家族と店の従業員達に祝福され、幸せな結婚をした二人。  
その夜二人は、永遠に変わらぬ愛を誓い無事に夫婦の契りを交わし、夢心地の朝を向かえた。  
桜子が身も心も達彦の妻となり、夢に見た甘い新婚生活の幕が上がった。  
桜子の弟、勇太郎から徳次郎の突然の訃報を知らされるまでは、桜子の心の中は、達彦の妻  
となった幸せで満ち溢れていた。  
徳次郎の突然の死。  
今まで達彦が見た事がない程、桜子は嘆き悲しみ憔悴していた。  
そんな桜子を夫となったばかりの達彦が桜子に寄り添い支えていた。  
徳次郎の葬儀が終わり、初七日まで桜子は、有森の家に泊まり姉達と共に葬儀の後片付けに  
追われていた。  
そんなある日。  
桜子の様子を見に来た達彦は、二人の義兄、冬吾と鈴村によって真っ直ぐ二階へ連れていかれた。  
「なっ・・・なんですか?冬吾さんに鈴村さん」と言いながら二人の顔を見ながらう言う達彦。  
「達彦君。今日も桜ちゃんの様子を見に来たのが?」  
「ほうですが・・・」  
「おめえは、相変わらず優しい男だが・・ついてねぇ男だなっ。まぁ、ここさぁ座れ。」  
と言って冬吾は達彦を座らせると、冬吾の隣に鈴村も座った。  
「俺がついてない?」  
「うんだ!桜ちゃんとやっと夫婦さなったのに、結婚2日目の夜からまだ、一人寝だ!」  
「それは・・・仕方がない事です。」と呟く達彦。  
「おめえは、相変わらずだな・・・達彦君。桜ちゃんとは、無事に夫婦の契りを交わす事が  
できたんか?」  
「と・・・冬吾さん。急に何を言い出すんですか」と言いながら達彦はたじろいだ。  
「達彦くん。私と冬吾さんは、義弟である達彦くんが無事に桜子さんと夫婦の契りを交わす  
事が出来たのか・・・心配なんです。」  
冬吾の隣に座った鈴村が、ゆっくりとした口調で淡々と語った。  
「うんで、達彦君。桜ちゃんとを抱く事が出来たんか?正直に答えてみ?」  
尚もまた、達彦に言い寄る冬吾。  
達彦は、困惑しながらつい「はい。お陰様で」と言う言葉を発してしまった。  
「そうですか・・・達彦君、それは良かった。おめでとうございます」達彦の両手を握りながら言う鈴村。  
「うんだが・・・えがったなっ!これで桜ちゃんは、晴れて身も心もおめえのものになったが・・・」  
冬吾と鈴村の問い掛けに素直に達彦は「はい」と返事をした。  
「おめえもやっと男になったが・・・女子を知った以上・・・ますます一人寝は、辛いべ。」  
「いいえ!そんな事ないです。」達彦は慌てて首を横に振った。  
「嘘付くな!顔に書いてある。俺達には、隠すな・・・桜ちゃんは、明日・・・初七日が終わったら  
おめえと一緒に山長さ帰る。」  
「はい。」と達彦が言う。  
「明日からの桜ちゃんとの夫婦生活について、勉強さするべ」冬吾は、脇に置いて置いたスケッチブック  
を広げた。  
達彦は、慌てて「いいです」と言って勢い良く立ち上がった。  
すると、鈴村が「達彦君、夜の生活は夫婦にとって大切な事です。私と冬吾さんは、義兄とし心配しているんです。」  
と静かな口調で淡々と語った。  
「達彦君、初めて桜ちゃんと一つさ、なった時、桜ちゃんはおめえと結ばれた喜びもあったと思うが・・・痛みの方が  
強かったはずだ。」  
冬吾から自分と結ばれた時の喜びより痛みの方が強かったと言う言葉に達彦は反応した。  
(確かに冬吾さんの言うとおり、一つになった時の桜子は、痛みで顔を歪め苦しそうだった)  
「まぁ、俺達と一緒にここさ座って、楽しい夜の夫婦生活の勉強さするべ!」と冬吾が言うと達彦は、冬吾と鈴村の  
側に座った。  
 
達彦の義兄となった二人。  
二階の部屋で冬吾と鈴村から夜の夫婦生活について色々教わった達彦。  
最初は、嫌々二人の義兄の話を聞いていたが、次第に真剣に聞き入っていた。  
すると下から「冬吾!冬吾ーっ」と笛子の声が家中に響いていた。  
