閉ざされた牢の中でマーヤーは夢を見る。  
どれだけの時間が過ぎ去ったのかは、もう自分でも分からなかった。  
毎日、決まった時間になると、食事を与えられる。  
侍女達に身体を洗われ、髪を梳かれ、衣服を着替えさせられた。  
けれど、誰もマーヤーには話し掛けない。  
マーヤーは透明な空気と同じ、ここに存在していないのと同じだった。  
赤子の人形を抱いたまま、マーヤーは夢を見つづける。  
 
 夢の中で、マーヤーには天使のような美しいふたつの羽根があった。  
マーヤーの隣には、額に聖痕を持った少年がいた。それは、少年がこの世でただひとり、  
選ばれた王であることの証であった。その少年と自分は、血を分けた姉弟であった。  
 
弟はいつも優しかった。いつも心配そうに、わたしのことをを見つめていた。  
弟は王子様で、わたしはお姫様。わたしたちは多くの人に愛され、祝福されていた。  
わたしたちを永遠に守ると誓ってくれた、勇敢な従者もいた。  
わたしたちの国は花があふれ、輝くような光に包まれていた。  
きっと永遠に日々は続いていくのだと、訳も無く信じていた。  
 
初めて弟と肌を合わせたのはいつだったろう。  
月のものが訪れる前から、ふたりはいつも優しくしあっていた。  
弟は小さな細い指で、わたしの身体をいとしんでくれた。  
わたしはくすぐったくて、何度も声を出しそうになってはがまんしていた。  
わたしの足の間からは、いくつもの雫がこぼれた。  
弟は雫をていねいに舐めとってくれた。弟がわたしの身体をきれいだと  
言ってくれるのが嬉しくて、誇らしい気持ちでいっぱいだった。  
弟のものを口に含む時、わたしは体中が熱くなるのを感じていた。  
弟が体を震わせながら、わたしの中に放つとき、わたしは奇妙な高揚にとらわれていた。  
ときおり、わたしは、弟の体を引き裂いてしまいたいような衝動に駆られた。  
わたしはそんなとき、どうしたら良いかわからなくて、弟の背中に爪をたてたり、  
髪の毛をひっぱったりした。そうすると、弟は顔をしかめたり、つらそうにした。  
でも、彼はそのことでわたしを怒ったりはしなかった。  
弟はいつも、わたしのすることを最後には許してくれるのだ。  
 
ふたりで遊びつかれると、手をつないで横になった。  
羽がふれるような口づけを、何度も交わして、  
そうして、一つ褥の中で、抱き合って眠っていた・・・・。  
 
時折、夢の狭間に幼い少女の幻影が映る。  
マーヤーはその少女をどこかで見たことがあるような気がした。  
この手で一度も抱くことなく、失ってしまった少女の名。  
少女は走り回りながら、声を上げて笑っていた。  
 

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