昭和22年(1947年)6月。  
桜子が「山長」に嫁いで、あっという間に1年2ヶ月が過ぎた。  
「山長」再建のため、愛知の味噌業界復興のため、達彦も桜子も毎日忙しく働いていた。  
 
そんなある夜、夫婦の寝室。湯上りで浴衣姿の桜子が入ってきた。  
布団で本を読んでいた達彦は、顔を上げて桜子を見る−纏(まと)め上げた髪と、  
白いうなじがまぶしい。  
この1年で、桜子はグッと成熟した女になった。「若奥様」といったイメージがふさわしい。  
充実した結婚生活に磨かれて、そうなったのだろう。達彦はそんな桜子を見ていて、その表情や  
何気ない仕草にドキッ、とすることがある。自分より年下で子供だと思っていたのに、どこからこんな色気が…。  
 
結婚生活の先輩である人々−近所のおじさんとか、既婚者の味噌職人とか、商売の取引先の人とか−  
に言わせると  
「結婚して1年も経ちゃあ、カミさんなんて空気みてゃあな存在になるでね。  
いちいち気にかけんくなるよ」  
…そうなるらしいが。達彦の場合は、少し違った。  
 
「なあ、桜子」  
「何?達彦さん」鏡台の前に座った桜子は、纏め髪を直しながら返事をする。  
「いつも、忙しく働かせてごめんな」  
達彦は時々、罪悪感に駆られるのだ。『音楽を忘れるな』とは言ったものの  
彼女を店に縛り付けて、ピアノを弾く時間も無い生活をさせているのが現実。  
「ううん、気にせんで」桜子は笑う。「お店を守るために、今は頑張りたいでね」  
「そっか」達彦は起き上がり、桜子の後ろに立つ。「ありがとうな…」後ろから抱きしめる。  
「ありがとう、なんて言わんで。夫婦の間で水くさいじゃん」呆れる桜子。  
「いつか、ゆっくりピアノが弾けるようにしてやるでな」抱きしめるついでに、  
桜子の浴衣の胸元に手を差し入れる達彦。そして乳房をまさぐりだす。  
「あん、ダメだよ達彦さん…着くずれするで」  
達彦は桜子の浴衣の帯を緩め、襟足を肩のところまで下げた。そして首筋から鎖骨、肩にキスをする。  
「達彦さん…」頬を赤らめて振り向いた桜子と、唇を重ねる達彦。  
舌を絡ませているうちに、達彦の体も熱くなってくる。そのうちに桜子の髪が解け、  
石鹸の香りが鼻をくすぐる。  
 
桜子は布団に横たわり、浴衣の前を開いた。明かりを消した寝室に、桜子の白い裸体が浮かび上がる。  
浴衣の下はズロース(今で言うパンティー)だけを身に着けていて、その下に細い脚が伸びている。  
その姿に、つい見惚れる達彦。  
「どうしたん?達彦さん」  
「…いや、何でもない」ここ1年いつも見ているけれど、決して飽きることはない。  
初めての頃は全体的に「固い」感じがした桜子だが、最近少し「柔らかさ」が出てきた−  
肌も、体のラインも、そして性格も。  
 
達彦も浴衣を脱ぎ、桜子に覆いかぶさる。そしてキスをしながら、指で桜子の乳首を愛撫し始めた。  
そういえば、胸も少し大きくなったか。  
「んうう…あふっ」喘ぎ声が直接、口の中に入ってくる。  
桜子の下腹部に、達彦の手が伸びる。ズロースの中にある花びらは、もう蜜に濡れていた。  
「こんなに濡れとるよ…」愛液の感触を楽しむように、花芽を撫で回す達彦。  
長い指が、桜子の花びらの中に挿し込まれる。  
「はぁん…」甘い声を上げる桜子。  
そのまま中をかき回す。かつてピアノの鍵盤上で優雅なメロディーを奏でていたその指が、  
くちゅっ、くちゅっ、と淫らな音をたてている。  
「あっ…ああ…達彦さんの指、素敵…」桜子の体から力が抜け、されるままになっている。  
 
そろそろかな、と達彦は褌を解いて自分の剛直を出した。桜子の中に挿し込もうとした時  
「待って」桜子はそれを制止し、手を伸ばしてきた。「『こっち』でやらせて」  
「こっち、ってお前…あっ」桜子の口が達彦のものを、躊躇なく咥(くわ)えこんだ。  
「うふふ…達彦さんの、大きくなっとるね。『金のシャチホコ』みたい」そそり立つものを前にして  
嬉しそうに微笑む桜子。  
「変な例えするなよ…うっ」笑わされたのも束の間、また達彦を快感の波が襲う。  
尺八を−いわゆるフェラチオを−されるのは、今日が始めてというわけではなかった。  
たまたま桜子に「月のもの」が来て夫婦の営みが出来なかった日、試しにやってみたのがきっかけ。  
それ以来お互い「どこをどうしたら気持ちいいか」を、探りつつやっている。  
桜子はそのたび、いろんな攻めを見せる−ジャズのアドリブのように、臨機応変な動きだ。  
 