笛子は冬吾を家中捜し歩き3人が居る2階の部屋の戸を勢い良く開けると3人は驚いた表情を浮かべていた。  
「何だ!二階に居ったのか。居ったら居ったで返事してくれればいいじゃん。」不満気に言う笛子。  
「あら、達彦さん。」  
「お邪魔してます。」達彦が頭を下げた。  
「そんなに気をつかわんで!私達は家族だで、いつでも気軽に来て。」笛子が言う。  
「はい。」達彦が返事をする。  
「それより、ここで3人で何しとるの?」笛子が言う。  
「うん!男同士の話だ・・・」冬吾が言う。  
「男同士の話?冬吾、鈴村さん。達彦さんに変な事、教えんでよ。」笛子が言う。  
「教えてねぇ・・・男同士の話だっ!それで・・・何か用が・・・」冬吾が言う。  
「あっ!うん。荷物を棚に上げて貰いたいと思って・・・」  
「お義姉さん、俺が荷物を棚に上げます。」と言って達彦が立ち上がった。  
「じゃ・・・達彦さんにお願いしようかしら。」  
「はい。」  
笛子と達彦は、一階の居間に来ると桜子が居間で徳次郎の遺品を箱にしまっていた。  
「あっ!達彦さん。」と言って桜子は、嬉しそうな表情を浮かべ達彦の側に近寄った。  
「桜子。ちっと待って。お義姉さん、どれを上に上げれば良いんですか?」  
「この箱を上の押入れに入れて欲しいの。達彦さん、重いけど大丈夫?」と笛子が言う。  
「はい。大丈夫です。」と言って達彦は、箱を持ち踏み台に上ると一番上の押入れに箱を入れしまった。  
「ありがとう。達彦さん。助かったわ・・・」  
「いいえ。」  
達彦は、徳次郎の遺品の中から古びれた何冊ものノートを見つけ手にとった。  
「おじいちゃんのこのノート。私も見てビックリしたは・・・うちの味噌の事がこと細かく書かれとって・・・おじいちゃんの  
形見として達彦さんにあげようと思って・・・とっておいたの。」  
達彦は、古びたノートをパラパラと捲ると桜子が言った通り、ノートにはびっしりうちの八丁味噌について書かれてあった。  
達彦は、そのノートを見て徳次郎の意志を必ず引き継ぎ、八丁味噌を復活させなくてはいけないと改めて思った。  
 
明日、徳次郎の初七日を終えれば桜子は、達彦と共に山長に帰る。  
桜子が山長に嫁ぎ初めて二階の部屋に姉妹3人布団を敷き横になっていた。  
「桜ちゃんも明日は、山長に帰っちゃうんだよね。何かとっても寂しい。」と言う杏子。  
「杏姉ちゃん。」と言う桜子。  
「桜子は、山長に・・・達彦さんの元に帰るけど・・・私達の関係は永遠に変わらんじゃん。達彦さんが私達の家族に加わっただけ。」と言う笛子。  
「ほううだね。達彦さんが家族になっただけだよね。」と言う杏子。  
「うん。笛姉ちゃんと杏姉ちゃんにお義弟が出来ただけだよ。私は、この家を出たけど・・・私と達彦さんは、この岡崎に居るし・・・この家にだって  
何時でも帰ってこれる。」と桜子が言う。  
「うん。帰ってこれるね。」と言う杏子。  
「桜子。」と言う笛子。  
「何?笛姉ちゃん。」と言う桜子。  
「あのさっ・・・とっても聞き難いんだけど・・・達彦さんとは、無事に結ばれたんか?」と唐突に聞く笛子。  
「笛姉ちゃん、そんな事、聞かんでも・・・」と杏子が言う。  
「何、言っとるの!桜子は、岡崎一の財閥に嫁いだで・・・大事な事だよ。それに、桜子は跡取りを生むちゅう大仕事もあるで」と笛子が言う。  
「桜ちゃんと達彦さんが夫婦として過ごした夜は、結婚式の夜だけだで・・・それに、結婚式の夜って・・・一気に疲れが出るもんなんだよね。」と杏子が言う。  
「うん。私の体の中には、ちゃんと達彦さんが刻んだ奥さんの証があるで・・・心配しんで。」と桜子が恥らいながら笛子に言う。  
「ほう。ほうか・・・おめでとう。」と笛子が言う。  
「うん。ありがとう。ねぇ・・・笛姉ちゃんと杏姉ちゃん。」と桜子が言う。  
