花京院は虚脱した少女の肩を掴み、ゆっくりとソファに寝かせた。 
操ってしまえば済むことなのに、わざわざ手を使って感触を楽しむように太ももを掬いあげ、少女の秘部を露わにする。 
少女は脚を閉じようとするが、いつのまにかまた体内に滑り込んだハイエロファントのせいで、身体が自由にならない。 
そこに手が触れて、触脚とは異なる人の手の感触に全身の肌が粟立った。 
「ひっ……嫌ぁ……んっ……〜〜〜ッッ!」 
一本の指が無遠慮に少女の体内に入り込む。男性としては比較的細い指で、中もしっとりと湿っているおかげで痛みはほとんどない。 
だが、本来他人に侵食されるはずのない領域を侵され、一気に不快感が這い上がってくる。 
更に悪いことに、少女の体内に入り込んだ大量の触脚が本体の極度の興奮に合わせて不気味に蠢きだした。 
身体中が犯されている。脚も、指も、胸も、首も。 
 
悶え苦しむ少女を見下ろしながら、花京院は初めて触れる膣の感触に恍惚としていた。 
体温で程良く温かく、とろとろに蕩けていて手にとても心地よい。 
ここに入れたら、どんなにか素晴らしい快楽を味わえるだろう。 
ずるりと指を引き抜き、舐めてみると潮の香りがした。 
その味すらとてつもない美味に思えて、表情をだらしなく緩めながら、ものの先を小さな窪みに押し当てると、 
少女の顔が恐怖に凍りついた。 
「待って止めて……何でもする何でもするから そうだまた手でして上げるから今度は自分からするからぁ…… 
 お願いだから他のところで出して入れないで……」 
その恐怖が花京院の劣情を余計に煽り、彼は恍惚の笑みを浮かべながら、ものを強く押し付けていく。 
滑りかけたのを戻して手を添え、少しずつ沈め始めた。 
「うぅ……や……嫌……」 
少女の目から涙が溢れる。ものの先が温かさに包まれていく。 
「あ゛……うっ……あなたは……そんな人じゃあ……目を……さま」 
先端の部分が沈みきったところで手を離し、一気に体重をかけて突き入れると同時に、少女の絶叫が響き渡った。 
 
少し濡れた程度では緩和されない激しい痛み、身体の奥の奥を強く叩かれる苦しさ、激しく動き身体中を犯し尽くす触脚のおぞましさ。 
「あ゛あ゛ あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 
壊れたように声にならない声を発する口に、指が捻じ込まれる。苦痛を逃がそうとするかのように、必死でぎりぎりと噛み締めた。 
少年は血を流す指の痛みなど気にも留めず、ただ少女を犯し続ける。 
「いだい……いだいい゛よぉ……死んじゃう……」 
少女は必死で自らを犯す肉塊から逃れようとするが、いくら念じても支配された身体は動いてくれない。 
そうでなくても、大の男に覆いかぶさられて動けるはずがなかった。 
体勢のために少女には彼の表情はうかがえなかったが、肩口を汚す唾液と、 
その口から発される音声――時折「きもちいい」という単語が混ざっているようだがそれ以外は識別できない――が 
花京院の状態を示していた。 
 
(ああ……すごい……) 
少女の肩口に鼻を埋めた顔は紅潮し、意思が強そうだった瞳は愛欲の濁った光を宿している。 
あそこはしっとりと湿り、ともすれば押し出されそうになるほどの強さで激しく締め付けて来る。 
少年は本能のまま、一心不乱に彼女を犯し、またものだけでなく、全身で少女を感じ、貪っていた。 
欲情し興奮しながらも、裸になった肌と肌が触れ合う心地よさに不思議な安らぎを感じていた。 
(すべすべで……温かい 裸で抱きしめるとこんなに気持ち良いのか 
……どうしてか……この女を……昔から 知っていたような……) 
花京院の頭の隅に浮かんだ疑問はしかし、激しい波にかき消された。身体の奥底からせりあがってくる衝動。 
身体を起こし、腰の動きを激しくする。肌が離れた喪失感は、強烈な快感に飲まれて消え去った。 
一気に虚脱してソファの背にもたれ掛かる。目の前には虚ろな瞳から涙を流し、膝をガクガクと震わせる少女がいた。 
自分に最高の快楽を与えてくれた、かわいい少女。 
 
