「・・・・・・何の用だ。」  
待っておけと言った筈だ、と入室者を疎んじる調子を含めて語られた台詞は冷たくて、緩い。  
女が片付けているテーブルの上には乱雑に重られたレース関連の書類や書簡入れのほか、  
飲みかけのグラスとワインボトルが置かれていた。  
「一人酒かよ?ムナしーヤツだ。」  
歩み寄った男、ジャイロ・ツェペリはグラスを取って一口傾ける。待たせた理由が『散らかっているのを  
隠そうとしたため』、という女らしさを彼女が持ち合わせているのは意外だったが、視線を感じて見返せば  
先の言葉と変わらぬ冷めた目がこちらを窺っていた。  
「何だ?」  
「・・・意地汚い。」  
「またそれか!怖えーなぁー食い物の恨みは。」  
4TH.STAGEでの出会いは最悪だったが、いつまでも引きずるべき大いなる確執ではない事は  
彼ら自身分かっている。ただ何か本能的に好ましくないと互いの性根に感じ取っているためか、  
顔を合わせては幼稚な口撃を遣りあうのが常だった。  
「大した用でないのなら帰れ。」  
「俺が重大な用件でおまえさんを訪ねたことがあったか?ホット・パンツ。」  
「・・・・・・」  
 
机上が整えられ、白々しい時間稼ぎの出来なくなったホット・パンツが部屋の明かりを消す。用件が何かなど分かりきっていた。  
たとえ男女の情意など生じなくとも。  
二人は既に、欲で結ばれていた。  
 
「勝手にしろ。」  
ジャイロの目的が何なのかを知っていながら毎度、ホット・パンツは普段通り男で居ようとする。  
そして遠慮を知らぬ手が彼女の女の部分を這い回ってようやく、本来の性を思い出したかのように、  
じわりじわりと女に戻される。しかし顔を背け声を潜めはしても、最初から部屋に鍵を掛けることはない。  
ジャイロもその事実を口にしてからかいはしない。正確には「もう」しない。  
本気で機嫌を損ねて部屋を追い出される目は一度で十分だった。  
 
 
 
肌に触れると既に上気して熱く、酒を入れなきゃ付き合いきれないと言いたいのか?、とジャイロは思う。  
そして最初の日のことを思い返した。  
 
その日、ホット・パンツは見るからに酔っていた。  
(故郷を懐かしんでワインを飲みすぎた、と言っていたが彼女の故郷など特に興味は沸かなかった。)  
普段嫌味なほどスキのない女の頼りない様子にジャイロはイヤがらせをしたくなり、  
戯れに押し倒してみたら、彼女が本気にしてしまい、意地の張り合いで事に及んでしまった。  
翌朝酔いの醒めたホット・パンツは凄まじく後悔した様子で「何もなかったことにしろ」と、  
タチの悪い冗談とそれを真に受けたことを何方もどっちだとして、水に流そうとした。  
 
だのに、「1回すれば2回も100回も同じだ」とジャイロは言って、1回と2回の方が2回と100回より  
差が大きいことに気付かなかったホット・パンツは丸め込まれた。  
以後男は道中、同じ宿同じ町に泊まる度に彼女の部屋に現れ、女もまた、まるで不条理に耐えるように来訪を受け入れている。  
それがいわゆる親密な仲なのかと問えば、そろって否定するだろう。  
唯の悪ふざけの延長で、生物としての欲求を満たすための干渉。  
感傷を育まずに交わり続け、ずるずると形成された関係には名前が付かないまま。  
 
「・・・・・・っ・・・お、い・・・・・・」  
「ん?」  
「鬱陶しいぞ・・・・・・さっさと終わらせろっ・・・」  
ジャイロの手はホット・パンツの内腿と脛にあり、的確な刺激を与えるでもなくむにむにと柔い層を捏ねている。  
核心に近づかない接し方に痺れを切らし発された不満は、即物的な懇願でもある。  
反発的な女の口から聞くには愉快な言葉だった。  
前後に座して背を預けられている体勢ではどんな面でその口を利いたのか知れないのが彼には残念であったが。  
 
