
この上なく残酷で美しい笑顔のまま、ボクを攻め立てていった。  
「あ…!あぇええええっ!!  
 し、死ぬ………死んじゃう!た、たすけ…助けてッ!」  
「大丈夫よ、地丹くん」  
薄れていく意識の中、その部長の声だけがやけに鮮明に脳裏に響く。  
 
「もし壊れちゃっても、地丹くんにはちゃんと新しい『体』を用意しているから…  
 気持ちよすぎておちんちんの血管がボロボロになっても、悶えすぎて体中の筋肉を痛めつけても…  
 大丈夫よ?   
 たとえシナプスが何万本切れても、新しい体に記憶を移し変えちゃえば元通り、よ」  
 
 えっ……?  
 
衝撃の事実をつきつけられ、ボクは一瞬、何を言われたのか理解ができなかった。  
「あ、新しい体……って」  
嫌な予感が激しく胸の内に沸き起こるが、恐る恐る聞いてみると…  
 
彼女はさらにきつくボクのモノをしごきたてながら、  
「クローンよ、地丹くんの」  
と、あっけらかんと言うのだった。  
 
「そ、そ、そ…それってぇえええっ!き、記憶を移し変えるったってぇ……  
 この体は…?ボクは一体どうなるんですか!?ぶぶぶ部長ぉおおっ!」  
ボクは先ほど以上に半狂乱になって泣き叫んだ!  
そして、どうやらそれが部長の言葉の狙いのようだった。  
「部長、答えてください!ぶちょ……ぅわあああああああああっ!」  
理性の糸が切れた途端、快楽に耐えていたぼくの緊張の糸までもが同時に吹き飛ぶ!  
 
「あああああっ!あひゃああぁぁぁっ…!…………………ウッ!」  
ドビュッ!びゅっ!びゅるるるるるぅ〜っ…!!ぶびゅっ!ぶびゅっ!ぶびゅっ……  
「あーっ!ふわぁあああっ!」  
それまで睾丸の中をグルグル渦巻いていた白濁液が、勢い良く尿道から飛び出てくる!  
ビュルっ…ぴゅっ!… ぷぴゅっ!  
ものすごい勢いで射精するボクと、その様子を満足げに眺めながら尚且つシゴくのを止めようとしない部長。  
飛び散った精液が2、3滴部長の顔にかかったが、彼女は意にも介さない。  
 
「あ…あ…あへへへへぇ……」  
ボクはもう涎をダラリと垂らし狂った目で、その快感に翻弄されていた。  
(7倍…)  
先ほど部長はそう言った。  
ボクは普段射精するときの7倍もの快楽を得てイッてるんだ………  
なるほど。勢いは衰えたものの、まだまだボクの発射は終わりを見せようとはしなかった。  
ぴゅっ……ぴゅるっ………  
(い、一体いつまで……)  
支離滅裂になろうとする意識の中、ボクはもうどうすることもできない。  
ぴゅっ………………ぴゅっ……………  
 
(いつまで……いつ…)  
「あ…あ…」  
 
さらに、部長がペニスを口に含んでくる。  
「おっ!おわぁああああっ!!」  
まだイッている最中の一番敏感な時に、粘膜の圧倒的な温かさがボクを!  
ペニスを舐めしゃぶられているッ!  
「ひぃいいっ!」  
 
ぴちゃっ…ぷちゅっ……  
「あぃいいいっ!ま、また……イクっ!t、止まらないよぉおおおっ」  
びくん!  
ビュルッ!ぴゅっぴゅっ!  
 
尿道の奥に眠っていた液体までもが、部長の吸い付きに耐えられずまたもや強制的に排出させられる…  
「ぶ、ぶちょう……も、もうこれ以上は……な、何にも…出て…きませ……」  
例え出るとしても、このままでは本当に狂い死にしてしまう…  
「たす…ぶちょ…おね……死ぬ…」  
もう言葉にならない哀願を呪文のようにとなえ続けるボクが居た。  
 
「あ…ぎゃっ!………ふぐっ…」  
ボクはペニスを部長に吸い取られるような体勢で、全身を完全に逆くの字にしてピクピク震えている。  
白目を向いているのだろう、何も見えない。  
それでも大きな快楽の波が怒涛のように押し寄せてきて、未だにボクをイカせ続けているのだ!  
そして…  
 
ちゅぷんっ!  
 
やっと、部長の口からあそこが解き放たれた。  
「は…はひぃ…………はぁ、…はぁ……はぁ……」  
ボクは完全に脱力してベッドの上に沈み込んだ。  
快楽に耐えるために硬直させていた全身の筋肉が緊張から解放され、  
弛緩していく感じが分かる。  
ペニスも完全に硬度を失ってペタリと倒れこんでいた。イキすぎて尿道が痛い…  
 
「ぶ、部長」  
ボクはしかし、何とか正気を保つことが出来ている。  
おそろしく憔悴しきっているのが自分でも分かるのだが、  
少なくとも精神を崩壊まではさせていない。  
ボクは、助かったのだ!  
「すごいわ!地丹くん。…やったじゃない」  
部長はその豊かな胸をボクの鼻先に押し付けるようにして、抱きついてくる。  
 
