―俺は、一番愛していた人間に命を奪われるのを見た  
―人生の途中で命を失った自分が、どんな人間か分ったし、  
―これからどんな人間になっていくのかも分ってる  
―俺は全てが見えたから、これ以上、見るものは何もない  
 
 
 辺りには濃い水の匂いと、湿気が立ち込めていた。  
眠れない気持ちを持て余したまま、ジョカは回廊の柱に寄りかかっていた。  
やがて、ぽつぽつと雨音が近づいてきた。雨足はすぐに強さを増した。  
ジョカは裸足に、薄いシャツを羽織っただけの姿だった。  
少し、肌寒い。やっぱり部屋に帰った方がいいかもしれない。  
それでも、見るともなしに外を眺めているうちに、ふと背後の人の気配に気付いた。  
「フーギ…」  
ジョカは驚いて声をかけた。フーギは足音を立てずに近づいて来ると、  
ジョカの体をを後ろから抱き寄せた。  
「眠れないのか?」  
フーギの言葉に、すっとジョカは体の力を抜いた。  
それはいつものような、からかいや冗談混じりの言葉では無かった。  
ジョカはフーギの腕に手の平を重ねた。  
 
「不思議だね…あんたはあたしが傷ついてるのが分るみたいだ」  
「さみしいなら抱いてやるぞ?」  
ジョカの濃い茶色の瞳がフーギを見上げた。何故だろう、フーギはひどく優しい顔をしていた。  
「俺と闘うのが怖いか?」  
「そう、かな…そうかもしれない」  
「らしくないな」  
「わかんない…けど、なんか、あんたは失っちゃいけない人のような気がするんだ…」  
フーギはジョカを強く抱きしめた。打ち明けたい、このまま何もかも。  
俺たちはこの世でたった二人の、血のつながった姉弟なのだと。  
「フーギ?痛いよ…」  
けれどジョカは、フーギの手を振りほどく気にはならなかった。  
フーギの腕は温かかった。今はその心地良さの中に、身を埋めても良い。  
「昔、ナーガ婆に聞いたことがあるな。どんな跳ねっかえりでも、変わった娘でも、  
 男に抱かれると大人しくなるって。普通の娘になるって。」  
フーギがくすりと笑う気配がした。  
「じゃあ、そのまま俺にキスすれば良い」  
フーギの端正な顔がジョカに近づいてきた。同じ色の瞳、同じ形の唇、同じ色の髪。  
どうして、こんなにも良く似た顔を持って生まれてきたのだろう。  
ジョカの顔がフーギと似ていさえしなければ、ナタクも、イレーヌ島でジョカを  
見咎めることは無かったかもしれない。  
「キスしてみな…抱いてやる」  
 
フーギは、束ねていたジョカの髪をといた。長い黒髪が背にかかった。  
指に髪を絡め、フーギは囁く。  
「もったいないな…せめて結い上げて、飾りのひとつでも付ければ良いのに」  
この娘はいつもそうだ。年頃だというのにろくに身を飾る品も持たない。  
ぞわぞわとした感触がジョカの背筋を這いのぼる。くすぐったくて、思わずジョカは笑った。  
「だってそんな物、持ってないんだもん」  
「じゃあ、俺が買ってやる、いくらでも」  
金銀の歩揺も、珍かな異国の石で飾った手珠も、美しい絹も。  
世界を手に入れたら、その全てをお前にやったっていい。  
―だから、俺を裏切らないでくれ。俺をひとりにしないでくれ、姉さん。  
フーギは唇を強くジョカの首筋に押し付けた。  
「…フーギ?」  
ジョカが訝しげな声を上げた。今日のフーギはヘンだ。どうしてそんなに悲しそうなの…。  
フーギの手が、ゆっくりとジョカのシャツをたくし上げた。ジョカの形の良い乳房が露になった。  
「え、ちょっと」  
ジョカがうわずった声を上げた。  
それには構わず、フーギはジョカの乳房に手を這わした。  
「…乳首立ってる」  
「!」  
かっとジョカの顔が赤らんだ。  
「うん、そういう正直な反応はスキだな」  
「ばかっ!!」  
 
フーギの指がジョカの下腹に触れた。  
そこは柔らかく、温かだった。生命が脈打ち、宿る場所。  
「え、なに?」  
ジョカは己の尻に、固いものが当る感触を感じていた。  
フーギはジョカの手をそこに導いた。  
「触ってよ、俺のも」  
フーギは下履きをずらすと、固くなったそれを取り出した。  
ジョカはおそるおそるその場所に手を触れた。  
「…気持ち良いの?」  
「うん、舐めてくれたらもっとイイけど」  
ジョカはうつ伏せになって、先端を咥えた。  
仔犬がじゃれあうように、ふたりはお互いの身体に触れた。  
くちゅくちゅといやらしい音が響いたが、今は何も気にならなかった。  
この夜は、雨が何もかもを消してくれる。  
 固さを増したその先端から、うっすらと透明な液が出てきていた。  
ジョカはそれを舐めとってみたが、すぐに顔をしかめた。  
「…ヘンな味」  
フーギの手が、ハイハイというようにジョカの頭を撫でた。  
「そんな事言ってると、無理やり飲ますぞ?」  
「…飲んだらどうなるっていうの」  
「さあ…試して見るか?」  
フーギはニヤリと人の悪い笑みを浮かべた。  
「こっち来な、ジョカ」  
 
