4月初旬。  
家族や店の人達に祝福され、無事に結婚式を終えた夜・・・  
二人きりの山町の応接間で、寄り添う桜子と達彦。  
「私・・・幸せだよ・・・これ以上ないくらいに幸せ・・・」甘えるように達彦の肩に寄りかかる桜子。  
「・・俺もだよ・・」達彦も嬉しそうに桜子に囁く。  
長い年月・・・戦争という苦難を乗り越え、互いへの想いを結実させた喜びを、二人は噛み締めていた・・・。  
 
達彦は自分にもたれ掛かる桜子の肩にそっと手を回す。桜子は顔を上げ達彦を見つめた。  
達彦はもう片方の手を頬へと伸ばし、桜子に顔を近づけた。目を閉じる桜子。  
二人の唇がふわっと軽く重なった。唇は離れ、熱く見つめ合う。  
「桜子・・・愛しとるよ・・・」「・・・私も・・・達彦さん・・」二人は強く抱きしめあった。  
達彦の手が桜子の顔を包み込み、再び唇が重なる。達彦は舌で桜子の唇をそっとなぞった。  
桜子はうっとりと目を閉じて、達彦の優しい口付けに酔いしれていた。  
が、達彦の手が首筋から胸に移り、服の上から乳房を擦りはじめると桜子の体に緊張が走った。  
口付ける達彦の唇から、熱い息が漏れる。  
桜子は、達彦から初めて男性としての欲情を感じ、戸惑う。  
初夜・・・夫婦としての初めての夜に起こること・・・。  
桜子もその覚悟はしていた筈だった。・・・でも・・・。  
達彦の手は下がっていき、腰から太ももへと伸びる。  
白いスカートの上から擦り上げると、裾はだんだんと捲れ上がり、達彦の手が内股に触れた。  
桜子は思わず唇を離し、達彦に抱きついた・・・。  
 
達彦はフウッと大きく息をつく。  
「桜子・・今夜・・・その・・」達彦が遠慮がちに話かけると、桜子はコクンと頷いた。  
「ほいでも・・・疲れとるだら?無理せんでも・・いいんだぞ・・」桜子をいたわる達彦。  
「ううん・・大丈夫・・」桜子も顔を上げ息をつくと、恥ずかしそうに達彦を見つめた。  
達彦は見つめ返し、うんと頷くと、桜子をぎゅっと抱きしめ優しく髪を撫でた・・・。  
 
「桜子・・先に風呂に入るといいよ。・・・俺・・少しすることがあるから・・」達彦は体を離す。  
「うん・・・ほいじゃ、先に入らせてもらうね。」二人は応接間を後にした・・・。  
 
店の帳場に座り、明日からの仕事の予定を確かめる達彦。  
さっき思わず触れてしまった桜子の・・・柔らかな胸の膨らみと、太ももの感触が手に残っている。  
書類に目を通すが、頭に入らない。  
 (ダメだ・・・俺がしっかりせんと・・・)  
桜子を体ごと愛したい・・・。自分のすべてを伝えたい・・・。一つに結ばれたい・・・。  
ちゃんと・・・最後まで・・・桜子を導かなければ・・・。  
達彦は大きく息をつき、気持ちを落ち着けようと書類を見つめていた・・・。  
 
風呂で湯船につかる桜子。達彦に触れられた胸を見つめる。  
達彦に、今夜この体を預ける。達彦はどんな風に自分に触れるんだろう。  
男の人のものが体に入ってくる・・・。知識として解っていても想像出来ない。  
自分はそれを受け入れ、達彦のすべてに応えられるだろうか・・・。  
覚悟して、今日という日を迎えたはずなのに・・・  
いざその瞬間を目前に控え、桜子の心は不安で一杯になった。  
 (もう・・・達彦さんの奥さんになったんだで・・・しっかりせんと・・・)  
桜子も胸の高鳴りを抑えるように深く息をつき、風呂から上がった・・・。  
 
脱衣場で浴衣を着付け、引き戸を開けると  
達彦が今まさに戸を叩こうと手を上げて立っていた。驚く二人。  
「!あ・・ごめん・・・もう上がるかと思って・・・」少し焦る達彦。  
「待たせちゃったよね。・・・達彦さん、もう入るだら?」桜子はほんのり上気した顔で訊ねた。  
「ああ・・」湯上りの桜子の顔が眩しくて、達彦は思わず目を伏せる。  
達彦の背中側に回り、ぎこちなく着物を脱ぐのを手伝う桜子。  
桜子の髪と肌から石鹸の甘い香りが漂う。  
達彦の鼓動が早まり、体が熱くなる。  
「ほいじゃ・・・部屋で待っとるから・・・」桜子は小さく呟き、着物を手に寝室へ向かった。  
残された達彦はまたフーッと大きく息をつき、天井を見上げた・・・。  
 
