桜子月の障りバージョン  
 
二人が結婚式を挙げてから、そろそろ一月、若葉がまぶしい新緑の5月を  
迎えていた。一日の仕事が終わり、家事の後片付けと家の戸締りをして桜子  
は二人が寝起きする部屋に戻った。達彦は先に布団に横になりウトウトとしている  
様子だったが、気持よさそうに眠っている達彦を起こさないように、そっと  
布団に入る桜子の気配に、待っていたように両手を広げて「おいで」と達彦は  
桜子を包み込む。桜子にはやや困惑した表情が浮かんでいたが、達彦の広い胸  
に体を預けると温かい安心感に包まれた。抱きしめながら、桜子の首筋や  
寝巻きの襟元からのぞく白い咽喉元に接吻を降らせる達彦。初夜の時の緊張  
や戸惑いは薄れたものの、今だに達彦の濃厚な愛撫には胸の鼓動が  
大きく打つのを感じる桜子だった。達彦の手が、寝巻きの裾を  
かいくぐって、桜子のすべすべした白い膝や太ももをさする。  
目を瞑って達彦の接吻の雨に陶酔しながらも、  
桜子は右膝をさする達彦の手の動きを気にしていた。  
達彦は足を絡めつけ、桜子の腰を自分の体にぐっと引き寄せ体を密着させたが、  
寝巻き越しに、達彦の既に固く大きくなっているものを片方の  
太ももに感じ困惑する桜子の鼓動が更に早くなった。  
 
桜子の足や腰をさする達彦の手が確実に向っている、桜子の場所に触れようとした  
その時、桜子は達彦の手をそっと抑えた。達彦の胸に顔をうずめながら  
「ごめん達彦さん、今日は…今日はだめなんだ」と羞恥と戦いながら、  
消え入りそうな声でつぶやいた。  
「どうして?」と、桜子の意外な反応に、桜子の顔をのぞきこむ達彦。  
「ごめん、俺、お前が欲しくて、毎晩…でも、つらかったんか?  
ごめんな、言ってくれればいいのに」  
「ううん、ちがうの」達彦の胸の中で激しく頭を振る桜子は  
「あの、今日から・・・」(何て言ったらいいのかな。  
達彦さんに言うのは何だか恥ずかしい。。。)  
「え、何?言ってみりん」やさしくささやく達彦。  
 
「あの、ちょっと、今日はできなくて…」怪訝そうな表情の達彦だったが、  
ハッと気がついたように、「そうか、ごめん、気づかなくて。女の人のこと  
良く分からんくて、ごめん。これからそういう時は言ってくれな」  
達彦の胸に顔をうずめたまま、コクンとうなずく桜子。  
「大丈夫か。具合が悪かったりしないか?」と達彦は肩や背中をそっとさすった。  
「病気じゃないから、そんなんじゃないよ。」ようやく顔を上げる桜子。  
「…じゃあ、えっと、その、毎月、今ぐらいの時期なんだな?」  
夫婦なんだし、この際、女性としての自分の体のことも知っておいてもらいたい、と  
桜子は、女性には誰にでもあるものだし、具合が悪くなるようなことはない、  
店の仕事にも差し障りはないがただ、直前に体がだるかったり、  
眠かったり、また胸が張って圧迫すると軽い痛みがあることも伝えた。  
「そうだったか、なのに、俺、一昨日は…」  
桜子の胸を揉みながら乳首をやや強く吸ってしまった。  
「痛かったんだな。ごめんな」と、そっと桜子の襟元を広げ、小さな小鳥を  
包み込むように右手で片方の胸を大事に大事になでながら見つめた。  
この一ヶ月で処女のうすいピンク色から、吸われてだんだん色素が濃く広がっている  
乳首に思わず唇を寄せた達彦だが、「だめだよね?」と自制した。  
そっとなら大丈夫、という桜子の言葉に達彦は、舌をころころ転がした。  
桜子は思わず、アア、と切ないため息を漏らしそうになったが、  
月の障りの最中に…とそんな自分を恥じた。同時に、さっきから感じている下着  
のぬめりが、月のものなのか、それともいつもの蜜なのか…。なんだか  
頭がぼうっと混乱しそうになるのを振りきって我を引き戻した。  
「…でもだめなんだよね、ゴメン、今日はもう寝よう」とぎゅっと桜子を  
寝巻きの上から抱きしめて、桜子の体を離した。  
桜子は達彦の優しさと思いやりに胸がキュンと締め付けられた。  
 
