炎天下の中俺は祖国、そして愛する鎚浦予科練に忠誠を尽くしていた……  
 俺は鎚浦を愛しているかぁ!! らいふせーばー! がんほー! がんほー! って奴である。  
 
 ああ俺? 俺は――俺の名前は、岡崎正宗。  
 ここ鎚浦予科練に所属する普通科一種2年次科生だ。  
 某本スレでは『個性のなく、女関係に鈍感な典型的なギャルゲの主人公』と評されているが……  
 大した度胸だ! 弾が必ず前から飛んでくるわけねぇー事をいつか連中に教育してやる事にしよう。  
 とここまでの間に『予科練』とか『普通科一種』などと、娑婆では聞かない単語がポツポツと出るが、そう俺の通ってる学校というのはその辺に転がってるような柔なモンじゃない。  
 通称鎚浦予科練、正式には眞州皇立国防陸軍士官学校予科鎚浦高等部という歴とした軍隊組織の一部なのである。  
 最近流行の歌謡曲風に言えば、♪わぁ〜かいぃ、ちぃ〜しおぉ〜のぉ よぉかれんのぉ〜 なぁーなつボターンは さぁ〜くらにぃ〜いかりぃ〜 の『予科練』である。  
 
「……って、これ海軍の歌じゃん!」  
 と思わず口に出してセルフ突っ込みしたのが運の尽き……  
 
「そこぉ!! 草むしりサボルな、祖国眞州と鎚浦の為に腕立て20回!!」  
「sir Yes sir!!」  
 と暑さのあまり現実逃避している所を教官である石堂のヤローに見つかり、俺はその場で腕立てを始める。  
 なぜ俺が……この正宗様が草むしりなどいう新兵が率先してやって然るべき作業をしてるかと言えば……  
 時として戦場は非情である……綿密に、そして用意周到に立てた作戦が敵に裏をかかれ徹底的に対処され殲滅されるという例は歴史を紐解けば珍しくない。  
 だがその責任は兵卒のその長たる将が取るべきであり、俺は将としてその責任を甘んじて受けていた。  
 …………ぶっちゃけて言おう。  
 期末考査の山、見事に外れた orz  
 
 勝負は時の運というが、取ってしまったモンはしょうがない。  
 俺はその他赤点組大勢と一緒に、懲罰大隊送りとなったのであった。  
 懲罰大隊送り……つまりだ、赤点補習っていうヤツである。  
 だが、座学=休憩時間と考えている珍肉がほとんどのここ鎚浦である。  
 脅しつけ、補習を受けさせた所で、真面目に補習をやるハズがない。  
 大体、補習を真面目に受けちゃんと追試を合格するヤツなんぞ、始めから赤点とか取らない。  
 
 そこでチェキスト共……もとい教官側は考えた。  
 ちょうど時期も期末考査を終え、生徒が少なくなる時期である。  
 補習の代わりに、雑用をやらせようと……  
 そんな訳で、炎天下の中、広大な演習場に生える草を毟る俺達が出来上がった訳である。  
 中学からの腐れ縁であるカメラート(戦友)藤志郎も俺と一緒に懲罰大隊送りとなっていたが、さっき熱ゲロを吐いて九段に先だっていった。  
 ムチャシヤガッテ……  
 
 一人倒れ、二人倒れ、十人倒れ……ついに最後の一人が倒れた時点で、鎚浦の大祖国戦争は終わった。  
 石堂のヤローがなんか嫌み言っていたが、既に死線を越えた兵士達には、もうその嫌みすらも届いてはいなかった。  
 解放された懲罰大隊達は干からびた両生類のように演習場の木陰に三々五々散って、生態活動を整えていた。  
 俺は……俺の計算では70パーセント以上を失った水分を補給するためにPXに向い這いずり出していた。  
 PXとは、まっ学校にある購買みたいなもんである。  
 詳しい説明は本作にあるから、それを読んでくれ!  
 
