「疲れたよ・・ファンと戦うことがこれほど疲れるとは…」
秘密基地に立ち、自身が幼少の頃書いた絵を前に、ソルは何度もつぶやいた。
現に、決して顔色は良くなかった。長い前髪で隠れているが、目元にうっすらと隈まで出来ている。
しかし、色を失いながらも、ギラギラした目で唇をかんでいた。
勝負には勝ったがレースには勝てなかったことが、やはり悔しかったに違いない。
「今日はすまなかったな。」
ソルは素直にわびの言葉を口にした。
「少し、話がしたい。後で来てくれないか」
海の底にに沈みこんでしまいそうなくらい低い、小さな声でソルは言うた。
海王の願いを断れるはずもない。目を伏せてエールラは頷いた。
エールラは3姉妹の中で、ソルと比較的年齢が近い。そのため一番親しくしていた。
ただの幼馴染という関係だけではない。
幼少の頃こそ無邪気なものだったが、年月を経ると共に自分とソルの立場の違いが生まれ、
その溝はどんどん深くなっていった。
相手はセイリオス家の子息なのだから、当然のことである。
しかし、弁えなくてはと思えば思うほど感情は突っ走り、いつしか男と女の関係になっていた。
ベッドの中では、立場の違いなんてものはなく、昔のように幼馴染の関係のままでいられる。それがうれしかった。
ソルの頼みで、体を張るような仕事を何度もした。今回も、まさしくそのような仕事だった。
荒れ狂う海の中へ身を投げた。一歩読みを誤れば、ここには立っていない。
自分を見つけてくれるものはいないだろう。
任が大変であればあるほど、その後とびきりやさしく抱いてくれる。申し訳ないと詫びているかのように細やかだ。
おそらく今夜も・・そう思うと、エールラは体が熱くなった。
夜も更けた頃、エールラはソルのもとに行った。
ソルは、寝着のままソファに腰掛け、所在無く空を見つめていた。
「ソル様、こんばんは」
ソルがゆっくりと振り向く。絡みつくような視線をエールラに向けた。
「海王になられたお祝いのお酒をお持ちいたしました。いかがですか?」
緑の瓶を軽く掲げて、エールラは笑う。あたりがふわっと華やかになる。
勝手知ったるかのように栓抜きとグラスを取り出すと、ソルの脇に立つ。歩いた後に残り香がふっと舞う。
エールラの女の匂いに、ソルの頭は軽く痺れた。
葡萄酒を注ぎ、つとソルへそれを進める。
エールラもグラスを持ちながら、ソルのすぐ横に腰掛ける。
もたれかかりながら、お疲れ様でしたとささやき魅惑的な笑みを浮かべた。
「俺をひどいやつだと思うか・・?」
らしくない、とエールラは思う。そしてそれをそのまま口にした。
「ソル様が海王になるためには、必要なことでしたから。まぁ、出て行かないのが一番でしたけれど。」
ソルはうっすらと眉間にしわを寄せながら、エールラを見た。
「それに、ソル様の読みどおり、ファン・ガンマ・ビゼンは助けに飛び込みましたから。」
「・・・ここで借りをファンに作ってしまったことが、正直悔しいんだ。」
「もしかしたら、荒れ狂う海なのに助けに来てくれたあの男に惚れてしまうという心配でもしていらしたんですか?」
「本気か?」
「さぁ、どうでしょうね」エールラはくすくすと笑う。
体を起こし、きちんとソルに向かい合って口を開く
「変にやさしい感情をお持ちにならないでください。そんなものは断ち切って、
したたかに生きていかなくてはいけないんですから」
「エールラ・・」思わず抱きしめる。髪を何度も何度も撫でた。
「ようやく、海王の地位を手にしたんですよ・・」
ソルから香る潮の匂いを胸に吸い込み、うっとりしながらつぶやいた。
…私たちはいつまでこんな関係なんでしょうね。日陰のままで・・言いたかったが飲み込んだ。
