「この牌、いいでしょう?
象牙で出来た特注品なんですよ。」
テレンスはいとおしそうに「白」を摘み上げて表面を撫でた。
ミドラーは険しい視線を投げる。
「フンっ…」
「安っぽい『鉱物』などではないですから、安心して楽しんでくださいね…。
フフフ…」
当然ミドラーがやってくるであろうイカサマに牽制を挟んだ。
(スタンドを都合のいい牌に変えて有利に運ぶつもりだったろうが
そうはいかない…ッ!)
「では始めましょうか。
簡単にルールを説明しておきます。
決着がつくまで東南を交互に繰り返します。
脱衣が行われるのは満貫以上、満貫に満たない手は
場が回るだけとします。」
デーボは聞いているのかいないのか。
乳房を半分も隠していない柔らかそうな
ミドラーの胸を濁った目で舐めるような視線を送っている。
そして低い渋い声で薄笑いを漏らしている。
「満貫で一枚、以降跳満二枚、倍満三枚、というふうに
成立した手に合わせて脱いでいく枚数は増えます。
服は今現在身に付けているもののみをカウント、
靴、靴下など対になっているのものはセットで一つと数えます。」
ミドラーのむき出しのむっちりとした太ももにデーボの手が伸びた。
薄気味悪い生暖かい感触。
「ぐへへへ…」
ミドラーはニッコリと笑うと自分の太ももを雀卓の裏に叩き付けた。
自然と彼女の太ももと雀卓の裏のくぼんだ金具に手を挟まれたデーボはのた打ち回った。
「ぐぉぉぉおおお…痛ぇよぉぉおおッ!!」
「フフっ…」
ことの成り行きがわからず絶句するテレンス。
ミドラーは微笑を向けた。
「せっかくの説明中にごめんね?
説明を続けてテレンス」
椅子から転げ落ちて、血のにじんだ手をおさえてうめくデーボに
テレンスは冷ややかな視線を送った。
「全く…続けますよ。
…ツモアガリであれば他の二人が、ロンであれば振り込んだ人間に脱いでもらいます。
まぁ、こんなところでしょうか。」
「痛ぇよぉおおお…」
「わかった。そのルールでいいわ。ほら、デーボ、やるわよ!」
舌を出して上唇に付け、そして小粋にウインクを投げた。
テレンスはデーボに向けてされたそのしぐさに思わず魅入られたように見つめた。
倒れこんでいたデーボが顔をあげた。
そこには今までテーブルの下にあって見えなかったものがあった。
腰から厚底サンダルにまでのびたむき出しの脚線美。
あまりに白く、そして長い脚。
再びデーボは視線で嘗め回した。
「ぐうううぅぅぅ…」
デーボはうめき、手をおさえながらも立ち上がり椅子に座る。
なおもブツブツと口の中で呪詛を繰り返していた。
よだれをたらしながらも強くミドラーを睨みつけている。
その視線を受け流しつつ、軽く勝ち誇ったように笑顔になる。
まだ若いながらも裏の世界で生きてきた。
そしてかなり名の売れた存在にまでなった。
その自分の強運を彼女は自分自身で信じていた。
「フフッ…!」
配パイはかなりまとまったすっきりしたいい手。
―やっぱりあたしの幸運は本物だわッ
さらに三巡ほど進む。
必要な牌がズバズバと入ってくる。
「おや、どうしたんですか、ミドラーさん。
かなり手がいいようですね?」
表情に出たのだろうか、それともカマをかけているのか。
テレンスはニヤニヤと笑ってミドラーを眺めた。
どちらにしてもゲームの勝負事での駆け引きになれているテレンスに自分の表情を晒したくなかった。
「おかげさまで、
…いいわよッ♪」
前かがみになり肩を寄せて微笑みを向けた。
あらわな胸元がますます強調され深い谷間がテレンスの目前に迫った。
「さ、さぁ!早く捨ててく、ください!
ま、み、ミドラーささん!」
テレンスは慌てて視線をあさってのほうに向けて牌を捨てるように促した。
耳が真っ赤になり額には汗が浮かんだテレンス。
「フフッ…わかってるわよぉッ…」
(この女ッ…!)
テレンスはミドラーを睨み付けた。
握れば折れそうな細身の身体。
その華奢な身体。
しかし、そんな見た目とは裏腹に彼女はDIO配下のスタンド使いの中でも
パワーでは指折りの力をもつスタンド使いだ。
長い睫が瞬きに合わせて光る。
「う〜ん…」
ミドラーは手牌に視線を落として考え込んでいる。
「これ、かしら…?」
一つの牌を長い爪で摘み上げた。
それだけでも豊かに実った胸は柔らかく波を打ち、
その頂上をわずかに覆っただけの青い星型の胸当てが窮屈そうに、
それに追尾する。
その肢体を押さえ込み意のままにしたいという欲望を
テレンスは懸命に押し殺した。
幸い熱くなった股間は卓の下であり、見えないはずだ。
次の手番のデーボが牌を捨てるとミドラーは妖艶に微笑んだ。
「ふふっ…」
「……?」
「ロン!」
「ぐおおおおおお……」
力なくうめくデーボに勝ち誇っての余裕の視線を送るミドラー。
「タンヤオ、ピンフ、それにドラ3つね♪」
「げへへへっげへへへへへへ…」
負け惜しみの強がりかニヤニヤとした笑いを崩さないまま
羽織ったコートを脱いで床に叩きつけるように投げた。
手ひどい拷問を受けたかのような傷だらけのデーボの上半身。
視線を流して微笑むミドラー。
「なかなかセクシーな身体してるじゃない?」
挑発的に微笑んだ。
「いぃてえええよぉぉぉぉ… けへへへ…」
ミドラーの鮮やかな先制パンチが決まった。
(ふふ…デーボも運がないわね…
動きのないテレンスが不気味なところだけど
ここは一気に…!)
2局目。
前回の流れを引き継いだか、淀みのないいい手だ。
(ふふ、一気に片付けてやるわ…デーボ、テレンス!)
気分良く牌を摘まんで叩き付けた。
「恨み…はらさでおくべきかッ…!」
デーボがぼそっとつぶやいた。
壁にかかってうなだれた表情の人形が突如目を見開いた。
「メーンッ!このトンチキがーッ!」
「何ッ…!?」
「ロンだよぉおおおッ!!」
―恨めば恨むほど強くなる!
―まさか、さっきのあたしへの振込みはわざとだったって言うのッ!?
「人和、げへへへ…役満だぜ…役満ッ…テレンス、役満は何枚だ?」
「役満は…5枚脱いでもらいます。」
少し紅潮しながらもテレンスは無機質な声でいい放った。
あまり日の光を受けていないであろうテレンスの青白い頬は
赤みが少しづつ増していった。
ミドラーにもデーボにも視線を向けず正面を向いたまま。
ミドラーは表情を押し殺した。
黄色い口元の布の奥で、悔しさかそれとも別の感情か、唇が震えている。