大きな扉の前に、二人の女が立っていた。  
一人は珈琲色の肌の女。  
フードを目深に被っていても、その艶かしい唇が稀な美貌を想像させるが  
何よりも目を引くのはタイトスカートから伸びた見事な脚線美だった。  
もう一人は象牙の肌の女。  
豊かな胸と腰、口元だけを申し訳程度に薄布で隠した扇情的な格好で  
むき出しの手足に装飾品を輝かせ、恥ずかしげもなく立っている。  
 
「DIO様、お召しにより参りました」  
 
二人の美女は主を愉しませるためにこの部屋に呼ばれたのだった。  
「入れ」との声に従い、重厚な扉を開けると、室内は外の強い陽射しが嘘のような濃い闇で塗り潰されていた。  
その闇の一角にランプの灯が小さく点り、傍らの寝台に寝そべる男の姿を照らした。  
大理石の彫像のように均整の取れた身体も、鋭く凍りつく眼差しも二つとないほどの美しさを誇っていたが  
それは悪徳と冷酷ゆえの美だった。  
彼の魂からにじみ出る邪悪な魅力こそが何よりも彼女らを惹き付け、心酔させていた。  
 
部屋に入るや否や、少女のように浮わついた気分で二人は寝台に上がり、あたしが先に可愛がってもらうのとばかりに競い合う。  
マライヤが星型の痣に唇を寄せれば、ミドラーは首の生々しい傷痕を愛しそうに舌でなぞる。  
ミドラーが胸板に乳房を押し付ければ、マライヤは早くも腹筋のさらに下に指を忍ばせるといった具合の  
男なら誰でも骨抜きにされそうな媚態にも、DIOは唇の端をわずかに吊り上げるだけだった。  
 
マライヤの悪戯な指を止めようとしたミドラーだったが、その手をDIOに捕まえられて軽々と膝の上に抱えられてしまう。  
ヴェールの下で頬を染めるミドラーにマライヤは文句を言おうとしたが、  
DIOが忍び笑いと共に「おまえも可愛がってやれ」と囁くと、心得たように乳房に手を伸ばして  
先端だけを覆う小さな胸当てを剥ぎ取った。  
いつも澄ましているミドラーがよがる様は、女であってもなかなか嗜虐心をそそられるのだ。  
 
「あっ、嫌ぁ……」  
「嫌ですって? もともと裸みたいな格好なのに気取るんじゃないよ」  
 
口元のヴェールと装飾品だけ残して裸にしてしまうと、早くもぷっくり芯を持った乳首に唇を近づけ、ちゅっと吸い付いた。  
かつて余興として主の目の前で二人で絡み合った事もあるので、このような事に抵抗はまるでない。  
 
「あぁっ!」  
 
DIOの手がヴェールの下に入り込み、冷たい指が瑞々しい唇をなぞった。  
ミドラーは唇を開いてそれを迎え入れ、男のものに奉仕するように舌を使って愛する。  
その反応に気を良くしたDIOは褒美として首筋へ口付けを送った。  
豊かな金髪が彼女の耳をくすぐり、耳飾が小さく澄んだ音を立てた。  
絶え間ない愛撫にうつむいては仰け反るたびに、ミドラーの白いうなじが情欲に染まる。  
DIOはそれに唇で触れてはいたが、牙を食い込ませる事はしなかった。  
彼女らが『道具』として価値があるうちは食わないようだったが、ミドラーはDIOに血を吸われる事をこそ望んでいた。  
館の中に打ち捨てられた『食料』たちの恍惚とした死に顔を見るたびに、彼女らを羨ましいと思った。  
悦びのうちに死ねるばかりでなく、この方の一部となって永遠に生きられるのだから。  
 
「わたしの上で踊ってみせろ」  
 
生殺しのようなもどかしい愛撫からようやく開放されたと思う間もなく、淫猥な命令が下される。  
ミドラーは言われるままにDIOの腰をまたぎ、準備の出来た自分の入り口にあてがった。  
主の体格に見合うだけのものはほとんど抵抗なく奥まで収まり、その感触に思わず身震いする。  
どこも血が通っていないように冷たい主の身体で、ここだけは驚くほど熱い。  
それが自分のなかを満たしているだけで、ミドラーは子宮が蕩けてしまうほどの恍惚を覚えた。  
 