「何?」笛子と杏子が言う。  
「あのさ!・・・夫婦の夜の生活って・・・あんなに苦しくて痛いものなの?」と思い切って二人の姉に聞く桜子。  
「桜子」と言う笛子  
「桜ちゃん」と言う杏子。  
「ごめん。馬鹿な事、聞いた。もう寝るね」と言って桜子は、布団の中に潜った。  
そう、桜子は身も心も達彦の妻になった喜びを感じているものの・・・これから先の夫婦の夜の生活について戸惑いと不安を感じていた。  
「桜ちゃん。達彦さんと結ばれて嬉しくないの?」と杏子が少し体を起こし隣に眠る桜子に問い掛けた。  
「嬉しいよ!達彦さんと結ばれて・・・とっても嬉しいけど・・・」と言いながら桜子は、勢い良く起き上がると少しずつ語尾を小さくしながら再び布団に横にな  
った。  
「痛くて苦しいか・・・」と笛子が呟くと杏子が「桜ちゃん。夫婦の夜の生活なんだけど・・・最初は誰もが痛くて苦しいって思う事なんだけど・・・それ以上に  
大好きな人と一つに結ばれた時の気持ちの方が大きくなかった?」  
「嬉しかった。達彦さんが・・・また、一段と近くに感じた。感じたけど・・・」と桜子が言う。  
「あんなに好きあっとるのに・・・あんた!そんなに達彦さんに抱かれるのが嫌なんか?」と笛子が言う。  
「嫌じゃない。嫌なわけないじゃん。」と桜子は言い切った。  
「桜ちゃん。桜ちゃんの不安な気持ち、分かるよ!初めての事が次々と起こって、ビックリしたよね。でもねぇ・・・夫婦の夜の営みって、夫婦にとって  
とても大切な事なの。」と杏子が言う。  
「大切なもの」と桜子が言う。  
「ほう。夜の夫婦の営みは、互いの想いを与え受ける行為で・・・愛し合っているから出来るもの。最初は、誰もが苦痛な行為かも知れんけど  
次第に相手の想いが体に伝わって来て・・・愛されている喜びが分かってくると思うよ。そんなに心配しんで、最初は、体と心の力を抜いて  
達彦さんに全てを任せてご覧。きっと達彦さんの愛が桜ちゃんの体全体に伝わってくるから」と杏子が言う。  
「そうだよ!杏ちゃんの言う通り。達彦さんは、優しい人だで・・・あんたは、何も考えず達彦さんに身を委ねるんよ。」と笛子が言う。  
「うん。」と返事する桜子。  
「さっ!明日も早いで、もう寝まい。おやすみ。」と言って笛子は、布団を肩まで掛け寝入った。  
 
翌日。  
徳次郎の初七日。  
達彦も朝から有森の家に訪れ、徳次郎の初七日を手伝っていた。  
徳次郎の初七日が終わると直ぐに、勇太郎、磯、冬吾、笛子が東京へ帰って行った。  
有森の家には、杏子達と桜子と達彦が取り残された。  
「桜子、俺達もそろそろ」と達彦が言うと「うん」と桜子が頷き立ち上がると二階へ荷物を取りに行くと玄関先には、既に達彦が立っていた。  
「お待たせ」と言って桜子は、達彦の隣に立っと達彦は、桜子が持つバックを持った。  
「達彦さん、桜ちゃん。気をつけて帰りんよ!」と杏子が言うと二人は、「はい」と答えた。  
「それじゃ!僕達も失礼します。」と達彦が頭を下げると達彦は、桜子の背中に手を沿え有森家の玄関を出た。  
桜子は、達彦より一歩先に歩き空を見上げた。  
「随分、陽が伸びて来たね。」  
「ほうだな。それより、桜子、大丈夫か?」  
「うん。大丈夫。達彦さんが側に居ってくれたから・・・」立ち止まり肩を震わせ突然、目からポロポロと大粒の涙が溢れ出して来た。  
達彦は、家族の為に音楽を諦め大好きなピアノを手放し桜子が初めて達彦の胸で泣いた時の様に肩を抱き桜子の頭を何度も優しく撫でた。  
「桜子、もう、俺の前で強がらんで良い。泣きたい時は、俺の腕の中で顔を埋め泣いて良いんだぞ!どんなお前でも俺は、受け止め守るるから。」  
優しく語り掛ける達彦。桜子は、達彦の胸に顔を埋め泣きながら小さく頷いた。  
桜子が落ち着きを取り戻すと達彦は、涙で濡れた桜子の頬を親指で拭った。  
