「トリーッシュ!!!」  
「うぐぅ!」  
若草香る春の朝、全身に衝撃を受けて吹っ飛ぶのはトリッシュ=ウナ15歳。  
 
角を曲がったらパンを咥えた美少女とはち合わせした訳でも  
トリッシュの前方不注意って訳ではない。  
相手が猛突進してきたのだ。  
 
「おはよ〜!今日もオッパイデカいな!」  
開口一番にセクハラ発言をする彼女。謝罪も悪気もなくニッコリ笑った。  
「ちょ……ッ!ナランチャ!なにすんのよー!!」  
「えへへ〜〜。オッパイ揉んでるの」  
ポサポサの黒髪の上でオレンジ色のバンダナが踊り端っこについた小さなリボンがフリフリ揺れる。  
無邪気に笑うのはナランチャ=ギルガ。17歳。  
 
細い腕と年齢に合わない体系をしているが、こう見えてもネアポリスを牛耳る  
「パッショーネ」の一員で立派な『ギャング』なのだ。  
ナランチャは甘える仔猫の様にトリッシュの乳房に顔を擦りつける。  
「うふふ〜すべすべだァ〜〜」  
「ちょっ……ナランチャッ!!!」  
「あああん〜いいなぁ〜いいな〜!オッパイ大きくていいなぁ〜アタシもおっきなオッパイ欲しいぜ〜」  
ナランチャの動きに合わせてぽよぽよリズムを取る乳房はたしかにデカイ。  
「いいなぁ〜いいなぁ〜アタシもこれくらいあったらなぁ〜」  
ナランチャは、上下運動する乳房とペタンコな自分の胸とを見比べてため息をついた。  
 
「だよなぁ〜」  
突然後ろからにゅっと伸びた腕。  
あっと言う間にトリッシュのオッパイを鷲掴みにした。  
「ひゃああああ!!」  
驚きと衝撃で思わず悲鳴をあげてしまうトリッシュ。  
その反応を見てケラケラと笑うのはミスタ姉ェだ。  
「大きいオッパイはそれだけ犯罪よねェ〜、なんて言うの?揉まれる為にある様なモン?」  
意味不明な理屈を持ち出し、ケラケラと笑顔なミスタ姉ェ。  
南イタリア出身なのか小麦色の肌と黒い瞳はどこか中東的な雰囲気を感じさせる、  
お気楽極楽マイペースな女性だ。  
 
ミスタ姉ェはグワシっと掴んだ乳房を上下に揺らしながら楽しそうにモミモミしている。  
「ああん、アタシが揉むんだよ〜〜〜」  
突然の乱入者に負けじと、ナランチャも参戦。乳房に指を這わす。  
「ちょっと!何すんのよ!やめてってばぁッ!」  
「だって〜!トリッシュのオッパイ、マシュマロみたいで気持ちいいんだもん!」  
 
ナランチャは、甘い匂いのする乳房に顔を擦りつける。  
「なんでこんなに大きいの〜♪」  
オッパイを揉めて上機嫌なナランチャ。  
歌いながらチュっと、その白肌にキスをした。  
「きゃ!そんな事知らないわよぉ」  
そんな二人のやり取りを見て、ミスタ姉ェがニヤニヤと笑う。  
「ナランチャだって…トリッシュと同い年ぐらいになれば大きくなるわよ」  
「この残飯がぁああああ!!!アタシの方が年上だぁー!」  
心の琴線に触れられ一瞬にして怒り狂うナランチャ。  
彼女からビジョンが浮かび上がり徐々に戦闘機の形を作っていく。  
ナランチャのスタンド、『エアロスミス』だ。  
 
「あ〜ら、ド低能のナランちゃん、やるっての?」  
ミスタ姉ェも拳銃を取り出し弾を籠める。  
弾倉の中からリボンをつけたスタンドが  
「ヤレー!ブッ殺セデチュワー!」なんて物騒な事を言いながら出てきた。  
 
「ひぇええええ」  
ブチ切れた二人のスタンド使いは今まさに殺し合いでもしそうな雰囲気になっている。  
この場でスタンド能力をもたないトリッシュ……  
つまり身を守る術の無い……  
は思わず後ずさりした。  
(こ……殺されちゃう!)  
まさに命の危機を感じた時、足音も立てずに軽やかに天才少女のフーゴさん登場。  
「二人とも止めてくださいー!!!」  
空を切り繰り出された拳は見事クリティカルヒット。  
「うぐぅ……」  
哀れ二人はマットに沈んだ。  
 
フーゴさんは燃え尽き灰になった二人を見る事もせず、ぐるんとトリッシュの方向へ向き直る。  
「トリッシュさん」  
そして突然の事に声も出ないでたじろいでるトリッシュに一歩近づき  
心底申し訳無さそうに謝り始めた。  
「あの?大丈夫でした?ごめんなさい……私の仲間が酷い事をして……」  
「は……はぁ…」  
別にフーゴさんが悪い訳でも無いのに……と言うが、それでも彼女は頭を下げる。  
きっとこの三人は毎回こういうコントを繰り広げているんだろう。  
尻拭い役のフーゴさんはその潤んだ瞳でトリッシュを見つめる。  
「あの……トリッシュさん……それでですね」  
ウルウルと輝く瞳。  
ーコイツはヤベェわ!!  
本能か、直観的に狂気を感じたトリッシュはすばやく二、三歩後ずさる。  
「あ、ありがとうね!」  
先手必勝。もじもじと腰をくねらせ何か言いたそうに此方を見つめてくる彼女に  
あくまで気がつかない振りをして、ソソクサとその場を後にしたのだ。  
 
