昭和22年。桜子と達彦は結婚して初めての新年を迎えていた。  
元旦は店の者を集めての新年会。  
紋付袴姿のりりしい当主達彦と、結婚して半年以上がたちしっとりと女らしさが増した留袖姿の若女将桜子の姿に  
仙吉や野木山といった、二人を見守ってきた店の衆も、二人の幸せを心から喜び、戦後の新しい時代の幕開けを感じ  
山長は質素な中にも希望に満ちた、新たな年の始まりを予感させていた。  
 
そして2日。元旦の賑やかさが嘘のような山長の母屋で、桜子と達彦は二人きりの静かな正月の時間を過ごしていた。  
桜子は台所で達彦のために酒の燗をつけ、居間へと運んでいった。  
「静かだね・・・。今日は挨拶の方々も、誰も来んのかしらね。」桜子は達彦の皿におせち料理をよそいながら話した。  
「ほうだな。昨日沢山おいでて下さったし・・・今日は店のもんも休みだで来んだろう。」達彦は杯を飲み干す。  
(こんな安らいだ気持ちで正月を迎えるのは何年ぶりだろう・・・)二人は感慨に耽っていた。  
 
達彦は桜子の手料理に箸を伸ばす。  
「達彦さん・・・私の作ったおせち・・・口に合うかしら。どう?」心配そうに聞く桜子に  
「うまいよ。よく出来とる。」優しく微笑む達彦。桜子にも笑みがこぼれる。  
「桜子、こっちに座ってお前も呑めよ。」達彦が酒をすすめる。  
「うん・・・ほいじゃ、少しだけ・・・」桜子は杯を受け取ると、達彦に勺をしてもらい、クイっと飲み干した。  
桜子の喉が波打ち、達彦はその白い首筋に見とれる・・・。  
「桜子・・・その着物・・・よく似合っとるよ。綺麗だ。」  
桜子は華やかな桜色の晴れ着を着て、唇にはうっすらと紅をひいていた。  
「この着物?これ・・・お義母さんが婚約した後に私のために作って下さったもんだよ。  
 去年はおじいちゃんが亡くなったし、こんな華やかなもん・・・と思ったけど・・・。」  
達彦に褒められて、桜子は嬉しそうに着物の袖口を持ち、達彦に柄を見せる。  
「ほうか・・・お袋が・・・」達彦は仏壇に目をやる。「お前の姿を見て、きっとお袋も徳次郎さんも喜んどるな。」  
「ほうだね・・・」と言いながら桜子は達彦の手を優しく握った。  
達彦は桜子を見つめ、握られた手をぐっと引き寄せ、桜子に軽く口付けた。  
「・・・んっ」いきなり引き寄せられ、唇を奪われた桜子だが、そっと目を閉じる・・・。  
 
達彦は時々、昼間店の仕事をしている時や、家事をこなす桜子にもこんな風に突然口付けることがある。  
もちろん店の者に気づかれないように軽く・・・そしてその後は何事も無かったように振舞う。  
その度に桜子は、(好きだよ・・・)(かわいいよ・・・)と達彦に囁かれているようで、胸がときめいた。  
 
達彦は一度唇を離し、桜子を見つめ、今度は強く抱きすくめ、荒々しく唇を重ねた。  
(愛しとるよ・・・こんなに・・・)思いをぶつけるような熱い口付け。  
達彦の手は桜子の袖口から忍び込み、桜子の二の腕や肩を擦る。  
達彦の口付けが、頬から首筋に移り、荒い息使いを感じたとき、桜子は達彦の胸に手を当て、体を離した。  
「達彦さん・・・?酔っっとるの?・・・ダメだよ・・・。」桜子がたしなめるように言った。  
「・・・酔っとるよ・・・お前に」達彦はそんな制止を払うように桜子の耳元に顔を寄せ囁く。  
「どうしたの?・・・そんな事言って、おかしいよ達彦さん・・・誰か来たらどうするの?」困惑する桜子。  
「・・・誰も来んよ・・・。」達彦は桜子の首筋を擦り、襟元から手を差し込もうとする。  
「!ダメだよ・・・着崩れするで・・・それに、今日は有森の家にも行くことになっとるでしょ?」桜子は達彦の手を抑える。  
「まだ・・・構わんよ・・・。」達彦は桜子に手を添えられたまま、着物の上から乳房を擦った。  
そして、乳首のあたりを指で刺激する。・・・桜子の乳首が固く隆起するのが着物の上からでも伝わる。  
「・・・ん・・・ダメだよ・・・」桜子も甘いため息を漏らす。  
達彦は桜子に口付け、舌を絡めた。そして今度は着物の裾をまくって、膝や太ももを擦った。  
「んっ・・・あふん・・」唇を塞がれながら、桜子の体からはだんだんと力が抜けていく。  
達彦の体を離すために胸に当てた手が、達彦の首に・・・そして口付ける達彦の頭を引き寄せるように伸びる。  
達彦は羽織を脱ぎ、後手で自分の帯を解いた・・・。  
 
