四日間の予定であった。  
万全へ向けての積み荷を満載するには、充分過ぎる時を必要とした。  
ある者は港で自由にくつろぎ、仕事のない者は近くにあるらしい湯治場へ出掛けて行った。  
みな英気を養うかのごとく、それはいつもの上陸と少し違っていた。  
一日目の夜。  
マイアは特に落ち着きがなかった。  
補給先の港で、初めて一人で夜を過ごすのは初めてであった。  
トゥバンやメルダ−ザと一緒に居る事に、慣れ過ぎてしまっていた事もあったが  
これからの事を考えると、マイアの胸は今にも押し潰されそうになっていた。  
静まり返った宿屋の一室で、一人で居る事にいたたまれず、とりあえず部屋を出た。  
 
自室のある廊下から階段を降りた踊り場には窓があり、そこから月が見えた。  
 
(父様、母様‥もうすぐです‥‥とうとうここまで来る事が出来ました‥‥‥  
 でも私は‥‥‥みんなに助けられてばかり‥‥‥‥そしてあの人にも‥‥‥  
 ‥‥‥‥この戦いを、一番望んでいたのは私‥‥‥‥‥‥  
 だけどこのまま‥‥‥‥‥‥総てが終わってしまったら‥)  
 
「こんな夜更けに、男でも買いにいくのか?」ザ  
 
「‥‥‥ファン!?」  
 
聞き慣れた声の方を向くと、そこには海の一族で大海帥の官名を持つ、影船八(零)番艦艦長  
ファン・ガンマ・ビゼンが立っていた。  
 
「いい匂いだ・・風呂上がりか?」  
「そ、そうよ‥‥」  
 
「ここは港町だ・・いくら屋内でも、女が一人でうろつくには物騒だぜ」ニイ  
「‥‥‥‥‥‥」  
「トゥバン達と一緒じゃなかったのか?  
 ・・オレも仕事がなければ、今頃いい湯に浸かって、じっくり命の洗濯でもしてたんだがな」  
「わ、私は‥‥今はそんな気にはなれない‥‥‥!」  
 
「まぁいいさ・・・悪いことは言わないから、早く部屋に戻れよ」  
 
「‥‥‥‥‥‥そう言うファンは‥?」  
「そう言うオレは、女でも買いに行くところだ」ニイ  
 
「‥‥‥‥!!!」  
「そう恐い顔すんな、オレとしたことが、冗談が通じない相手にしちまったな‥  
 ま、長い航海で疲れてんだ・・今夜はおとなしく寝るさ」ポン  
 
「‥‥‥‥‥ファ‥‥ファン‥」  
「ん?」  
 
「ファンは‥‥‥‥ファンは、私を‥‥買ったのよ‥ね‥‥‥」  
 
「正確には違う・・が‥、まぁ、そんなこともあったな‥今思い出した・・  
 おまえはオレの成功報酬だった・・な」  
 
「じゃあ‥、な、何故それを‥‥‥一向に受け取っては呉れないの?!」  
 
「・・・なんだ、やけに薮から棒な言い方だな‥」  
 
「ファン! これで本当にロナルディアと戦えるのよね‥‥‥!  
 だ‥だから、私は‥‥今直ぐにでも、払いたいの‥!」  
「‥で、先払いか・・・?? まったく、薮から棒だ・・」  
 
「先払いじゃないわ! あなたと取り引きしたのはグリハラの前よ!  
 なのに・・・なのに、ここまで来て‥‥  
 あなたはもう、充分条件以上のことをしてくれたわ!!  
 それにトゥバンにも言ってたじゃない、今までにないきつい戦いになるって‥‥  
 あ‥あなたに‥‥‥‥あなたに、貸しがあるままじゃ‥‥‥‥‥私‥」  
 
「まるで、死んじまうみたいなこと言うなぁ・・・・  
 ま、誰も死なせねぇよ‥」ポン  
「‥‥‥‥‥」  
 
「じゃあな‥その話は、戦の後でも遅くはないさ・・今夜はもう寝ろ」ザ  
 
「あっ、待ってファン!!」  
「あん?」  
 
「わ、私もタダでものを貰いっぱなしは、もう嫌だって言っているのよ!」  
 
「そんなに貸しをつくっておくのが嫌なのか?  
 それともまだ・・・ものの価値をわかってない‥とかか?」  
「そ‥そうね‥‥‥、へ‥‥減るもんじゃないし‥‥‥‥」  
 