母の計らいで選ばれたボディガードは、なんと6人の少女だった。  
潔癖症で(臭い)男嫌い、まだ15の少女であるトリッシュの貞節を気にすれば当然の事だろう。  
それを踏まえ、組織内でも実力があり忠誠心が高く信頼できるギャング達を選んで寄こしてくれたのだ。  
パパが死ぬまでママの存在を知らなかったトリッシュに対し、  
至れ付くせりの待遇でお迎えを寄こしたママ。  
トリッシュは見ず知らずのママには十分感謝している。  
 
しかし、ママは知っているのだろうか?  
この6人、正直『男性』よりタチが悪いのだ。  
 
一見すると全員が同年代という事で、何でも言い合い和気藹々としてて楽しいのだが  
このギャング達、ある意味『女子高生』なのだった。  
そして新参者で最年少のトリッシュは  
哀れ彼女達の恰好の餌食となり、セクハラ三昧の日々を送る事になってしまったのだ。  
 
 
リーダーであるブチャラティお姉さま  
(アバッキオお姉さまにこう呼ぶように言われた)  
には初対面時に頬を舐められ、そのままキスまでされた。  
ファーストキスが初対面の人間に……しかも同性に奪われた事にパニックに陥り  
「何すんのよー!馬鹿ぁ!」と叫ぶトリッシュに  
お姉さまは謝罪する所か「嫌じゃ無いはずよ。嘘をついていない味だわ」と真顔で言う始末。  
 
チーム一の長身でレディース風のアバッキオお姉さまは、  
やけに紅茶を進めてくるし(勿論怪しいので飲んでいない)  
拳銃使いの少女のミスタ姉ェとナランチャは隙を見せればオッパイを揉んでくる。  
 
唯一マトモだと思ってた、物静かな天才少女のフーゴさんからは  
二回ひっぱだかれ  
「それが愛なの」と訳わからない事まで言われた。  
 
少し気を抜けば胸を揉まれスリットの中に指を突っ込まれる日々。  
しかも自分を狙う「暗殺者チーム」も一癖ある女性達だと判明。  
いくら気丈なトリッシュでも  
こう攻められ続ければその精神はある意味ズタボロに疲れてしまう。  
 
本日もクタクタになり、ママの用意してくれた家の  
(何と亀の中に庭付き一戸建てがあるのだ!)自分の部屋までたどり着くとベットに倒れこむ。  
「ママの馬鹿……こんなんじゃぁ体がもたないわよぉ」  
 
トリッシュはクッションをボカボカと叩き、未だ会った事の無い母親に悪態をついた。  
それを見て、同室のジョルノがクスクスと笑う。  
「トリッシュが反応するから、みんな面白がるんですよ」  
「だって……」  
ジョルノ=ジョバーナはトリッシュと同い年で15歳。  
触れれば溶けてしまいそうな金色の髪と海より深い色の蒼い瞳、雪の様に白い肌……  
そう、例えるなら絵画から抜け出した天使の様な少女。  
そして、天使は数日前にチームに入った新人でもある。  
 
同じ境遇を嘆く同士!とトリッシュは熱い友情を期待していたのだが  
ジョルノは世渡り上手なのか、エロオネェなんて気にしないのかチーム内でのセクハラを物ともしない。  
ジョルノはトリッシュのベットに腰を下ろすと彼女の掌にそっと触れた。  
「でも……先輩達の気持ち……解るかも」  
唇をチロリと舐め、トリッシュの顔を覗く。  
蒼色の瞳に淫靡な影が浮かびあがり、トリッシュは思わず息を飲む。  
「はぁ!?ちょっと!アナタまで!?」  
真っ赤になったトリッシュは慌てて手を引っ込め、身体を引いた。  
強がったのは、そうでもしないとこのまま飲み込まれそうだったからだ。  
「ほら、面白い」  
口元に手をあて、再びクスクス笑う。  
「からかわないでよ!!ジョルノ!!」  
トリッシュは彼女が何を考えているか解らなかった。  
会って数日しかたっていない性もあるかもしれない。  
でも、人を惑わすこの少女の瞳や仕草はジョルノ自身の天性の物なんだろう。  
「本当ッ!アンタも、お姉さま達も酷いわ。アタシの事新参者だと思ってからかってる!」  
動揺してしまった事を悟られない様に必死に虚勢を張る。  
「そんな事ありませんよ。トリッシュ」  
「そんな事なくないわ!」  
今までの不満をぶつけるかの様にプリプリと  
そんな子供っぽい怒り方をするトリッシュに対し  
「先輩もボクもあなたの事をちゃあんと考えていますよ」  
ジョルノはあくまで大人だ。笑顔でトリッシュの頭をヨシヨシと頭を撫でる。  
「やっぱり新参者……と言うか子供扱いしてるじゃないー!!」  
 
 

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