「部長〜…」  
あれほどツラく苦痛を与えた張本人だたにも関わらず、そのようにされるのは悪い気がしない。  
柔らかさと、温かさに包まれながら、ボクはようやく自分が助かった安堵感にヒタることができた。  
「部長…。それより手足のクサリを解いてください」  
ボクは部長の胸のなかで、極度の疲労に目を半開きにしながらそう言った。  
 
「そうね。これは7倍に耐えたご褒美」  
部長が指をパチンと鳴らすと、どういう仕掛けになっているのか、  
それまでボクの四肢を束縛していたクサリが緩んだ。  
「くっ…」  
疲れのあまり、正直手足を動かすのもおっくうだったが、何とかクサリから手足を抜く。  
縛られたまま暴れたため、皮膚が擦れて赤くなっている…  
 
「ごめんなさい地丹くん。でもこうしないと貴方逃げると思ったから」  
冷徹な実験者だった部長が、今は優しくボクを胸に抱いてくれる。  
「…」  
理性では許せなかったが、  
こうして癒されているとボクは「これでもいいかな」なんて気にもなってくる。  
何だかんだ言っても、部長がしてくれたわけだし、  
普通の生活では味わえないほどの悦楽を体験できたには違いないのだ。  
こうして部長が添い寝してくれるなんて、数時間前は夢にすら思わなかったことでもある。  
…とにかく、今は眠かった。  
 
部長の体に甘えるように抱きつくボク。  
(もしかして…)  
こんなふうにされていると、ボクはボンヤリとある思いが頭の内によぎってくる。  
(部長、ボクのこと好きなのかな)  
それでも素直になれなくて、こんなふうにしたのかな…?  
うん、そうに違いない。  
明日から、ぼくは部長の…いや、すずの彼氏になっちゃうか!?  
 
そんな妄想が出始めた矢先だった。  
「ま、地丹くんはもう疲れて動けないから、縛ってる必要も無いんだけどね」  
という、ボクの安らぎをブチ壊す一言が!  
 
「まだ終わらないのよ」  
ボクを胸に抱きながら、熱い吐息とともに耳元に囁かれる冷酷なセリフ。  
「ひっ…ひぃいいいっ!」  
ボクは本能的な恐怖を感じて、部長の体を跳ね除けてベッドから出ようとする!  
しかし…  
 
ガシッ!  
 
這いずるようにしてベッドから上半身を乗り出した瞬間、後ろから部長に捕まえられる。  
ボクの背中を抱きついて、逃げられないように引き戻される…!  
「どこに行くの?」  
と言って耳に甘噛みしてくる部長!  
「ひっ…ひぃやぁああああっ!……もうやめてっ!!離してェっ!」  
ボクは泣きながら首を左右に振ってイヤイヤするが、  
彼女はグイッと強引にボクをベッドの上にひきずりもどしてしまった。  
 
部長が強いのではなく、ボクの体に力が入らないのだ!  
極度の緊張の後で、既に疲労こんばいの状態…  
それなのに部長は!  
これ以上なにをしようと言うのか!  
 
「もう…もう…本当に、げ…限界ですってば!ぶ、部長…すず様…助けて」  
 
「さて地丹くん」  
クスクスと楽しげな笑みを浮かべながら、部長は言葉を続けた。  
「7倍の快楽に耐えられることは分かったわ。  
 でも、わたしはさらに正確なデータが欲しいの…あなたのね」  
「えっ…!?」  
「そう。具体的に言うと、小数点第2位ぐらいは欲しいかしら」  
 
カチャッ…  
 
部長の手には注射器があった。  
「7.5倍の快感でないとイケなくなる薬と、快感を5倍に感じる薬を調合したものよ」  
彼女はためらいもなく、身動きできないボクの腕をとって注射針を刺す。  
チクリとした痛みも、この恐怖の中では取るに足りない出来事だ。  
…とにかく、ボクは今の部長すべてが恐ろしくて仕方が無い!  
 
「あ…あぁ…」  
チュゥウウウウと、冷たい液体が血管に注入されていく。  
「7.5倍に耐えられるようなら、次は7.6倍、7.7倍…と濃度を上げていくの。  
 地丹くんが壊れてしまった時点で、この体での実験はおしまい。  
 新しい体に交換して、また次の機会に再開するわ」  
 
「あ…ああっ!そんなの…!そんなのって!!  
 じゃ、ボクは?ボクのこの体は、やっぱり死んじゃうってことじゃないですか!  
 嫌だ!  
 そんなの、いやだぁあああああっ!」  
ぼくは薬の作用で徐々に意識をピンク色に染められていきながらも、  
それを上回る戦慄に身震いし、一体何度目か分からない涙を流して哀願する。  
 
「仕方ないのよ。この実験で狂っちゃうのって…精神的にというよりは、  
 脳の器質的な問題の方が大きいから…治すより交換の方が手っ取り早いの。  
 それに…  
 今の地丹くんが、『交換されるのは嫌だ』って言うのはおかしいわ?」  
「えっ?」  
部長はまた唇の両端を持ち上げて笑みを浮かべる。  
おそらく彼女は…  
この衝撃の事実をボクに突きつけていたぶるのを  
ずっと楽しみにしていたに違いない。  
 