「そう言うおまえさんは、減るとか減らないとかどうしてわかるんだよ?」  
「わ‥、わかるもなにも‥」  
 
「男を知っているのかよ・・って、ことさ」  
 
「!!!‥‥‥‥‥べ、べ‥べ‥、べつに!!!  
 で、でも‥、ソレのどこがいけないの?! 何か問題あるの‥‥‥‥?!!!」  
 
「で・・・ソレかよ‥」ニイ  
   
「な、なによ‥‥‥!」  
「べつに・・・・それともオレに本気で惚れたとか・・か?」  
「ちっ、ち‥ちち‥‥っ、違う!!!」  
 
「知ってると・・思うが、マイア・・・・・  
 オレがいくら心やさしい男前で、腕が立つ天才だとしても‥  
 一国のお姫さんが、一介の一流の船乗りに・・惚れちゃダメだぜ」  
「だから、違っ!!!」  
 
「なぁマイア・・おまえの言いたいことは、なんとなくわかった・・・が、  
 そういうことは、本気で人に惚れた事のある  
 大人の女になってからでも遅くはないんだぜ」  
「‥‥で‥、でも‥‥‥!」  
 
「まぁ、そう何でも焦りなさんな‥って、ことだ・・・  
 オレの怠け癖が、少しはおまえさんにも移ると良かったんだが・・な」  
「‥‥‥‥‥‥‥」  
「そう言うことだ・・・いい女になるのを楽しみに待ってるぜ、じゃあな‥」ザ  
 
「待って‥‥‥!!  
 じゃあ、私が‥あなたに‥‥‥‥‥‥本気で惚れていればいいんでしょ‥‥?  
 そうよ‥そうすれば‥‥‥‥‥‥  
 いくら貸しを作るのが好きなあなたでも、私を抱いてくれるんでしょ?!!!」  
 
「堅いな、おまえさんも‥」  
「バカにしないで! 真面目に答えて!!!」  
 
「わかった、わかった‥‥、ではな・・・・  
 オレはこれから安宿の湯につかって、命の選択でもしてくる・・  
 そのあいだおまえは、自分の部屋に戻っていろよ‥」  
 
「ま‥、待ってればいいの?」  
「たぶん・・・・な」ニイ  
「‥‥‥!」ザ  
「あ・・マイア・・・・今の話はないしょだぜ」  
「‥‥‥誰にも言わない」ザ  
 
ファンは自室に駆け戻るマイアの後ろ姿を見送った。  
程なくして、部屋の扉が閉まる音を確かめると風呂へ向かおうとした。その時。  
 
「私は聞きましたけどね‥」  
 
そこには、アイスダガ‥基っ! 海都の近衛兵長に比肩される男  
ニッカ・タンブラが立っていた。  
 
「なんだニッカ・・こんな時間にめずらしいな・・・  
 いつもは、港の娘や人妻と、商談がてらにしっぽりしてるん頃なんじゃないのか?」  
「残念ながら‥ここの口入れ屋は男所帯・・でした」  
「それともオレの命の選択に付き合ってくれんのか?」  
「私はもう済みました・・・通り道に居るもんだから、困っていたところです‥  
 湯冷めをして風邪でも引いたら、あなた達のせいにしますよ」  
 
「・・・で、どこらへんから居た?」  
 
「心やさしい男前とか、天才とか  
 自分で自分の事を賞賛するセリフを吐いてたところですかね‥」  
 
「けっこう聞いてたのな」ニイ  
「・・・・・・」  
 
「ふぁ〜ぁ、今日も働きすぎた・・・  
 戦の前の船長は、なにかとやることあるんでな・・・  
 だからしばらく、休ませておけ」ザ  
 
「嘘突き‥」  
 
「おいおい、オレは、夜の女の一人歩きは良くないってことをだ‥」  
「それが嘘だって言ってるんです・・・あれじゃあ、マイアさん  
 一晩中眠らずに、あなたの事を待ちますよ・・」  
 
