何が起こっているのか、マモルは一瞬、理解が追いつかなかった。
感じるのは唇の感触。
次いで身体全体にのしかかってくる少女の重み。
倒れ込んだときにギシリと音を立てたベッドは、毎夜毎晩使っている自分の部屋のもの。
至近にある彼女の顔の向こうに、見慣れた天井を確認することで、ようやく状況を把握した。
ここは自分の家の、自分の部屋で。
ベッドの上に倒れ込んだ自分の上に、彼女がのしかかっている。
それも、唇を合わせながら――
「――ぅ、っ」
「!!」
呻くような声と共に差し込まれてきた舌。
流し込まれた唾液を思わず嚥下したところで、マモルは我に返った。
「っだ、ダメだ!!」
「ぁ――」
肩を掴んで押し戻すと、切なげに眉を寄せた彼女の顔が全て視界に映りこむ。
可憐な美少女の口から、つ、と糸をひく粘性の橋が、どうしようもなく淫靡だった。
「マモルさん・・・・・・」
「・・・・・・ホタル――」
荒い息をつきながら、なんとか冷静になろうと努力する。
一度に浮かんでくる疑問が多すぎて、頭の中がこんがらがっている。
何故だとか、どうしてだとか、突然すぎるとか、そんな言葉が頭に浮かび、けれど口をついて出たのは、否定の言葉だった。
「ダメだ、ホタル・・・・・・こんなこと」
告げるマモルの声に、ホタルは悲しげに首を横に振った。
何故ですか、と、問いかけるように、すがるように、潤んだ瞳をマモルに向ける。
その瞳に、マモルは追い詰められるような感覚をおぼえた。
受け入れてしまえば、そうしてしまえば、楽になる。
そう思いながらも、そうしてはいけない、そんな思いがマモルの中にうずまく。
「いくら・・・・・・いくら僕を甲賀に引き込みたいからって、こんな――!」
「――っ!!」
マモルの言葉に、ホタルは一瞬大きく目を見開き、そして更に悲しげに表情を歪めた。
――なんてことだろう。
こと、ここにいたってなお、マモルはホタルの想いを、そんな風に捕らえていたのだ。
「――違いますっ・・・・・・ちが、うんです・・・・・・」
わずかに伏せた瞳から、ポタリ、ポタリ、と雫が落ちてきた。
自らの頬を伝う涙の感触に、マモルは驚き、目を見はる。
「里の事なんて、関係ありません・・・・・・関係、ないんです」
「ホタル・・・・・・」
「私がこうしているのは、私が、あなたを求めるのは、そんなことじゃ、ないんです」
ホタルが、マモルに身体を寄せる。
離れた距離をもう一度ゼロにして、マモルの身体を掻き抱く。
しがみつくように、すがりつくように。
「どうしてわかってくれないんですか、どうして――」
耳元で囁かれる恨み言に、マモルは完全に硬直していた。
自分の思い違いに、今更ながらに気がついたからだ。
ホタルの涙を前にして、ようやく。
純粋に好意を向けられているという現実が、徐々に、徐々に浸透してくる。
認識するとそれは気恥ずかしさと共に、止めどない熱を体中に呼び起こした。
「あ・・・・・・う・・・・・・」
何も言えない、言葉が出てこない。
耳はホタルの吐息をとらえ、同時にその熱を感じた。
押しつけられる柔らかな感触。
熱い、熱い、ホタルの肢体。
絡められた足が、首に回された腕が、寄せられた頬が、彼女の全てが自分の中に入り込んでくるような錯覚。
忍びとしての冷静な部分を呼び起こすことさえ、今のマモルにはできなかった。
「マモル、さん・・・・・・」
「っ!」
ちゅ、と耳たぶに感触。
それは這うように首筋を伝い、胸元へ。
「――は、うぁ、ぁ――」
甘いついばみが繰り返され、ホタルの手が、マモルの身体をまさぐる。
今度は、抵抗できない。
熱くなった肌を、唇が、指先が、なぞっていく。
「ふ、む、ん――」
「ムグ――ン、ンンっ」
顎先を上ってきた唇は、そのままマモルの唇に重ねられた。
ただ重ねただけではない。