少しでも顔を隠そうと首を丸めたホット・パンツの耳元にジャイロが近づき囁く。  
「もうちっと可愛くねだれねーのかよ?」  
「黙れ・・・ぁ、ん、止めっ・・・・・・」  
髪の流れの中から無防備に現れた耳介をぬめる舌先がなぞった。苦しげな吃音が女の唇から漏れる。  
まったく素直じゃねー、と言ってやって舌をうなじに進めると、細い悲鳴のような声を零した。  
それでも、体の方は滑稽なほど従順だった。  
指を滑らせ望みどおりぬかるみの中に沈めてやれば、潜めていた甘やかさが息に混じって流れ出る。  
特にいいらしい箇所を指腹でくすぐってやれば、残りの曖昧に触れる場所も、足りないとばかりに押しあてる動きで応える。  
それがジャイロには可笑しくてしょうがない。  
一度ならず露わにした痴態を未だ恥らって秘めようとし、その都度誘いに負けて晒す。  
高潔でいて酷く脆い女をいたぶるのは、挨拶代わりの憎まれ口と引き換えにしても、結構な娯楽だった。  
 
ジャイロの右手が遠い方の膝を掴み引き寄せる方向へ掲げる。  
体の向きを変えられバランスを崩した体が仰向きに転がった。  
「ちょっ・・・は、放せ!嫌だ、こんな・・・・・・」  
もう一つの脚も捕られ、両膝それぞれ体幹の横、寝台に着くほど押し付けられる格好に。  
堪らずホット・パンツは怒鳴りつけ、足と手で逃れようと抵抗するが体重を掛けて縫い留められた体はろくに動けない。  
「こっちは嫌がっちゃいないみてーだけどな。」  
下卑た言い方だったが、彼女を赤面させる効果は十分だった。無理矢理開かせた両脚の中心は濡れ光り、  
開いた唇の奥の慣らされてひくつく粘膜、その皺までもがジャイロの眼下に曝け出されている。  
舌を伸び出させて下降する顔をホット・パンツは見ていられず、眼を固く閉ざし全身を強張らせた数瞬後、  
予感どおりの快感が彼女を襲った。  
「ひっ――――」  
秘所にべとりとあてがわれた舌が下から上へと滑り、蜜を舐め取る。  
粘着質で酸い味のするそれを纏わせ、敏感な入口部の形をなぞって行き来する毎、縋るもののない体肢がひくひくとわななく。  
「ん―――ひぁっ、んっんんぅ、ぅあぁっ、ん、やぁっ―――」  
溢れる蜜壷を舌肉が抉る。淫唇ごと吸い付き、ちゅう、じゅ、と音を立て、紛らわしようのない悦楽を引きずり出す。  
元々そういった愉しみとは無縁だった清いからだはあっけないほど簡単に堕ちた。  
そして回を重ねる度に、正直な反応の示し方も学んでしまっていた。  
今では既に拘束を解かれた両腿と片手で刺激を絶えさせまいとジャイロを捕まえ、余った手は口内をゆるゆると満たしている。  
「ゃ、駄、目だ、んぁっあっあぁぅんんんっっ―――」  
限界が近いらしい。ジャイロの髪を掴む手に痛いほど力がこもり、両脚は爪先まで張り詰め、  
浮ついた鳴き声で昂揚を露わにして―――  
 