フーギは正面からジョカを抱きしめると、キスをした。舌を入れ、柔らかな咥内をまさぐる。  
ジョカは目を閉じていた。普段の喧嘩腰の態度からは想像もつかないほど、甘やかな表情をしている…。  
束の間、フーギの胸に嫉妬が過ぎった。リカオンのヤツは、ジョカのこんな顔を見たことがあるのか?  
フーギは向き合った姿勢のまま、ジョカを膝の上に乗せた。下着をずらし、秘所をまさぐる。  
そこはしっとりと潤っていた。  
「入れちゃうよ? いい?」  
「ん…」  
ジョカはされるがままになっていた。左胸の聖痕も、フーギが触れることを許していた。  
ジョカはゆっくりと腰を落としていった。  
だが、初めて男のものを受け入れるそこは、まだあまりにも狭かった。  
「いた…やっぱ、無……」  
無理、といいかけたジョカの口を塞ぐように、フーギの物がジョカを一気に刺し貫いた。  
「い、いたいっ!やだ!」  
逃げようとするジョカの体を、フーギは押しとどめた。  
ジョカの気を落ち着かせるように、額を、頬を舐める。  
「大丈夫、自分で動いてみな…そうしたら痛くないから」  
「動くって、…どうしたらいいのかわかんないよ」  
泣きそうになりながら、ぎこちない動作で腰を動かそうとするジョカを、フーギは愛しいと思った。  
俺だけのものにしたい。  
たとえ生まれ変わったとしても、地の果てまでも探し出して、俺のものにする。  
その為なら、俺はどんな事をしたって良い…。  
「この闘いが終わったら、どこか遠くに行こう」  
「遠くって…どこに?」  
ジョカは喘ぎながら問うた。  
「どこへでも…ジョカ、お前の望む所へ、だ」  
まだ旅は終わっていない。  
 
深く、ゆっくりとフーギは腰を動かした。その度にジョカはフーギに強くしがみついた。  
フーギの肩に、深い爪痕がついた。  
「…んっんーっ……んっ…」  
…ぐっ ぐちゅっ ちゅるっ くちゅっ …  
「…だ、め……おかしくなっちゃう……」  
ジョカが泣きそうな声を上げた。だが、その声はますますフーギの欲情に火をつけた。  
「いいよ、おかしくなればいい」  
見せればいい。俺に、俺だけには。  
フーギは激しく動いた。  
ぐちゅぐちゅといやらしい音が辺りに響いた。  
…お前は俺のものだ、ジョカ。…姉さん。  
「や、ぁ、あああぁあああっ!!」  
ひときわ高い声を放つと、ジョカは果てた。  
フーギはちっと舌打ちしたいような気持ちになった。  
(まだ俺はいってないぞ、ジョカ)  
ジョカは放心したように目を閉じて、荒い息を繰り返していた。  
そっとジョカを床に横たえると、フーギはその上に跨った。  
「……フーギ?」  
かすかに、ジョカが自分の名を呼ぶのが聞こえた。  
「…自分だけ先にイったお仕置き」  
 
言うなり、ジョカの胸に精を放つ。  
どくどくと脈打ちながら、白濁した液体はジョカの身体を濡らしていった。  
フーギはそれを指ですくうと、ジョカの口に含ませた。  
「ちゃんと全部飲まなきゃダメだぞ?」  
「ん……」  
口に含ませるたび、こくんと、ジョカの喉は上下した。  
ジョカの手が、フーギの指を捕らえた。  
赤子のように無心に指を掴み、しゃぶっている。  
ぴちゃぴちゃと、舌ですする音が聞こえた。  
フーギの身体に、甘い痺れが走る。  
フーギはジョカを愛おしむように、抱きかかえた。  
「…本当に可愛いヤツだよ、お前は」  
フーギは、己のものがまた固く強張ってきているのを感じた。  
「…朝までは、まだ時間があるな」  
 
『―ずいぶん楽しんだようだな、兄弟』  
ぞろりと、祝福の槍が腕から這い出てきた。  
それには答えず、フーギは肩の爪あとを指でなぞった。  
甘やかな傷だ。飼い犬に甘噛みされた時のような。  
ジョカが一時、俺のものになった、その証のような傷だ。  
フーギは、ふと嗜虐に満ちた笑みを浮かべた。  
「せいぜい次の試合の時、アス=ランのヤツに見せびらかしてやるかな…」  
 
 
―暗闇の中に、一筋の小さな光が見えた  
―俺は何を選ぶのか、何が必要なのか分ってきた  
―これ以上、見るべきものは何も無い  
 

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