まるでそこが目的の場所だと言わんばかりに激しく吸い付き、溜まった唾液が音を立てる。
「ちゅ――ぢゅ、ぢゅ・・・・・・んん、んふ、ん・・・・・・」
「ん――ん、はっ、はぁ、はぁ・・・・・・」
深い、深い口づけが終われば、すぐそこにホタルの瞳。
一時、ホタルはマモルと見つめ合うと、目を細めて視線を外し、マモルの口元を舐め始めた。
唇を舌でなぞりながら、ホタルは言う。
「・・・・・・本当は――ん、待つつもり、っんふ、だったんです」
「・・・・・・?」
「マモルさんが・・・・・・私を見てくれるのを。マモルさんが、私を好きになってくれるのを」
何を言いたいのかわからない、と、マモルが視線を下げる。
見上げるホタルの目には、わずかな激情の色があった。
「でも、わかったんです、私・・・・・・。
マモルさんが誰を見ているのか、誰のことを想っているのか」
「なんのこ――、つぅっ」
「・・・・・・わかって、しまったんです」
ぎゅ、と、おそらくは無意識に力がこもったのだろう。
這っていた指が立てられ、爪がマモルの身体に傷をつけた。
「身を引くことも考えました。マモルさんの気持ちが決まっているのなら、これ以上は、と」
「ほ、ホタル・・・・・・っ」
「でも、でも――ダメでした。諦めるなんて、出来ません。
そんなの、そんなの嫌です――嫌なんです」
「うっ、くぅ・・・・・・」
突き立てられる爪の痛みが、しかし更なる熱をもつ。
じんじんと痛む感覚さえ、今この時は快感にかわり――さすがに、気付いた。
この状態は、異常なのだ、と。
「媚薬・・・・・・最初の、キス、か・・・・・・」
止まない熱。
時と共に、次第に鈍る思考。
高まり続ける心臓の音。
ふ、とホタルの口元が微笑んだ。
再び耳元で彼女が囁く。
はぁ、はぁ、と、荒い息をつきながら。
「私は・・・・・・ぁ・・・甲賀の、くの一・・・・・・目的の、ために、手段は、選び、ません・・・・・・」
ホタルの指が、マモルを傷つけるのを止め、再び身体を這い始める。
胸元を、腹部を、太股を、そして――。
「く、ぁ、だ、だめ、だ――ぅ、く」
「っ、は、ぁ――んふ・・・・・・キスで、飲ませたのは、失敗、だったかも。
私、にも、っぁ、くすり、効いて・・・・・・でも、っんぁ、それしか・・・・・・」
確かに、それしかなかった。
今のマモルに薬を飲ませるには。
あれだけ薬入りの食べ物を食べさせられて以後警戒しない程マモルも馬鹿じゃない。
未だ互いに重要な部分を存分に触れていないというのに、昂ぶる身体。
すでに、ホタルの理性はとびつつあった。
そして、マモルも、また。
「く、あ、ホタル、手を、とめ――」
「――マモ、ルさん。マモルさ――ん」
ホタルがマモルの手を取り、自身の胸に触れさせる。
自然、マモルはその手で、豊かな膨らみを揉みしだき始めた。
唇はキスを繰り返す。
舌を絡め、唾液をすすり。
それまで動いていなかったマモルのもう一本の手はホタルの敏感な部分を目指し、彼女の身体をなぞっていく。
その手の動きのくすぐったさに、ホタルは身をよじった。
「あ、ああ、ん――や、やぁ、あ、んんっ」
「はぁ、はぁ、はぁ、は――」
息が荒い。
全力で、疾走したときのように。
止まらなければ、止まらなければ、止まらなければ――
「マモ、ル、さん」
「は、は、はぁ、はぁ、はぁ、は――」
「――お慕い、しています、マモルさ、ん・・・・・・心の底から――」
「っ!!」
それが、止め。
もう、限界だった。
「ホタル・・・ホタル――っ!」
「きゃ、マモル、さ――」
ギシリ、とベッドが悲鳴を上げた。
マモルはホタルの肩を掴み、そのままベッドに押しつける。
バクバクと鳴る心臓。
入れ替わる上下。
反転した互いの関係。
荒い息をつきながら、身体の下のホタルを見る。
「ぁ――」
漏れた声には、切なげな音。
潤んだ瞳は何によってのものなのか。