 演習所の端から見る校舎は陽炎にゆれ、高射砲を隠すにはもってこいのシチュエーションである。  
 その陽炎の遙か向こうで  
 「おい正宗! カイロのトミーを地中海に叩き落とすぞ!」  
 とロンメル閣下が白い歯を光らせているのが見えた……ような気がした。  
 ロンメル閣下、俺歩兵元帥じゃないっス!  
 
 ロンメルの幻影を見てから30分後、灼熱の演習場に転がる戦友達を見捨て、俺は一人PXに無事にたどりついた。  
 冷房が効き、金さえ出せばアオジルから特濃アオジルまで飲めるPXはまさ民主国家連合陣営の象徴である。  
 とりあえず経過はともかくとして、民主国家連合陣営に組み込まれた幸運に感謝である。  
 
「……まさむね」  
「…………」  
「ぷはぁ――――――! 生き返るぅぅぅぅぅぅぅぅぅう!!」  
 PX名物の地域猫ならぬ、地域ツインズらがドン引きする中、 PX商品ではもはや俺専用の微炭酸アオジル(濃縮還元)の500mlペットを一気に飲み干し、俺は地獄から生還していた。  
 ちなみに本編のレーション同様、この鎚浦でこれを飲むのは俺以外いないらしい  
 その証拠に商品目の名札には、もう『特濃アオジル』の商品名ではなく、ただ『岡崎様』と書いているくらいの独占状態である。  
 これも偏に連絡委員長の補佐見習い心得に与えられた特権だと思う……思いたい。  
 
 余談だが、これを日頃から別の意味でお世話になりっぱなしの千手院に飲ませて逃げた事がある。  
 その日の夜、俺の部屋に155ミリクラスの砲弾が撃ち込まれ、部屋一つ綺麗さっぱりと吹き飛んでいた。  
 もしあの時、藤志郎に誘われて一緒に風呂に行ってなかったら、今頃は二階級特進は確実だったであろう。  
 早くも敵対する共和主義連邦陣営に俺の存在がばれ、将来の禍根を絶つために俺の暗殺計画が持ち上がったらしい。  
 ……まあ地元商店街にも狙われている俺だからな、明日の国防を担う優秀な人材は非常に辛い。  
 
「よくそんなマズイもののむなー」  
「おねーちゃんダメだよ、そんなことはっきりいっちゃー」  
 双子の片割れの由実があきれ顔で言う。  
 由樹の方は姉の暴言を注意しているが、内容がアオジルのフォローで無い事にややひっかかる。  
 本来なら肉体言語を持って教育したい所だが、楓さんルートをまだクリアーしてないのでそれはまずい。  
 そして、この子達は明日の神州を担う大切な宝である。  
 特に男の子である由樹君には期待大だ!  
 
「よし! 今日は正宗お兄さんが、特別に君たちに奢ってあげよう」  
「ほんとか! まさむね」  
「ほんとうですか!」  
「ああ 神州男児に二言はない! 楓さん アイスクリームアオジル ダブルで3つ」  
「「してゅえーしょん のーまる おーる ふぁっく あっぷ」」  
 双子がハモり、門前の小僧習わぬ経を読んだ。  
 どうやら我が鎚浦予科練における英才教育は着実にその成果を上げているらしい。  
 結局、武士は食わねどツマヨウジよろしく、楓さんからバニラとチョコのアイスをもらう由実と由樹。  
 俺は仕方がないから、アイスクリームのアオジル味のダブルを三本持って、校内の中庭に双子を連れていく。  
 ……PXの中で飲食する訳にもいかんからな。  
 
 三人で中庭の木陰でアイスを舐めながら、今後の眞州の行く末について討議していたその時!  
 