(結婚前に、話しに聞いたけど、ホントにそんなことしていいかな。  
達彦さんに、はしたないって思われんかしら、  
でも、こんなに大きくなっとるのに、達彦さんに申し訳ない)  
「達彦さん!」と再び達彦の胸の中に顔をうずめ、  
そして、膝に感じる達彦の熱く固いものに、桜子は思いきって、  
しかしおそるおそるそっと手を伸ばして遠慮がちにさすった。  
「さ、桜子!」驚いた達彦に、  
「こんなこと、しないほうがいい?こんなこと、  
女の人がするなんて達彦さんは嫌い?」と顔をうずめたまま、  
恥ずかしそうに桜子がつぶやいた。  
最初は驚いた達彦だったがやがて感動の表情に変わり、  
喜びに声を震わせながら  
「い、いやなものか! 嬉しいよ、すごく嬉しいよ、  
俺はそうしてほしいけど、お前こそ、こんなことしたくなかったら  
無理にしなくてもいいんだぞ」  
「ううん、達彦さんが喜んでくれるなら何でもします。  
今日は私ができないから、申し訳なくて。」  
「桜子…」「でも、どうしたらいいのか、わからんの。  
どうして欲しいか言って、達彦さん」  
「桜子…、ありがとう。優しいんだな、お前は」  
と感激しながら、上ずった声で  
「桜子、もし嫌じゃなかったら、 口で、やってくれないか…」  
 
(口、で…)ドキっとしたが、でも達彦のためなら、  
という一心で身を起こし、  
あお向けに横たわる達彦の裾をそっとまくり、震える手で褌の紐を解く。  
目の前に黒々とした茂みと思っていたより  
太く逞しく赤黒い達彦自身がそそり立つ。  
初夜から今日まで何度も肌を合わせ、達彦は桜子の体の隅々を知った。  
桜子の体の奥はこの屹立が何より一番良く知っている。  
でも、桜子は緊張と恥じらいでいつも目を閉じ受身だったし  
それが女性のたしなみだったから、こうして達彦自身の屹立をじっくり  
視覚に入れるのは初めてだ。  
これが自分の体にいつも入ってくる、こんなに大きなものが…と、  
桜子に恥じらいがの表情が浮かんだ。  
(男の人のものを…手に触れたり口に含むなんて)  
一瞬、抵抗を感じたが、他でもない夫の達彦のものなのだ。  
(達彦さんのためなら)そう思えば、  
普段達彦にお茶を入れるように、風呂で  
背中を流すように、当然の動作として、自然に口に含むことができた。   
目を閉じて、達彦自身に手を添え顔を寄せて、極浅くだが口に含んだ。  
無心だった。達彦が桜子の秘所に施すように  
ぎこちなく舌を動かしてみた。  
「うわッ」という低い叫びとともに、達彦の背筋に衝撃が走り、  
体をビクンと反応させた。慌てて口を離した桜子は  
「達彦さんゴメン、痛かった、大丈夫?」  
「いや、違うんだ、すごく気持良くて…。続けてくれないか」  
 
桜子は再び口に含んで、一生懸命に舌を動かしたが、  
固い棒は口の中に入れづらく、桜子の顎は段々疲労してきた。  
達彦から「アア」と大きなため息が何度も漏れてくる。  
(これでいいのかしら、達彦さんは喜んでくれているかしら)  
と思いながらも、  
口が聞けない。屈んだ姿勢も辛くなってきたので、一旦口を離し、  
達彦の頭のほうに足を伸ばし、  
腰の位置に自分の頭が来るように桜子は態勢を変えた。  
再び固い棒に手を添え唇を寄せ、一心不乱に舌を動かす桜子だが、  
口の中には、すこししょっぱい透明な液が少しづつ流れ出していた。  
それは絶頂を迎える徴候だということを、達彦との交わりも  
まだ受身の桜子には知り得ない男の生理であったから、  
そんなことはお構いなしに、  
舌を転がし、もう少し深く口に含み、少し吸ってみた。  
「あああーッ!」達彦が再び、声を殺しながら叫び声をあげ腰を  
捩じらせたので、桜子の咽喉元を、屹立がぐいっと突いた。  
驚いて顔を上げると、  
「桜子、今のもう一度やってくれ」眉間に苦渋を浮かばせ、  
うわ言のような達彦の言葉に、桜子は再び無我夢中で吸いつづけた。  
(達彦さんのため、達彦さんに喜んでもらうため)  
ひたすらそう念じて没頭した。  
何度も達彦の体にビクンと衝撃が走り唸り声が上がったが、  
それは達彦にとって、  
決して苦痛ではなく喜びであるようだ、ということも桜子は知った。  
体中に快感の電流が走る達彦の手は無意識のうちに、  
すぐ横に伸びた桜子の細い膝下を求め、さするように愛撫していた。  
 