風呂で体を洗う達彦。心と体の高ぶりを抑える事が出来ない。  
 (これじゃあ・・・桜子に触れただけで・・俺・・・)  
桜子はもっと不安なはずなのに・・・このままでは激しい欲情に流されて、桜子を怖がらせ  
傷つけてしまうかもしれない。大切にしたいのに・・・ちゃんと愛したいのに・・・。  
達彦は固くなった自分自身に手を伸ばし、泡のすべりを利用してしごき上げた。  
目を閉じ、脳裏に・・・これから自分と桜子に起こる行為を思い描く。  
指の動きは早まり、顔には苦渋が浮かぶ。  
「・・うっ」達彦が低く呻き、風呂の床に白濁が散り、泡とともに流れていった・・・。  
 
桜子は寝室の鏡台の前で、乾かした髪を梳かしていた。  
足音が寝室に迫ってくる。桜子の鼓動は早まった。  
達彦が部屋の戸を開け入ってくると、桜子は達彦の顔を見る事も無く立ち上がり、布団の上に座る。  
達彦は明かりを消し、桜子の傍に寄り添った。  
桜子の手をそっと握ると、緊張して冷たくなっている。  
達彦はその手を優しく擦り、肩を抱き寄せた。桜子は少し震えている。  
「桜子・・・ほんとに・・・無理せんでもいいんだぞ」心配そうに訊ねる達彦。  
桜子はううんと首を振り、達彦の肩に額をつける。  
達彦は髪を撫で・・・そして、頬に手を添えながら真っ直ぐに桜子を見つめた。  
桜子も見つめ返す。不安を浮かべた切なげな瞳・・・。達彦の胸は締め付けられた。  
「・・・怖いか?」優しく訊ねる達彦。  
桜子は小さく首を振り「・・・ほいでも・・・胸が苦しくて・・・」と言ってふうっとため息を漏らした。  
達彦は桜子の手をとり、自分の胸に当てた。達彦の激しい鼓動が桜子に伝わる。  
「俺も・・・同じだよ・・・」達彦もフッと息をつき、苦笑いをした。  
桜子は少し安心して微笑んだ。  
「好きだよ・・・桜子・・・一つになろう。俺を・・・信じてくれ・・」  
達彦は優しく囁き、桜子はコクンと頷いた・・・。  
 
桜子の顔を引き寄せ、唇を重ねる達彦。  
軽い口付けはだんだんと深くなり、達彦の舌が桜子の唇を割って口内に入り込み、舌に触れる。  
応えるように遠慮気味に舌を絡める桜子。  
達彦は口付けながら、そっと桜子を布団の上に寝かせた・・・。  
 
桜子の浴衣の帯を解く達彦。そして・・・合わせをゆっくりと開いた。  
暗闇に浮かび上がる、透きとおるような白い肌・・・。胸のふくらみ・・・。  
何度も頭の中に思い描いた桜子の裸体。目の前にしても・・・まだ夢を見ているようだ。  
達彦は息を呑み、じっと見つめていた・・・。  
桜子は視線が痛くて、恥ずかしくて、隠すように腕を胸の前で組む。  
達彦はほどくようにその手を握り、口付けた。  
「桜子・・・すごく・・・綺麗だよ・・・」微笑みながら桜子の目を見て、頷いた。  
そのまま桜子の腕を袖から抜き、達彦も浴衣を脱いだ。  
ゆっくりと・・・桜子に覆いかぶさり、じかに肌を重ねる。  
きめ細かな桜子の肌は、しっとりと柔らかく、達彦に吸い付くようだ。  
達彦は桜子を強く抱きしめ、桜子もおずおずと背中に手を回す。  
「桜子・・・ずっと・・ずっとこうしたかったんだ・・・」  
達彦の切ない囁きが、桜子の心を甘くきゅっと締め付けた・・・。  
 
