そういえば初対面の時もこうだった。  
空条承太郎はやれやれとため息をつきながら自分の胸の中にいる女を見下ろした。  
 
女の名は東方朋子。かつて承太郎の祖父 ジョセフ・ジョースターの愛人だった女性だ。  
『わしは生涯、妻しか愛さない』などと語っていたじじいが浮気だったか本気だったかは知らないが、  
彼女は真剣に『恋』をし、結果 シングルマザーとなった。  
その息子、仗助に会う為にこうして東方家を訪れたわけなのだが…。  
 
 
いま、この杜王町は不気味な影に覆われている。  
 『吉良吉影』 15年間、証拠も残さず警察の手から逃れ続けている殺人鬼だ。  
ヤツはスタンド使いで、今はなりを潜めているが日常的に犯行を重ねている。  
そしてヤツを守る為、『写真の親父』があの『矢』を使い、スタンド使いを生みだしている。  
一体どれほどのスタンド使いがこの町にいるのか?把握するのは困難だ。  
そいつら全員とは言わないが敵に回る可能性は高い。  
時間が経てば経つほど不利になるのは確実だ。  
だからこそ承太郎は仗助たちと共に一刻も早く『吉良吉影』を捕らえねばならないのだ。  
 
そんな折、東方朋子が事件に巻き込まれた。  
敵のスタンド使いが卑怯にも『精神的に揺さぶりをかける』と言うだけの理由で朋子を拉致したのだ。  
そのゲス野郎はキレた仗助がキッチリ始末をつけたようだが、問題は朋子だ。  
大層ショックを受けているらしい。  
それはそうだろう。  
自宅でいきなり訳のわからない男にセクハラまがいの手品(朋子には手品としか思えなかっただろう。しかもとびきり  
悪趣味な)を見せ付けられ、その後の記憶がはっきりしないとなればどんなしっかりした女性でも不安になる。  
父親が突然他界し、我が子に至っては大怪我をして帰ってくることもしばしば、ともなればそれは心を痛めている  
ことだろう。  
そんな時期にこの事件だ。精神的に参ってしまっても不思議ではない。  
 
本来、承太郎はジョセフの代理でこの町へ来たのだ。  
結局ジョセフ本人もこの町へ乗り込んできてしまったのだが。  
ジョセフも朋子の事を気にかけてはいたのだが、いかんせん息子によって『面会禁止令』が出されていた。  
朋子にはジョセフがこの町へ来ている事は伏せられていた。『逢えば取り乱すに決まっている』  
仗助の判断は慧眼だったと言わざるを得ない。  
(初めて会った時もおれとじじいを間違えたくらいだからな…)  
 
仗助たちとは連絡を取り合い、時間があれば出来るだけ顔を合わせるようにもしていた。  
今日は駅前に用事もあったので、ついでに東方家に寄ってみたのだ。  
玄関チャイムを鳴らす。この時間いつもなら朋子が対応に出るはずだが、どうもその様子がない。  
不審に思いドアノブを廻してみると鍵がかかっていない。  
そのまま家の中に入った。  
シンとしている。  
「…誰もいないのか?」  
リビングへ回る。無人の部屋はしかし夏の癖にヒヤリとするほど涼しい。エアコンがかけっぱなしだ。  
ふとキッチンに目を向けると人影が見えた。  
朋子がテーブルに突っ伏している。  
「いたのか。無用心だぜ。おれの様に勝手に侵入してくるヤツがいないとも限らないからな」  
言うと、朋子はピクリと肩を引き攣らせた。  
(まずい事を言ったかな…?思い出させてしまったか)  
承太郎は迂闊にも彼女のデリケートな部分を刺激してしまった。  
 
ガタリと椅子を鳴らして立ち上がり、朋子は承太郎に駆け寄るとその胸に顔をうずめて泣き出した。  
初めて出会った時とは違う涙だ。肩を震わせ、声を殺して泣いている。  
よほど心細かったのだろう。  
仗助の前で泣くわけにはいかない。いつものように振舞わなくては。  
そんな芯の強い彼女だからこそ、ここまで溜め込んでしまったのだ。  
 