「DIO様……DIOさまっ」  
 
たっぷり貪って、主も同じだけ悦ばせようと思っていたのに、生娘のようにたどたどしい腰使いしか出来ない。  
いつの間にか深紅のガーターで吊ったストッキングだけになったマライヤが、今度は背後から乳房を揉み上げてきた。  
彼女の手に収まらないほど豊満な膨らみは、身動きする度にぽよぽよと弾む。  
後がつかえているんだから早くイッてしまいなさい、と乳首をつねられ、ミドラーは一際甲高い声を上げた。  
DIOも彼女の細い腰を掴み、下から突き上げてくる。  
繋がった腰が振り回されるほど力強い動きに、悦い所を容赦なく刺激されてはたまらず  
ミドラーは呆気なく陥落し、主を差し置いて一人で勝手に絶頂を迎えてしまった。  
その間中DIOは汗ひとつかかず、息も切らさず、淫らな舞いの一部始終を見上げていた。  
 
「DIO様、前座の踊り娘はもういいでしょう? 次はこのあたしを……」  
 
DIOの上で脱力した肢体を押しのけて交代しようとしたが、その瞬間  
ミドラーのスタンド『女教皇』が鋼鉄の手錠と化してマライヤの手首を戒めた。  
スタンドを使うなんてどういう了見よ、この―― 、と怒鳴ろうとしたが  
間違っても美女が口にすべきではない言葉は出てこなかった。  
身体の上にのしかかって来たミドラーがいきなり唇を奪ったからだった。  
その意外な巧みさにマライヤが眼を白黒させている間に、ミドラーは見事な脚を大きく開かせて  
自分の脚と絡ませ、あらわになった女の部分を重ね合うように腰を落とした。  
ちょうど上下の唇でキスをする形になったが、お互いすっかり紅が落ちてしまった上の唇とは違い  
下の唇はグロスをつけ過ぎたように淫靡に濡れ光っていた。  
先ほど好きにされたお返しだとでも言うように、ミドラーは巧みに腰を使い性器同士を擦り合わせる。  
 
「んんっ……!」  
「マライヤ、ここ……どうなの? いいでしょ?」  
 
小さな蕾に似た突起を苛められ、マライヤも思わず声を上げてしまう。  
中で感じるのとは違う甘い刺激に悩ましく眉を寄せ、いやいやをするように首を振る。  
もっとも、ミドラーにも同じだけの快感が伝わっているのだが――  
肌の色も美貌も対照的な二つの汗ばむ身体の間で、互いの乳房が押し付け合って柔らかくつぶれていた。  
 
「ふあぁっ……やめ……どきなさいよっ」  
「どくもんですかっ、あんたなんてDIO様のを受け入れたあたしのここで充分よっ、……ぁっ!」  
「どかなくていい、そのままでいろ」  
 
喘ぎ混じりに繰り広げられる舌戦に苦笑し、DIOは下になっているマライヤの脚を抱え上げてやる。  
二人の腰が浮きそうになり、密着した粘膜が秘めやかな音を立てた。  
さっき咥え込んだばかりなのにまた欲しくなり、ミドラーは尻を振ってねだったが  
すでにDIOの雄はマライヤのなかに半ば埋没しつつあった。  
 
「あっ、……あ……!!」  
 
両腕を頭上に拘束する手錠が耳障りな音を立てる。  
自分とDIOの間のミドラーが邪魔だったが、それでもこの何物にも変えがたい感覚は変わらなかった。  
ぐっと奥を突かれ、マライヤが息を詰めたのを察してミドラーはゆっくり腰を前後させた。  
敏感な蕾同士が擦れ合い、悶える二人を見下ろしながらDIOは徐々に動きを激しくする。  
自分からはほとんど動けず、中と外から好き放題に蹂躙される状況はマライヤをいつになく燃えさせた。  
 
「もう……ゆるしてぇっ……!!」  
 
涙交じりの懇願を「もっとして欲しい」という意味で受け取り、DIOとミドラーはますます攻めの手を激しくした。  
二人分の蜜が掻き回されて粘ついた音を立て、より官能を高めていく。  
ストッキングに包まれたままの脚が何度も空中を蹴り、二人の女の身体に被さるDIOの背筋がうねる度に  
それが跳ねるような動作に変わった。  
やがてかすかな悲鳴と共につま先がきゅうっと丸まり、断続的に震えが走る。  
ほぼ同時にミドラーも蕾で極めていたが、マライヤがどちらでイッたかは分からなかった。  
締め付けに抗わず精を吐き出し、DIOははじめて深く息をついた。  
一滴もこぼしてはいけないとマライヤは思い、まだ快感に痺れる下腹に力を入れて入り口を引き締めたが  
どうせこの後何度も溢れるほどに注がれてしまうのは分かり切っていた。  
蜜と精にまみれた雄を二人は自らの口で清め、忠誠を誓うようにそれに口付けた。  
 
饗宴はまだ始まったばかりだった。  
 
(終)  
 

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