「大丈夫か?」  
「うん。ありがとう」と言って桜子は、達彦の腕に自分の腕を絡めると「達彦さんが側に居ってくれて良かった。達彦さんが側に居ってくれん  
かったら私、また・・・お義母さんが亡くなられた時みたいになっとった。」  
「桜子。」  
「さぁ!帰らまい。私達の家に・・・」  
「うん。」微笑み言う達彦。  
 
結婚してから初めて桜子と共に帰る我が家。  
達彦と桜子は共に同じ家に帰れる喜びと幸せを実感していた。  
桜子は慣れぬ手つきで夕食とお風呂の準備をした。  
テーブルを挟み二人きりでとる夕食。  
他愛もない会話を交わしながら達彦は桜子が作った夕食を食べた。  
夕食の後片付けを終えた桜子が居間に戻ると達彦は、座布団を枕に転寝をしていた。  
「達彦さん。お風呂も入らんで、こんな所に寝て!風邪引いちゃう。」桜子は、隣の部屋の押入れから毛布を取り出すとそっと達彦に掛けると桜子は  
達彦の側に座った。  
「疲れとるんだね。店の仕事をしながら有森の家の為に働いてくれたもんね!でも・・・達彦さんって綺麗な顔しとる。」  
そっと眠る達彦の顔に桜子が触れると達彦は、一瞬ピクリと動いたが静かな寝息をたて眠っていた。  
桜子は、そっと達彦が枕に使っている座布団を取ると達彦の頭を持ち桜子の膝を枕に寝せた。  
(本当、綺麗。そう言えば、今まで達彦さんの顔をまじかで見た事がなかったなった。ねぇ!達彦さん、私の何処が好き?愛しとる?  
私は、達彦さんが好き!愛しとる。私は、もうあなたなしでは、生きていけん)  
何度も達彦の頭を撫でていた桜子は、そっと達彦の唇に重ねた。  
突然桜子に口付けされた達彦は、「わぁ〜」と言って驚き目を覚まし起き上がった。  
「ごめん。起こしちゃったねぇ!」  
「何だ!桜子か。驚かさんでくれよ!」  
達彦は、ハァ〜と大きく溜息をついた。  
「ほんなに驚かんでも・・・」膨れる桜子。  
「お前が突然、接・・・」と達彦が良い終えぬ間に桜子は、顔を真っ赤にし「それ以上、言わんで」と言ってそっぽむいた。  
「ご・・・ごめん。桜子、ちょっとこっちに来いよ!」桜子の腕を取り引き寄せた。  
「た・・・達彦さん。やだ!離して。」  
「離さない。桜子、俺は・・・お前を離さないって言ったろ!忘れたのか?」桜子の顔を覗き込みながら言う達彦。  
桜子は、恥ずかしそうに達彦の胸に顔を埋めながら”いいえ、忘れていない”と言っているかの様に首を小さく横にふった。  
達彦は、手の平で桜子の頬を包み込むように添えそっと桜子の唇に口付けた。  
二人は見つめ合っては、唇を何度も重ね、達彦の手は桜子の背中や肩を撫で、その口付けは次第に深くなっていった。  
達彦は、名残惜しそうに桜子の体を離すと立ち上がった。  
「達彦さん?」  
「風呂に入ってくるよ」と言って達彦は、居間を出て風呂場に言った。  
 
風呂に入ると言って居間を出て行った達彦の後ろ姿を桜子は、困惑した表情で見送っていた。  
達彦は風呂場に入ると急いで戸を閉め気持ちを落ち着かせようと壁に寄り掛かり大きく息を吐いた。  
しかし、気持ちの高ぶりと共に一向に硬く大きくなった達彦自身もその存在を主張するかの様にそそり立ち治まろうとしない。  
(はぁ〜。どうするか・・・こんな姿、今の桜子には見せられん。)  
達彦は、急ぎ着物を脱ぎ捨てると風呂場へ入ると桜子が達彦の代えの下着と浴衣を持ち脱衣所に入って来た。  
「達彦さん、湯船の温度どうかな?」  
「丁度良いよ。」  
「ほう。良かった。達彦さんの着替えここに置いておくね」  
「あっ。うん。ありがとう。」  
「うん」と言って桜子は、脱衣所に脱いだ達彦の着物や下着を広い集め脱衣所を後にした。  
一人風呂場に取り残された達彦。  
風呂場に置いてある椅子に座ると目を閉じ、今夜実現するであろう桜子との2度目の夜を頭の中で思い浮かべながら  