「お―――い―――! そこのやつぅぅ!」  
 連絡委員であらせられる、この正宗様を捕まえて『そこのやつぅぅ!』とは無礼者!  
 将校だって逮捕出来んだ! 野戦憲兵を舐めるなよ! と声の方向を睨めば、灰色作業着を来た92センチ級の巨乳が陽炎の向こうから近づいて来る。  
 陽炎をまとい、ゆらゆらと揺れる灰色作業着の巨乳。  
 ほう、流石は軍施設もう噂に聞く光化学迷彩とやらが配備されたのか?  
 まあともあれなんだ……光化学迷彩なんてゆーモンに係わった日にはめんどくさい事ありゃしない。  
 例え光化学迷彩でなくとも、灰色作業着の巨乳と来ていいことになった試しがない。  
 やっかい事はごめんだとばかりに、その場を戦略的転進を計ろうとしたその時!  
 
「おかざきくぅ〜ん」  
 と何者かに肩をガッチリ掴まれた。  
 恐る恐るその方をを見れば……  
 
   Σ 馬鹿な! ザンジバラーンドで死んだはず!!  
 
「あっ京おばちゃんだ!」  
「京さん、こんにちは」  
「オッス! ツインズ元気か!」  
「いぇーい!」  
 やっぱり、この人だったのか……  
 まあ鎚浦広しといえど作業着を着た巨乳っていえば、一文字京教官しかいないのであるが。  
 一文字京教官、俺的通称京センセ。  
 整備科の技術教官で、そのサッパリした姐御肌から多くの生徒達に慕われている。  
 が、俺にとってはバスト92の疫病神に過ぎない。  
 この人の為に、何回死にかけた事か……その疫病神(92センチの巨乳)が俺の前に現れたのである。  
 俺の脳内に玉音放送の放送が鳴り響いた。  
 
 八月の空は  
 それは果てしなく澄んだ青さで  
 どこまでも高かった  
 
「……とゆーわけで、来週の土曜に地域交流の一環で、地元の小学校でPR活動をするのよ」  
 PXで冷えた牛乳をぐびぐび飲みながら京センセは俺に聞いてもいない事の成り行きを説明する。  
 俺は逃げなかった。  
 本当は逃げたかった。  
 だが、敵前逃亡は射殺がこの世界の血の掟である。  
 ……逃げられなかった。  
 
 京センセの話を掻い摘んで説明すればこうだ。  
 ここが問題児の巣窟である事は本編のOPからしっかりと設定されている。  
 多分、機甲科の珍肉共が敷地外まで弾を飛ばしたり、情報科が暇つぶしに広域電波妨害を実行したりと、付近住民にとっては希望が入っていないパンドラの箱ここ鎚浦。  
 だからこそ、付近住民の皆様と相互理解を深める為に、交流の機会をつくるPR活動をしようというのが大まかな趣旨であるらしい。  
 だが直接、住民の皆様と交流すれば、やれ賠償だ! やれ立ち退きだ! と騒ぎ立てる可能性が大である。  
 で教官達が考えたのが、比較的騙し易く、かつ好感を得られやすい子供層に対するPR活動である。  
 子供層に先に媚びを売っておけば、親御さんにも有利だし、後々も楽だろう……という前大戦の悪しき慣習の楽観的予測も基づいて計画された会らしい。  
 だがこのPR活動、肝心の児童のウケが異常なまでに悪い。  
 
「そんなにウケが悪いんですか?」  
「あ―――、毎年着ぐるみでショーやってんるんだけど、なんかねぇ〜ウケがイマイチなのよねぇ〜」  
「まあ問題児ばかりのウチが行って、第三者に被害が出てないだけでも奇跡なんだけどねぇ〜」  
 と作業着のファスナーを下ろして、乳の谷間の際疾い所までタオルで拭き始めた京センセ。  
 灰色の作業着から元々収まり切らない92の巨乳が、ファスナーを下ろした事でまほろび出ようと機会を伺う。  
 このままだとR15は確実だぞ! どうするきつねさんちーむ!!  
 ……むしろ、次作の『状況中(ハート)』はR15でやってほしいのが俺の感想。  
 
「毎回、何をしているんですか? そのPR活動」  
「うーん、毎回本科からPR用の着ぐるみ借りてきてパセリ王子とかなんとかゆーヤツをやってるらしいだけどね」  
 『パセリ王子』、その言葉にアイスを舐めていた双子らの手が止る。  
 