彼女の貌には、怯えにも似た感情があった。
――止まる、止まってしまう。
涙を瞳に溜めているのだ。
ホタルが、自分の身体の下で。
ドクドクという鼓動が高鳴っていても、額から汗がにじんできていても。
大切な、そう、大切なトモダチを傷つけることなどできない。
それが、陰守マモルだったはずだ――。
そう思いながらも、ホタルの肩を掴んだ手を離すことが出来ない。
そう思いながらも、呼吸は元に戻ってくれない。
そう思いながらも、マモルはホタルを観察していた。
・・・・・・ねっとりと、絡みつくような視線で。
上下する胸、汗ばんだ肌、上気した頬。
荒い息をついていたのは、果たしてどちらだったのか。
やがてマモルはホタルと見つめ合い――そして。
「・・・・・・・・・・・・」
ほんの数秒の静止の後。
ホタルは、そっと目を閉じる。
祈るようにも見える仕草で。
神に、供物を捧げるように。
「――――は」
――思わず、笑った。
「は、はは、はははははっ」
歪んだ笑い。
笑いながら、泣いてしまいそうな。
激情に身体を震わせながら、マモルは激しくホタルの唇を奪った。
「――ん! む、ん、んんんんっ」
ホタルが呻く。
優しさなどない。
頭を掴んで舌を差し込む。
奥へ、奥へ。
舌を根元から絡み合わせる。
口元は唾液でべたべたに汚れ、それでもマモルは貪り続けた。
「じゅ、んく、ん、んん、ん!!」
それはすでに犯すという行為。
永い永い口淫に、きゅ、とホタルの足に力が入った。
太股がマモルの腰を挟む。
マモルの責めは終わらない。
咥内を犯しながら、ホタルの柔らかな胸を握りしめる。
そう、“揉みしだく”のではない。
力任せに、“握りしめた”。
「――――っ、っ!!!!!」
声にならない悲鳴を上げ、ホタルの体がびくんと跳ねる。
マモルを抱く腕に力が入ったのは数秒のこと。
すぐに、だらん、と力が抜けた。
「――っはぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」
唇を離してホタルの顔を見る。
瞳の光が濁っていた。
口はだらしなく開かれたまま、透明な液がたらりと垂れる。
息も絶え絶えに、マモルの顔も見えていないかのような。
「はぁ、はぁ、は、ははっ・・・・・・なあ、ホタル」
耳元で囁く。
「・・・・・・イタイのが、キモチイイんだ?」
「っ」
その言葉で我に返ったのか、ホタルの顔が真っ赤に染まった。
耳の先まで朱に染めて、マモルからわずかに顔を背ける。
――自分でつくったクスリの効果なのに。
思いながら、そんなホタルが可愛くてたまらない。
胸の鼓動は高まるばかり。
そろそろ、破裂してしまうかもしれない。
・・・・・・下の方と、同じくらいに。
ぐい、とマモルはホタルの両足を持ち上げた。
肩に担いでスカートをめくる。
当然、ぐちゃぐちゃに濡れた邪魔な布きれは引きちぎった。
「ぁ――」
ホタルが小さく声を上げるが気にはしない。
ズボンすら破りかねない勢いで脈打つ肉の棒を取り出すと、片手で持って狙いを定める。
「!」
ホタルが息をのんだ。
けれど、静止はない。
あろうとなかろうと、関係はなかったが。
「ま、マモルさ――」
「く――っ」
「んぁっ、んっあああああっ!!」
ズブリと、一気に突き入れる。
充分な前戯もないままに。
オトコを知らなかった少女のナカに。
体中に走った感覚は快楽。
痛みが変じた、無情の極楽。
「はっ、はっ、はっ、はぁっ、はぁ、はぁっ、はっ・・・・・・」
「ぁ、や、ん、んやっ、やぁ、あ、ふぁっ・・・・・・!」
マモルはすぐに動き始めた。
ホタルを気遣う事など無い。
そんな余裕はありはしない。
腰を、ただただうちつける。
激しい動きに、ベッドがぎしぎしと軋みを上げた。
「く、うぁあああああっっ!」
「ぁ、ん―――」
一度目の射精はすぐだった。