自らの手で自分自身を扱いていた。  
達彦が風呂からあがり二人の寝室に入ると桜子は、達彦の布団と自分の布団をつけるかつけないかで初夜の時と同じ様に  
再び悩んでいた。  
達彦は、背後から桜子を抱きすくめた。  
「キャーッ。た・・・達彦さん。驚かさんで!」  
「そんなに悲鳴を上げるほど、驚かんでもいいだら。この家には、もう俺とお前しか居らん。」  
「ご・・・ごめん。ほうだよね。」  
「それに何、悩んどるんだ?」  
「悩んどらん・・・悩んどらんよ」  
「ほうか?桜子、俺・・・寝ている時もお前の側いい。離れとうないから・・・布団、くっけよう。」  
「うん。」桜子が小さく頷く。  
「桜子、お前も疲れとるだろ!後は、俺がやっとくからお前もお風呂に入っといで!」  
「でも・・・」  
「いいから。」  
「いいの?」  
「ああっ!お風呂に入っといで!風呂に入ると心も体もスキっとするぞ。」  
「うん。じゃ・・・お言葉に甘えて、私もお風呂に入ってくるね。」  
「うん。行っといで」  
桜子は、箪笥から浴衣と下着を取り出し足早にお風呂にむかった。  
 
桜子がお風呂から上がり家の戸締りを済ませ、二人の部屋に近づくにつれてベートーベン「イッヒ・リーベ・ディッヒ」が流れていた。  
桜子は、部屋の戸を開けると達彦は、布団の上に仰向けに寝て目を瞑っていた。  
「久しぶりに聴くは、ベートーベンのイッヒ・リーベ・ディッヒ。」鏡台の前に座り髪を整えながら言う桜子。  
「俺もだよ。この曲を聴くと昔を思い出すんだ。」起き上がり言う達彦。  
「昔?」髪を整え終えた桜子は、達彦の隣に敷いてある自分の布団の上に座った。  
「うん。お前、覚えとらんのか?」不満げに言う達彦。  
「覚えとらんって」  
「マルセイユでお前・・・何時か弾けたら良いなって言っとったじゃないか?」  
「あっ!思い出した!ほうだ、ほうだ。私、達彦さんに、イッヒ・リーベ・ディッヒの意味を聞いたんだ。そしたら、お店に入って来た  
お客さんがイッヒ・リーベ・ディッヒの曲を聴いて、我れ汝を愛すって言ったんだよね。」  
「うん。実はなっ!俺、あん時、お前に結婚の申し込みをしようと思い、あの曲を選んだんだ。なのにお前は、俺にイッヒ・リーベ・ディッヒ  
の意味を聞いてくるんだもん、答えるにも答えられなかっただら。」  
「ほうだったん。知らなかった。」  
「お前は、俺の気持ちに気づかなすぎなんだよ!俺があん時、どれだけお前を想っとったか分からんだろう。」  
「達彦さん。」  
「今日は、お前も疲れただら。部屋の電気を消すで・・・布団の中に入れ」立ち上がり達彦はレコードを切ると電気のスイッチを持った。  
桜子は、達彦に言われたまま布団に横になると達彦は部屋の明かりを消し達彦も布団の中に入った。  
暗闇となった二人の部屋。  
月明かりが二人を青白く照らし浮かび上がっていた。桜子は、布団の上に出ている達彦の手の上に手を添えると達彦は、フッと微笑み  
桜子の手の甲を軽く撫でると力強くしっかりと桜子の手を握った。  
「桜子。こっちにくるか?」  
「良いの?」遠慮気味に聞く桜子。  
「勿論。」  
達彦は、握っていた桜子の手を離し自分がかけていた布団をめくると再び桜子の手を握り引っ張り達彦の布団へと導いた。  
「達彦さん、温かい。」  
「ほうか?」  
「うん。とっても・・・それに達彦さん、良い匂いする」  
「風呂に入ったから石鹸の香りじゃないか?」  
「うんん。安心する香り。」  
「安心する香り?」  
「うん。なんか、とっても不思議な感じがしたんだ」  
「不思議な感じ?」  
 
うん。白無垢を来て有森の家を出ただけなのに・・・有森の家に居っても・・・自分の家じゃない様な気がして仕方がなかった。  
どうしてだろうねぇ!生まれ育った家なのに・・」」  