ファン・ガンマ・ビゼンは、とんでもない船乗りだった。見事に太刀打ちできなかった。
レースに見事に破れた。しかし、王海走には勝利した。
完膚なきままに叩きのめす、とは行かなかったが、この結果は致し方ない。。
だが、逆境は男の才能を開花させる。今回の敗北は、必ずソルに好機をもたらすだろう。
意思ある横顔を見ながら、エールラは思っていた。
「今度は、命を落としかねない仕事の依頼はお控えになってくださいね」
「ああ。約束する」
ソルはエールラの瞳を覗き込んで、笑顔で言った。その目は強い光を放つ。
髪を撫でていたその手が頬へ、そして首筋へとゆっくり下がる。
そのまま触れるか触れないのか分からない程かすかに、ソルの親指が唇に触れる。
くすぐったさに、エールラは軽く目を閉じた。
ソルがゆっくりと唇を重ねた。葡萄酒の香りが広がる。
血の味ならいいのに…エールラは思い、ソルの唇をくっと噛んだ。
微かに眉根を寄せたソルは、力をこめて来た前歯を、たしなめるように軽く舌先でつついた。
ソルは彼女のやわらかい唇に、何度も何度もくちづけた。甘噛みを繰り返し、やわらかさを楽しんでいる。
「ん・・っ…・」
苦しそうな吐息が漏れた。ソルがもたらす甘美な快感をそのまま受け入れる。
「ソル様・・」切ないような目で女が見上げる。キスだけでは物足りないとでもいうのだろうか。
ソルは、意地の悪い笑みを浮かべ、エールラの頭を抱え込むように腕を回し、耳を塞いだ。
今度は音を立てて唇を吸い始めた。
ちゅっ、ちゅぱ、じゅる…2人が絡めあう唾液の音だけが頭の中で響き渡る。
他は何も聞こえない。いやらしい水音と暖かい感触に、脳が痺れ恍惚としてくる。
「んっ、うぅ〜ん・・」鼻を鳴らす。
女は、だんだん体の力が抜け、支えきれなくなってくるのをこらえようと、ソルの首に腕を回した。
しなだれかかるその身体を満足そうに受け止めると、そのまま強引に舌先を口腔内に割り込ませた。
侵入者は遠慮がない。
唇の両端を舌先でつつく。くすぐったいような、生暖かいぞくぞくする感触が背中を走る。
「ん・・あっ・・ふぅ…」止め処なく漏れる甘い吐息に比例するかのように、女の体からはどんどん力が抜けていく。
唇を離すと、潤んだ目で見つめてきた。体中から放つ女の匂いがますます強くなる。
「やらしい顔だな」細い顎をつまみ、自分のほうに向け満足そうに言った。
口元をてらてらと濡らしながら、とろけたような目で自分を見上げる女に対し、欲情はもう止まらない。
女の腰紐を解くと、肌蹴た着物を押しのける。下から張りのある乳房を揉み上げた。
「ん・・いやっ・・あんっ」
柔らかな快感は、ほっとするような手の暖かさに後押しされ、いっそう大きくなる。
乳房の頂周辺を指でゆっくりとなぞられ、指の腹で弄ばれる。
先端からの感覚だけだというのに、まるで身体中に触れられているかのような錯覚に陥る。
「あぁん…ふぅっ…」
背中のくぼみを、すっと下へなでる。思わずのけぞる女の乳房を咥える。
「あっ…あん。あぁぁん…・」
舌先で転がすように頂を嘗め回すと、口の中で大きくなり、存在感をあらわにする。
背を滑らせた指を臀部へ進める。そのまま太ももを撫で、そっと秘裂に触れると、そこはしっとりと濡れていた。
痺れた脳の感覚を振り払うように、女が口を開いた。
「ソルさま。今度は私が・・」
夜着の帯に手をかけ解き、生まれたままの姿にする。
初めて見たわけでもないというのに、鍛え上げた体に思わず見とれる。
どれほど自分に厳しい環境を作っているのだろう・・。そう思うと胸が痛くなった。
男の中央には、大きな自身が屹立していた。