「だって…今の地丹くんは、4体目なのよ」  
 
「あ…  
 ああああああああぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!ぁぁっ…………ッッ…!  
 ぅぅぅぅわぁああああああああああああああ…………」  
ボクの中で、何かがガラガラと音を立てて崩れていく。  
ボクは…  
いや、「ぼく」だと思っていた自分は、既に部長にこうして殺されていたんだ!  
今居るこの体は、部長によって作られたもの。  
そしてこの「地丹」としての記憶は、彼女の手で殺された人間の持っていた記憶…  
ボクは地丹ではなく、地丹のクローンだったのだ!  
 
…………ぎゅっ!  
「うわぁあああああっ!」  
股間から突き上げるような突然の刺激に、ボクは思わずのけぞった。  
あれほどの射精をして萎え切ってしまっていたボクのペニスが、  
薬の作用で無理矢理大きくさせられて…部長の細い指に絡められている!  
 
「心配しなくてもいいわ、地丹くん。  
 どんな壊れ方をしても、記憶は完全に移し変えてあげるから。  
 あなたは永遠に生き続けられるのよ…私のそばに居る限りね」  
「そ、そんな問題…じゃ……ッ!  
 いやっ!揉まないで部長!!……本当に…本当におかしくなっちゃう!  
 うわひぃいいいいいいいいっ!」  
 
モミ…モミ…モミ…  
大きくなっていたモノが、その快感でさらに大きくなっていく!  
あ…人差し指で、カリの裏スジのところをコチョコチョと…  
ああ…  
あああああっ!  
 
「ふふふ。  
 いいわぁ…。やっぱり、こういう実験をする相手は、地丹くんにかぎるわね」  
「う・う・う嬉しくない…っ!やめて…もう止めて…ッ!  
「…」  
不意に、ギュッと強くペニスが掴まれた!  
「ぎゃぁうっ!」  
ボクはビクリと身を震わせる。  
 
もう、恐怖と絶望の他は何もなかった。  
 
…シュッ………  
「うわぁあっ!」  
………しゅっ…!  
「ひぃああああっ!」  
指で優しくこすりあげる度に、その一回一回にイってしまいそうになる。  
実際、普段のボクならその一擦りで昇天してしまうに違いない。  
だけど、今は薬によって無理矢理耐えさせられている…  
 
手足の束縛は解かれ自由になったのに、狂うほど身悶えするのに精一杯で逃げ出すどころではなかった。  
…シュッ、…シュッ、…シュッ………  
部長の手の動きがさらにリズミカルに、スピーディになっていく!  
「あ・あ・あ…」  
ボクはまたビクビクビク!と全身を震わせながら、その電撃的な快感に晒されていた。  
 
5倍の快感を感じるクスリ。  
確かに彼女はそう言った。  
実際、ボクは一度絶頂を迎えてしまっているにも関わらず、  
さきほどと同等かそれ以上の快感を感じている。  
ペニスはますます硬度を増し、全身を突っ張りながら部長の愛撫に必死になって耐えているのだ。  
だが、イクことはできない。  
 
「ぶ、ぶちょ…たぶん、ダメ……無理!イけませぇん………  
 さっき、あんなに出したからぁ…もう…」  
ボクは自分の中の何かが蝕まれているのを感じながら、  
それでも搾り出すように声を出す。  
 
しかし部長はそんなボクの哀願が聞こえているのかいないのか、  
ペニスをしごく指の動きをいっそう速めてくる!  
「おぉおおおおっ!」  
ボクは体をのけぞらせて、脊髄を食い破るようなその刺激を味わい続けなければならなかった。  
(こ、こんなに…気が狂っちゃうほど……気持ちいいのに…)  
イけない!  
 
「本当に、ほんとうに…あぁ…」  
「んむ…」  
部長が、ふいに唇を塞いできた。  
無論、ボクの下半身に伸びた手は一向に離れる様子が無い。  
ベッドに横たわるボクの体は、モノを弄られ唇を蹂躙され、正に部長の成すがままだった…  
また、部長のねっとりとした温かい舌の感触が…口腔内でゆっくりと踊り始める。  
 
(…)  
ボクは目をトロンとさせて、考えるのを止めた。  
覆いかぶさってくる彼女の体に、両腕でしかとすがる様に抱きついたまま、  
ボクはまるで母親のミルクを求める赤ん坊みたいになって、無心に部長とキスをする。  
 
おかしな話だけど、こうしていると本当に…  
この残酷な快楽の渦の中にありながら、奇妙に安らぎを覚えてしまうのだ。  
本当に、それは…奇妙だった。  
 
ぷちゅっ…  
ほんの少しだけ、唇が離れた。  
お互いの粘膜の温度が感じ取れる距離のまま、部長は「無理してイかなくていいのよ」  
と囁いてくる。  
そう言葉を発する間も、部長の唇が何度かボクの顔に触れる。  
「だって…ツラいよ、部長ぉ」  
「でも疲れるでしょ?そんなに無理して踏ん張らなくてもいいの」  
優しい声で、そう語りかけてくる。  
「うん…分かった…です」  
(でも正直、もう気持ちよくされるの…勘弁して欲しいナ)  
そう思いながらも、ボクは甘えるように部長の体に吸い付いた。  
頬に触れる豊かな乳房の感触が何とも心地よい。  
 