達彦は桜子の背中側に廻り、桜子の着物の裾をたくし上げ、腰巻を解いた。  
桜子の白いお尻が明るい日の光の下に露になる。達彦は太ももの内側からお尻も撫で、ゆっくりと秘所に手を伸ばした。  
「んっ・・・ああんっ」桜子が喘ぐ。すでに濡れた花びらを指でなぞると、どんどん蜜が溢れてくる。  
達彦は桜子の腰を抱えたまま、仰向けに体を横たえた。桜子が達彦の顔をまたぐ格好だ。  
「・・・達彦さん・・・恥ずかしい。」昼間の明るさの中で、達彦にすべてを見られている・・・  
桜子は恥ずかしくてたまらず、が、同時に体の中心が熱く疼くのを感じていた。  
達彦は花びらに指を挿し込み、かき回す。桜子は嬌声をあげ、腰をくねらせた。  
「桜子・・・」達彦が桜子に呼びかけると、桜子は黙って達彦の着物の裾を肌蹴させ、褌の紐を解いた。  
そして、そそり立つ達彦自身を口に含み、舌を動かす。  
「う・・・いいよ・・・桜子・・・」達彦は熱い息を漏らし、そして桜子の腰を顔に引き寄せ秘所に口付けた。  
「うぐ・・・んっ」達彦を咥えながらも快感に喘ぐ桜子。  
達彦は舌で花芽を擦り、刺激した。すると桜子も肉棒の根元をしごきながら亀頭を舌先で刺激する。  
達彦が花びらから溢れる蜜を吸い上げると、桜子も根元近くまで咥えた肉棒を吸いあげる。  
二人は喘ぎ、苦渋の表情を浮かべながらも、お互いに望む事を伝え合う様に、快感を貪るように、性器を愛撫し合った・・・。  
 
達彦は桜子の花びらから、その上の固い蕾までを舌先で舐めあげる。  
「ああっ!!」強い刺激に、桜子がたまらず逃れようと腰を達彦から離そうとする。  
が、達彦はそれを許さず、強い力で桜子の腰を抱え込み、執拗に舌先で愛撫し続けた。  
「ああんっ!・・・た・・つ彦さ・ん・・・もうダメ・・・許して・・・」桜子の声が震える。膝もガクガクと震えている。  
「・・・俺もだよ・・・」達彦はようやく唇を離し、桜子の体の下をすり抜けるようにして、桜子の背後に廻った。  
 
桜子は居間の机で体を支え、荒い息をしている。  
達彦は桜子の腰を抱え、お尻を持ち上げると、熱く怒張した自分自身をあてがった。  
そして、ゆっくりと花びらの中に挿し込んでいく・・・。  
「はぁぁ・・・ん」桜子は口元に笑みを浮かべながら吐息を漏らす。  
達彦は繋がった部分を見つめながら、根元まで自分自身を沈めた。  
桜子の中は、熱く、柔らかく、そしてヒクヒクと震えながら達彦に吸い付いてくる・・・。  
達彦はじっとその刺激に酔いしれていた。  
「・・・達彦さん・・・どうしたの?」動かない達彦に桜子が呼びかける。  
「桜子・・・お前の柔らかさ包まれとる・・・いい気持ちだ。」恍惚の表情を浮かべる達彦。  
「それに、こうしとるとお前が俺を欲しがっとるのがよくわかるよ・・・」桜子の耳元に顔を寄せ囁く。  
そして耳たぶを軽く噛み、舌を這わせる。  
「・・・解っとるなら・・・焦らさんで・・・」桜子は腰に回した達彦の手を取り口付け、甘く噛んだ。  
「・・・わかったよ・・・」笑みを浮かべた達彦がゆっくりと腰を動かした。  
「んっ・・・ああ・・・素敵・・・達彦さん・・・」桜子もうっとりと目を閉じた・・・。  
 