承太郎は顔にこそ出さなかったが困り果てていた。  
もともと口下手である彼は女性の扱いも得意ではなかった。しかし先程の己の不用意な発言によって朋子を  
泣かせてしまったのだ、という自覚はあったので。  
(こういうことは向いてないんだが…さて、どうするか)  
とりあえず落ち着かせる為に肩を抱き、頭をそっと撫でてやった。  
しばらくその態勢で事態の変化を待った。  
その肩は冷え切っていた。手で撫でさすり、暖めてやる。  
そういえば徐倫にもしばらく逢っていないな…元気でやってるのだろうか などと別の所に意識を飛ばし始めた頃  
朋子がそっと顔を浮かせた。  
まだ俯いたままではあるが、どうやら泣き止んでいるようだ。  
 
「…おい、大丈夫か…?余計な事を言っちまって悪かったな…もう落ち着いたか」  
「…ええ。ごめんなさい、取り乱してしまって…」  
 ………沈黙。  
「…そろそろ離れて欲しいんだが…」  
朋子は承太郎に抱きついたまま離れようとしない。  
突然、朋子は顔を上げて言った。  
「承太郎…さん。お願いがあるの …私を抱いてくれない?」  
「……何を言ってるんだ?」  
本気で解らなかった。たった今、目の前で泣いていた女が何故いきなりそんなことを口走るのか。承太郎の理解の域を  
越えていた。  
「ジョセフには…もう、逢えないのでしょう…?」  
 
朋子はまだジョセフを愛しているのだ。それは解っていたつもりだった。しかし面と向かってそう言われると  
とても酷いことをしているような気になってしまう。  
逢おうと思えばいつだって逢えるのだ。ジョセフはこの町に今現在いるのだから。  
しかし逢わせればトラブルを引き起こす。それは確実だと思われた。  
朋子はまだ若い。コブ付きとはいえ探せばいくらでも相手は見つかるだろう。そうしないのはジョセフへの愛情ゆえ。  
その彼女がいま、自分に向かって「抱いてくれ」と言っている。  
(じじいへの想いを吹っ切ろうって訳か…?)  
それ自体は健全な事だと承太郎は思う。いつまでも実らぬ想いに身を焦がしていては人生の無駄だ。  
新しい相手を見つけて幸せに暮らせるのなら、そちらの方がよほど建設的であるとも思う。  
(…だが何だってよりにもよっておれを選ぶんだ)  
選ぶなら他で選んでくれ おれはじじいの孫だぞ、と考えていると朋子は承太郎の手を引き、リビングを出た。  
少々混乱しながら手を引かれるままについて行くと、そこはベッドルームだった。  
朋子の寝室なのだろう。甘い女の香りがした。  
 
「さあ、入って」  
入り口で立ち止まっている承太郎を朋子が促す。  
「おい…ちょっと待ちな おれはまだあんたを抱くとは言ってないんだが…」  
「そうね でも承太郎さん、あなた初めて会ったときこう言ったわね?『おれがじじいのかわりだ』と?」  
(・・・たしかに言った・・・気がする)  
自分の発言を思い返しながら、そんなつもりで言ったんじゃないんだが…とこぼした。  
「どんなつもりでもいいのよ。…お願い いま、抱いて欲しいの」  
「自分が何を言ってるのか解ってるのか…?」  
 
目を見れば解る。冗談やいい加減な気持ちで言っているのではないことが。  
悲壮な覚悟のようなものまで感じられる眼差し。  
朋子は承太郎の手をとり、ベッドへと促した。  
とりあえずベッドに腰掛ける。自分の前に立つ朋子を見つめた。そして思う。  
一体どれほどの痛みに耐えてきたのだろうか。当時、シングルマザーになる事は今以上に風当たりが強かったはずだ。  
彼女の父親が必死に守ったのだろう。我が娘と、その体内に宿った小さな命を。  
その命はいまや立派な男として成長している。  
その間一度として、彼女はジョセフ・ジョースターに頼る事はなかった。  
自分とジョセフの立場を考慮した結果であろう。しかしそれはあまりにも酷ではないか。  
(じじいの勝手で大変な苦労を背負い込ませちまったな…)  
 