「桜子。俺は嬉しいよ!生まれ育ち長年暮らした有森の家がお前の家じゃなく・・・山長がお前の家にだって思ってくれて」  
優しく包み込むように抱き締めるはずが、達彦は桜子に覆い被さり組み敷く形となった。  
桜子の心臓は高鳴った。達彦は、桜子のおでこにそっと口付けた後、桜子の唇に自分の唇を重ねると桜子の顔を見た。  
達彦の我慢も限界に近づいていた。  
桜子を妻に娶り・・・女を知って7日。  
「達彦さん」  
「桜子。俺、正直に言うよ!お前が俺の側に居らんで寂しくて・・・・お前が欲しくて仕方がなかった。」  
「達彦さん。」  
「今日は、お前をゆっくり寝かせてやろうと思ったが・・・俺は、お前が欲しくて仕方が無い。お前を抱いてもいいか?」  
「ほんな事聞かんで!」と言いつつも桜子は達彦の背中にそっと腕を回すと顔を背けながら「私は、達彦さんのもんだで、好きにして」と行って  
目を硬く瞑った。  
「桜子。」と呟くと達彦は、自分の唇で桜子の唇を軽く挟んだり舌で桜子の唇のなぞる等をして少しずつ桜子の唇を割り、桜子の口内に舌を  
差し入れた。  
濃厚な口付け。  
今まで唇と唇が触れ合うだけの口付けは、結婚前に何度も交わしていたが、この様な濃厚な口付けは、初めて達彦と結ばれた日に初めて経験した  
口付けだった。  
初めて桜子の口内に達彦の舌が侵入して来た時は、ビックリして達彦の口付けから逃れようとしたが、今日の桜子は、懸命に達彦の口付けに応え  
おずおずと舌を動かし口付けに夢中だった。  
達彦は、桜子と口付けを交わしながら桜子の太腿を撫でながら手を桜子の秘所へと這わせると桜子「うっん」と声を発し、達彦の口付けから  
逃れ体を硬くした。  
「桜子、大丈夫だから・・・俺に任せて」  
「うん。分かっとる・・・分かっとるけど・・・」  
「俺が怖いか?」達彦が訊ねると桜子は”いいえ”と言う様に首を横にふった。  
「桜子、愛しとる。愛しとるからお前をこの手で抱き・・・お前の温もりを感じたいんだ」切なそうに言う達彦。  
そんな達彦の表情を見た桜子は、胸が締め付けられた。  
「達彦さん。私も達彦さんが好き。この世で一番達彦さんが好き。愛してる。」と言って桜子は両手で達彦の頬を包み自ら口付けた。  
微笑み達彦は、桜子の首筋に顔を埋めると達彦の唇は耳・首筋と唇を這わせながら桜子が纏う浴衣の紐を解くと手で合わせを開くと  
胸元に唇を這わせた。手は、桜子の胸元に置き達彦の大きな手の平で包み込む様に撫でた。  
 
桜子は目を瞑り昨夜、二人の姉達に言われた様に体の力を抜き達彦に身を全て委ねて見ると達彦の唇と触れる度にくすぐったい様な  
くすぐったく無い様な不思議な感覚に囚われていると桜子の足に既に大きくなった達彦自身が触れると一瞬桜子の体が硬くなったが  
達彦の胸への愛撫と耳元で「綺麗だよ」と囁かれるだけで再び桜子は体の力を抜き、達彦に身を任せていると達彦は、桜子の浴衣を  
肩まで肌蹴させると乳房の頂上を口に含み舌で転がした。  
「あっ・・・うん」小さく喘ぎ身を捩った。  
達彦は再び桜子に口付けると桜子が着る浴衣を脱がせると達彦も桜子に口付けながら片手でもどがしげに自分の浴衣を脱ぎ捨てた。  
「桜子。大丈夫だから恥ずかしがらんで・・・・お前の全てを俺に見せてくれ。愛しとる。」  
桜子の額にそっと口付けると達彦は、冬吾や鈴村のアドバイス通り体全体に口付けながら桜子の反応を見た。  
桜子は、目をきつく瞑り右親指を唇にあて必死に声を押し殺していた為、達彦は、桜子の唇に添えてある手をとった。  
「頼みがあるんだ」  
「何?」潤んだ目で達彦を見る桜子  
「恥ずかしがらんで、お前の喜びの歌を俺だけに聞かせてくれないか?」  
「ほんな・・・」と桜子が口を開けた瞬間、達彦は口内に舌を入れ桜子の口内を掻き混ぜると桜子の舌を捕らえ絡めると桜子はおずおずと  