達彦の唇は、桜子の顔・・耳・・首筋を這い、肩を擦る手が・・そっと胸に触れた。  
ピクンと桜子の体が小さく震える。  
肉付きは豊かではないが、丸くて形のいい乳房は、達彦の掌にすっぽりと収まる。  
ゆっくり揉みあげると、ふかふかとして、指の間から肉がはみ出る。  
 (・・・柔らかい)  
達彦は乳房を見つめ、揉み続ける。桜子は固く目を閉じ、時折と息を漏らす。  
達彦が指先で乳首を挟むように摘み上げると、桜色の突起が硬く尖る。  
「はぁぁ・・・」桜子は吐息をもらし、体をよじる。  
達彦の欲情は一気に高まり、しゃぶりつく様に乳首に吸い付く。  
乳房や乳首を食むように、ちゅぱちゅぱと音を立て、夢中になって愛撫する達彦・・・。  
 
桜子は声を押し殺すように口元を手で塞いでいた。  
達彦の愛撫を受け、体に感じた事の無い感覚が湧き上がる。  
「んんっ・・・あんっ!」  
達彦が乳首を強く吸いながら舌を転がし、桜子は思わず声をあげる。  
ハッと達彦は顔をあげ、桜子を見つめた。  
桜子の頬は紅潮し、口からは絶え間なく息が漏れる。  
「桜子・・・感じとるのか?」達彦が訊ねても、桜子は目を閉じ何も答えない。  
達彦は気持ちを抑えるようにまた大きく息をつき、桜子の体に唇を這わせ続けた・・・。  
 
達彦は桜子の体に口付けながら、手を桜子の足に伸ばし擦り上げる。  
体を起こし、下着を脱がせると、桜子はたまらず体をよじり、枕に顔を押し付ける。  
達彦の手は太もも這い、足の付け根の茂みへと伸びる。  
桜子は足の間に無意識に力が入り、体を固くする。  
そんな桜子の頭を優しく撫で、顔に口付けながら、達彦は焦らず優しく太ももを擦った。  
「桜子・・・大丈夫だから・・・お前の全部を知りたいんだ」  
達彦が耳元で囁くと、桜子の足の力が少し緩んだ。  
達彦はすかさず自分の両膝を桜子の膝の間に割り込ませ、足を開くと、秘所に手を伸ばした。  
「ふんっ・・・」桜子の体がビクッと痙攣する。  
指が・・・ゆっくりと陰唇の間に分け入り、しっとりと熱くなった桜子の花びらに触れる。  
 (これが・・・桜子の・・・この奥に俺が入っていくのか・・・)  
達彦は高まる気持ちを何とか抑えながら、確かめるように慎重に何度も入り口を指でなぞる。  
「ううう・・・」桜子は枕に口を押し付け呻いていた。  
くちゅっくちゅっと湿った音が聞こえ、桜子がどんどん潤ってきているのが解る。  
達彦は蜜のぬめりに誘われるように、中指をそっと花びらの中に忍び込ませた。  
第一関節まで沈めると、ざらざらとした粘膜の襞に触れる。  
 (きつい・・・ほんとに一つになれるんだろうか・・・)  
あまりの締め付けに、達彦はその瞬間の桜子の痛みを思い、不安がよぎる。  
指を押し進めると、「くうっ!」っと桜子が声をあげる。  
「痛いか?桜子・・」達彦が呼びかけると、桜子は小さく首を振るが、眉間には苦渋が浮かんでいる。  
達彦がゆっくりと指を出し入れしながら更に奥へと進もうとした時、  
「ああっ!・・・痛いっ・・・」桜子が声をあげ、達彦の腕を掴んだ・・・。  
 
「ごめんっ!」達彦はあわてて指を抜き、桜子を抱きしめる。  
桜子は達彦に強くしがみつき離れようとしない。  
桜子は次々に自分に施される達彦の行為に驚き、戸惑いながら、なんとか耐えていたのだ。  
時折体に触れる熱く固い達彦自身・・・。自分の体から湧き上がる未知の感覚・・・。  
達彦が達彦でないような、自分が自分でなくなるような気がして  
怖くて・・・恥ずかしくて・・・どうしたらいいのか解らない。  
達彦を信じて身をまかせようと決めたのに・・・達彦を心から愛しているのに・・・どうして・・・。  
桜子の気持ちは混乱していた・・・。  
 