「そんなにつまらないのか?」  
 俺は双子に感想を聞いてみる。  
 
「あれをみるくらいならぴーまんをくらうのだ!」  
「……………………、さいあくです」  
 同年代のクライアントにはすこぶる評判は最悪らしい。  
 う〜ん、今回も関わらない方がいいな、三十六計、逃げるに如かず。  
 『じゃ、自分はこれから連絡委員としての任務がありますから』と適当な有りもしない理由をでっち上げ、敬礼一つ俺はこの悪魔の園からの脱出を図った。  
 今まさに敬礼をしようと手を上げた時、そんな俺を見た京センセがニカっと笑った。  
 ……、知ってるぞ。  
 知ってるぞ……あの笑顔が出たときは俺にとってはろくな事が起きない。  
 
「とゆーわけで岡崎ぃ! 今回は我が連絡委員らが責任を持ってPRを成功させる事。以上」  
「……っ!! っておい! そこのおっぱい!」  
 と俺の敬礼の前に、見事に言い切った京センセ。  
 即時反撃した俺だが、京センセの姿は既にPXにはなかった。  
 慌ててPXから出る俺。  
 見れば、遠くの方に厄介事は押しつけたとばかりに、『後はよろしくぅ〜』と手を一つ振りハンガーの方に戻っていく京センセの後ろ姿。  
 
 ま た 一 つ、 厄 介 事 を 抱 え て し ま っ た ・ ・ ・  
 
「あれ? まさむね、うごかないのだ……」  
「だいじょうぶですか?」  
 双子に突かれてもその場に直立不動で動かない俺。  
 多分、断るに断れない特攻隊員の中の人の心境ってこうなんだと思う……今日この頃。  
 
 大体、俺のここでの生活のほとんどがこんな理不尽な仕打ちの繰り返しの日々である  
 初日から、石堂の野郎からは連絡委員なんぞゆー面倒くさいモンをやらされるわ。  
 連絡委員の補佐に任命した藤志郎は働かないばかりか、部屋に居つくわ。  
 暴走機関車トマースには適度に轢かれるわ。  
 ちっこい先輩には毎回に説教をされるわ。  
 隙があればツンツンは殴りかかってくるわ。  
 全科生(主に男)を敵に回すやら。  
 町田はちっこい先輩には相手にされないわ……まあこれは俺には関係ないな。  
 ああなぜ天は我を見捨てたもうたのか、主よ私には何か至らぬ点がありましたでしょうか?  
 ……と過去の行いを振り返れば、至らぬ点だらけであった事を改めて痛感してしまう俺ガイル。  
 
 だからもう考えない! 精神衛生上よくない!  
 
 しかし、呆然としていても物事は進展しない。  
 どんな状況でも物事を進展させるのは、地道な努力である。  
 だから……今日はもうヤケ酒して寝る!  
 そうと決まればヤル事は一つ。   
 PXでつまみになりそうなモノを南極越冬隊よろしく、どっちゃり買い込んで俺はレジに向かった。  
 酒はここでは御禁制なので、持ってそうなヤツの部屋を連絡委員権限で手入れして没収する事にしよう。  
 レジでは、楓さんが一つ一つその小さな手で丁寧に商品のバーコードを読み上げていく。  
 楓さん、おれの股間のソーセージはいくらかそのお手々で読み込んでください! なんなら試食も可です! などと言えるわけはなく……  
 仕方がないから、待つ間大人しくカゴの中を覗いていれば、底の方から見覚えのないお菓子が出るわ出るわ  
 
「俺、こんなモン入れた覚えはないぞ!!」  
「なにいってるのだまさむね。しんしゅうだんじににごんはないのだ!」  
「おねーちゃん、やめよーよ」  
 あなたを犯人ですバリに胸を張る由実。  
 お前が入れたのかよ……  
 由樹は由樹で姉の常識に訴え、姉の暴挙を止めようとするが今更ながらそんなんで止まる由実でない。  
   