普段は、冷静で落ちついた人柄の達彦だ。  
めったに怒鳴ったりあるいは、感情をあらわにすることはなく、  
若いながら老舗山長の名にふさわしい、  
寛容で大きな器を備える当主としての  
風格を見せていた。  
しかし目の前の達彦は、自分のものを口に含んでくれと懇願し、  
桜子の施しに悶え、切ない歓喜の嗚咽をもらしている。  
獣のような声で喜びをあらわにする達彦を見たのは初めてだった。  
桜子はふと考える。夫からいろいろな行為を受け激しく体を貫かれ、  
少し痛みを感じるけど、やがて不思議な感覚が訪れ、  
頭の中がぼうっと真っ白になって終わる。  
(その間、私はただ、目を閉じて達彦さんの言うとおりに横たわるだけ。  
達彦さんが、どうだったか、ってあまり考える余裕がなかった。  
胸を吸われたり、脚を開かれて指を入れて見られたり口で吸われるのが、  
まだ少し恥ずかしいしくて、ドキドキするばかりだったから。)  
(でも今は、達彦さんを喜ばせている。  
私は達彦さんに何もしてあげていなかったけど、  
こうして達彦さんに喜んでもらっている)と。  
愛情や好意や親切は与えられるだけでなく、自分も人に与えるもの。  
そうして、人を喜ばせたり幸せにすること、  
それが人としての生き方だと、  
杏姉ちゃんがいつか言っていた。   
(達彦さんとの「夫婦のこと」でも、同じことなんだね、  
杏姉ちゃん)  
 
桜子はそんなことを考えながら、今度は口で吸いながら、  
根元のほうを、手で上下にしごいてみた。  
心なしか、さらにぐっと固く大きく張った気がしたが、  
達彦を喜ばせたい一心で続けた。  
そんな無邪気な懸命さが、容赦なく達彦の海綿体に充血を巡らせ、  
膨張はもう限界に近づいていた。  
突然訪れた<もうダメだ>と思ったその瞬間  
「さ、桜子、出そうだから口を離して!」…と叫んだが間に合わず、  
達彦の手足が2度3度痙攣して硬直し、  
上下に動く桜子の手のリズムに合わせて、  
白濁がピュっピュッピュッっと桜子の口の中に放出された。  
痙攣が解けて、しばらく放心状態で横たわっている達彦だったが、  
独特の液の味に戸惑いながらも本能的に  
(液をこぼしてはいけない)  
と先端にキャップをするような形で  
屹立を咥えたままの桜子に気づいた達彦は、  
はっと我に帰り「桜子、口の中洗っておいで、早く!」  
追いたてられるように、洗面所に向い、口をゆすぎ、  
ついでに湯殿から  
まだ温かい風呂湯を汲んで、部屋に戻った。  
全速力で駈け抜け、身も心も放心し、  
布団の上に四肢を投げ出した達彦が  
「悪かった、お前の口の中に出してしまうなんて。  
そんなつもりはなかったんだ」  
声を絞って唸った。  
 
「達彦さん、きれいにしてあげる。」  
温かい湯で絞った手ぬぐいを広げ、まだ萎えずに逞しさを  
維持している達彦自身とその周りを丁寧に優しく拭き取った。  
先端のくぼみに残った少量の白い液は、桜子が舌で絡め取った。  
達彦は、まるでおしめをかえてもらっている赤ん坊のように、  
無防備に両足を開脚していた。  
手ぬぐいの温かさが、抜け殻の屹立に心地良かった。  
「ふふ、達彦さん、おしめ替えてもらっている赤ちゃんみたいだね」  
「ああ、老舗山長当主のこんな姿、人様にみせられんな。  
でもおまえの前では、俺も赤ん坊同然だなんだな」  
 