女はソファから降りてソルの脚の間に跪き、高ぶりを左手で支え、そっと舌を這わせた。
先走りの汁が口の中に広がる。海の味に似ている…などと思いながら舐め取った。
ちゅぱ・・ちゅぱ。。ぴちゃ・・。
全体を満遍なく舐めまわすと、根元をこすりながら先端に口で刺激を加える。
暖かさが快感をもたらす。
ゆっくり、ゆっくりと筋に合わせて舌を這わせる。時には引っ掛かる場所を執拗に攻め立てる。
無理にがつがつしても、気持ちがよいとは限らない。緩急があるからこそのもの。
目を閉じ、されるがままになっていると、今度は高ぶりを奥までくわえ込むようにゆっくりと上下運動を繰り返す。
「うっ・・」
女は、上目遣いでちらと男を見る。ぐっとこらえている様を見ると、さらに舌をくねらす。
音を立てて吸い上げる。舌を男根の外周にそってぐるぐると這わせながら、奥から根元へと舐め上げる。
「エールラ…」
たまりかねて女の名を呼んだ。
唇と指先でしごいていたが、一度顔を上げ微かに笑うと、裏側の筋に、ゆっくりと唇を這わせた。
触れるか触れないかの舌先の感触がたまらず、きつく目を閉じる。
「あぁ・・…」
女の攻め立てはますます激しさを増してくる。
先だけをついばんでいたと思うと、くっと喉の奥まで男根を飲み込む。
突き当たりを先端に感じると、そのままゆっくりと舌を絡めながら引き抜いた。
その恐ろしく強烈な感覚に、気が遠くなりそうになる。
ソルは思わず息を呑み、歯を食いしばりながら押し寄せる快感に耐えた。
「くっ・・待…てっ…!」
女は上目遣いにソルを見上げ、上気した顔で舌を這わせ続ける。
そしてまた飲み込み、ゆっくりと引き抜いた。
熱い息が絡みつくその度に、気を抜いたらそのまま果ててしまいそうな快感が幾度となく襲ってくる。
まるで拷問のようなこの状態を、女は楽しんでいるかのようだった。
「…もう・・いい…」
あまりの刺激に耐え切れなくなりそうになり、男は女の頭を自分からそっと離した。
「あら。もういいのですか」
女はくすりと笑い、男の沽券にかかわるような言葉を吐く。
「かわいくないやつだ」
軽く睨みながら、女の腰の帯を解きながらソファへ押し倒した。
「あ・・」ひんやりした空気に急に触れた胸元を覆い隠そうとする。
その腕を軽くねじ上げ、大きくはだけた首筋から空いた脇へ舌を這わせた。
「やっ。くすぐったい…」
そのまま胸元に顔を埋めた。女の色香を胸いっぱいに吸い込む。
乳房のまるみに沿って舌を滑らせる。頂へと進み、立ち上がった乳首を口に含む。
そのまま舌先で転がし、音を立てて吸い上げ、蹂躙を繰り返す。
白い肌のあちこちに赤い跡が散っていた。この跡が増える度に理性が消えていく。
「あ・・ぁん・・」
ねじりあげていた腕を放し、空いた手を太ももの内側へと滑らせる。
滑らかな絹のような肌触りが楽しい。
何度も何度も手を這わせ、ゆっくりと、でも確実に秘所へと近づいてきた。
そっと秘部に触れると、そこはしとどに濡れていた。
「また、随分と濡れてきたなぁ。そんなにいいのか?」
緩慢な口調でからかうように言う。
「あっ・・ソ・・ルさま・・はぁ」
女は白い喉元を見せつけながら、とろけるような目で男を見上げる。
たまらんな…そんな思いで女を見下ろした。
ソファに直接触れる背中からの感触はひんやりとしているのに、秘所は恐ろしく熱い。
蜜を吐き出す秘裂に男の指が触れた。直接的な、強烈な感触に目を閉じ、息を呑む。
必死にこらえていると、男の指が敏感な所を上下に移動する。
「あっ…・やん・・。」
無骨な指は、しびれるような深い快感をもたらす。
化学反応を起こしたかのように秘裂じゃどんどん熱を帯びていく。