ダクダクと、とんでもない量をはき出す。
根本まで突き込んだ、その状態で。
「熱い――あつい・・・・・・」
「うぅ、く、はぁ――は、はぁ、はっ、はっ、はっ、は・・・・・・!」
「え、や、ぁ、ん、ん、ん、あ、ひぁ、あっ・・・・・・!!」
余韻に浸ることもせず、すぐにマモルは動き始めた。
出したばかりのどろどろとした白濁が、ホタルのナカでぐちゃぐちゃとかきまわされる。
熱さにも、硬さにも衰えはない。
一度くらいの放出で、今のマモルは止まらない。
「あっ、あっ、あっ、あっ、ああっ、んっ、や、やぁっ」
じくじくと、ホタルの下腹部が痛む。
じんじんと、熱い刺激が襲ってくる。
ホタルは泣いていた。
涙を流しながら、悦んでいた。
目的の達した喜びではない、女の悦びですらない。
それは雄を受け入れた、雌の悦びだった。
「は、ん、あ、ああ、あっ、あ、あああああああぁっ!!」
ホタルのナカが狭まる。
マモルのモノを締め付ける。
蠕動しながら、絞り上げる。
「――っ!!」
二度目の射精も、膣内。
ドクドクと、ひとしきり出して、引き抜く。
どろり、と、粘性の液があふれ出した。
「ふぅ、ふ、ふぅ・・・・・・」
そこでマモルは息をつく。
しかし、呼吸も、鼓動も、まだ収まらない。
自身のモノも収まっていない。
もっと、もっと出したい。
そう思い、もう一度、挿れようとホタルにのしかかり――ふと、ホタルの顔を見る。
水に潜った後のように、呼吸をしているホタル。
わずかに空いた唇が紅く、マモルの目にとまった。
「・・・・・・」
にやり、と、口の端を歪める。
ホタルはよほど苦しいのか、目をつぶったまま、気付いていない。
「はぁ、はぁ、はぁ――むぐぅっ?」
突然、ソレは口の中に入り込んできた。
思わず逃げようとするホタルの頭を、マモルが押さえる。
肉の塊が、二度の射精をした砲身が、ホタルの口いっぱいに差し込まれていた。
「ん、んん、ん――っ」
「ああ・・・・・・あったかいな、この中も」
「ん、く、ん、んんっ」
マモルは腰を振り始めた。
苦しげなホタルの顔を見下ろしながら。
一瞬、ホタルはマモルを見上げ――
「ん――ん、じゅ、ん、んむ」
――その行為を受け入れた。
目を閉じ、懸命に舌を動かして。
乾いたばかりの頬に、新たな涙の跡をつくりながら。
「ん、んふ、んむ、んっ――」
「ふぅ、ふぅ、は、いい、いいぞ、ホタル。これは、ああ・・・・・・」
マモルの声を聞いて、ホタルの動きがにわかに激しくなった。
口をすぼめ、自ら頭を動かす。
舌を、喉奥を使い、自身の口を性器と化した。
「く、ううっ!!」
「ん、んん――!!」
やがて、ホタルの動きに耐えきれなくなり、喉奥に出す。
ホタルの頭を両手で押さえ、ビクビクと剛直を震わせながら。
「く、ん、ん――っ、けふ、けほっ」
口の中に出るあまりの量にむせかえり、ホタルはマモルの腰から逃げた。
引き抜かれたモノはまだ出したりておらず、びん、と天を向いたまま、濃い精液を飛ばした。
びゅくびゅくと勢いよく噴出したそれは、間近にあるホタルの顔を汚していく。
あどけなかった、あのホタルの顔が、白濁の液体に穢されていく。
「は、う、うぅ・・・・・・あ」
くい、と顔を上に向けられ、ホタルはその顔で、マモルと見つめ合った。
「・・・・・・・・・・・・マモル、さん」
暖かな液体が、ホタルの顔を伝っている。
マモルはごくり、と唾を飲んだ。
天を突くかのような自分自身が、更にいきり立っている。
ホタルは、じっと見つめるマモルのその声なき言葉を汲み取ると、頬を染め、つ、と視線を逸らしながら言った。
「・・・・・・はい、マモルさんの、思うままに――」
「は――はは」
マモルは破顔し、ホタルに覆い被さる。
「ほたる、ほたるっ!!」
「あ・・・・・・ああ、あーーっ!」
クスリの効果は未だきれず。