その桜子の柔らかい唇が、達彦の亀頭に吸い付く。ぬめぬめと動く舌が、尿道口を刺激してくる。  
「んっ…うあっ、それ…気持ちいいよ、桜子…」  
桜子の手が陰茎をしごきあげ、睾丸にも伸びる。手のひらで転がすように愛撫し、  
それが新たな快感となる。  
達彦の涼やかな目が、今は熱く潤んでいる。そして時々その目を閉じ、恍惚の表情になる。  
「ああ…桜子…」  
達彦は快感に酔いしれながらも、大きな波にさらわれぬよう踏ん張り耐えていた。  
桜子は達彦のものを口いっぱいまで含むと、じゅるじゅると音を立てながら強く吸い上げた。  
「んああっ!」思いがけない攻めを受けて、達彦は悲鳴に似た声をあげた。「ち…ちいと待った!」  
桜子の口から、自分自身を引き離す達彦。  
「何で?やめるん?」不満げな桜子に、達彦は言った。  
「いく時は、お前の中じゃないとな」  
「ほうだね」桜子も頷(うなず)く。  
 
店が忙しいこともあって、二人は「結婚して1年の間は子供を作らない」ようにしていた。  
が、1年経ったぐらいの頃から子作りを解禁していたのである。  
桜子の花びらにしても達彦のシャチホコにしても、結合する準備は万端。  
達彦は布団に横たわり、桜子を自分の下腹部に座らせる。そそり立った剛直を、  
今度は陰部の唇が咥え込む。  
「ああーん」欲しかったものを得て、嬌声を上げる桜子。さらにずぶずぶと、腰を沈めていく。  
「うあっ…」桜色の粘膜が、達彦を包み込む。吸い込まれそうな感覚に、思わず声が漏れる。  
 
「桜子、好きなように動いてみりん…気持ちいいと思うほうへ」  
「うん…こうすると気持ちようなるでね」  
桜子は達彦の上で、リズミカルに腰を打ち振る。ジャズのスイングのように軽やかだが  
確実に刺激を味わい、楽しんでいる。  
「あっ、あっ、ああっ…」切れ切れの喘ぎ声を上げる桜子。  
初めてのときのような緊張感や、新鮮さは無い。けれど…桜子の中に入っていると、  
達彦は何とも言えない安らぎを感じるのだった。  
柔らかく温かい桜子の花びらの中で、身も心も溶けてしまいそうになる。  
 
達彦は結合を解かずに上半身を起こし、桜子を抱きしめた。桜子も、そのまま達彦を抱きしめる。  
まだ恋人同士でもなかった頃、桜子は達彦に突然抱きしめられたことがあった。  
その時はさすがに動揺したものだが、今となっては…こうして抱き合うことが、とても自然に思える。  
達彦はそのまま、桜子に覆いかぶさる姿勢になった。そして腰を振り、花芯の奥をずんずん突き続ける。  
「ああっ…ああん、うあっ!」快感に貫かれ、悶える桜子。眉間にしわを寄せた表情が艶めかしい。  
「うう…はあ、はあ…桜子、いくよ…!」  
「達彦さん、もっと…あ、あ、あああーっ」  
どくっ、どくっ、と桜子の中に達彦の精が注ぎ込まれる。  
「ああ……すごい…」桜子の愛液と、達彦の白濁が混ざりあっている。  
「気持ちよかったか?」心地よい気怠(けだる)さの中、達彦が囁く。  
「今も、まだ気持ちいいよ…達彦さんのがいっぱい、あたしの中に…」  
桜子の体の中が、心の中が、熱く潤って満たされていた。  
 
先に寝てしまった桜子の寝顔を見ながら、達彦はふと思う。  
「俺は桜子の『すべて』をもらった。けれど…本当は、俺のほうが『すべて』を  
奪われとるのかも知れんな」心も体も人生も、今は桜子のもの。それでいい、とさえ思う。  
そして心に誓う。  
「いつかお前が喜ぶような『夢のお返し』をするからな」。  
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後に達彦は、桜子のために演奏会の晴れ舞台を準備した。  
そして。あの熱い夜から2ヵ月後の、8月のある日。演奏会を控えた桜子が、突然倒れた。  
病院に付き添った達彦に、看護婦が告げる。  
「あの…奥さんですが、おめでたですよ」  
「は?」  
「3ヶ月に入ったところですよ。おめでとうございます」  
松井家に、新たな家族が生まれようとしていました。  
-END-  
 

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