「怒るな‥?」  
「ですよ」  
「でもあいつはまだ蒼いくせに、おまけに跳ねっ返りときてる‥」  
「ですね」  
「ま、そこが・・あいつのイイとこでもあるんだ・・・が・・・・まいったな‥」  
「でしょうね」  
「さて‥どうするかな・・・・オレの怠け癖は天性なんだよ・・な」  
 
「処女なんて付加価値以外のなにものでもありませんからね  
 得てして痛がりますし、やりにくったらない代物ですよ‥  
 始めからわかってて、怠け者のくせに契約交わす方が悪いんですよ」   
「いや、オレはわからなかったぞ」  
 
「何とでも言ってて下さい・・だからあなたは嘘つきで非道で酔狂だって言うんです  
 まぁ‥腕の立つ一流の船乗りってところだけは認めますけどね・・・」  
 
「それさ‥!」ニイ  
「・・・・な‥なんですか?」  
「責任は‥とる!」  
「・・・・・・」  
 
「‥で、その尊敬に値する一流の船乗りから、腕の立つ一流のクルーに  
 たのみたいことがあるんだがな」  
 
「なんとなくわかってきましたが・・・」  
 
 
同じ頃、マイアは一人部屋に居た。  
今この港は、これから戦う相手には知られて居ない、もしかしたら最後になるかも知れない一時の休息。  
オンタナが落ちた日から復讐を誓い、トゥバンに支えられ、そして八番艦に出会った。  
今日まで来れたのも、そのクルーに、そして何よりあの艦に、あの男がいたからだ。  
 
(今しかない‥今しかないのよ‥‥‥‥)  
 
来るかも知れない、来ないかも知れないその男を待っていた。  
 
その時扉を外から叩く音が聞こえた。  
 
「あっ‥‥!」  
 
外の誰かを確かめようともせず、マイアは慌てて内鍵をはずし  
そしてゆっくりドアをあけた。  
 
「ども‥今晩は」  
「ニ、ニッカさん‥‥?!!」  
 
「私は女の人の部屋に訪れたつもりなんですが、少し不用心すぎやしませんか?  
 ・・それとも・・・誰かが来るのを待っていたとか‥」  
 
「!!!」  
 
意地悪そうにそう言うと、マイアの頭越しにざっと部屋の中を見渡した。  
目の前に小窓が見え、その壁にぴったりと平行にベッドがひとつと  
申し訳程度に置かれた小棚があるだけの部屋だった。  
 
「まぁ、いいです・・・ちょっと中に入らせてもらいますよ」ザ  
「え?あ?‥‥ど‥どぅ‥」  
 
と、マイアの答え終わるよりも先に  
少し強引に部屋に入って来たニッカは、そのまま後ろ手で内鍵を掛けた。  
 
「今更ながらですが、やはりその様子じゃ  
 ファンから何も聞いていないのは、本当なんですよね・・・」フゥ  
 
「ファン‥‥!?」  
 
ニッカは少しあきれたような顔でため息をついた。  
扉からベッドまでは2メードもない距離で、他に椅子のようなものもなかった。  
ニッカはベッドに目を落す。  
 
「そこに座ってもいいですか?」  
「えっ、ええ‥、 いいわ‥‥どうぞ‥」  
 
マイアも始めは戸惑いもあったが、ニッカの口からファンと言う言葉を聞いた事もあり  
もはや淡々としたニッカのペースに、ゆっくりと呑まれていった。  
 
ニッカはベッドの端に腰を降ろし、ふと前を見ると扉の横の姿見が目に入った。  
(へぇ‥こんな安宿に似つかわしくない調度品だ・・・  
 高価そうだな‥あんなに大きな一枚鏡なんて珍しい・・・この辺りの特産品か?  
 早速仕入れリストに‥って、商売の事を考えるのは明日にしよう‥)  
と、擡げた商魂を拭い去り、扉の前で只立ちすくむしかないマイアを見上げ話を続けた。  
 