達彦はそんな桜子の気持ちを感じ取っていた。  
体は熱く反応していても、達彦の心は不思議と落ち着いていた。  
自分でも意外だった。  
桜子に触れたとたん、我を失って、自分の欲求のままに桜子のすべてを奪ってしまうのではないか。  
これまでの長い年月・・・何度もそんな事を思い描きながら自分を慰めてきたから・・・。  
でも・・・今の桜子を見ていると、とてもそんな気持ちにはなれなかった。  
達彦は桜子と抱き合ったまま、布団に体を横たえた・・・。  
 
「桜子・・・今日はもう・・これでやめよう・・・」優しく囁く達彦。  
「え!?・・・ほいでも・・・」桜子は驚いて達彦を見つめた。  
「いいんだよ・・・無理せんでも・・・」達彦は桜子の髪を撫でる。  
そんな達彦の優しさも、今の桜子を不安にさせるだけだった。  
「達彦さん・・私が悪いんだね・・痛いって言ったから・・・がっかりした?・・私のこと・・」  
悲しげな桜子の目に涙が溜まっていく。  
(そんなつもりじゃ・・・!)達彦は焦って首を大きく横に振る。  
「違うんだよ、桜子。お前は悪くない。きっと・・・俺が悪いんだよ。  
 お前はすごく綺麗で・・眩しくて・・俺はもっと触れたくて、お前が欲しくてたまらない・・・  
 ほいでも・・・それ以上にお前が大切なんだ・・・。無理やり・・なんて・・・出来んよ・・・」  
「達彦さん・・・」桜子は切なく囁く。  
「桜子・・・俺たちは夫婦になったんだぞ。  
 これから・・ずっと・・長い時間を一緒に生きて行くんだ。・・・ゆっくりで・・いいんだぞ・・」  
桜子を真っ直ぐに見つめ、微笑み、額に口付けた。  
そして、包むように桜子を抱きしめ、優しく肩を擦った・・・。  
 
達彦の暖かなぬくもりと優しさに包まれ、桜子の心の中から不安が消えていく。  
自分は何を恐れていたんだろう・・・。  
行為そのものや、自分を取り繕う事に気を取られて、達彦とちゃんと向き合っていなかった。  
達彦は自分の心と体を求め、すべてを受け入れようと、こんなにも愛してくれているのに・・・。  
桜子は勇気を出して達彦に語りかけた。  
「達彦さん・・・ごめんね。私・・・ちゃんと達彦さんを受け入れたい。  
 ほいだから・・・もう一度頑張らせて・・・。」  
達彦はそんなけなげな桜子が可愛くてたまらない。  
「桜子・・・頑張るなんて・・・そんな・・」言いかけた達彦に口付ける桜子。  
桜子は甘く・・・達彦の唇を包む。達彦の頬に優しく口付け、耳元で囁く。  
「達彦さんが好き・・・愛してる・・・私を・・もらって下さい・・」  
「・・・桜子・・・」  
達彦が桜子を見つめると、桜子は切なく・・しかし意思を持った瞳で達彦を見つめ返した。  
「わかった・・・ほいでも、きつかったらちゃんと言うんだぞ」達彦も心を決め、桜子は頷いた。  
達彦はまた桜子に覆いかぶさり、丁寧に桜子の体を愛撫した・・・。  
 
達彦は桜子の足を開き、秘所に口付けた。  
 (そんな所に・・・ああ・・)  
桜子は、体の芯から熱い疼きが湧き上がり、鳥肌が立つように体を震わせた。  
達彦が舌を這わせると、花びらの上の突起に触れる。  
 (ここが・・敏感な部分か・・・)  
達彦はその花芽を口に含み、チロチロと舌で転がす。  
「はあんっ!」桜子は大きな声をあげ、布団を掴み、体を仰け反らせた。  
 (やっぱり・・・感じるんだな・・)  
達彦は更に舌を擦り付ける様に舐め続ける。  
「あんっ・・・ううん!・・・達彦さん・・・私・・」  
桜子はあまりの強い刺激に布団の上を這い上がり、達彦の口から逃れようとする。  
達彦はそんな桜子の腰をぐいっと引き寄せ語りかける。  
「桜子・・・いいんだよ。・・感じてくれ・・隠さんでくれ。俺は・・・嬉しいんだ・・」  
そしてまた秘所に顔を埋めた。  
ピチャッ・・・ピチュッ・・・と、達彦の吸い付く音と蜜の水音が聞こえる。  
「はぁはぁ・・・あああ・・・ううっ・・」  
桜子は頭の中がぼうっとして、力が抜け、されるがままになっている。  
達彦は舌で舐め上げながら、また・・・桜子の花びらに指を押し込む。  
桜子の緊張が解けているので、さっきより幾分滑らかに挿入できる。  
熱さも・・・増しているようだ。達彦は指を進めながら奥へ向かう角度を確かめる。  
「ああっ!」桜子の喘ぎ声と同時に粘膜がビクンと震え、指に伝わる。  
 (すごい・・・)  
達彦はもう、この熱く震える桜子の中に入りたくてたまらなくなった。  
意を決したように体を起こすと、桜子を熱く見つめた。  
桜子の瞳は熱く潤み、今までに見た事が無い顔をしている。  
自分だけに見せる女の顔・・・。愛しくてたまらない。  
「桜子、入れるよ。・・・痛いと思うが・・力を抜いて楽にしてみてくれ・・」  
桜子は達彦を見つめ、唇を噛みコクンと頷いた・・・。  
 