「無理しなくても、ちゃんと私が射精させてあげるから」  
突如、部長の言葉が凍りつくような声に変わる!  
「え…えぇッ!?」  
部長はスッと身を起こし、ベッド脇の台の上に置いてあった何かを手に取った。  
ゴム手袋…?  
化学実験などでつかう、フィットタイプの使い捨て透明ゴム手袋だ。  
それともうひとつ。  
透明な液体の入ったビン。  
 
「な、何それ部長!何なのッ!」  
ドキン!  
心臓が高鳴る!  
何かを期待しているのではなく、新たな恐怖と突然の不安がない混ざる感覚だ。  
「心配しなくても、これは毒でもクスリでもないわ」  
パチンとゴム手袋を右手にハメ終え、その指に小瓶の液体を落とす。  
液体は水ではなく、トロリとした半固体(ゲル)状のものだった。  
「ただのローションよ。…そのままじゃ痛いから」  
 
「地丹くんは知ってる?  
 自分の体の中に…とても気持ちよくなれる魔法みたいなその『場所』を」  
 
ボクは勢いよく首を左右に振ってその質問を拒絶した。  
嫌な予感は高まるばかりだった。  
「部長、ボクもうイけなくてもいい!…です!  
 だから、やめましょうっ。  
 ボクを家に帰してください…」  
おそらくかなう事はないであろうその願いを、ボクは何度も何度も唱えていた。  
 
「ふふ……フフフ」  
だが、そんなボクの哀れな姿は、逆に彼女のしい虐心に油を注ぐようなものだった。  
「さあ、実験開始よ。  
 地丹くんは一体どんな鳴き声で私を楽しませてくれるのかしら?」  
そう言って、手袋をしていない方の手でボクの片脚を持ち上げる!  
「わ!ちょ…や………  
 さ、さっき言ってたのと違うぅうううっ!」  
部長のはめたローションまみれのゴム手袋の指が、ひたりとボクの菊門に触れる!  
「ひぁああああっ!」  
ボクはその余りの冷たさに瞬時に身を硬直させた。  
 
まさか……  
……まさか………………………ッ!  
 
ズブ……ズブブ………ズブズブズブゥ!  
 
「ああああああああああああっ!  
 い、嫌だ!  
 …は、入ってくる!部長の指がボクの中にぃいいいっ!  
 や…や…や…やめてぇええええええっ!!」  
 
彼女の細い指が、どんどんボクの肛門内部に侵入してくる!  
それはゆっくりとではあったが、着実に…奥へ、奥へと入って来た!  
ズ…ズ…ズズズ………  
「お…おぉ!」  
今まで経験したことのないほどの異様な感触に、  
ボクは思わず括約筋に力を込めその侵略行為に抵抗するが、  
ローションで滑りが良くなっている指はたやすく侵攻を続けている…  
 
「あ!…あぎぃっ!」  
彼女の第2関節まで入ったあたりで、ボクはひときわ高い悲鳴をあげた。  
部長の指先が、何か大変なものに触れたのだ。  
ボクの体の奥底にあるその「部分」。  
名称も機能も知らないが、部長がボクのこの場所に指を差し入れた目的は、おそらく…  
 
「ここね」  
ボクの肉体の反応を見てなのか、それとも指先にその存在を感じ取ったのか、  
部長は指をそれ以上差し込むのをやめ、今度はその場所でゆっくりと指を回転させる。  
 
「いぐっ!いぎっ!」  
ジワリジワリと拡がるようなその感覚に、ボクは言葉にならない短い悲鳴を2度3度あげた。  
決して痛みではない。  
快感には違いない。  
だが、クスリで増強されているとはいえ、  
これはオナニーや(おそらく)SEXで感じられる性的な快楽とは次元が違う!  
体内部から強制的に精液を排出させるためだけの、おそろしく強引な手段…  
 
「ふふふ…苦しい?」  
「あ…あ…」  
ボクがまともに答えられるわけがなかった。部長は満足げな笑みを浮かべて、  
「そう。…それじゃ、そろそろトドメを刺してあげる」  
という残酷な言葉を呟いた後、差し入れた指を…ゆっくり…しかし、力強く…曲げていく。  
曲げていく!  
 
…………クニッ!  
 
「!…………!ッ!!!!!  
 あ……!  
 お………ッ!かはぁッ!…………………あっ!」  
ボクはビクンと跳ね起きるほどの勢いで痙攣した!  
 
「ほら…ほら……ッ」  
 
くにっ……くにくにっ!きゅっ!ぎゅっ!!  
何度も何度もそのクルミ大のその「器官」を指で押して刺激する!  
 