達彦の舌に絡めると達彦は、予想もしなかった桜子の動きに嬉しさが込み上げ目を大きく見開き、桜子の舌に絡め達彦の手は、桜子の太腿を  
摩りながら徐々に秘所へと手を這わせると既に桜子の秘所は、愛の蜜によって潤っていた。  
「うっ・・・あっ・・・達彦さん・・・そんな所・・・」達彦から唇を離し達彦を見つめた。  
「汚くないよ・・・大丈夫だから・・・また、俺にお前の体を見せてくれ」と言って達彦は、桜子の乳首を口に含み舌先で刺激しながら  
達彦の長い指が桜子の壷の中へとゆっくり挿しいれると桜子は、再び右手を口にあて、今だ分からぬ未知の感覚に耐えていた。  
桜子の壷の中は、初めて一つに結ばれた夜より熱く震え達彦の指を飲み込むかの様にきつく締め付けていた。  
(すごい。桜子・・・感じてるんだ)  
達彦は、桜子の壷に指を一本挿れたままゆっくりと出し入れを繰り返しながら、体中に舌を這わせながら徐々に下へと下りていった。  
「うっ・・・・あっ・・・あっ」桜子は小さく声を挙げ今だ分からぬ感覚にどうして良いか分からないでいると達彦は桜子の壷から指を  
抜き体を起こすと「桜子、怖くないから・・・体の力を抜いて俺の愛を感じてくれないか?」と達彦が言うと桜子は、息をゆっくり吐き  
体の力を抜くと達彦は「ほっうだ・・・桜子、愛しとる。愛しとるから俺は・・・お前を感じたいんだ」と言って口付けると達彦は桜子の  
両足を広げ秘所に口付けると強い刺激に驚き体を仰け反らせた。  
 
「あっ・・・あっ・・・」  
(ここか!冬吾さんと鈴村さんが言っとった女の人が一番感じる所は)  
達彦は、桜子が最も感じる蕾を舌先で舐めると桜子は「ひゃ〜あっ」と甲高い声をあげ秘所への愛撫から逃れようと腰をよじったが  
達彦は、しっかり桜子の腰に腕を回し固定し秘所への愛撫を続けると桜子の秘密の通路に通じる壷から溢れんばかりの愛の蜜が溢れ出ると  
同時に桜子の目は潤み体は桜の花の様に赤く染まっていた。  
(俺にしか見せぬ桜子の女の顔・・・なんて綺麗で艶かしいんだ)  
舌先で秘所への愛撫を続けながら桜子を上目で見ていた。  
「た・・・達彦さん。お願い・・・・もう許して・・・お願い」  
桜子は達彦の手に自分の手を沿えると達彦は体を起こした。  
「桜子・・・愛してとる・・・お前を愛しとるんだ。愛しとるから又お前と一つになりたい・・・挿れていいか?」  
と達彦が桜子の耳元で囁くと桜子は、コクリと小さく首を縦に振るのを確認すると達彦は、自分の手で固く大きくなった自分自身を  
手に持ちゆっくり桜子の壷へと埋めていった。  
「うっ・・・(達彦さんのが体に入ってくる・・・まだ、ちっと痛いよ・・・私は達彦さんの奥さんだで・・・我慢せんと)」  
強い圧迫感と達彦自身が体内に入ってくる何とも言えぬ違和感はあるものの初めて達彦と結ばれた夜よりは、痛みは薄れと同時に  
未知な感覚に囚われていた。  
「桜子、全部入ったよ!痛くないか?」  
「大丈夫。前よりきつくないし痛くないよ。」  
「ほうか・・・良かった。」  
一週間ぶりに2度目の桜子の体内を味わう達彦。  
桜子の体内は、達彦自身をやわらかくなった肉壁で飲み込むかの様に包み込み達彦自身を刺激していた為、このまま桜子の中に自分自身を  
埋めていたら直、達してしまいそうなほど桜子の体内は、良かった。  
「桜子、痛いと思うが動いても良いか?」と桜子の耳元で問い掛けると桜子はコクリと頷いた。  
達彦は桜子に「愛しとる」と言って深く口付けると体を起こしゆっくり動きだすと桜子は、二人の姉達のアドバイス通り体の力を抜き  
達彦に身を任せた。  
「うっ・・・あっ」と桜子がうめき声を上げた。  
 
達彦自身が桜子の花の壷へと出し入れされる度に桜子は、全ての内臓が達彦自身によって掻き出されるような・・何とも言えない不思議な  
感覚に囚われていた。  
「はぁ・・・あっ・・・た・・・達彦さん・・・どこ」  