達彦は徐々に腰の動きを早める。達彦の低いうなり声と桜子の喘ぎ声が部屋に響く。  
「ああっ!」達彦がさらに激しく腰を突き上げ、桜子の手が机の上の杯をはじく。床に酒の滴か散る。  
「うっ・・・はぁはぁ・・・桜子・・・いくよ・・・!」達彦の声が遠くに聞こえ、桜子は目の前が白くなった。  
ビクビクンッと粘膜が痙攣し、達彦はそんな桜子を背中から包むように強く抱きしめ、自らも精を放った。  
 
二人はそのまま繋がっていたが、呼吸が少し落ち着くと、達彦が自分自身をそっと抜いた。  
「桜子・・・良かったか・・・?」耳元で優しく囁く達彦。  
「達彦さん・・・!」桜子は振り返り、達彦の首にしがみ付く。そのまま床に倒れこむ二人。  
 
(こんなに愛してる・・・)お互いの思いを伝え合うように甘い口付けを交わす二人。  
「桜子・・・俺・・・幸せだよ。お前がおってくれるだけで・・・これ以上無いくらいに幸せだ。」  
桜子の肩を抱きながら達彦が囁く。  
「私も・・・」達彦の胸に顔をうずめる桜子。  
「今年もよろしく頼むな。」微笑みかける達彦に、桜子も笑顔で頷いた。  
 
二人がうっとりと余韻に浸っていると「ごめんくださーい!」と玄関で呼ぶ声か聞こえる。  
「笛子ですー。桜子ぉー!おるのぉー?」子供たちも一緒のようだ。  
はっ!!と二人は我に帰り、顔を見合わせ慌てて立ち上がる。  
「笛姉ちゃんだ!・・・どうしようっ」焦りまくる桜子。  
「達彦さーん、おられんのですかー?」笛子もだれも迎えに出てこないので不思議そうに奥を覗き込む。  
「たっ達彦さん!私お便所に行って来るから、達彦さん・・・ああ、それちゃんと片付けてて・・ねっ!」  
桜子は床に落ちた達彦の褌を指差すと、腰巻を股にあてがい、ばたばたと走り去る。  
「えっ!?・・・ああ・・・!」達彦はあたふたと部屋の隅に積んであった座布団の間に褌を隠した。  
そして、急いで帯を締めなおす。  
「誰もおられんの〜?お邪魔しますよー!」っと言いながら笛子の足音が居間に迫ってくる。  
ちょうど達彦が帯を締め終わる頃、笛子が居間に入ってきた。  
「なんだぁー。達彦さんいらしたんですか。ごめんなさいね、子供たちが桜子を迎えに行くって聞かんもんで」  
「そっそうですか?いらっしゃい。」帯を整えながら、不自然に子供たちに笑いかけ挨拶する達彦。  
何度も瞬きをする。そんな達彦を不思議に思い「どうかなさったんですか?」笛子が訊ねる。  
「いっいえ・・・ちょっと酔ったみたいで・・・」と達彦が答えたとき、桜子が髪に手を当てながら戻ってきた。  
「笛姉ちゃん、みんなも、よく来てくれたね!後で行くって言っとったのに・・・まあ座って・・・」  
そう言いながら、座布団を持ち上げた。「桜子っ!それはっ!」達彦が慌てたが、既に遅し・・・  
達彦の褌が床に落ちた・・・。(ああ・・・しまった・・・)という顔の二人。  
「何?これ・・・なんでこんな所に褌が・・・」っと言いかけた笛子の表情が見る見る変わっていく。  
「桜子!・・・あんたたち・・・ええ!?」あきれたように驚く笛子に  
「ごっごめんっ!姉ちゃん、ちょっと待っとって!」褌を拾い、達彦を追い立てるように桜子は部屋を後にした。  
 
寝室で達彦の着替えを手伝う桜子。  
「もうっ!あんな所に隠したら、すぐにばれちゃうじゃん!」達彦に怒る。  
「ごめん・・・ほいでも他に思いつかんくて・・・。」褌を締めなおしながら謝る達彦。  
「それに・・・誰か来るかもっち言ったのに、達彦さんがあんなこと・・・」さらに達彦を責める。  
「ほいだって、お前だって・・・」(あんなに感じとったじゃん・・・)言葉を呑みこむ達彦。  
「・・・ほうだけど・・・もうっ!」達彦の背中をポンと叩く。  
達彦は振り返り、苦笑いをした。桜子のふくれ顔も笑顔に変わっていった・・・。  
 
居間に残された笛子は、あきれたようにため息をつき、床に転がった杯を拾い上げ、手酌で酒を一杯飲み干した。  
「・・・幸せなんだね・・・桜子・・・」ふふっと笑い、安心したように呟いた・・・。  
 
(おわり)  
 

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