「・・・今から簡単に説明します。そのまま聞いて下さい。」  
「・・・・・・」  
 
 
ニッカはその時、あの後交わしたファンとの会話を思い出していた。  
 
 『あいつが今直ぐ払いたいって言うのなら、それでもいい・・・が、  
  その前に、ニッカ・・おまえが、マイアにとっかかりを教えてやってくれ』  
 『は?』  
 
 『だからその時、オレが切り上がりやすいように・・・だ  
  ・・・痛々しいのはどうも好かん』  
 
 『やっかいな事ばかり、私に任せるんだから・・・  
  で、面倒臭くない体にしてから、結局自分も犯るんですね‥』  
 
 『なんだぁ、まるでオレが悪人みたいな言いかただな』  
 『悪人でしょ‥』  
 
 『出来ない事は、任せねぇよ・・』  
 『買いかぶりです』  
 『なんせニッカは、オレの次だからな‥』  
 『何がですか?』  
 『テクに決まってるぜ‥いや、それともデカさか?』ニイ  
 『・・・・・・・・・・』  
 
 『ま、ニッカが、オレがし易い様に、道を作ってくれたら・・助かる』  
 
 『・・・・マイアさんが、私から離れられなくなっても知りませんよ‥』  
 
 『そいつは、少し困るな‥  
  その時は、オレが船首で、おまえは船尾担当だ』  
 『また訳わかんない事、言って・・・しかもなんで私が船尾なんですか』ムッ  
 
 『で・・・まず、オレの懐刀を差し向ける・・・・氷りの・・な  
  オレはニッカを、信頼してるからな・・・いい言葉だろ?』  
 『つごうのいい、言葉ですよ・・・ね』  
 
 『じゃあ、頼んだぜ』ザ  
 
思い出した後、内容をそのまま伝えないよう考慮しながら  
ニッカは説明を続けた。  
 
「えーゴホン、マイアさん‥  
 以前あなたは、うちの船長と取引きしたそうです・・ね」  
 
「え、ええ‥‥、初めてカロの港に行った時よ、忘れる筈が無いわ‥  
 だって私の方からもちかけたのよ‥‥‥  
 それに私だって、人からタダでものを貰う気はないわ‥」  
「ですよね・・・しかし、グリハラでは、あのような結果に終わり  
 現在ロナルディアは、もはやマイアさんだけの敵ではなくなっています‥」  
「‥‥‥‥で、それが何?」  
「しかも、私も側にいなかったし、借用書などは存在していません‥  
 則ち、あの取引きは、あってないようなものなんです・・・  
 それでもあなたはファンに、今すぐにでも払いたい‥と・・・・その‥体で」  
 
「な‥、何故‥‥!? 何故、ニッカさんが知っているの‥‥‥!?」  
 
「副官として知っているのは当然の事・・・  
 ま、冗談はさて置き‥、船長命令で私はここへ来たんです」  
「命令って!? ‥‥‥ファンがそう言ったの!? 何故? どう言うこと!?」  
 
「口約束にすぎなかったって事ですよ・・それを承知で、あなたは払いたいと言うのなら  
 ファンは報酬の内容を変えたら受け取る・・と言ってましたので」  
「わかった‥‥‥それで、何て言って来てるの?」  
 
「今のままのマイアさんじゃ犯れ‥、えっと‥ぁあ‥報酬に値しないと‥」  
「!!!‥‥‥‥そぅ‥‥‥やっぱり、私じゃ‥」  
「いえいえ、そういう訳ではなく  
 あの人の希望にあったマイアさんに、なればいいんです‥よ」  
 
「なに‥? どういう事・・・?」  
 
更に話を続ける、解説説明担当のニッカであった。  
 
「それで助力を乞いに‥いや、手伝いを‥(あー、面倒臭いな!)  
 ですから、もっとわかり易く言うと‥  
 マイアさんの始めての相手に、私がなれとの船長命令・・です」フゥ  
 
「?!!!!!‥‥‥‥な、何!? そんな命令、全然わかんない!?」  
 
「でしょうね・・・でもマイアさんだって、ここまで来たら  
 報酬を完璧な形で払いたくはないですか?  
 遠慮はしなくていいですよ・・・  
 私なんか、込みの値という事で‥いや、この場合利子か‥」  
 