達彦は桜子の膝を抱え、位置を定める。  
怒張した自分自身をあてがうと、ゆっくりと先端を入り口に沈めた。  
桜子は達彦に言われたように、力を抜こうとフーッと息を吐く。  
苦しそうな桜子の表情。痛いに違いない・・・でももう自分を抑えられない。  
中に入りたい・・・もっともっと深く・・・。  
達彦も我を失いそうな激しい欲情を抑えるように、何度も大きく息をつき  
慎重に・・・でも力強く腰を挿し進めていった。  
「くうっ・・!」桜子は眉間にしわをよせ、歯を食い縛りえる。  
自分の中に、熱く固いものがめり込み、強い圧迫感を感じる。  
 (痛い・・痛い・・・でも・・・達彦さんの全部を受け入れたい・・・)  
「桜子・・・大丈夫か・・」達彦は呻くように呼びかける。  
「・・・うん・・」消え入りそうな声で答える桜子。  
「桜子・・・全部入れるから・・・こらえてくれよ・・」  
達彦はまた大きく息をつくと、一気に力を込めて桜子を貫いた・・・。  
 
「ひああっ!!」桜子が叫ぶ。気を失いそうな激しい痛み。  
「うああっ・・・」達彦も自分自身を襲う強い快感に必死で抗っていた。  
額から汗が噴出す。  
一番強い痛みをなんとか乗り越えた桜子が、そんな達彦に呼びかける。  
「達彦さん・・・大丈夫?」  
「ああ・・・お前は大丈夫か?」搾り出すように答える達彦。  
「うん・・・全部・・入っとるの?」桜子が訊ねる。  
「そうだよ・・・一つになれたんだ・・・」達彦は桜子に体を重ね口づけた。  
強く抱き合い、一つに重なり合う二人・・・。  
 
達彦の自分自身を抑える抵抗も限界に近づいていた。  
もっとこうして繋がっていたいのに・・・桜子の中を味わいたいのに・・・  
「桜子・・・動くから・・・もう少しこらえてくれ・・・」  
言い終わらないうちから、ゆっくりと腰が動き出す。  
桜子をいたわるように腰を動かすつもりが、強い快感にまかせて激しさを増す。  
もう何も考えられない。  
「うううっ・・・」低く呻き桜子を突き続ける達彦。  
桜子もまた痛みをこらえて達彦にしがみつく。  
「桜子っ!・・・うああっ・・・!」  
達彦はビクンッ・・ビクンッと体を痙攣させ、桜子の中もドクドクと脈打つように震えた。  
達彦が自分自身を解放し、精を放ったのだ。  
不規則に荒い息を吐き、自分の上で震える達彦を桜子は見つめた。  
苦しみから解放されたような、満たされたような、何ともいえない恍惚の表情。  
自分の体によってもたらされた男の絶頂。  
桜子は達彦の頭を優しく撫でた。  
体の痛みよりも、達彦への愛しさと、一つに結ばれた喜びが込み上げ  
桜子の瞳からは涙がこぼれた・・・。  
 
達彦がゆっくりと自分自身を引き抜く。ずるんと抜き出ると桜子はまた痛みを感じた。  
圧迫感からは解放されても、桜子の中は痺れたようにジンジンと痛む。  
同時に生暖かい白濁が花びらから溢れだすのを感じた。  
「ごめんな・・・痛かったな・・・」痛みをこらえる桜子を切なく見つめ、体を擦る達彦。  
「ううん・・・大丈夫・・・」桜子は甘えるように達彦の背中に手を回し抱きつく。  
 (どんなに辛かっただろう・・・。怖かっただろう・・・。  
  俺のために耐えてくれたんだな・・・。俺の・・桜子・・・)  
「ありがとう・・・桜子・・・もう・・お前を絶対に離さんよ・・・」  
達彦は切なく囁き、ぎゅっと抱き返すと、桜子に熱く、優しく口付けた・・・。  
 
