あの浴室での情事以来、達彦が誘って、二人はしばしば共に風呂をとることがあった。  
一緒に入浴するのは恥ずかしくもあるが、ゆっくり二人で湯船に浸かるのも  
悪くない。 軽口をたたきあい、子供のように湯を掛け合うこともある。  
一緒に入浴した湯上り後は、約束のように、達彦は寝室で桜子を求めた。  
ある時、桜子が風邪を引いて熱を出し、大事を取って3日間寝こんだことがあった。  
口に入るものを扱う家業、山長では衛生には気を遣っており、  
桜子の申し出で、達彦とは別の部屋で布団を敷き養生していた。  
達彦と別に床を取るのは、寂しかったが、そんなことよりも、早く風邪を治して店の仕事  
に戻ること、また店に出て味噌を扱う達彦に染つさないことを一番に考えた。  
すっかり咳が取れて熱も下がり、明日から店に出ようという前夜、桜子は  
三日間の発汗をきれいに洗い流すために、ゆっくり風呂に浸かろうと思い、  
先に達彦に風呂を促したところ、  
「桜子、一緒に入ろう。二晩お前と別の部屋で床を敷いて寂しかったで、今日は一緒に  
入らんか。」  
寂しかったといってくれる達彦の言葉は嬉しかったが、風呂の後、いつものように求めら  
れても、熱で体力を消耗した桜子は、達彦の愛撫に充分に応えられる自信がなかった。  
「い、いいよ。今日はお風呂から上がったら、寝冷えして風邪がぶり返さんように、早く休ませてもらうわね」  
とそれとなく達彦に釘をさしたが、達彦は分かってくれただろうか。  
風呂では、達彦が病み上がりの桜子の全身を、おまけに、汗でべとついた桜子の長い髪まで  
丁寧に優しく洗い上げてくれた。  
(達彦さん、今日は分かっとってくれるみたいだわ。)  
最初の小さな心配は取り越し苦労に終わりそうだ。  
「今日は、いつもに比べて大サービスじゃん、達彦さん優しくしてくれるで、たまには風邪で寝こむのも悪くないね」と湯船の中で冗談を言う桜子。  
「いつもは優しくないか?俺。こうやって優しくしてるつもりだけど」  
と、桜子を浮力でくるりとあお向けにし、左手で桜子を下から支えるような  
態勢をとり、乳首を優しく吸った。空いた右手で、秘所に指を這わせる。  
体力が消耗して、達彦の愛に素直に応えられないと思っていたが、  
三日ぶりに受ける愛撫は、桜子の脳天に新鮮な刺激を走らせた。  
しばらく達彦の愛撫に身を任せていたが、自分でも意外なほど、蜜壷から溢れ出てくる  
のがわかる。 (ああ)っと切ないため息が漏れそうになるのをぐっと呑みこむ。  
いつもなら興奮で荒くなる息を抑えるところだが、今日は興奮に力を奪われ、逆に脱力してぐったりしていた。  
達彦が桜子の手を取り、屹立を手に触れさせた。  
「桜子、ほいでも、今日は止めとくか」  
「。。。達彦さんが欲しいならいいよ…」固く大きな屹立に観念したようにつぶやいた。  
 
「桜子、お前に負担にならんようにするよ、ここに手をついてみりん」  
と立ちあがって桜子を前かがみにさせ、手を取り湯船の縁を掴ませた。  
達彦がしゃがみこみ、屈曲した桜子の体を後ろに周り、秘所を後ろから舌でしばらくの間  
舐めあげ愛撫し、桜子を充分潤わせた。  
体力が消耗していても、体は正直に反応し、透明な粘液が桜子の秘所全体を覆った。  
最後に指で蜜壷の通り具合を見て、桜子の受け入れ態勢が整ったことを達彦は確認した。  
「桜子、後ろから入れてみるがいいか? お前はこのままの姿勢で、楽にしとってくれればいい。つらくないか?」  
(後ろから!…)  
後ろから、しかも風呂場、明るい電灯の下で、湯気を浴びながら奪われる…。 脱力して朦朧とした桜子の頭の中では、もう何も考えられなくなっていたが、(窓を閉めんと…)妙にそのことは、朦朧とした中で一点だけ、はっきり意識した。  
「達彦さんの良いようにして。でも、天井の小窓は閉めて」  
通気のための小窓である。  
「分かった。」 窓を密閉すると、  
「入れるよ、桜子。楽にして」地面に水平に持ちあがった達彦自身は、剥き出しになった  
入り口にあてがった。 後ろからの挿入は、仰向け  
になり開脚して脚を持ち上げるより桜子の体の負担は少ないはずだし、達彦もスムースに  
入り口を探し当てられ、角度的に無理がない点でも、桜子に無用の負担がかからないだろ  
うから、一度試してみたい、と思いつつも、一方で動物の取るような姿態に桜子が戸惑う  
のではないかという心配もあり、達彦は試みる機会をうかがっていた。  
桜子の、白く美しいまんじゅうのようなお尻に手をあて、自分の体を支える達彦は、  
腰を使って、自身を出し入れした。  
 
そのたびに、風呂場にパンパンパンと、肉がぶつかり合う音が響く。  
いつもの体位より、深くしっかり確実に挿入できるため、くちゃっくちゃっくちゃという  
桜子の粘液と肉襞、そして達彦自身が織り成す音も加わる。正常位に比べると深い結合間  
が得られ、いつもより早く達彦の眉間に苦渋が浮かび、はや満潮の時を迎えた。  
ドクッドクッドクっと白い精液が、桜子の中に注ぎ込まれる。  
しばらくは、その動物の交尾のような態勢で、つながっていたが、我に返った達彦は自身を抜いて、「桜子、大丈夫か?」と縁に手をついたままの桜子の様子をのぞきこんだ。  
「うん」と放心したようすで眼を閉じて、うなだれていた。  
ふと見ると、壷から白い液があふれ出て、桜子の後ろ腿を伝って二筋も三筋ものしずくを作っていた。  
 
「桜子、おいで」と、脱力した桜子を腕に抱いて、湯船に達彦は沈み  
しばらく二人は、いつも布団の上で後の余韻を静かにけだるく楽しむように、  
湯船で、夢うつつでまどろんだ。  
「後ろからはどうだった?」と桜子の耳元に睦言を囁く。  
「…そんなこと、達彦さんのいじわる」何も言えずに桜子はうつむいてしまった。  
「いつもより、お前の姿勢は楽だっただら?」  
うつむいたまま、小さくうなずいた。  
「これから時々、後ろからしてもいいか?」  
(達彦さんの好きにして。私はもう達彦さんのものだで)、と桜子は達彦の首に手を回して胸に顔を埋めた。  
 
二人は充分体も心もしっとり満たされて温まり、風呂を上がった。  
桜子が熱で体力と意識が消耗している状態だったことで、後背位を試みる良い機会でもあったし、温かい浴室で交わり、桜子はそのまま湯冷めせずに床につくことが出来た。   
今夜のセックスは達彦にとって、自らの快感だけでなく、桜子を気遣う自分としても満足  
の行くものであった。  
「風呂では、そのまま洗い流せるから後始末が楽だな。これから風呂で抱いてもいいか?」  
「やあね、達彦さん」  
昨日まで別室で眠っていた桜子が二人の寝室に戻り、また今日から二人は抱き合って眠る。  
 
以上   
 

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