二人はそのまま、何十回と交わるのだった――。
「ん・・・・・・・・・・・・」
太陽も南をとうに過ぎた昼下がり。
ホタルはマモルの部屋で目を覚ました。
身体がけだるい。
シーツに包まれた自分の裸身を眺める。
「・・・・・・はぅ・・・・・・」
やってしまった。
何を、と問われれば、ナニを、と返せる。
隣を見ればマモルの姿。
散々にホタルの身体を犯し尽くした彼は、今は深く眠っているようだ。
何も身につけていないマモルの身体を視線でなぞり、ある一点で目をとめた。
「――ごくり・・・・・・」
自分の生唾を飲む音で我に返る。
真っ赤になって、ぶんぶんと千切れそうなほど首を振った。
(な、なん、なんてことを)
思考がいささか下品になっているのは、クスリのせいだと思いたい。
というか、そうに決まっている。
そうじゃなきゃ、その、なんというか、困る。
乙女としては譲れない一線を超えてしまいそうなので、ホタルは全てクスリのせい、ということにした。
全部、全部クスリのせいなのだ。
マモルを襲ったのも、マモルに襲われたのも、色んな事が気持ちよかったのも、もっかいやりたいなーとか、全部。
余計なことは考えない。
絶対考えない。
直接飲んだマモルと違って、口に含んだだけならそんなに効果が続くはずない、とか、そこら辺のことは。
「よいしょっ」
ホタルはベッドから降りると、辺りの様子を見渡した。
部屋の中はそんなに散らかっていなかった。
暴れたのはベッドの上だけ。
ベッドを見ると、これはひどい有様だった。
シーツも布団も色んな水分でグチャグチャ。
よくこんなものに包まっていられたもんだと自分でも思う。
「どうしましょう・・・・・・」
時計を見ればもうすぐ午後三時。
早くしないとマモルの両親が帰ってきてしまう。
二人きりになりたい、というホタルに、頑張ってねーなんて言ってくれた二人。
だが、さすがにここまでするとは思ってないだろう。
ばれたらどんな目にあうことか・・・・・・主にマモルが。
「意外と許されちゃいそうな気もしますけど」
ふぅ、と一つ息をつくと、ホタルはベッドのシーツをはぎ取り、布団も抜き取った。
そこに眠っているマモルを起こさないまま。
あまつさえ新しい布団をどこからか取り出し、マモルをそこに寝かせる。
掛け布団を掛ける際、ついつい下半身に目がいきそうになるのを乙女の矜持でこらえつつ。
これらの動作はほぼ一瞬で行われた。
ホタルは言うまでもなく忍者だ。
早着替えだって出来る忍者だ。
これぐらいのことは出来てしまう忍者なのだ。
服とは勝手が違うだろ、とかそんなツッコミはいらないのだ。
「マモルさん」
眠るマモルに、ホタルは顔を近づける。
「・・・・・・大好きです。あなたの心が、どこにあっても」
ちゅ、と頬にキスをすると、ホタルは布団を抱え、部屋を後にした。
まずは布団を洗濯しないといけない。
それから、お風呂にも入らないと。
マモルのあれとか自分のそれとかで全身が汚れたままだ。
(全部ナカなら、そんなに大変じゃなかったんですけど)
ふいに、じゅん、とホタルの下腹部が熱をもった。
さっきまでの行為を思い出してしまったからだ。
「・・・・・・ちょっと、強力につくり過ぎちゃったかもしれませんね」
これもまた、クスリのせいだとホタルは結論づける。
やっぱり、口に含んだだけでは以下略、なんてことを考えずに。
まあ事実はともかく とりあえず一つ仕事が増えてしまった。
このうずきをどうにかしないと、落ち着かない。
「お風呂でなら・・・・・・いいですよね」
誰に言うとも無しにそんな事を呟く。
どうやら、長い湯浴みになりそうだった。
後に。
ホタルはここでマモルを一人にしたことを悔やむことになる。
風呂や洗濯に二時間近くかけたことや、マモルの状態を調べなかったことも。
しかし、それはまた別の話・・・・・・。