あと少しで、ついに二人が結ばれる日が訪れるわけだが、それでも桜子への思いを抑えきれず、  
桜子を奪うことこそ踏みとどまったが、欲望に負けついに秘密の場所に手を触れてしまった達彦。  
一方、達彦によって、今まで知らなかったからだの疼きを桜子は憶え、その夜、  
まんじりともせずになかなか寝つかれなかったが、ちょうどそのころ、達彦も  
自室のベッドに横になったものの、昼間の桜子の体内の感触が蘇り、悶々としていた。  
入営前にたった一度、桜子の唇に触れたが、悲惨な戦場を体験し、身も心も傷ついた達彦  
には、遠く淡いほのかな思い出だったし、命の儚さや戦友の悲惨な最期を知って、復員後  
に桜子や周囲に心を開くまで、愛だの恋だの、愛しい娘への男の本能、などとは、忘れて  
いた感情だった。  
何年かぶりに触れた桜子の柔らかい唇と華奢な体に、達彦の男の本能が蘇る。  
しかし、いくらあと数日で夫婦になるとはいえ欲望のままにけじめを破り、桜子の気持を傷つけてまで、結婚前に桜子の純潔を奪うことは、本望ではない。   
理性では、けじめをつけても、男としての本能が、初めて触れた桜子の秘所の感触を呼び戻し、  
目を閉じた闇に、指の感触から描く桜子の秘所が鮮明に映し出され、ますます眼が冴えて  
寝つかれなかった。  
着衣の上から触れた胸の丸み。  
華奢だけど、すべすべとした感触を湛える膝と太もも。  
そして、太ももよりも体温が高い下穿きの中。  
柔らかい襞のような肉が何枚もみっちりつまり、少し中に指を入れると、生卵のような  
ぬるぬるした感触と温かさが指に絡み付く。  
そのぬめりが狭い肉襞の間でも指の動きをスムースに誘導した。  
指を少し上に探ると、小さな蕾に触れる。これが、俗に言う一番敏感なスポットか。  
奥に進み、ゴムのような弾力のある入り口らしき場所に触れ、指を更に進めると、狭い中でも指に添って弾力ゴムが開き、  
指がそのまま中に沈んでいった。指に肉壁がぴっちりとまとわりつく。  
これが、桜子の…、この狭いところが俺を受け入れるのか…。  
味噌蔵で遊ぶような幼い頃から、20年来ずっと見守り、よく見知ってきた桜子の、  
秘密の部分にはじめて踏み入る感動と興奮に、我を忘れて更に指を進めたところで、  
桜子に痛みを与えてしまい、その叫び声で、ハッと我に返った。  
 
三つ編みお下げ髪でセーラー服のおてんば娘だったのに、その秘所は、歳月をへていつのまにか、  
豊かな肉襞が整い、たっぷりの潤いを湛えて、達彦を滑らかに誘導する、受け入れ態勢万全の大人の女の体に発達していた。  
「こっちを覗かんで!」マロニエ荘に居た頃、無邪気で意地っ張りな子犬のように、  
しょっちゅう達彦に反抗し、達彦の思いなど気づかないような子供だった桜子が、  
1週間後の祝言の夜、自分に降伏し肌を許す、この秘所を自分に開く。  
自分がそこを貫く時、どんな表情を見せるのだろう。恥らうのだろうか、  
怖がったり戸惑ったりしないだろうか。   
自分はその時、落ちついて桜子を優しく誘導できるだろうか。  
着衣の上からしか触れていない胸の膨らみを見たい。直接、胸の丸みを手で、唇で触れたい。  
真っ白な胸に小さな乳首を想像する。そこを唇で吸うときの感触や桜子の表情を知りたい。  
そして、指でしか触れていない秘所、一番感じる蕾や肉襞の様子ををこの眼で見たい、唇で愛撫したい、愛撫する時の桜子が浮かべる表情を見たい。  
どんな色をしているのか。どんな風に潤っているのか、蕾はどんな形を湛えているのか。  
 
夢想に耽って、手は無意識のうちに、自分の抜身を愛撫していた。  
鬱積した夢想に酔いながら、懐紙をあてがい自分の抜身をリズミカルに上下に  
動かしはじめる。  
夢想の中の桜子の秘所に固くなった自分自身を出し入れするが、どうしても桜子の表情が  
思い浮かんでこないのが、もどかしかった。無理もない、二人はまだ本当のその時を体験  
していないのだから、桜子の表情は分からない。  
夢想の興奮が高まり、最高潮に達したとき、達彦のウっという小さな唸り声と共に、強い快感が噴出し、  
目の前が真っ白になった。   
予めあてがっていた懐紙が白濁を受け止る。  
昼間から積もっていた欲情がいつもより大量の白濁液となって吐き出され、達彦の煩悩はひとまず収まる。  
こんな懐紙を手に夢精で閨をかこつのもあと1週間。祝言を挙げれば、その日から  
もう自分の手ではなく、桜子の肉襞が自分の抜身を包み込み、そして懐紙ではなく、桜子  
の狭いあの場所が、たっぷりの白濁を呑みこむことになる。  
心地良い疲労感とともに、そんなことを考えながら、幸せな気持で達彦は深い眠りに陥っていた。  
しかし一方の桜子は、為すすべもなく、落ちつかない気持を抱いて、毎晩過ごした。  
 
翌日、いつものように朝早くから山長に通ってきた桜子は、達彦の朝食を準備し、達彦の  
部屋で着替えを手伝う。  
達彦が和服に着替える横で、  
「達彦さん、今日はお洗濯もの少ないしお天気もいいで、達彦さんのお布団を干して、シーツを洗うね」  
と、達彦のベッドからシーツを勢い良く剥がした…と丸まった懐紙がいくつもシーツの間からこぼれ落ち…。   
(しまった!)が、達彦は、平静を装い背中を向けて着替え始めた。  
「なんだん?これ、あーあ、達彦さん、お鼻をかんだ懐紙を、枕もとに置いたままじゃ  
だめだら。  
ちゃんと、くずかごに入れんと。あれ、こんないっぱい溜めこんで  
ほんとうにもう…」 丸まった懐紙をいくつも集めながら、達彦を軽くたしなめるあたり、  
すっかり達彦の妻になった口調であったが、手にした懐紙が、自分の体を思い描きながら吐出  
された男の生理であることを知り頬を赤らめるのは嫁入り後の、達彦から愛を受けるよう  
になってからのことである。  
「あ、ああ、捨てておいてくれ。 朝ごはんはもうできてるか?」と背中を向けたまま、  
曖昧な返事を返しながら、まだ男の生理を解していない処女の桜子を戸惑わせないように  
巧みに話題を変え、達彦はその場をやり過ごした。  
 
 

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