シーツを強く握っていた桜子の手が達彦の手を探すように宙に上げると達彦は桜子の手に手を絡めた。  
「桜子、俺は何処にもいかんよ!今、俺とお前は一つになっとるんだよ。わかるか?」  
腰を少し引き桜子の花の壷に達彦自身がしっかり挿り一つになっている事を強調すると深く激しく口付けると再び動き出した。  
「あっ!・・・うっ・・・桜子・・・いいよ・・・暖かくて俺の全てを包み込んどるみたいだ」  
「ほんなこと言わんで!」  
「桜子愛しとるんだ!愛しとるから俺は、お前に包みこまれたい」と言って達彦は無心に桜子の花の花瓶から自身を出し入れを繰り返す度に  
一つに繋がった部分から淫らな水音と二人の熱い吐息と桜子の甘い声が二人の部屋に響きだした。  
次第に達彦は桜子の花の壷によって絶頂を向かえ花の壷の中に白濁した精を解き放つとそのまま荒い息を上げたまま桜子の体の上に倒れ込んだ。  
そんな達彦を桜子は、達彦への愛しとまた一つに結ばれた喜びがこみ上がり目を開け両腕で達彦の頭を包み込む様に抱きしめた。  
「達彦さん、大丈夫?」  
「お前こそ大丈夫か?」と言って達彦は、桜子に口付けるとゆっくり体を起こし花の壷から達彦自身を抜くと桜子は、「あ〜ん」と甘い子声を  
あげると同時に花の壷から達彦が放ちだした白濁りの種が溢れ出てきた。  
達彦は、枕元に置いてある紙を取り桜子の秘所にあてがうと桜子は恥ずかしそうに達彦の手をとり「いいよ!自分でやるで」と言って起き上がり  
近くにあった自分の浴衣をすばやく取り肩にかけると達彦に背を向け秘所を軽く拭うと浴衣を軽く着付け立ち上がろうとするが、桜子の足腰に今だ  
力がはいらずガクガクして立てなかった。  
そんな桜子を達彦は、腕を引き寄せ抱きしめ口付けると「もう暫く、こうしてよう」と言って桜子が軽く纏う浴衣の紐を解き素早く脱がせると  
そのまま何も纏わぬまま布団へと横たえた。  
「桜子、ごめんな!痛かったなぁ」  
桜子の乱れた髪を達彦の大きな手の平で撫で整えていた。  
「うんん。大丈夫。謝らんで・・・私は達彦さんのものだで・・・達彦さんの好きにして」  
「桜子・・・お前は優しいなぁ。それに、俺はお前のもんだから」  
「達彦さん。」  
「俺、正直に言うよ!お前が居らんかったこの一週間、この家に一人で居るのが嫌で・・・寂しかった。お前が花嫁衣裳を来て  
この家に来るまでは、ずーと一人でこの家に居ったのに・・・お前がこの家に・・・俺の嫁さんとして来た日から俺は、一人で  
この家に居れん様になってしまったんだなぁ!」  
「私も有森で仕事をしとっても・・・達彦さんの顔が見たくて・・・声がききたくて・・・ギュっと抱きしめて欲しくて仕方がなかった。  
私は、もう達彦さんが側に居らんと駄目になったみたい。」  
「桜子、嬉しいよ!俺ももう、お前なしの生活は考えられんよ」  
「達彦さん、私も達彦さんなしでは・・・もう生きられん」  
「桜子」  
 
「達彦さん、暖かくて気持ちが良い。」  
「ほうか?」  
「うん。」  
達彦は桜子が寝やすい様に包み込む様に抱きなおした。  
「今日からずーと達彦さんの側に居れるんだね!嬉しいね。」  
「俺達は、これから先、一生一緒だよ。」  
「うん。」  
桜子は、吸い込まれる様に何も着ず達彦の腕の中で眠りにつくと達彦は、桜子の温もりを感じ達彦の腕の中で眠る桜子を見ると  
フッーと微笑むと桜子が寒くないように肩まで布団をかけると達彦も桜子を大事な物を取れれないように抱き閉め、眠りについた。  
そして翌日、母屋にある中庭の洗濯干し場には、白いシーツが1枚干されてあった。  
そのシーツを洗う桜子は、顔を真っ赤にして洗っていたのは・・・言うまでもない。  
 
おわり  
 

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