ファンの口車にまんまと乗せられた為、ニッカは説明しながらも  
自分の言葉に説得力が無い事に気付いていた。が・・・。  
 
「ま、無理強いはしません、有って無いような口約束なんですから‥  
 何にしてもファンの望むような形に・・・ですね」  
「ファンの望むように・・・・!?」  
 
「(喰いついた・・・)まぁ、なんでもいいです‥  
 私は上陸中は一番忙しい身なので、さっさと済ませちゃいましょう‥  
 さ、服を脱いで下さい(おいおい)」  
 
「‥‥‥そんな‥‥‥そ‥そんな事、急に言われても‥‥‥‥?!!!」  
 
「ですよね・・・でも、減るもんじゃない・・でしたよね‥  
 ヴェダイが言い廻って有名ですよそのセリフ・・・それともやはり強がりでしたか?」  
「強がってなんか‥‥!!」  
「私はファンと違って怠け者じゃないので・・・  
 なんなら手伝いましょうか?(あつかましい‥とは、この事ですね・・)」  
 
「!!!‥‥‥‥‥‥わっ、わかったわ‥‥‥‥減るもんじゃないし‥‥‥!」  
 
(でも、受けてしまうわけだ・・・とうとう私も悪人だな・・・)  
少し自己嫌悪だが全く表情を変えないニッカの目前で、マイアはゆっくり脱ぎはじめた。  
統べて脱ぎ終えたマイアは、一糸纏わぬ姿でニッカの前に立ち直した。  
 
「‥‥‥‥で‥、どうすればいいの?」  
 
強気なセリフであったが、少しうつむいたマイアの顔は  
今にも火を吹きそうなぐらい真っ赤であった。  
 
「へぇ‥、・・・・これはファンも喜びますね・・」  
「ファ‥ファンが‥‥?」  
 
「ファンだけじゃないですよ・・・  
 顔は別嬪だと認めていましたが・・そんな奇麗な体をしてたんですね・・・」  
「べ、べつに普通よ‥‥‥!」  
 
「顔が真っ赤ですよ」  
「‥‥‥‥!!!」  
 
マイアは溜まらず、両手で体を隠し少し後ずさった。  
しかしその細い両腕で、全裸の体を隠すにはたかが知れていた。  
 
「今更、遅いですよ・・・、やっぱり・・金髪だったんですね‥」  
 
マイアはますます真っ赤になり、ニッカはそれを見逃さなかった。  
 
「強がり言ってもダメですよ‥私もだいたいあなたの事は解っているつもりです・・  
 ベットに粋なり押し倒すより‥は・・・、まず・・・・・よっと!」  
 
そう言いながらベッドから少し体を浮かし、両腕を延ばしたニッカは  
マイアの細くしなやか腰を押さえ付け、後ろ向きに軽く反転させた。  
「あっ‥?!!!」  
 
指が触れた瞬間、マイアの腰が少しピクついたのをニッカは洩らさなかった。  
(感度も良さそうだ・・・)  
マイアの体は、反転しながらバランスを崩し、引き寄せられるまま  
座り直したニッカの膝の上に、お尻から座り込む形になってしまった。  
 
「この方がいいですよ・・・ね?」  
「えっ‥‥!!!?  
 嫌っ!! いきなり何よ!! は‥、放して!!‥‥‥‥‥は‥な‥‥せ‥!!」  
 
全裸のまま男の膝の上に座ってしまった事で、マイアはパニックになり  
慌てもがいたが、ガッチリとニッカの両腕に固定され、離れる事が出来なかった。  
ニッカは更にマイアの体を引き寄せ、耳もとで囁いた。  
 
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいですよ‥だからこうしたんです・・・  
 お互いの顔が、見えない方がいいですよね・・・・マイアさん?」  
 
マイアの動きが一瞬止まり、それを確認したニッカは  
耳の後ろから、白く滑らかな首筋に唇を這わせていった。  
 
「ぁっ‥!」  
 
そして舌も使いゆっくりと、首筋を何度か往復したあと  
今度は首の付け根から肩口に這わせていった。  
マイアは初めて受ける感覚に身じろぎも出来ず、ただ体を震わせていた。  
その様子を見計らったニッカは、今度は震える彼女の体をやさしく撫で始めた。  
 