「お菓子を買ってやると一言も言ってねーぞぉぉぉ!」  
「さっきアイスをおごってくれてないのだ これでがまんしてやる……、 あっ! まさむねなにをするのだ!!」  
 カゴの奥底に巧妙に偽装され、捻り込まれていた多量のスナック菓子。  
 カゴからひょいと取り出しそのスナックを見れば、そこに書いてあるは『帰ってきた! 愛國戦隊大日本スナック バーベキュー味』と書いてある。  
 商品名の横には『君もこれを食べて、眞州を大愛国戦隊と共に守ろう!』との煽り書き。  
 
 こんなモン食って、國が守れたら俺達はお役御免だな。  
 そしたら俺は真織とブラジルに渡ってコーヒー農園でもやるか。  
 しかし、なぜここPXに子供向けのお菓子が置いてあるんだ?  
   
「しかし楓さん、よくこんなもんを仕入れましたね」  
「えっ……ええ、一部の科生さんたちが署名を集めて仕入れ願いを出して来ましたので……」  
 と苦笑いする楓さん。  
 ……何処の世界にも濃い連中はいるんだな  
 まあ、先輩方のなかには偵察機に某女神の三姉妹をペイントしたという伝説すらあるからな……  
 
「でも、みなさん箱で買っていかれるので、かなりの売り上げなんですよ」  
「だから、由実のぶんがのこってないのら!!」  
 とご立腹の由実と姉由実の陰に隠れてはいるが、それはそれでご立腹のオーラの出す由樹。  
 ふーんと思いつつ、そのスナックを元に棚に戻そうとした時、俺はピィ―――ンときた。  
 俺の脳内で『子供に人気のないPRの会』と『子供に人気のある戦隊モノ』が融合した。  
 
「おい! 由実、由樹!」  
「ほえ?」  
「えっ?」  
「このスナック買ってやるから、少し付き合ってくれ!」  
「すみません、楓さんちょっと二人借りますよ」  
「えっ、ええそれは構いませんけど……」  
「よし好きなだけ入れろ! 今日は俺のオゴリだ!  
「やたー! さすがまさむね びーるっぱら」  
「ほんとうですか!!」  
   
「……おめーら、少しは遠慮しろよ」  
 30分後、今月の遊興費を全て愛國戦隊大日本スナック バーベキュ味!に交換した俺が中庭にいた。  
 隣では、購入したスナックの袋を片っ端から開け戦利品(カード)を物色中の由実と由樹。  
 先程のPXでの俺のオゴリ宣言に、発狂するほど喜んだ双子らはPXに残っていた40袋全てをレジに積んだのであった。  
 当然、怒る楓さん。  
 だが楓さんルートはクリアしてない俺。  
 ここで楓さんとの友好度を下げる事はしたくない。  
 仕方が無く、江戸っこと鎚浦予科生は宵越しの金はもたねーくらいな勢いで40袋全てを購入。  
 喜ぶ双子、困り顔の楓さん、そしてシベリアの俺。  
 