「あ……ぎゃあああああああああああああっ!  
 ぐわぁああああああああああっ!」  
ビクンビクンビクン!  
ボクは魚の様に全身で跳ね回るが、その魔の指からは逃れられない!  
いyた、逃げようとすればするほど、その刺激は強く、さらに強くなっていく!  
 
全身を山のように突っ張らせたその頂上にそびえたつボクのシンボルが、  
ビキビキと音を立てて更なる硬直を得ようとする!  
「ここで…これを…」  
そう言って、部長はそのペニスに自由なほうの手を伸ばす。  
 
「あ!やめぇ!やめてぇッ!  
 死ぬ!それは本当に死んじゃう!  
 やぁああああああぁめぇえええええッ!」  
ボクのそんな最後の叫びも虚しく、  
きにゅっ…  
と、部長の指がボクの急所をとらえ、ほんの少し動かしたその瞬間!  
 
「てはぁっ!」  
ドブドブドブドブドブゥ!  
どぱぁっ!  
ぶびゅっ!…ぶびゅっ!…ぶびゅっ!  
ドクンドクンドクンドクン……  
びくっ!びくっ!びくっ………………………  
 
2度目なのに、まるで1週間溜め続けていたかのような大量の射精!  
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」  
ボクは首を振り涙と涎を飛び散らせながら、薄れていく意識のなか、  
尿道から白濁液が粘膜の壁を最大限まで押し分けて飛び出していく感触だけをハッキリと感じていた。  
 
それから気絶してしまうまでにボクが憶えているのは、  
その精液がまるで噴水のように高く強く大量に…ボクの体から吐き出されている像だけだった。  
 
それから目を覚ますまで、ボクは夢を見ていた。  
胎児のように丸くなって温かい海にプカプカ浮いているという奇妙なものだった。  
あてもなく漂っているのだが、心は妙に落ち着いている。  
「…あっ」  
そこで目が覚めた。  
ボクは、部長の温かい胸に抱かれて眠っていたのだ。  
ふと彼女の顔を見上げると、寝息を立てている。むろん、ボクも部長も服は着ていない。  
「…」  
その寝顔を見るかぎり、あんなにひどいことをするような人には到底思えないのだが…  
 
どのくらい時間がたったのだろうか?  
昨日、部長に拉致されてからはずっとこの暗い部屋に居たので分からない。  
まさか2日も3日も経っていないだろうが、何時間眠っていたのだろう?  
もしかすると、学校は始まっているかもしれない。  
 
けれど地丹は、こうして女の体温を感じているとどうでも良いような気もしてきた。  
こうして安らぎの中にまどろんでいるのも悪くはない。  
(でも…)  
地丹は彼女の言葉を思い出す。  
(この人は、ボクを壊そうとしているんだ)  
先ほど感じていた恐怖が、また蘇ってきた。  
 
(そ、そうだ。このまま逃げ出せば…)  
逃げ切れる保証は無い。  
むしろ捕まった時のことを考えると、どれほど酷い仕打ちを受けるか想像するだに恐ろしいが、  
このまま座していても身の破滅は免れないのだ。  
それならばいっそ。  
(逃げよう)  
ボクは部長を起こさぬようそっとベッドを降りた。  
這うようにして、部屋の扉まで来る。  
(頼む…開いてくれ!)  
心の中で叫ぶように祈りながらノブに手をかけて、ゆっくりと捻った。  
 
………チャッ!  
(やった!)  
鍵はかかっていない。抜け目のない部長にしては、らしくない失敗だ…  
ボクは暗い絶望の井戸の底で、「希望」というひとすじの光明を見た気がした。  
ドアを開けて部屋を出る。  
そこはヒンヤリとしたコンクリ造りの通路だった。そこにも電灯は点いておらず暗いままだったが、  
のんびりはしていられない。  
抜き足差し足で歩きながらも、ボクは一刻も早くあの部屋から離れたかった。  
 
通路はそう長いものではない。すぐに隣の部屋の扉まで来る。  
どうやらこの通路はさっきの部屋とこの部屋をつなぐためのもので、出口に直接続いているわけではないようだった。  
「…」  
ぼくはその扉の前に何か一抹の不安を覚えていたが、開けぬことには道が無い。  
(…ままよ)  
ボクは心に決めて戸を開けた。  
(…?)  
先ほど感じた不安は一体なんだったのか、そこは部長と居た部屋とさしてかわりない薄暗いへやだった。  
ボクは少し拍子抜けした感じで、とりあえず出口を探すことにした。  
 
…ちゃぷっ  
部屋に足を踏み入れると水音が聞こえる。それと、かすかなモーター音。  
ボクは暗闇の中、よくよく目をこらして見た。  
「水槽か?」  
何と、部屋の壁だと思っていた部分全体が、どうやらガラス張りの水槽のようだった。  
まるで水族館にでもあるかのような巨大な物だ。  
音がしたことでも分かるとおり、水槽の中には確実に何かが居る。  
 
ボクの高鳴る鼓動は明らかな危険信号を伝えていた。  
これは本能だろうか?いや…  
脳の片隅に残された記憶の断片が、「あれは怖い」と教えているのだ。  
「ダメだ」  
ぼくは呟いた。  
(あれは…見てはいけないものなんだ!  
 見るな!そして…逃げろ!)  
心の声は徐々に大きくなっていく。  
 