「あ・・・・・・・・・」  
ホット・パンツを絶頂へと押し上げていた責めがはたと止められる。糸を引いて離された唇が、言葉を紡いだ。  
「どうしてほしい?・・・・・・その口で言ってみろ。」  
「っ・・・・・・」  
残酷な台詞だった。恥も意地も捨て落とさせる快楽の極限を彼女に教えたのはこの男だというのに、  
後一歩のところで突き放し屈従の褒美としてちらつかせる。  
「言えるかっ・・・・・・馬鹿を言うな・・・・・・・・・」  
未だ髪に触れていた手が払いのけるように動く。が、今し方の狂態までも忘れられはしない。  
紅潮した頬が酒によるものではないことも瞭然である。  
心は決して触れ合わないのに、肉体だけ、動物的に飼いならされていた。  
情に流されることも出来ないで、ホット・パンツは己の欲求をひどく冷静に受け止める。  
散々舐めくじられ解かれた場所が、どうなっているか、どうしてほしいかを。  
「・・・やっ、う・・・・・・ぁ・・・・・・・・・」  
指一本が内側に触れごく柔らかい力で脆弱な点をさする。  
それだけで途方もない愉悦が溢れ、残されたなけなしの矜持も拭い落とされるまでに消耗していては、  
「・・・・・・っ・・・欲しい・・・」  
口にすることが出来る、思いつく限り婉曲的な表現で乞うことしか彼女には出来ない。  
「・・・君が、欲しい・・・・・・」  
余りの羞恥にホット・パンツは顔を覆った。  
泣き出したいくらい恥ずかしかったがそれこそこの男の前では命に代えてもしたくない。  
しかし何の行動も起こらないで、これ以上直接的な言葉を言わせるつもりなのか、と指の間から窺うと、  
何か不快なのかジャイロが顔を引きつらせていた。  
何だ、とホット・パンツは問おうとしたが、その言葉を待たずに腕を引いて抱き起こされる。  
もう一度確認したがその表情には元のニヤつきが戻っていた。  
「自分で気持ちよくなってみろよ。」  
ホット・パンツの両手首を離さずにジャイロが体を倒す。  
M字に開いた脚の間をもう隠しもせずへたり込んでいる女は、困惑げに相手の顔と下半身とを交互に見比べる。  
「・・・・・・出来ない。」  
「最初は誰だってそーだ。」  
たぶん馬よりは簡単だろ、と変わらず下品な物言いを続けるジャイロを睨み付けたが、  
そのような蔑視が彼に対して効果を持つには、既にホット・パンツの劣情は知られすぎている。  
突き出されたそれに対してこみ上げる淫欲、胎内のくすぶりに、抗えない域まで侵食された理性を抱えたまま、  
彼女は膝を突いて男を跨ぎ、自らの内部にジャイロ自身を沈め込んだ。  
 
純なからだを難なく虜にした快感に対して、浅ましくも貪欲にさせられてしまったとはいえ、  
ホット・パンツは自ら貪ることには未だ初心だった。  
尻を掴む両手に導かれて体を上下に揺すり始めても、その動きは酷く拙く、どうやったら良くなれるのか、  
思い通りには行かない困窮で柳眉が辛そうに歪む。反面、男に跨って腰を振っている、  
という興奮ばかりが肉体に先立って燃え上がり、咥えこむ箇所をますます潤おす。  
気持ちのいいはずの辺りに亀頭を往復させるだけのむやみな抽送だったが、  
ぐちゅ、じゅぷん、と跳ねる液の音と匂いは淫蕩さを増す。それが一層彼女の脳を燃やした。  
具体的なこころよさに飢えた肉壁を、一度だけ、ジャイロが下から突き上げた。  
「ひぃっ!・・・、ぁ・・・・・・」  
やっと、という歓喜の嬌声も一度だけ上げ、それが続けられないむごさに気付いたホット・パンツが視線を寄越す。  
雄に屈服する惨めな面に、艶めき震える媚体。汗と、それ以外の体液の匂う淫らな空気を纏いどれほど絶景か、  
気にかける余裕は彼女にはもう残っていない。ただ思った言葉が口から零れた。  
「・・・君は・・・・・・、意地が、悪い・・・」  
目を瞑って再び動き始めたが、相変わらず要領を得ない。  
秘部はいつまで経っても乙女のような堅固さで締め上げしゃぶりつく、無自覚の扇情を雄に振舞っているというのに、  
ホット・パンツ自身は昂ぶることが出来ない。  
言うだけでよかった。  
さっきのように、どうしてほしいか自分の言葉で言ってみせたらよくしてもらえると、彼女は分かっていた。  
同時に、その言葉が思い浮かぶ、自身の淫奔さに涙が出そうだった。  
もっと突いて、揺すぶって、いいところを吸って触って、何も考えられなくなるまで乱させて、と欲しい事がいくらでも沸く。  
そして、この男が自分を汚したせいだ、とも。  
八つ当たりの念が媚びることを許さず、半端な性感で己を苛み続けた。  
 
