ヴェネツィアの小さな教会で式を挙げた日の事は、きっと二人とも生涯忘れないだろう。  
誓いの言葉とキスを交わす時、窮屈そうにタキシードで正装したジョセフはいきなり何事かを言い出した。  
 
「スージー、エアサプレーナ島でおれが言った言葉覚えてるか?」  
「え? ……何だっけ?」  
「…………」  
「ちょ ちょっと ホホホ そのキリキリはやめようね」  
 
無言で義手をキリキリ言わせるジョセフを見て、冷や汗を流すスージー。  
こいつが忘れっぽいのはいつもの事だが、ここで乗ってくれなくては誓いのキスのため考案してきたネタが台無しだぜと  
ジョセフは自らタネをばらし、強引にキスに持っていく事にした。  
 
「おめーはオレを変な口って言ったが、そのオレと恋に落ちればだ……いっぱいキスができるわけだぜーーッてな!」  
「そんな事言った? 変な口だなんて」  
「オーーーノォーー! 信じらんねーッ 何とぼけてんだこのアマ!」  
「ウソだわ……あたしには世界一セクシーな唇にしか見えないけど?」  
「!!」  
 
新郎新婦のそれはもう熱烈な誓いのキスは、神父に引き離されるまで長々と続いたという。  
 

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