『雨のち雷 ところにより涙』  強姦・性描写あり注意  
 
 
コイツ― 豹変したウェザー・リポートに振り回されて  
数時間、俺の戸惑い混じりのイライラは頂点に達しそうになっていた。  
「ウェザー! オイッウェザー・リポート!!  
さっきから何意味のないことやってんだ! 徐倫はどこなんだ!?」  
どこまでも飄々と町をうろつき、気に食わないものをブチのめす  
目の前の相棒に半ば涙目になりながら徐倫の名を訴える。  
ウェザーはそんな俺に少しだけ眉根を寄せた憎たらしい笑みを向け  
こう言い放った。  
「アナスイよォ、さっきから徐倫徐倫ってそんなにあの女が大事かよ?」  
「なっ…!? 当たり前だ! 俺は徐倫のために脱獄してここまで来たんだぞ  
それもこれもウェザー・リポート、お前が徐倫が脱獄したなんて言うから…」  
ウェザーは壁に背をもたれさせると面倒くさそうに目を伏せ  
唇だけで笑みを作った。  
「うん…この辺にゃあいる…すぐ近く、すぐ近くだ。  
…勘っつうか、感覚だけどな」  
ふざけてるのかと殴りかかりたくなるが今はまずい。  
コイツはさっきからどんどん凶暴性が増していっている。  
下手に騒ぎでも起こしたりしたらすぐに警察が駆けつけてくるだろう。  
それだけは避けねばならない。  
「フン! 勝手にしろ!  俺は徐倫を探すからな」  
ウェザーを置いて俺は足早にその場を後にした。  
 
『この辺に すぐ近くに』  
ウェザーの適当なでまかせかもしれないが、今更あちこち  
場所を変えるわけにも行かず、俺はひたすら徐倫を探していた。  
街路、店の中、ダイバーダウンで地下や警戒厳重なビルの中まで  
隅々調べた。  
お願いだ、徐倫 俺にひと目その姿を見せてくれ。  
神を信じぬ俺が神に縋る思いで地に膝をついたその時だった。  
 
 ・・・・・  
 アナスイ?  
 ・・・・・  
 
…幻聴か?  
いや、違うすぐ後ろからだ。  
再び背後から聞きなれた声に呼びかけられ俺はようやっと振り向いた。  
 
―ああ…神よ  
 
「アナスイ!? あんた…どうして」  
「徐倫、君を守るために……俺も、来たんだ」  
ツカツカと俺に歩み寄る徐倫の両手を取り、ガラにもなく目を潤ませた。  
だが、俺のこの瞳を徐倫が捉える事はなかった。  
徐倫は俺の背後に向かってニコリと穏やかな笑みを向けたのだった。  
「ウェザー・リポート! あなたも…?」  
「ああ…徐倫 工場の時…以来だな」  
気がつけば俺のすぐ後ろにウェザーがいた。  
先ほどまでの異常性は微塵も見せず、刑務所にいた頃と同じような  
物静かな雰囲気で徐倫に挨拶している。  
…妙だ。  
二重人格かなにかか?  
二つの性格が入れ替わり立ち代りになっているのか?  
徐倫はそんなことを露ほども知らず、俺の手を離れウェザーに駆け寄った。  
 
― やめろ、徐倫  俺以外の男を見ないでくれ  
 
いつか見たあの悪夢、抱き合うウェザーと徐倫。  
それが再び目の前で再現されている。  
蒸気を吹き上げるケトルのように、赤い嫉妬心が湧き上がったが  
その熱気は一瞬にして凍りつかされた。  
徐倫を抱きながら舌なめずりをするウェザーの表情に、だった。  
 
徐倫の襟首を掴み上げ、引き離そうとしたが、その寸前に  
俺の体に強烈な衝撃が走った。  
飛び散る火花、全身を切り裂く鋭く灼けるような痛み。  
目の前は黒と白とで交差し膝から下の感覚があっという間になくなって  
地面に受身もなく崩れ落ちたのだ。  
呆然とした徐倫の顔に緊張の影が走る。  
すぐさま身構えウェザーに向き直るが、一歩遅かった。  
俺と同じ衝撃を受けた徐倫の体が大きくはね、壁へと叩きつけられた。  
―あの時と同じだ。  
やはり、ウェザーと神父は…  
だが状況は悪夢よりひどいものだった。  
ここで2人とも殺されていれば…そう思いたいくらいの  
屈辱をこれから受けることになったのだ。  
 
「ウェ…ウェザー… 誰だ… お前は…やはり、神父のスタ…」  
「違うね、徐倫 俺は正真正銘のウェザー・リポートだ   
工場でお前を助けた奴と同じ人間さ」  
目の前の白黒フラッシュが止まらない。  
徐倫とウェザーが何事か話しているが、何も聴こえな…  
「うげぇあっ!?」  
再びの痛みがこの体に命中した。  
骨が軋み肉は焼ける。  
雷だ。  
この痛みの正体はウェザーの落雷だ。  
胃の中を不快な空気がグルグル回りだし地面に胃液をぶちまける。  
「オエッ… うげええぇえッ」  
「アナスイ!」  
「ホラ、その糸のカタマリをしまいなよ徐倫 お前が抵抗すればするほど  
アナスイはああして苦しむんだぜ」  
何が起こっているんだ?  
視界がかすんでものもよく見えない…。  
「…ダイバー・ダウン…」  
「アナスイ! ダメよ ウェザーに攻撃の意思を見せちゃあ…」  
「アナスイは別に攻撃のためにスタンドを出したわけじゃあないみたいだぜ  
この状況を…いとしの徐倫が無事かを確かめたいだけだ …なぁ?」  
 