このときを境に、二人はお互い精神的に  
また一歩踏み入ったように思えた。  
この日から、桜子は達彦からただキスや愛撫を  
受けるだけではなく、自分からも  
達彦が望むことを、申し出るようになった。  
望んではいても、  
達彦の愛撫を受けるだけで精一杯の今の桜子に、  
(尺八をねだるのはまだ無理だ、もう少し慣れてから)、  
と考えていたところに  
桜子は自分から一歩踏み入れてきたのだ、  
達彦は正直、とても嬉しかった。  
立膝をついた達彦の屹立を、  
正座して咥える桜子の頭を手で支えながら、  
眼下の眺め…自分のものを咥えて一心に吸う桜子の姿に、  
お下げ髪でセーラー服姿の桜子をダブらせ、  
その妄想で達彦の屹立は一層固く張って  
充血が巡るのであった。  
お下げ髪で元気に自転車で走りまわっていた  
桜子が16歳の頃も、  
マロニエ荘で廊下を挟んだ向かい部屋に  
暮らしていたあの時も  
かねの目を盗んでマルセイユで  
会っていた時期も、  
思春期や若い男が誰でもそうであるように、  
眠れない時、寝苦しい夜には、  
いつも桜子の裸体を描いてきた。  
裸体は快感と共に白い濃い液の中に溶け  
、いつのまにか眠りに陥っていた。  
それは思う娘を空想の中で自由に奪う、  
男なら当然の発露であった。  
その桜子のお下げだった髪は、今は結い上げられ、  
戦争の苦難を乗り越えてこうして自分の所に嫁に来て、  
自分自身を一心に咥える姿が現実であると確認して、  
達彦は、また二人のエロスの世界に没頭していった。  
 
事を終えて、達彦は傍らの桜子の胸を愛撫しながら  
満たされた気持で余韻に浸っていた。  
桜子もまた、温かい大きな達彦の掌に胸をあずけ、  
温かく包まれる安心感をに陶酔していた。  
ふと顔を上げ「ねえ、達彦さん」  
ゆっくり桜子に顔をむけながら、  
どうした?、と穏やかにこたえる。  
「長い間戦争で外地に行って、  
大変な思いをして帰ってきた達彦さんには、  
もうずっと遠い昔のことかもしれんけど、  
達彦さんが入営する前の日の夜のこと、  
憶えとる?」   
入営前の夜のこと…落ちついた今の日常生活で、  
思い出すことはないけれども、  
明日は別れ、という二人の運命の儚さとつらさ、  
戦地に送られる自分の命の行く末の不安と恐怖、  
後に残す母のこと店のこと、  
重たい気持に押し潰されそうだったことは、  
今でも記憶に残っている。  
 
「ああ、憶えとるよ。絶対に生きて帰ってきたい、  
と思っとったけど、  
今こうしてお前と一緒にいられるのが夢みたいだ。」  
「ほうだね、戦争中に達彦さんがずっとおらんかった時に、  
よく思ったよ。  
入営前にちゃんと式挙げて一緒になっておけばよかったって。  
たとえ短い時間でも達彦さんの奥さんにしてもらって、  
もしかして、赤ちゃんが授かっていたかもしれん、  
達彦さんがおらん寂しい山長でも小さな子供がおれば  
少しでも賑やかになるし、  
お義母さんの病気も良くなるかもしれんのにって。  
もしその子がいたら、もう6才だね、  
こんな大きな赤ちゃんと6才の子供の世話で大変だわ、  
お義母さんも生きとりなさって、  
孫の面倒みてくれとったかもね、ふふふ」  
と達彦の頬をさすった。  
 
あの時、奪えるものならそうしたかった。  
しかし、明日をもしれない出征していく自分の命、  
桜子を未亡人にすることなど  
したくない、手を触れるのは命を持ち帰ったその時、と考えていた。  
しかし、入営中の厳しい訓練を受けながら、極限状態に臨み、  
戦地での激しい戦況を耳にすると、  
何が何でも生きて戻りたい、生きて戻るよすがを残したい、  
と強く思うようになった。  
出征前のたった1日の帰省のとき。  
あのときこそ、桜子を抱いて愛撫の跡を残し、  
自分の女にしてから戦地に出たい、  
と決意して実家に戻ったのだ。  
母かねの目はあるけれども、  
自室に施錠し婚約者としばらく時を過ごそうとも、  
これから戦いに出て行く息子の気持を  
理解してくれるだろう、そんなことを考えていた、あの時。   
戦地で地獄を見た達彦には、遠い記憶だが、  
差し迫った緊張感と切ない気持は今でも覚えている。   
砲弾や火の海をくぐり抜けて、こうして生きて戻り、  
二人で温かい肌を寄せ合っていることが、  
奇跡と思わずにはいられない。  
 
 

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