じれったさに飽きてきて手持ち無沙汰になっていたジャイロが、強情に下るまいとする女の弱点、  
はしたなく立ち上がった両胸の先を捻り上げる。  
「んあぁっ!ぁ、やっ・・・・・・」  
その責めもまたすぐに切り上げられる、ただの焚き付けだと思ったホット・パンツが即座にその手を胸に押さえつける。  
目を伏せて、快感を与える意思を失った男の手を乳房に押し当てる行為はほぼ自慰に近い。  
両腕が体を支えるのを止めてもなお下腹をくねらせて遠い絶頂を追う。  
言葉にすることを拒んでいるだけで、彼女は既に立派な淫婦だった。  
 
女の頑なさが面倒になって路線変更することに決めたのであろう、ジャイロの手がホット・パンツの掌の下で動きを再開する。  
張りよりも軟らかさの勝るそこは格好の手慰みの玩具として、  
指を沈ませ、たわみ、持ち上げれば自重を任せ離せば波打ちと変容を見せる。  
そうやって与えられることにようやく安堵を覚えられた女が、手をつき上体を前へ傾げて差し出す。  
「んふ・・・・・・はぁっ、ふ、ぁん・・・・・・」  
緊張を解き、なされるままに弄られることに没頭しながら、しかし結合部をぬちぬちと動かし続けるのをやめてはいない。  
上への刺激を絶やさぬよう、擦り付けは先程よりもささやかになったくらいだったが、  
彼女の艶顔、緩みきった唇と長い睫毛の震えるさまは、むしろ淫靡さを増している。  
深く咥え込んだまま、粘膜を舐め付かせるより境界を撫で付けようとするその行為が、  
接触を得ようとする器官がすり替わったためである事は外観にも明らかだった。  
ホット・パンツの上半身がジャイロの上に伏せられる。  
手と体の間で柔肉が強く圧迫されようと構わず、体ごと、秘口の上を茂みに押しあてていた。  
触れさせるその場所の核はにちにちと入口を抉じ割る楔に包皮を引かれて露出している。  
余りに敏感な肉の粒は毛髪の掠る刺激ですらとろけそうなほどの熱感を生み出して、彼女をたちまち陥落させた。  
顔と顔が幾分の上下差のみでごく近い距離にあるのにも拘らず、ホット・パンツはあられもない鳴き声を上げる。  
「んんっあぁ、はぁあ、ふ、ぅあっあぁあっんゃ、ぁああっ!」  
鼻にかかり、猫の鳴くようなべとつくように甘い響き。  
好いてもいない男に聞かせられはしないと思っていた切ない音声は、今はだらしなく垂れ流されている。  
触れ合う肌同士をも性急に滑り合わせ、全身で堪能しようとしていた。  
「んふ、はぁっ、ふぅうっうぅ・・・・・・」  
感触に飢えた口と舌が、一番近い位置、ジャイロの首に伸びる。  
愛撫などとは呼べない幼稚さで這い、味わうだけで甚だしい興奮を彼女に呼んでいた。  
平時の堅さとは結びつかない、恥じらいを自ら脱ぎ捨てたかのような嬌態は、まるで、すべてを捧げようと―――  
 