そんな中、寄りかかっていた扉側の壁伝いに指先がスイッチらしきものに触れるのを感じた。  
(電灯のスイッチ?)  
場所から言って、確かにそれは間違いない。  
これをonにすれば、あの水槽の正体が分かるのだろう。  
ボクはごくりと唾を飲み込んだ。  
 
ぼくは闇の中でひとり考える。  
(出口を探すにしても、明かりは要る。それに…)  
ボクは真実を見極めたい。  
危険を回避したいという動物的な本能よりも、この時のボクは最も人間的な好奇心の方が勝っているようだった。  
本来ならこの水槽になにがあろうと、知ったことではない。  
さっさと逃げればいい。  
だけど、逃げた後のことを考えると…部長がこのまま見逃してくれるとは到底思えないのだ。  
その正体を見極めることで部長に対抗できる何かが掴めるのなら、危険を冒す価値はある。  
 
(よし!)  
ボクはスイッチに触れる親指に力を込めた。  
…パチンッ!  
小気味良い音がした後。蛍光灯がパッと点いた。  
そしてその水槽の中に在った「彼ら」が、一斉にこちらを向いた!  
 
「あ…」  
ボクはそこにへたり込むしかなかった。  
 
覚悟は決めていたつもりだった。  
この水槽にどんな恐ろしい化け物が居ようと、  
見た後は点けた明かりを頼りにして冷静に出口を探す…そのはずだった。  
だけど…だけどこれを目にして腰を抜かさない人間がいるわけがない!  
その中に居たものは…  
 
ボクだった。  
 
ボクの体が…2、3、4………とにかく、数え切れないほどたくさんの「ボク」が、  
その水槽に居る!  
彼らの視線は一様に外界に居るボクの方へと向けられているのだ!  
「あ…あ…あ…」  
 
ドクンッ!  
 
ボクは電撃のような衝撃を覚えたあと、ついに全てを思い出した。  
始まりは…  
そう。科特部の隣にあったあの空間。  
…つまり、この場所で…この水槽を見たのが全ての!始まり!  
ボクは水槽を泳ぐボク自身のクローン達を見てしまったがために、  
部長に拉致され数々の仕打ちを受けていたんだ!  
 
(クローンよ…)  
(あなたは4体目の…)  
(壊れても、『交換』してあげる…)  
部長の声が何度も何度もボクの脳内をリフレインしていく!  
 
記憶は、次々と蘇った。  
この水槽のことばかりか、以前の、そしてその前の体だったころの記憶まで…  
置かれた状況は今と変わりない。  
オリジナルの体から2体目、3体目…と、一貫して壊れていった理由は同じ。  
部長の手で…気が狂い心臓が止まるまでまでイかされ続けて……  
 
「記憶は移し変えてあげる」  
 
そう彼女は言った。  
今その記憶を思い出していることから分かるとおり、ボクという存在自体は確かに残るようだった。  
だが、肉体のほうは…  
すくなくとも、オリジナルから3体目に至るまでは…  
部長に!部長の手で!  
 
(に、逃げなきゃ…)  
改めてボクはそう思った。  
(逃げなきゃ、本当に殺される!)  
ボクはすっかり虚脱して腰を抜かしてしまったが、それでも這うようにして出口の方に向かった。  
たしか、たまたまこの部屋に入ったあの時は、あっちから来たんだ…  
無様に這いずりながら、ボクは必死に出口に向かう。  
「逃げなきゃ…」  
その思いが、口をついて出る。  
呟きながら、ボクは一心不乱にその方向を目指した。  
 
「逃げなきゃ…逃げ…」  
「どこに逃げるの?」  
床を這うボクのすぐ背後から、聞きなれた女の声!  
気づいた瞬間!  
プツン、という注射の鋭い痛みが首筋に!  
 
「あ…は、はひゃぁあああああああああああああっ!  
 うわあああああああああああああああああああああああああああああああっ!」  
ボクは気も狂わんばかりに叫び声を挙げた。  
バタバタと暴れるが、すでに注入は終えている。  
振り返れば、案の定そこには全裸の部長が空の注射器を手にしていた。  
この恐怖!  
ボクを見下ろす身の毛も凍るようなその表情!  
助けて!…助けて!  
 
「ああああああ…ぁあっ?…あ……ぁ…」  
ボクのその声は徐々に小さくなっていく。ま、麻酔…だ……  
「…た、たす……けてぇ……助けて……改蔵くん……羽美…ちゃ…」  
声が出ない。  
そんな…  
せっかくここまで来て…  
出口は目の前なのに…そんな…………そんなぁ…  
 
ボクは再び真っ暗な絶望の底に叩き落とされていった。  
 
「あぅ…えあ……あ」  
声が出ない。麻酔のせいだ。  
それでもボクはなんとか逃れようと、必死に口をパクパクさせる…  
どうすることも出来ないのがこの上なくみじめだった。  
「あぅ……ぇえ……んっ…むぐっ!!」  
 