そして、垂れんばかりに蜜をあふれさせる。まるで男を誘い込むように。
本当に吸い寄せられたのか、男は足首をつかみ、ぐっと肩に担ぎ上げ、腰を高く上げさせた。
もう片方の足を軽く押さえ、秘部へ今度は舌を這わせ始めた。
ぴちゃぴちゃと遠慮なく、舌が敏感な芽を嘗め回す。
時にずるずると音を立てて吸い上げる。その振動に耐え切れず、思わず嬌声をあげた
「きゃ・・あっ・・いやあぁぁぁぁ…あん・・あぁぁん。」涙目で悶える。
暖かい下の感触と、唇から伝わる激しい振動は、どうしようもないほどの快感を女にもたらした。
我を忘れたように喘ぐ女の乳房に両手を伸ばす。そのまま激しく揉みしだき、揺らす。
もっと・・といわんばかりに女は男の手を上から押さえ込む。
秘裂と乳房と、両方からの刺激に、女の理性は完全に吹っ飛んだ。
舐めても舐めてもとろとろと蜜を吐き出し、女は男を誘い続ける。
男の頭を両手で抱え込み、秘裂へあてがう。男が激しく吸い上げ、たまに息を吹きかける。
「あん・・いいっ・・きゃっ…・・あぁぁ…たまら…ない…」
快感を素直にあらわすその姿は、雄の本能に完全に火をつけた。
頭を抱える腕を解かせ、にっと笑うと男は秘裂に指を差し入れた。
まずは浅く入れ、ゆっくりと引き抜く。少しづつ奥へと進入させ、また抜く動作を何度も何度も丁寧に繰り返す。
「あぁん・・あん…・いいっ…」
ぐりっと指先が中をかき回し、女の感じやすい場所を探り当てる。
上壁に軽く指を這わせると、ざらつく突起の感触がある。
そこをやさしく撫で回す。
「いや…・・そこはっ…あぁん…・ダメっっ…いいっ」涙を流しながら、かろうじて言葉を吐きだす。
「どっちなんだ?」おかしそうに男が聞く。
「そこ…あん。。あんまり・・いじらないで……・」
男はそのままどんどん責め続ける。最初はゆっくりだったが、段々と激しくなる。
「ああっ…あぁぁぁぁっっっ!!!ダメぇぇっっ!!!」
激しさが頂点に近づいたあたりで男が指を引き抜くと、女は一気に噴き出した。
「今日は、一段とすごいな・・」
呆けたような顔で男を見上げたが、目が合うと困ったように少し逸らした。
月のものが来る直前、女の体はどうしようもなく火照ることがある。
そういえば、今がそうかもしれない。ソルが欲しくてたまらない。そう体が訴えている。
「ねぇ。ソル様」
「ん?」
女が照れながら口を開いた。
「わがまま言ってもいい?」
いつの間にか、幼馴染だった頃の口調に戻っていた。
「何だ?」
「・・わたしは、こっちのほうが欲しいの・・」
そういうと、ソルのいきり立つ雄を両手でそっと覆った。
「ああ。お前が望むようにしてやろう」
女の耳元に唇を近づけ、艶めいた低い声でささやくように言う。
そしてそのまま耳たぶを軽く咥える。
女は目を閉じ、肩をすくめて突然の感触に耐える。
そんなことに気をとられているうちに、ふっと抱き上げられてベッドへと連れて行かれた。
鍛え上げた逞しい腕を肌に感じ、先ほど散々火をつけあられもない姿を晒したというのに、女の雌の部分をさらに刺激された。
改めて組み敷かれる。ソルの身体がエールラに大きな影を落とした。とてつもなく大きい。
戦場で最前線をずっと張っていた、そして今度は海王に上り詰めたという事実がそれをいっそう増している。
女は、その男の色気にくらくらし、ほとんど無意識に口走った。
「…来て……」
吐息混じりの声に、男はニィと満足そうな笑みを浮かべ、女の右足を抱えた。
そのままぐっと開かせる。しとどに濡れた秘所が淫らに男を誘う。
「行くぞ」
秘所に男根をあてがう、そのまま力をこめると、さほど抵抗もなく簡単に女の中に収まって行った。