「イヤに情熱的じゃねーかよ・・・」  
腹立たしいほど楽しげだったのが一変、その声が酷く疎ましそうに濁っていると、  
色情に耽っていたホット・パンツでも聞き取れた。  
顔を見れば引きつって当惑で曇っている。似た状況の覚えが彼女にはあった。  
 
 
 
「嫌い、なのか・・・・・・?」  
寄り添った唇が弱々しく囁く。凛然とした鉄の女の、聞いたこともない悲痛な声。  
色声とはまた別のギャップに驚き、返す言葉に詰まった喉から、顎、唇へと、先よりもずっと控えめな淡い口付けが上る。  
真正面から見据える、一杯に潤んでいたその両目が―――  
 
 
 
いつもの冷ややかさで、見下ろしていた。  
 
 
 
「冗談だ・・・決まっているだろう。」  
自分の表した言葉と行動が、まるで愛しげにみえたのがこの男には鬱陶しかったのだとホット・パンツは理解し、  
酷く可笑しい気分になった。何を馬鹿な、君に惚れる理由がどこにある、と直ちに否定するよりも、  
もっと戸惑わせてみたいと思い立ち、下手な芝居を打ってみせた。  
 
言い終え再び唇を張り合わせる。睦みを演じるのに興が乗ってきて、指を髪に絡めもする。  
人の心を乱す遊びをするのならこちらだって、と張り合ってみせる、妙な対抗心が働いていた。  
 
男の力で、横に180度反転する。  
「アホくせー。冷める。」  
「だろうな。」  
そのまま終わりへと向かったが、先程の異様な興奮は、もうなくなっていた。  
 
事後の甘ったるい時間などこの二人には存在しない。  
冷えた風がカーテンをはためかせて温んだ空気を洗い流せば、  
先刻ここで行われたことの名残は毛布から覗く女の裸の肩のみとなる。  
「閉めろ。寒い。」  
人が気ぃ使ってやったのに、と言いたげな乱暴さで強く窓が閉じられる。  
見遣った女の様子はいつも通りの無愛想なオトコ女で、また何事もなく元に戻ったことを確かめてから、  
ジャイロは部屋を出ようとした。  
 
競走関係その他の確執を取り除いてしまえば、好意敵意を問わず感情なぞ存在せず、残る要素は男と女の肉体ふたつ。  
何も生まない、何も残らない関係は、癖になるほどの気楽さがあった、のに。  
 
「・・・・・・おい。」  
「?何だよ。」  
「二度と来るな。」  
「あー分かった分かった。」  
「・・・本気で言っている。」  
「・・・・・・へーえ。」  
 
 
一人になった空間でホット・パンツは思う。これだけでよかったのだ、と。  
拍子抜けするほど容易だった終わりは、今後の二者に何も影響を及ぼさないはずだった。  
ここフォートマジソン、5TH.STAGE中間チェックポイントで彼女は『祖国』からの伝令を受けた。  
新大陸に散りばめられた遺体と、それを集める者たち。  
恐らく近いうちに衝突するのだから、今手を切って惜しいことなど何もない。  
だが、そう。『惜しい』。最後の台詞は何か喉に詰まった。  
広くなった寝台に、自分のものでない長い髪が落ちているのも嫌に目ざとく拾ってしまう。  
清清したと言い切れないような感覚が彼女の頭の中で霞んでいた。  
 
 
「・・・・・・・・・・・・」  
フン、と鼻を鳴らす。  
髪を払い捨て、毛布を体に巻きつけて包まる。  
レース開始から7週間は経ち、じきに真冬に突入する。  
次ステージで五大湖へと北上すれば更に冷え込み、体を温める手段が欲しくなる。  
そう、それだけのことだ。  
結論付けて、疲れに任せて目を閉じる。  
枕に残った男の匂いも、裏返せば何も無かったようになる。  
心地悪くない、しかし良くも無い空虚さに飲まれながら、ホット・パンツは眠りに落ちていった。  
 

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