ふいに、ボクの体を抱き上げたまま部長の唇が言葉を塞いでくる。  
あの冷たい舌差し入れられ、チロチロと口腔内を動き回るのを感じていた。  
ボクはまるで母親にミルクを与えられる赤ん坊のような格好で、  
ボロボロと涙を流す。  
 
…ちゅぷっ  
 
部長は唇を離すと、ペロリとボクの頬を伝う涙を舐めた。  
「…しょっぱい………」  
そう一言呟いて、部長は先ほどのドアの取っ手に手をかけて開いた。  
「あ…あ…あ…」  
 
ボクはもう悟るしかなかった。  
この部屋から、生きて出ることは最早かなわないのだと…  
 
部長はあくまで優しかった。  
ベッドの上にそっとボクの体を置くと、電気を消し、  
裸体の上に纏っただけの白衣を脱いで壁にかけた。  
暗闇の中でうっすらと見える彼女の白い肌がやけになまめかしい。  
何度目にしても抜群のプロポーションだとは思うのだが、  
そんな美しさも今のボクには恐怖の対象でしかないのだった。  
 
一歩一歩ボクに近づいてくる部長。  
暗くて表情までは読み取れないが、ボクには部長がクスッと笑みを漏らすのが聞こえた。  
とらえた獲物をいたぶり殺す高揚感に上気しているに違いなかった。  
 
(どうして……)  
ボクはもう涙も枯れ果てて、グッタリとしていた。  
疲れて嗚咽も出てこない。  
(どうして、ボクがこんな目に…)  
 
…ギシッ……  
 
部長が、ベッドに乗り込んでくる……  
ああ……  
あああっ………ッ!  
彼女のからだ覆いかぶさってきた。  
ふに、と柔らかい乳房の感触がボクの皮膚を掠める。  
 
「うっ!」  
麻酔に混ぜられたクスリのせいか、  
それだけで電撃のような心地よさが皮膚を伝って脊髄を直撃する!  
「ふふふ…」  
部長のやや冷たい両手が、包み込むようにボクの頬の両側から当てられる…  
 
目の前には、はたして予想していた通りの彼女の表情がボクを見つめているのだ。  
「もう、ここもパンパンね…」  
部長の太ももが、ボクの股間にすり寄せられる。  
「あうーっ!]  
麻痺しているはずの体が、そういう刺激には敏感に反応するらしい。  
ゾクゾクするような快感に、ビクリと身を震わせた。  
おかしい。  
明らかにおかしい!  
クスリの濃度を上げているからって、こんなにも感じるなんて!  
 
「気づいた?」  
部長は愉悦を含んだ声で、そっと囁く。  
「ふふ…地丹くんが逃げた後………慌ててたから調合の具合間違えちゃったの」  
「!?」  
ボクは耳を疑った。  
 
ちょ、調合を間違えたって………  
まさか、  
……まさか………ッ!  
 
「どちらもほぼ原液のままよ。…快感も閾値も12倍から15倍といったところかしら?  
 ふふ……ふふふ……ッ」  
「あ・あ・あ・ああああああああぁぁぁぁっ…………ッ!」  
細い指が、ボクのペニスに絡み付いてくる…  
普段ならそれだけでイッてしまいそうな程の快楽に、  
ボクのモノがずっとわななき続けている!  
 
「あなたが悪いのよ、地丹くん。  
 私から逃げようとするから…  
 ずっとそばに居てくれたら、生かしておいてあげたのに…  
 いつも、いつもあなたは…ッ!」  
「えっ!?な、何?…………あっ!あああああああああっ!」  
聞き返そうとしたその瞬間、彼女の指が男根を強く握り締める!!  
そしてゆっくりとしごき始めた。  
 
「おぁああああああっ!ぐっ、ぅえあっ……げっ………」  
ボクの神経が耐えうる限界は、とっくに越えてしまっているようだった。  
血が滲むほど歯を喰いしばり、なんとか自由になる首だけ千切れるくらい左右に振るが、  
それでも「射精」という解放は訪れない!  
な、何だ?  
今、部長はすごく大事なことを口にしたような……  
 
ああ、もう何が何だか分からない。  
助けて……  
誰か助けて…っ!  
この地獄から抜け出せるのなら、もう、いっそのことラクにして……  
誰…か……あ ッ  
 
部長の指の動きが止まった。  
 
だからといって、地獄が終わったわけではない。  
上ぼり詰めていた快楽の階段から放りだされ、  
今もボクは気が狂いそうになったまま、ベッドの上で部長のトドメを待っているのだ。  
 
「地丹くん…」  
部長の唇が耳元によせられ、熱い吐息とともに漏れてくる言葉がゾクゾクとくすぐったい。  
「気持ちいいでしょ?…ねぇ。  
 …すこし撫でてあげただけで、もう死んじゃいそうでしょ?」  
「あ…あ・あ・あ…っ」  
 
「ふふ…こんなになってるときに、地丹くんのおちんちん…  
 私のなかに入れちゃったら、どうなると思う?」  
「!!!!!」  
 
ボクは真っ青になって、部長の顔を見た。  
「分かるみたいね。…ふ…ふふふ…」  
スッ、と部長の手が下方に伸び、ボクと目を合わせたままキュッとペニスに指が添えられる。  
そして…  
狙いを、定めるようにボクの男根を上に向けた。  
 
ぐ…にゃっ……  
彼女の「入り口」にあてがわれる…っ!  
 