朋子は承太郎の脚の間に身体をいれた。  
ちょうど胸の高さにある承太郎の頭を優しく抱きしめる。承太郎はされるがままにしていた。  
これで彼女の気が晴れるなら、それも悪くはないんじゃあないか。  
ゆっくりとコートを脱がされる。帽子が パサリ と音を立ててベッドに落ちた。  
まるで祝福するように朋子は口づけを落とす。何度も何度も、髪から額へ、瞼に、頬に 鼻の頭に そして唇へ。  
その唇が離れた時、承太郎は朋子の顔を見た。とても美しい。同時にとても悲しかった。  
承太郎は女を抱きしめた。強く、息が詰まるほどに。彼女の悲しみを消し去ってやりたい、と心から思った。  
 
朋子をベッドへと押し倒し、口付ける。先程とは違う。深く、貪るように舌を絡め、歯茎を舐め取るように。  
「ん…ふ…んん…」  
快感と興奮が湧き上がる。その腕を承太郎の逞しい首へとまわし、少し癖のある髪に指をあそばせた。  
承太郎が唇を離す。ややグリーンがかった瞳が見つめる。  
「…おれはあまり優しくないぜ…期待するなよ」  
そう言うと、ブラウスの上から胸を揉んだ。  
首筋に舌を這わせ、軽く歯を立てる。ブラウスをたくし上げ、下着をはずす。そしてそのままシャツのように  
脱がした。そのはりのある腰に張り付いてるタイトスカートとショーツも取り去った。  
改めて朋子の身体を眺める。  
子供を産んだとはいえ、そのプロポーションはまだまだ捨てたものではない。  
「…きれいだな…」  
承太郎は素直にそう言った。  
「もう若くないわ…でもやっぱり嬉しいものね」  
フフ、と微笑む朋子は少女のように愛らしい。  
下腹部から臍、脇腹へと掌を滑らせ、二つの膨らみを下から押し上げるように包む。  
そしてその先端を口に含んだ。舌と唇で刺激すると硬くなっていくのがわかった。  
「…う…んん…あ はぁ…」  
甘い吐息のような声が聞こえてくる。  
右手を少しずつ降ろしていく。くびれたウエストから柔らかい曲線を描く腰に手を回し、尻を鷲掴みにする。  
そのまま太腿をもちあげ、あらわになった秘所に指を滑り込ませる。  
もう熱く、蕩けそうだ。  
くちゅり、と音を立てて指を沈める。ぬるぬるとした粘液を掻き出すように激しく動かした。  
「ぁあッ ん・あ…はッぅうん…」  
承太郎の指に肉が絡みついてくる。親指で蕾を押し潰すように擦る。すると一際強く締め上げたかと思うと  
びくびくと痙攣するように蠕動した。  
 
朋子は少し潤んだ瞳で承太郎を見上げた。  
承太郎の首に腕を回し、深く口づけながら体勢を入れ替え、ベルトを器用にはずしていく。  
シャツの中に手を滑り込ませる。なんと逞しい胸板だろう。シャツを脱がし、乳首に口づける。  
唇で噛むように挟み込む。承太郎がピクリと反応した。  
ズボンと下着を脱がし、2人とも全裸となった。  
承太郎に跨るように上に乗り、胸元に舌を這わせる。左手で鍛え上げられた身体をなでていく。  
右手は熱く硬い肉の棒を撫でさする。  
少しずつ下へと移動し、割れた腹筋に刻まれた臍を舐めた。  
朋子は承太郎の股に顔をうずめ、屹立する雄の象徴を舌先で丁寧に舐めあげる。  
また承太郎はピクリと反応する。声は漏れてこないが息遣いは少々荒くなっている。  
朋子は陰茎を握り、上下へしごきはじめた。舌先で先端の割れ目を刺激するように舐める。  
雄の匂いが脳を刺激する。  
唾液をたっぷりと絡ませ、咥え込む。喉の奥にまであたって息が詰まる。しかし止めようとはしなかった。  
逆に激しく、音を立てて吸い付いた。  
無意識に腰が動き、承太郎の脚を蜜が汚していた。  
 