「久しぶりな割には簡単に収まるもんだな」
おかしそうに男が言うと、女はむっとしたように顔を背けた。
「怒るなよ。満足させるから」
くっと腰に力をこめ、脚を抱えてゆっくりと挿し、引き抜く。それを何度も何度も繰り返す。
「あっ…あぁん…くっ…・あふっ・・ぃぃ…」
いきり立った雄は、女の膣内を大きくこすりあげる。
同時に、花芯にも摩擦を加える。痺れるような感覚が全身に広がっていく。
もう片方の脚もソルに抱えあげられた。両足を取られ、秘部を思い切り晒す。
そこにはソル自身が深々と突き刺さっているが、蜜と熱で感覚が分からなくなってきている。
困ったように男を見上げたが、そんな視線は意に介すことなくくびれた腰を抱え込み、激しく腰を打ち付ける。
「いやぁぁっ…・あん…あぁぁぁぁっ…気持ち…いい…・」」
打ち付けられる振動と一緒に、張りのある乳房も上下に揺れる。
たまらずに女が首を左右に振るその様は、男の目を十分に楽しませていた。
不意に、乳房に手が伸びてきた。
そのまま大きな動きで揉みしだく。秘所からの快感と乳房からの刺激に
女の性がどんどん暴走を始める。
「あぁぁぁぁん。熱い…気持ち…いいっっ…」
今度は女の身体を抱え上げベッドに座り込み、自分の上に女を座らせた。
男根がいっそう深々と突き刺さる。軽く突かれただけなのに耐えきれなくなりそうになり、
女は男の首にすがりついた。
急に目の前に迫ってきた乳房に指と舌先を伸ばす。
こりこりしている先端を何度も指先で転がし、舌先で嬲る。
「いやっ、あぁん…すご…」
喘ぎながら快感の言葉を口にし、自ら腰をくねらす。
女の締め付けに男はひくひくと反応している。その微かな動きが女にいっそうの快感をもたらす。
「いや・・動かないで…」
思わず腰を浮かしかけたが、男ががっしりと抱え込む。
「好きに動いて見せてくれ」
そういって男は横たわった。下から見上げる女の姿はなんとも楽しい。
これからどこまでも乱れて、そして果てるのだろうと思うとぞくぞくした。
女は男にまたがったまま、腰をゆっくりと動かし始めた。
前へ・・・後ろへ・・・ゆっくりと、感じる場所を探している。
「くっ…ふぅん…・あぁ…・」
目を細めて、微かに喘ぐ。白い肌が艶かしい。
男の胸に手をつき、快楽が襲ってくるのをぐっとこらえているが、
そうすると変に力が入り、却ってどうにかなってしまいそうになる。
急に女の締め付けがきつくなる。いったいどこまで感度を上げるのか。
男は女の腰を押さえ、決して抜けないようにしながらゆっくり突き上げた。
「ふぅ・・んっ・・」
「なぁ。エールラ」
「は…んっ・・はい…ぁっ」
「お前は、きれいだな」
「何をおっしゃって…ああっ…い・・・る…あんっ…ですか」
照れくささについそっけない口ぶりになるが、男が下から突き上げてくるため、最後まで言うことができない。
「いや、見たままを言っただけだ。きれいだ」
実際、差し込む月明かりがしなやかな身体に影を深く刻んでいる。塑像のように美しい。
その上、自分にまたがり快楽に身を震わせている。なんと美しく、愛おしいことであろう。
「ソルさま…」
優しい目を向けられ、エールラは微笑みながらソルの頬に手を伸ばす。
「ソル様も…すてきです」
ソルの長い前髪をもてあそびながら近づき、頬にそっと口付ける。
そこに感じるやさしく暖かい感触に、愛おしさがどんどんこみ上げる。
そっと抱きしめられた。と同時に下から緩やかに突き上げられる。
「あぁ・・」
緩やかな快感に耐えきれず、男の耳元で吐息を漏らした。
穏やかな空気に包まれ、うっとり目を閉じていると