「なにさっきからぶつぶついっているのだ? スナックはすべてやるからよろこんでくえ!」  
 とそんな俺の心情を知るはずもない由実がカードをぬいたスナックを次々と俺に押しつけてくる。  
「だ、だめだよおねーちゃん! ちゃんとお菓子も食べるってママと約束したよぉ」  
「なにいってるのだ? まさむねはママのこどもじゃないからかんけーないのだ」  
「……楓さんのこどもか……」  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
「ダメェッッ、正宗くん!! 私たちは血は繋がってなくても……んっ」  
 後から抱きついた俺は楓さんの唇を無理矢理、横から塞いだ。  
 二児を生んでも楓さんの女は隠せなかった。  
 いや逆に、女としての楓さんに母親としての魅力が加わり、妖艶な魅力を醸し出していた。  
 台所で昼食の支度をしていた楓さんを見ていた俺は我慢が出来なくなり、ついに楓さんを後から襲ったのであった。  
 俺の欲望は既に安全ピンを抜いた手榴弾も持ち走り回るトマースようにデンジャラスに漲っていた。  
 股間の89式小銃は既に安全装置が外され、楓さんの膣内の標的にフルオートで射撃するのを待ち望んでいた。  
 欲望という名の宣戦布告を楓さんに突付けた俺の電撃戦は止らない……ええ、止るはずがありませんともさ!  
 カットジーンズで偽装された対のマジノ要塞に俺は手を伸ばした。  
 俺の工兵はマジノ要塞の境に素早く潜入し、要塞の弱点を探索し始めた。  
「んっ……んんっ、ダ、ダメェ……正宗くん、そぉ……そこ」  
 潜入した右手小隊人差し指二等兵が中指隊長に報告した。  
 我、要塞出入リ口ラシキ箇所ヲ発見ス! 攻撃許可ヲ求ム。  
 諾。我ニ続ケ!  
 爆弾三勇士よろしく、中指隊長が人差し指二等兵、中指一等兵を引き連れ問題の箇所に向かう。  
 ちなみに小指新兵は先程、二階級特進したばかりである。  
 人差し指二等兵、中指一等兵が双丘のマジノ要塞を引きつけている間に、中指隊長が問題の箇所に近づた。  
 問題の出入り口は対爆構造であるかのように固く締まっていた。  
「正宗くん!! ら、らめぇ!! 汚……ひあぁぁぁっっ!!!」  
 中指隊長が強固に締まっている対爆扉を千里馬精神でこじ開けていく。  
 
 捻り込むように、ゆっくりゆっくり……その体身中に捻り込んでいく中指隊長。  
 中指隊長の攻撃に、楓さんは既に俺に体を預け、吐息を荒げていた。  
 中指隊長は更に……  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
「いやぁぁ……正宗くぅ……や、やめてぇええ゛え゛」  
 自分の身体を自分でがっちり抱き悶絶する俺。  
 それをまるで汚物を見るような目で見る双子達。  
 
「……まさむね、すごいバカづらしてるぞ」  
「涎垂れてます……」  
「はっ、俺は一体……って、なんじゃこりゃ!!」   
 桃源郷から帰ってきた俺の周りには、カードだけ抜き取られた愛国戦隊スナックが、お盆のお墓前のお供え物よろしく状態で山のように摘まれていた。  
 一方の双子らを見れば  
 
「やたっあああ!!! キラでたのだ!」  
「いいなぁ〜おねーちゃん……」  
 と戦利品漁りに一喜一憂していた。  
 
「おい由実!」  
「なんだまさむね、そのおかしはおまえにやるぞ! おれいがわりだ、えんりょなくうけとれ」  
「サンキュー……って どうすんだよこのお菓子!」  
「はえ? だからそれはまさむねの……」  
「いいかチビッ子! むかしなライダースナックってモンがあってな……」  
 と俺は説教を始める。  
 お菓子のオマケが欲しい気持ちはよぉーく分る。  
 しかし、食べ物を粗末にしてはいけない。  
 ここはズビシッと、誰かが説教をしなければならない。  
 それが二人の……いや主に由実の為である。  
 と、いざ説教垂れようとした時、俺はあることに気がついた。  
 ライダースナックに触れれば、必然的にビックリマンシールに触れざるおえないという事である。  
 そこまでの説教の戦線拡大は俺の兵站が追いつかないし、第一、中の人間もいちいちネタの為にググルのがめんどくさい。  
 俺は説教を諦めると、単刀直入に話を切り出した。  
 
「由実、これってそんなに人気があるのか?」  
「あっこら! なにするのだ!!」  
 由実が持っていたカードをひょいと取り上げる俺。  
 取り上げたカードには  
 
 悪の枢軸工作員怪人 たりばーん 出身国:中東  
 
あいこくせんたいとどうめいをくむ、アメリカーナのてき  
おいるぱわーをりようし、アメリカーナをくるしめるぞ!  
 