承太郎は朋子の頭にそっと手を置き、行為をやめさせた。  
起き上がり、額に口づける。  
「本当にいいのか…?やめるなら今だぞ」  
「優しい振りして、非道いこと言うのね…今更だわ」  
ああ、そうだな と自嘲しながら朋子のかたちの良い脚をひらき、己の身体を割り入れた。  
先端をあてがい、ゆっくりと身体を沈める。深く沈めるほどに朋子は強く締め付けてきた。  
己の全てを朋子の体内に埋め込むと  
「…いくぜ」  
言って、勢いよく腰を引きそして打ち付けた。  
「!ああッん・ああぁあッ」  
承太郎の与える刺激は激しく、意識を持っていかれそうだ。  
久しく忘れていた女の悦びが、華が開くように体中に広がっていく。  
(ああ、激しい こんなのは初めて…!)  
承太郎は両手で胸を鷲掴みにし、乳首を指で挟み込んだ。それは腰を打ち付けるたびに強い刺激を与える事になった。  
 
突然、承太郎は己を引き抜いた。  
「ぅあッ は・あぁあ…ッ」  
多くの快楽と微かな苦痛をにじませた声を聞いた。  
朋子を促し、うつ伏せの状態にさせると、腰を抱き上げ尻を高く突き出させる。  
それは男の征服欲を煽った。赤く熟した果実にナイフを突き刺すように、ずぶり と挿入した。  
薄暗い部屋に淫靡な声と肌のぶつかり合う音が響く。  
そこには二匹の美しい獣が絡み合っていた。  
朋子はここへきていっそう硬さを増した雄の感触を感じ取っていた。  
その硬さからかたちまで全てを味わう為、さらに締め上げる。  
自分から貪るように腰を動かした。すると承太郎が動きを止める。  
弱まった刺激に後ろを振り返ると愛しい男にそっくりの顔がそこにある。  
見つめられるだけで欲情した。自分で腰を振り続け、淫らに啼き声をあげた。  
承太郎は朋子の尻を掴み、割れ目を指でなぞっていく。ある箇所に到達すると、己の雄が強く締め上げられる。  
刺激を加える事で摩擦が増し、快楽はとどまる事を知らない。耐え切れず、承太郎はまた自ら腰を振りはじめた。  
 
速度があがった。脳天にまで響くような衝撃に快楽は身体中を痺れさせる。  
息が詰まるほどの快感に、朋子は抗うすべもなく堕ちていった。  
「んッ!ああ・あたし もうッ!はぁあッ」  
承太郎も限界だった。女の腰を両手でしっかりと固定し  
「…いくぞ」  
喘ぐような呼吸の中でそれだけ言うと、より深くへ刻み込むように己をぶつけ始めた。  
白く、燃え上がるような感覚が朋子の中で膨らみ、そして弾けた。  
「んあッ!ぁはああぁあ―――!!」  
真っ白な意識の中で、愛しい男の声を聞いた気がした。  
己を絡めとる肉がその精を搾り取るように蠕動する。承太郎は本能が求めるままにその最奥を白く汚した。  
 
 
「…こんな事になってしまって、すまない」  
承太郎は姿を整える動きを背中で感じながら言った。  
「あなたが謝ることではないわ。これは私が望んだ事ですもの」  
ベッドに腰掛ける承太郎の首に後ろから腕を絡ませ、その胸へうずめるように頭を抱いた。  
「ありがとう。これで少しは前に進めそう」  
抱いた頭に唇を落とし、ふわりと立ち上がる。  
「…そうか」  
「…ええ」  
くすくすと笑う声に振り向く。なにを笑っているんだ?と視線で問いかける。  
「やっぱりジョセフに似てるのね。そっくりよ」  
 
一体なにが似ているんだ、と心の中でこぼしながら  
「…やれやれだぜ」  
とため息と共に苦笑した。  
 
 

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