二人は暫く抱き合っていたが、達彦はゆっくり体を起こす。  
鏡台にある懐紙に手を伸ばすと、桜子に背を向け、自分自身を拭った。  
懐紙には桜子の破瓜の血が付いていて、達彦の心が痛む。  
自分自身を拭き終えると、何枚かの懐紙を手にし、桜子の秘所にそっとあてがう。  
「あ・・・」桜子は恥ずかしそうに達彦の手から懐紙を取る。  
布団の上に敷いていた桜子の浴衣にも血液が散っている。  
「まだ・・・痛いか?」心配そうに訊ねる達彦。  
「大丈夫・・・ほいでも・・・動くと少し・・・」桜子が答える。  
「ほうか・・・。桜子、ちょっとそのままじっとして待っとってくれ」  
達彦は手早く浴衣を着付け部屋を後にする。  
桜子は自分の秘所にあてていた懐紙に付いた血液のしみを見つめた。  
 (私・・・ちゃんと・・・達彦さんの奥さんになったんだ・・・)  
そんな事を思いながら、横になっていた・・・。  
 
達彦は絞った手拭いと、桜子の着替えの浴衣を持って部屋に帰ってきた。  
「これでいいかな?」浴衣を見せる達彦。  
「うん・・・ありがとう」桜子はゆっくりと体を起こす。  
達彦は桜子を支えるように肩に手を添え、新しい浴衣を羽織らせる。  
「拭こうか?」達彦が訊ねると、桜子は首を振り  
「恥ずかしいよ・・・大丈夫・・自分でするから・・・」と言って手拭いを受け取る。  
達彦は微笑み、背を向けて秘所を拭う桜子の肩を擦った。  
桜子は下着を履き、浴衣を着付けようをゆっくり立ち上がる。達彦は体を支えた。  
「ありがとう・・・もう大丈夫だで・・」  
桜子はそんないたわりが嬉しくて、達彦に微笑みかけた・・・。  
 
布団の上の浴衣も片付け、二人はまた横になった。  
達彦は桜子の肩に腕を回し、桜子は達彦の胸に頬を寄せる。  
「桜子・・・その・・・こんなこと・・・きつくてもう嫌になったか?」  
達彦は桜子の顔を覗き込み、少し不安げに語りかけた。  
桜子は胸に顔をうずめ、ううんと首を振り  
「ほんなことない・・・初めてでビックリしたけど・・・嬉しかった」  
恥ずかしそうに答える。  
「ほうか・・・良かった・・・」達彦は安心したようにほっと息をつく。  
「達彦さんは?」桜子も訊ねる。  
「俺は・・もう・・すごく嬉しいよ・・!夢みたいだ・・・」桜子をぎゅっと抱きしめる達彦。  
桜子も照れたようにふふっと笑い達彦にしがみつく。  
「男の人って不思議だね・・・」桜子が呟く。  
「ん?」達彦が顔を覗き込む。  
「達彦さん・・・なんか違う人みたいだった」達彦を見上げる桜子。  
「え・・・ダメ・・・かな?」達彦はまた不安そうな顔をする。  
「ううん・・ダメじゃないよ。・・・好きだよ・・・」  
また照れたように微笑む桜子。達彦も嬉しそうに微笑み目を細めた。  
「桜子・・・今日から・・・朝まで一緒におれるんだな」桜子の頭に頬を寄せる達彦。  
「ほうだね・・・嬉しいね・・・」  
お互いのぬくもりに包まれ、幸せを噛み締める二人・・・。  
 
達彦が桜子の髪を撫でていると、桜子はスウッと眠りに落ちた。  
 (かわいいな・・・)  
微笑み寝顔を見つめる達彦。  
愛しさがこみ上げ、体がまた熱くなってくる。  
 (俺・・・きっとこれからは毎日寝不足だな・・・)  
それでも構わないと思う・・・桜子が傍にいてくれたら・・・。  
達彦は桜子の頬にそっと口付け、優しい瞳で見つめ続けた・・・。  
 
二人の・・・「初めて」の夜は静かに更けていった・・・。  
 
(おわり)  
 

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