「ひぃいいいいいいいいっ!…い、いやああああああああっ!!  
 や、やぇええええっ……!!  
 やぁめぇえええええええっ!!!!  
 た、たふっ…たす…たふけれぇ!たひゅけてぇえええっ……ッ!」  
ボクはもうのた打ち回るように最後の力を振り絞って懇願するが、  
部長はさらに口の端を持ち上げて淫猥な笑みを浮かべたまま、  
腰を…  
落として……ッ  
 
に、ちゃっ……!  
ずぶ、ずぶずぶ………  
 
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!………ごぉ……あ…  …あっ……  
 ひぃ……ッ……あえぇ…あ   お……ぉお……  
 …れああががっ…ッ……ひぃ柄絵kfcsmgsk`@(ウジャjwyhb>・;@%#(7・・・」  
 
ぶちぶち…と、ボクの脳内で何かが千切れ飛んでいく音を感じていた。  
ボクは完全に白目を向いて、言葉にならぬ悲鳴を上げながら挿入の快楽にピクピク痙攣し続ける。  
部長はそんなボクの様子をウットリした表情で見守ったまま、  
無慈悲にもさらに腰を深く深く降ろしてくる。  
 
「おっ!ぁああああああっ!おぇらがガガガが画家kfp家;g氏jgs'(63l;sjsdj``*@」  
 
根元まで挿入がなされるまで、ボクは正気を保っては居られなかった。  
信じられない快感だった。  
部長の膣内にあるヒダ一枚一枚の感触が、ヌメヌメとボクのものを包み込んでいく。  
それぞれが鮮明に、かつダイレクトに脊髄を突きぬけ前頭葉まで電撃となって直撃するのだ。  
何万本ものシナプスが引き裂かれ、脳細胞がパンクしていく感覚までもがハッキリと感じ取れる。  
枯れた涙の代わりに、真っ赤な血液が涙腺から溢れてきた。  
 
しかし痛みは無かった。  
それを感じる脳の区域が、とっくに死滅しているようだった。  
後に残るのは、快楽、快楽、快楽………  
 
グヂャッ…ニチュッ……ズチュ……  
 
部長がボクの上でゆっくりと動き始めた。  
すでに、ボクの肉体は時折ピクンとひくつく以外は反応すらすることができない。  
たった一部分をのぞいては…  
そう。  
ボクはもはや指一本動かすこともできなかった。  
ただ体の中心から快楽を与えられ、  
その感触だけをハッキリと知覚しながら死んでいく、部長の愛玩動物に成り下がっていた。  
 
ぐぶっ…  
ソフトボール大に膨れ上がったボクの陰嚢の中で、睾丸がひとりでに揺れた。  
射精管がスポイトのように精巣に充満した欲望を吸い上げているのだ。  
全てを、吐き出すために…  
 
間もなくだった。  
この地獄の終焉も、ボクの命も、もはや尽きる寸前…  
かつて無い大爆発の末、やっと安らぎが訪れる。  
その予感は充分だった。  
 
「ち…たん、くん」  
息を荒げ、喘ぎながらボクの体を貪り続けている部長が言った。  
「この……体で………あぁ、……ッ言い残すこと、ある?……うっ」  
 
無論もう声など出ない。  
ただ、唇の形だけでボクは彼女にそれを伝えようとした。  
 
「……す…………き」  
 
部長は秘所にボクを捕らえたまま、ガバッと抱きついて来た。  
そして、膣内の圧力がひと際つよくボクのペニスを締め上げる…  
その瞬間!  
 
…どくん!どくん!どくん!  
ド…ド、ドドドド………どびゅるばぁっ!  
ドプドプドプドプドプゥううううううううウッ  
ビュバッ!びゅばっ!ビュバッ!  
ぼビュルルルルルルるるるるるるるるルルルゥゥゥゥウウウウウウウッッ  
 
ドクン!ドクン!ドクン………  
 
ボクはもう、真っ白だった。  
部長の中に全てを吐き出しながら、何もかも忘れてその快楽の濁流に魂が呑み込まれていくのを感じていた。  
大量の精液が流し込まれ、結合部からブシュブシュと白濁液が漏れてくる。  
部長はなお貪欲に、ボクの上で腰をくねらせながら最後の一滴までも奪い取っていく…  
 
既に脳も心臓も限界だった。  
死は、確実。  
しかし不思議と恐れはもう無かった。  
 
部長の暖かい胸に抱きしめられ、何もかも吸い取られながら、ボクはこの上ない幸福の中に居る。  
これから先何度彼女に蘇らされ、一体何度殺されるのか分からないが…  
この永遠に続くとも思われる螺旋の中に閉じ込められてしまうのも、  
決して悪い話ではないかもしれない。  
 
ボクはそんなことをボンヤリ考えながら、  
ねっとりとした暗闇の中へ意識が吸い込まれていくのを感じていた。  
 
 
 
                         了  
 
 

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