「ぅ‥っ‥‥‥‥ふぅ‥‥っ‥‥‥‥くっ‥」  
 
撫でていた指先がマイアの胸の膨らみの端に触れた。  
「ぃ嫌っっ!!!」  
 
マイアは我に帰り再びもがきはじめたが、ニッカは両方の掌で今度は胸を覆った。  
もはやマイアは、その二の腕にしがみつくような形にしかならなかった。  
 
「嫌ぁ‥っ、放して‥‥‥!!!」  
 
「おとなしくしてた癖に・・・・」  
「ぃ‥嫌ぁっ‥‥‥!!」  
「手に余るとまではいきませんが・・張りがあって・・なかなか揉みごたえ・・ありますよ‥」  
「ぅ‥っ、うるさ‥‥ぃ‥放‥っ‥!!」  
 
「真っ白で、滑らかで・・・・特に奇麗な色ですね・・・ここ」  
 
そう言うと粋なり、未だ桃色の乳首を二つ同時に指で摘んだ。  
 
「はぁっ‥!!」  
マイア体がピクリと跳ね上がった。  
そのまま、捏ねくり、摘み、指の腹で一番先端を弾いた。  
「ぃやぁぁ‥っ‥‥‥く、ぅ…っ‥‥‥」  
 
再び掌に納めるとやさしく揉みしだき、たまに乳首をいいように弄んだ。  
マイアは、始めて味わうその感覚に必死に耐えていた。  
「く‥っ‥‥ぅっっ‥‥‥‥‥‥くぅ‥」  
 
「そんなに遠慮しなくてもいいのに・・・  
 声を出せば楽になりますよ‥」  
「ぃゃ、嫌ぁ‥‥っ」  
「・・・しょうがないですね・・・」  
そう言いながら、右手を下半身の方へ擦らしていった。  
 
「ダメっ、ダメぇ‥‥っ!!!」  
 
マイアは本能的に危険を感じたのか、その身を必死で前に倒し抵抗した。  
「そんな態度取ってると知りませんよ‥  
 あなたがこんなだから、ファンも困ってしまう訳だ・・・」  
 
「ファンが‥あっ?!!」  
 
マイアの体が一瞬柔らいだその隙に、金色の薄毛に守られた股間に指を差し入れひと摩りした。  
 
「ゃあぁっっ!!!」  
 
始めて男の指に触れられたその部分は、僅かにだが確かに湿り気を帯びていた。  
「なんだ・・・口ではそう言っても、カラダは違っているみたいです‥ね・・・・  
 じゃあ‥もっと・・、気持ちよくして上げます‥」  
 
そう言うと、マイアの堅く閉ざされた膝を両手で掴んで抉じ開けようとした。  
「嫌っ、ダメ!! 止めて!! ニッカさんお願い‥‥っ!!!」  
 
しかしその手はフェイクで、膝を更に堅く閉じた事でマイアの足首が開いた。  
そこへすかさずニッカは自分の足を絡め、両足の間に抉じ入れてたかと思うと  
ふわりと体を持ち上げ、マイアのつま先が床から離れた。  
「いやーーーっ?!!!」  
 
マイアは、ベッドの端に腰掛けたニッカの両大腿に、股がる形になってしまった。  
今まで堅く閉じられいた白い太腿が、左右に大きく開かれた。  
 
「いや!いや‥‥っ! 降ろして‥!!!」  
 
マイアは懇願したが床から足が離れている為、体をくねらすのがやっとであった。  
 
「そんなに動くと落ちちゃいますよ‥」  
 
うなじに唇を一つ落し、くねる肢体を軽く支えるようにして  
ニッカはマイアの上半身をゆっくり愛撫しはじめた。  
 
「ぃ嫌ぁ‥っ‥‥‥やっ‥‥ゃ‥‥」  
「どうです・・マイアさん・・・?」  
 
胸を愛撫していた右掌をそっとはずし、そのままゆっくと下半身へ進めた。  
ゆっくりいやらしく、ニッカの指は下腹部から腰の縁を通り太腿を撫でた。  
 
「だめ‥っ‥‥ゃ‥だ‥‥めっ‥‥」  
 
いつのまにか左手も胸からはずれ、今度は両手でじっくりと滑らかな内腿を撫でた。  
今まで堅く閉じていたそこも、今では大きく開かれ無防備になり  
その周辺に指を這わされただけで、マイアの体はフルフルと震えた。  
 