やっぱり、殺してしまうのは勿体ない。 
 
虚脱が去ると、花京院は少女に服を着せ、自分も手早く身支度を整えた。 
絶望に満ちた瞳でこちらを見る少女の手を取り、主の下に向けて旅立つ。 
淡く優しい慕わしさは、もう彼の胸に戻ることはない。 
 
 
 
 
月明かりに照らされた回廊に足音が響く。音の主はテレンス・ダービー、この館の執事を努める男だ。 
回廊の先にあるのは館の離れだった。そこはDIOの宿敵を亡きものにした、最も優秀な部下に与えられている。 
テレンスは今、主の言付けを携えて、彼の下に向かっていた。 
「やれやれ……『お取り込み中』でないと有難いのですがね……」 
しかし、離れに近付くにつれ、そこから悲鳴のような、それでいてどこか甘い声が響いてくるのが分かる。 
どうやらテレンスの願いは叶わないようだ。彼は大きくため息を吐くと、離れの門をくぐり、迷わず寝室に向かった。 
部屋の中から響く声はこの離れの主が人を迎えられる状況ではないことをはっきりと示している。 
が、テレンスはノックもせず、いきなり扉を開け放った。その瞬間、濃い淫臭が彼を包み込む。 
顔を僅かにしかめて見やった先には、離れの主と彼に覆いかぶさられた一人の少女がいた。 
まだ年若い少年にしか見えない彼は、少女の顔に跨って口腔にものを押し込みながら、その秘部を長い舌で執拗に舐めまわしている。 
良く見れば中空から緑色の触脚が幾本か突出し、少女の膣を犯していた。その少女は良く見ればまだあどけなさを残している。 
口に突き入れられたものと継ぎ目から滴り白い頬を汚す唾液が、少年の責めに跳ねる身体と喉の奥から絞り出される嬌声が、 
快楽に、あるいは囚われた絶望に輝きを失くした瞳が、体中を汚しているどちらのものとも付かぬ体液が、 
そのまだどこか幼い可憐さのせいで一層淫らに映えていた。 
少年はテレンスに応答するためにわざわざことを中断する気がないのか、そもそも彼に気づいてすらいないのか、 
一心不乱に快楽を貪っている。 
(やれやれ……待つしかないですか) 
 
程無くして、少年がひときわ激しく動き、力尽きたように少女の上に横たわった。 
直立不動で待っていたテレンスが、初めて声を発する。 
「花京院 DIO様がお呼びです。すぐに居室に来るようにと」 
少々のいら立ちを込めて、しかし体裁は飽くまで礼儀正しく伝えると、気だるげな表情がこちらに向けられた。 
「……今か」 
「今です……まさか まだヤリ足りないのではないでしょうね?」 
白いシーツを見る影もなく汚している大量の液体を見やりながら、テレンスは冷たく言い放った。 
これではシーツどころかマットレスも替えなくてはならないだろう。少しはこちらの面倒も考えてほしいというものだ。 
「全く……DIO様はその娘に赤子を産ませるために貴方を手元に置いているのではないのですよ? 
 日本人らしくもう少し禁欲的になられては如何です?」 
「うるさい……大体僕はもう日本『人』じゃあない 
 詰まらない説教を垂れるな、耳が腐る」 
そう言って大儀そうに身を起こした少年の口元には、月光を反射してキラリと光る物があった。――吸血鬼の牙だ。 
「DIO様がお呼びならすぐに行くさ、あのお方の忠実なる僕としてな」 
花京院は手早く身なりを整え、寝台の隅に転がっていた枷を手に取ると、 
鎖に繋がれたそれをカチャリと少女の脚に嵌め、施錠すると鍵を大切そうに懐にしまった。 
少女は死んだ魚のような目で自らの脚を見下ろしている。花京院は少女の頭を撫で、額に軽くキスを落とした。 
「行ってくるよ」 
瞳は虚ろなまま、少女の顔が僅かに微笑を形作る。掠れて消え入りそうな声で、少女は答えた。 
「……行ってらっしゃい」 
少年は幸福そうに微笑む。その表情だけ切り取って見れば、恋人と幸せな時間を過ごす、ごく普通の少年に見えたかもしれない。 
部屋の主が出ていき、少女とテレンスの二人が取り残された。 
少女は身体を拭き清めようともせず、鎖に繋がれて寝台の上に座り込んでいる。 
テレンスは黙って部屋の中央のテーブルに歩み寄り、水差しからコップに水を注いで少女に差し出した。 
「どうぞ」 
「……ありがとうございます」 
少女は両手でコップを持ち、ゆっくりと水を飲み干す。その表情は穏やかで、未だ身体に残された欲望の爪痕がより痛々しい。 
 