「あぐゥッ!」  
徐倫の短い悲鳴にダイバーダウンがその目を向ける。  
ウェザーは徐倫の手首を取り軽い電流を走らせると、その上体を弓なりに反らせ  
壁へと圧しつけているのだ。  
「ウェ、ウェザー! てめえ… 徐倫に何を  ぐああッ!!」  
三度の電流がこの体を走り抜ける。  
続いて、徐倫の悲鳴も。  
「いいか! いいかガキども お互いのことが大事なら俺をイラつかせるんじゃあねえ  
終わるまでおとなしく待ってろよ」  
消えうせそうなダイバー・ダウンが地べたにうずくまって見たものは  
この世の終わりかともいうような光景だった。  
壁に上体をもたれさせ尻を突き出しうなだれる徐倫と  
その背後にペッタリと張り付き徐倫の胸に両手を這わせるウェザー・リポート。  
「小便クセえ小娘かと思っていたが、意外にイイ肉付きしてるじゃねえか」  
ウェザーは徐倫の胸を覆うタンクトップに手を突っ込むと見せつける様にして  
グイグイと大きくもみしだきはじめた。  
「やわらかいぜェ〜 ところでアナスイ、お前は触らせてもらえたことあるのか?   
ないのか? …ないよなぁ お先に堪能させてもらうぜ」  
血ヘドを吐く思いだった。  
この両目を自ら潰したい気持ちに駆られるが、血走った眼は徐倫とウェザーの  
イヤらしい姿を焼き付けようとばかりに開きっぱなしだ。  
ぺろん…とタンクトップを捲り上げれば零れる乳房。  
白い綺麗な乳房が浅黒い男の手に揉み潰され蹂躙されている。  
それほどこなれていない乳首をしごかれ引っ張られ、徐倫は涙混じりの  
ため息をつく。  
「やめろ、徐倫 そんな声出すな… あああぁぁっ!」  
「黙ってろっていってんだよ こちとら楽しんでんだ…  
お前も内心嬉しいんだろ? 大好きな徐倫の裸が見られてよぉ」  
「畜生…畜生うぅ…  徐倫…」  
言われたとおりだった。  
うつぶせのためわからないが、俺の下半身は地面にその主張を圧しつけている。  
徐倫の悲痛な姿にどうしようもなく欲情しているのだ。  
 
「痛いッ」  
徐倫の鋭い悲鳴に顔を上げれば、今まさにウェザーが徐倫に侵入しようとしている  
ところだった。  
まだ濡れてもいない秘所にウェザーの野太い性器がギュウギュウと押しかけている。  
「全然はいらねえじゃねえかよ さっさと開け」  
「痛い、痛いわ ウェザー…無理よ」  
「処女でもねえくせに、ウブ気取ってんじゃねえよ」  
信じられない。  
ウェザーは両の親指を徐倫の膣に突っ込むとミチミチと音を立てて  
左右に引っ張り出したのだ。  
女の、それも徐倫の体に信じられない酷いことをしている。  
「イヤッ! 痛い、痛いィ!! お願い、もう許して…」  
「せえのッ」  
さっきまで徐倫の尻の前でゆらゆら揺れるだけだったウェザーの腰が  
今度は迷いなくズンズンと進んで行った。  
「ホラ、入ったじゃねーか」  
「あうっ あうう…」  
徐倫の爪が石壁のヒビに食い込みボロボロになっていく。  
顔面は蒼白、きっとかなり痛いのだろう唇を噛み切ったらしく  
端から鮮血を流している。  
「ホラホラ、濡れてきたぜ  イイ具合に締まりやがる」  
結合部から漏れ出でているのは愛液などではなく会陰の裂傷による血だった。  
ポタポタと悲痛なくらいに地面に赤い染みを零していく。  
「やめろおおおおおお! …殺してやる、う…クウウッ ウウッ  
殺してやる…ううぅ   ! ィッ…ギャアッ」  
「殺してやる、だぁ? おもしれー、やってみろよ!」  
連続して俺に命中する落雷。  
鼻や口の血管が破裂して血が噴出している。  
もはや悲鳴を搾り出すことも出来ない。  
死ぬ一歩手前ってやつか…。  
「アナスイ…! アナスイが死んじゃうわ… もう、やめてあげて…」  
徐倫の声だ。  
『フン』と鼻で笑う声に続いてようやく止んだ落雷の嵐。  
情けねえよな。  
今まさに犯されている好きな女にこんなことで気を遣わせて。  
霞む視界に映る光景は、何事か叫びながら血だらけの指で  
壁をかきむしる徐倫と、こっちを見ながら何事か言って腰を振るウェザー。  
「なに泣いてんだよ、アナスイ  洗って返してやるよ 後でお前が使えるようにな」  
 
満足げな顔を空に向け、徐倫に腰を埋めたままのウェザーの背筋が  
ブルリと震えるのを見て俺の意識は闇へと消えた。  
 
 
 
全てを洗い流す豪雨の中、死ぬほどの屈辱を受けておきながら  
俺は徐倫の肩を抱きながらウェザーの後を歩いている。  
死ぬほどの屈辱を受けながら。  
全てが終わったら徐倫を抱きしめてやれる、と  
こうして生きている。  
 
(終わり)  
 

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