 得意技;旅客機ラディンアタック 聖戦ボンバー  
 
 と明らかにアフガンゲリラが元っぽい怪人の写真と上記の説明書き。  
 
「なんじゃいコリャ……」  
「まさむねかえせー!」  
「誰も取らねーよ、ホラ」  
 と叫く由実にカードを返す。  
 由実はカードを俺の手から引ったくると大事そうにポケットにしまった。  
   
「にんきがあるか? にんきがあるもなにもないのだ!」  
 どっちなんだよ……と心で突っ込んでみる。  
 由実では埒が明かないので、スカカードが出て、今にも泣きそうになっている由樹に話を振ってみた。  
 
「えと……多分、大人気だとおもいますよ……クラスのみんなも知ってるし」  
 どうやら、愛国戦隊とやらが小さいお子様には大人気なようである。  
 俺が先程、閃いた計画が現実味を帯びてくる。  
 更に計画を具体的に進めるには、愛国戦隊がどういう内容か知る必要がある。  
 だがここで二人に愛国戦隊の内容を聞いても、参考になる情報が入手出来る可能性が少ない。  
 概して小さい子の話というのは、自分が興味ある部分のみを多く語り、それ以外の部分はバッサリ切り捨てる傾向にあるからだ。  
 ……そーいや、こないだ提出した連絡委員の報告書に関して月山先輩から同じような指摘を受けた覚えが orz  
 愛国戦隊を知るには、双子に聞くより直接の情報に触れた方がてっとり早いと俺は考えた。  
 
「なあ由樹、頼みがあるんだが……」  
「はい?」  
「愛国戦隊のビデオかなんか持っているか?」  
「こないだの番組取ってあるので……それでよければ」  
「それ貸してくれるか? 直ぐ返すから」  
「ええ、いいですけど」  
 よし情報げっと!  
 そんな由樹とのやりとりを聞いていた由実がすかさず突っ込んでくる。  
 
「まさむね、さてはおたくだな! このどくさつマニアめ!!」  
 ……毒殺ってオイ。  
 俺が毒殺マニアなら  
 この予科練には罵倒マニアに解剖マニア、クッラクマニアにひき逃げマニア等々……まさに適材適所って奴ですよ。  
 びば鎚浦! こんにちは戦争の子犬(ぱぴー)たち!  
 
 そんな下らない話をしている間にも、先程まで高かった太陽はいつの間にか演習場の向こうに連なる山々に架かりここの中庭を茜色に染めていた。  
 心なしか夕風も肌寒い。  
 
「そろそろ戻るか?」  
 という俺の言葉に、うなずく由実と由樹。  
 俺は双子の手を取ると、双子が大量に開封した戦隊スナックを手で抱え楓さんの待つPXに戻った。  
 
「正宗さん、この子達がご迷惑をお掛けしてスミマセンでした」  
 PXに戻ると、楓さんが俺に真っ先に頭を下げた。  
 必死に頭を下げる度に、揺れる2つおぱーい。  
 公式情報では87センチの胸……見ろ、ちっこい先輩の胸がゴミのようだ!  
 ぶるんぶるんと揺れるおぱーいを見続けたいというのは非常に青少年の主張だが、俺は楓さんを困らせる為にやったのではない。  
 全ては楓さん攻略の布石……もとい楓さんの笑顔の為!  
 
 楓さん気にする事はありません。  
 貴方のその笑顔が私にとって唯一の太陽であり、この鎚浦という名の監獄においては最大の安らぎなのです。  
 貴方の安らぎがこの二人のお子様の笑顔なら、その笑顔がたかがこの愛国戦隊スナック40袋で買えるなら安いものですよ。  
 と白い歯を光らせていると、バックヤードから由樹が一本のビデオを持ってきた。  
 
「由樹、ちょっと借りるぞ」  
「はい、どうぞ」  
 どうやらこれに問題の愛国戦隊が入っているらしい。  
 後はこれを見るだけだな。  
 
「ありがとうございました」  
「まさむねさん、ありがとうございました」  
「まさむねぇーまたねー! つぎのきゅりょうびもおごれよぉー」  
 俺は由樹から愛国戦隊のビデオを受け取ると、一部ありがたくない言葉で見送られPXを後にした。  
 

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