「いけないことなのかな。」
「わかんねーよ!」
智志が未希を抱きしめる。
未希も智志の背中に手を回し、二人は満月の見守る中、静かに抱きしめ合った。
どれ位の時間が流れただろう。
二人の間に沈黙が流れ、なかなか次に進む事が出来なかった。
未希は覚悟を決めたはずなのに、 智志の顔を見れないでいたし、
そんな未希を智志は何も言わずに見つめていた。
智志にしてみてもあまりにも唐突すぎる事だと思う。
今まで手も握った事もない自分達が大人の階段を駆け足で上ろうとしているのだ。
抱きしめた未希の体はかすかに震えている事に気づいていた。
大事にしたいと思ってる女の子なんだ。
でも、今はどうしても彼女が欲しい。
「一之瀬・・・ごめん」
「!桐ちゃんは悪くないよ!!」
未希はやっと智志は向きあい、覚悟を決めた。
智志はゆっくりと未希を床に押し倒した。
「一之瀬・・」
智志に優しく名前(苗字だが)を呼ばれ、未希は胸が苦しくなった。
好き。桐ちゃんのことを考えるだけで幸せで、でも会えない日は寂しい。
メールの返事が遅いとどうしたんだろうって悩んでしまう。
桐ちゃんから聞いた話は全部皆に教えてあげたくなる。
未希の中で、智志以上に大切なものなど何も無いのだ。
「桐ちゃん、ええっと………その……………………お願いします」