テレンスは小悪党に過ぎなかったが、そんな彼でもこの少女が置かれた境遇には同情していた。 
主の宿敵であるジョースターを倒したという男、彼が勝利の報告と共に持ち帰ったのがこの少女だった。 
 
女を連れ帰ったと聞いて、最初は捕らえた敵を主の食糧として持ち帰ったのかと思った。 
だが、目にした瞬間に分かった。 
時折前触れもなく涙を流す、輝きのない虚ろな瞳。 
少年に話しかけられる度、軽く触れられる度に、あるいは視線を向けられるだけでも震えが止まらない膝。 
優男らしい外見に似合わず、彼が常に少女に向けている、欲望に満ちた視線。 
その花京院という少年が少女に何をしたのか、そして何のためにわざわざ殺さずに連れ帰ったか。 
長く悪の世界で生きてきた者なら嫌でも分かる。 
 
倒した敵の「コレクション」は丁寧に扱うことがテレンスの狂人なりの流儀であり、 
ゆえにテレンスは彼を快く思わなかったが、 
DIOは宿敵を亡き者にした花京院を気に入り、永遠の生命を与えて右腕に据えた。お気に入りの玩具も、共に。 
何がそんなに好ましいのか、彼はこの少女をいたく気に入っていた。 
時折主が気まぐれに与える女にはほとんど興味を持たず、館に滞在しているときはほとんどの時間をその玩具で遊ぶことに費やした。 
案外DIOに支配されなければ、誠実な良き夫となったのかもしれない。 
だが、囚われ犯される少女にとってはその「誠実さ」は苦痛でしかなかっただろう。 
 
彼女の身体がことに慣らされ、痛みと苦しみのあまり館に響き渡る悲鳴が徐々に嬌声に取って代わられるようになっても、 
その目の奥に宿った絶望は色濃いままだった。 
そして少女が毎夜の行為に身体的な痛みを全く感じなくなったころ、彼女は懐胎した。 
産まれた赤子を手元に置くことが許されれば、その瞳に希望が宿ることもあったのかもしれない。 
だが、赤子はDIOの部下によっていずこかへ連れ去られた。次の子も、その次の子も同じだった。 
いずれもスタンド使いであったその赤子らがどこに送られたかをテレンスは知らない。 
駒として使い捨てられたか、今もどこかで戦わされているのか、いずれにしても彼女は知らない方が幸せなのだろう。 
老いることも、死ぬことすらも許されず、少女はもう数十年の間ここに囚われていた。 
 
だが、不思議なことが一つある。 
その瞳が濁りきってはいても、少女の魂のエネルギーは一度もゼロになってはいなかった。 
館に連れてこられて震えていたときも、二度と太陽の下を歩けぬ化け物にされたときも、 
ハネムーンと称して、人外の身体を手に入れた花京院に三日三晩の間慰み者にされ続けたときも、 
その果てに孕んだときも、赤子を取り上げられたときも、今このときにいたるまで、少女の魂は敗北していなかった。 
処女を散らされたときに「負けた」にしても、なぜそれから折れぬ心を保ち続けているのか。 
 
欲しい、と思う。彼女の貴い魂を。 
その魂はすでに人形にも等しい永遠の肉体に込められ、この場所に囚われている。 
持主はテレンスではないが、その「手入れ」は彼の責務だ。 
ならば丹精込めて手入れをしよう。テレンスは努めて優しく礼儀正しく、鎖に繋がれた寵姫に話しかける。 
「何か他に入用なものはございますか?」 
「いえ……特には……」 
「では失礼いたします。しばらくしたら寝具の替えを持って参りますので 何かあればそのときに。 
 ――そういえば、庭の百合が見頃でした。切り花にしてお持ちしましょう」 
「……いつも ありがとう」 
「これも執事の務めですから」 
そう言うと、初老の執事は静かに部屋を退出した。一人残された少女は、月を見上げてそっと呟く。 
 
「ごめんね 次は……助けるから……」 
 

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