かくっと力を加えられ、突然転地が逆転した。再度男に組み敷かれる。
逞しい腕にしっかりと抱きしめられ、その力強さに身を任せた。
「エールラ…」
名を呼び、そっと口付けながら腰を動かす。
「うっ・・くふっ…んんっ…・」
花芯と膣内と両方に刺激を受け、快感がどんどん押し迫る。
「そ・・ソルさまぁ…。」
「ん?」
男の動きはどんどん加速し、突き上げられるその力も更に強くなってくる。
「ああぁぁ・・・・すてき・・ぃぃ…」
気を失いそうなくらい激しかった動きが、急に緩やかになる。
「え…あん・・」
「どうした?」
「…・もっと…突いて」
とんでもないことを言っているのは分かっているのだが、止められなかった。
男を受け入れてからここまで来て、じらされるのでは堪らない。
「いやらしいことを言うんだな。」
誰のせいで、こんなになっちゃっているのよ・・と思う。
「でも、きれいだ」
何度も言われたその言葉にまたとろけそうになる。
「じゃぁ、望みどおり・・な・・・」
腰を抱きかかえ浮かせると、嵐の如に叩きつけ始めた。
あまりの快感に、頭は真っ白になり嬌声は一層甲高くなる。
「・・ああぁぁっ・・・んっ・・やっっ!…・・」
敏感な場所だけを激しく突き上げる。その波は体の隅々まで伝播し全身を震わせた。
「きゃぁっ・・いやぁぁぁぁん。あぁぁぁぁっっっ…っ・・すご…・っ…そこっ…」」
こうなると、どんな刺激も快感にしかならない。
衣擦れも、自分を抱える男の手のぬくもりも、全てを飲み込んでしまっている。
「あぁぁぁっっっ…っ・・ダメっ・・もうダメっっ・・!」
全身から汗が噴き出す。もうどちらの汗だか分からない。
「ソルさま・・いっ・・あんっ…イかせて…」
男はニィッと笑うと、女の腕を取り、これで最後といわんばかりに打ちつけた。
膣内をかき回され、こすりあげられ熱いのか痛いのかもう分からない。
「いくぞっ」
「あぁぁぁぁぁぁぁっぁーーーーー!!!」
「くっ・・あああっ」
ぱんぱんと打ち付けられる音を遠くに聞きながら、女は果てた。
男も、自らの精をその中に放ち、果てた。
どれほど時が過ぎたのか。ややもすると暁光が差し込みそうな時間になる。
「ソル様。もう、戻りますね」
服を着、何事もなかったかのようにエールラは言った。
「もう、行くのか?」
長い前髪が影を作り、表情が良く見えない。
「どうか、なさいました?」
「いや・・」
長いことエールラを見つめ、そして何かを振り切ったように口を開く。
「海王の妻、になるつもりはないか?」
「え…・」
「お前には、傍にいて欲しいんだ」
「ソル様・・。ご冗談を」
本当はものすごくうれしいのだが、あしらうような口ぶりになる。
「ありがとうございます。でも、今日のソル様はいつものソル様ではありません。」
「…」
「ですから今日はその気持ちだけ受け取っておきます。
もし・・1ヶ月たって、まだ同じように思ってくださっていたら、そのときにはお受けいたします」
そういうと、飛び切りの笑顔を浮かべながら部屋を後にした。
ソルは思わず苦笑した。
確かに今日の自分はいつもと違う。さりげなく牽制し、でも隙間を残して行ってくれた。
こんな場でも冷静でいられるとは、さすがあいつの妹だ。
もって来てくれた葡萄酒の残りを飲みながら、やはり傍に置いておきたいものだと思っていた。
一方エールラは、泣きながら廊下を歩いていた。しかし、暖かな涙だった。
日陰でしか存在できないような関係かと思っていたのに、
ソルからあのような言葉を聞くとは夢にも思わなかった。
たとえ、一時の気の迷いだとしてもうれしい。
「帰るの・・やめようかな」
涙を拭いて振り返り、誰もいない廊下に向かって微笑んだ。