「ゃ‥‥ゃ‥‥‥もぅ‥やめ‥‥て‥‥!」  
 
恐怖で身を震わせながら、マイアは尚も必死でニッカの両腕を掴んだが  
そんなことはおかまいなしに、両指は少しずつ秘部に迫っていった。  
 
「いゃぁあっ!!!」  
 
大きく開かれた秘部に指が触れた瞬間、マイアの体が大きく跳ねた。  
 
「マイアさんも嘘突きですね・・・・結構‥濡れてきてますよ・・」  
 
ニッカは既にしっとりと濡れた割れ目に、指を何度も往復させた。  
 
「やめ‥っ‥く‥ぅ‥いゃ‥‥ぃゃ‥め‥‥っ‥!」  
「私が指を動かす度・・マイアさんのここが、潤って来るのがわかりますか‥?」  
 
マイアはニッカの腕にしがみ付き、前屈みで首を左右に降った。  
 
「そうですかぁ、それはおかしいですね・・・  
 どんどん指がスムーズに動かせるようになって来てるんですが・・・」  
「ぃや‥ぃや‥‥くふ‥っ‥ぃや‥っ‥‥くぅ‥っっ‥‥」  
 
「なかなか我慢強いですね・・・・」  
「ゃ‥やめて‥‥く‥ぅぅっ‥いゃ、ぉ‥ね‥‥がぃ‥ょ‥‥ぃや‥」  
 
「そんな態度取ってるとファンに嫌われますよ‥」  
 
「嫌われ‥‥っっ‥!」  
 
「なんせあの人は・・ベッドの上では鮪も真っ青の、怠け者なんですから・・」  
「ファ‥ファンが‥‥‥マグ‥ロ‥っ‥‥!??」  
 
「ですから・・もっと積極的になって貰わないと・・・  
 今のままですと、また申し出をはぐらかされてしまいますよ・・・  
 それとも・・・  
 未だマイアさんは未熟だったと報告して・・ファンには諦めてもらいましょうか‥」  
 
そう言うとニッカは指を止めた。  
「‥‥‥‥‥‥‥‥」  
「ですよね・・」  
「‥‥‥‥!!!!」  
 
ありったけ上半身を反転させ、真剣な眼差しでニッカを見上げた。  
 
「‥‥‥わっ、わかったわ! 私‥素直になる‥‥!  
 ‥‥‥だから‥‥‥‥‥‥‥だから‥‥‥やめない‥‥で‥っ!!」  
 
上気した頬で懇願するその顔は、まだ幼さを残しとても美しかった。  
 
「わ‥私を‥‥、一人前の女にして‥‥‥!」  
 
「・・・・・・・・・・・・・わかりました‥」  
 
ニッカは再び、上半身と下半身の指を動かし始めた。  
 
「はっ‥は‥っ‥‥く‥っ‥‥」  
「で・・・気持ちいいですか?」  
「ぁ‥っ‥んっ‥‥んっ‥‥ぁん‥‥くふぅ‥っ‥‥」  
「そうですか・・・やはりあの人には、諦めてもらいましょうか?」  
 
「ぇ‥‥ぃんっ‥い‥っ‥‥‥ぃぃ‥ん‥っ‥‥‥‥だから‥‥  
 だから‥‥‥ぁ‥あの人には‥‥んっ‥‥ファン‥っ‥には‥」  
 
その名前を会話に入れるとマイアの態度が変わる。  
その事はニッカは承知の上ではあったが・・・  
 
「ん‥んっ‥ぁんっ‥‥んんっ‥んっ‥んっ‥‥ぁん‥‥ぁぁ‥っ‥‥」  
 
マイアは胸と割れ目を同時に指で弄ばれる事に、少しづつだが快感に身を委ね始めた。  
身を震わせながら初々しい喘ぎ声を上げる彼女の姿は、正直可愛かった・・・。  
しかしその素直で可愛いいマイアの変化は、ファンに向けられたものだと思うと  
だんだん腹立たしくも思え、それがニッカの気持ちに火を付け  
彼をサディスティックな気持ちに駆り立てていった。  
そんなニッカの心の変化を他所に、マイアは尚も可愛い喘ぎ声を上げている。  
 
これから始まる羞恥に繋がるとも知らずに・・・。  
 
 

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